ソフィ・レドオール
私は小さい頃から凄く引っ込み思案だった。
母が属国の出というのも相まって、私はひどく虐められていた。
そんな時にあの人にであった。
いつ終わるかも分からない魔族との戦争に辟易していた頃、何人目か分からない聖女が戦場に送られた。あの人は、エリスはその聖女だった。
その日私は母から貰った大事なネックレスを無くして、その上同級生からも殴られ、蹴られ、ボロボロだった。
泣きながら帰っていると道端の石に躓いて転けてしまった。その時にエリスが手を差し伸べてくれた。大丈夫ですかと心配そうにしながら。
私の肌は少し暗くて、白い肌ばかりの帝国人は気持ちが悪いと触りたがらなかった。そんな私の手を躊躇いもなく、それが当たり前かのように握った。
嬉しかった。
エリスは神聖力を使って、怪我を直したあといい日になりますようにと笑って立ち去っていった。
彼女が丁度戦場に向かう途中だったのを知ったのは後のことだった。
私はエリスと出会ってから、変わろうとした。
どれだけ馬鹿にされても泣かなくなった。大事なものを守るための戦い方を覚えた。
大好きな裁縫も自信を持って取り組んだ。
どれだけ周りから否定されても大丈夫だった。私はただ、エリスがあの日差し伸べてくれた手に似合う人になりたかった。
そんな時に母の祖国に疫病が蔓延した。
どんどんと人が死んでいった。私のおばあちゃんも疫病にかかった。
帝国は属国を見捨てたと思った。
絶望していた時、神殿が特効薬を作ってくれた。神殿の作った特効薬は瞬く間に疫病を収めた。
多くの人は神が遣わした奇跡だと言った。でも私は奇跡なんかじゃないことをちゃんと知っていた。
薬を持ってきた神官が言っていた。この薬はルード様という人とエリスが作ったと。
神がこの地を見捨てなかったんじゃない。彼女達が私達を見てくれていただけだ。
私は大陸が信仰しているような全知全能の父も、母達が信じているような神々も信じてはいない。
だけど、この世に正しいことがちゃんとあると知っている。
エリスがいる限り私はそう信じていられる。




