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レヴォクロスト・レ・ヴィルシュバルツ

エリスという少女に私が出会ったのは、私がまだ、幼体の時だった。魔族は十数年の幼体期間を経て、魔力覚醒し、成体になる。


まだ、魔力すら使えない未熟な幼体の頃、私は魔物に襲われた。魔物は人間と同じように魔族も襲う。けれど、人間は魔族を魔物の一部だと勘違いしていた。


魔物に襲われた私は誤って帝国領に迷い込んでしまった。人間に魔族だとばれたら殺される。

私は人を呼んでこようとしたエリスを止めた。エリスは私のことを怖がっていると思った。傷だらけで血まみれで何より尖った耳を持っていたから。


けれど、彼女は怖がらずに自分の服を使ってできる限りの手当を始めた。そして、私の為に神聖力を使ってくれた。

私は後になって、彼女が初めて神聖力を使った瞬間だったことを知った。


彼女のような人間がいるならば、帝国との戦争を辞められる。私はそう思った。


でも、私の声は魔族達には耳障りだった。このままでは私の声を誰も聞いてはくれない。

私は力をつけることにした。魔力覚醒はまだしていない。だから、頭と人脈を使って地位を築いた。人間との関係を改善するための準備を整えた。


そんな時に私の幼なじみで信頼できる部下が裏切った。

私を以前と同じように魔物の群れに放り投げた。なんでも以前襲われた時も彼が仕組んだらしい。


絶望した。一瞬死んでもいいとさえ思えた。けれどエリスが、彼女が繋いでくれた命を無駄にするわけにはいかない。

私の魔力は覚醒し、部下諸共魔物を殺していた。


私は魔族も人間ももうどうでもよかった。でも彼女が戦場で魔族の治療も行っている、その話を聞いて私は再び人間との関係修復に務めた。他ならぬ彼女のために。

エリスが人間も魔族も等しく守りたいと思っているのならば、私はそのために動こう。


ヴィクトールという青年が私の元を尋ねてきた。魔族と魔物の違いを発表すれば、戦争は終わり平和になると。

私は彼に協力した。


そして魔族と帝国の戦争は終わった。エリスの命と引替えに。


エリスは戦場に居て、兵士を治療していたというだけで戦争を先導していたと言われて、処刑された。


彼女がどういう思いで治療していたのか気にもとめずに。


私はヴィクトールに詰め寄った。何故聖女を殺したのかと。

ヴィクトールは答えた。共通の敵が必要だったと。


その答えを聞いて、私は笑った。もうどうでもいい。何もかも全部がどうでもいい。

エリスを敵にするような世界ならば、要らない。


私は私の意志で世界を滅ぼそうとした。私は彼女の正しさを信じていた。エリスが正しくあれない世界なら、私には必要ないように思えた。


魔族も、人間も、魔物さえ何も生き残らなかった。何も無い荒野でひとり佇む。


ようやく人間が神と呼ぶ存在が話しかけてきた。なぜこのようなことをしたのかと問う声に私はどうでもいいと答えた。

私は自分の魔力を爆発させて、自分ごと世界を吹き飛ばそうとしていた。

それは少し焦ったように、私に言った。時を戻してやる。だから壊すのはやめろ。


私は直ぐに了承した。代償にエリスとの出会いは無かったことになるとしても、ただ、もう一度生きているエリスに会いたかった。


そうして、2度目の生が始まった。裏切りも何もかも知っていた。魔力も覚醒した状態だった。私が魔族の中で権力を握るのにそう時間はかからなかった。


今度はエリスが幸せになれるように動こう。そう決めたから、彼女が私に会いに来たのは想定外だった。


彼女は私が思っていたよりも強かった。自分の力で道を切り開き、戦争を終わらせ、平和を導いた。


それでも彼女は幸せではなかった。彼女自身の口から死を望む言葉を吐かせてしまった。


エリスの正しさを私は信じている。だから私が彼女にできることは、エリスがエリスらしくあれるようにすることだ。


友人と楽しそうに笑うエリスを見つめる。


私はこれからもやりたいようにやる。この笑顔が陰ることがないように。


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