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再始動 -Second Life on-line- そして第二の人生が始まる  作者: 絢奈
第六章 天使の使いと巨龍の使い
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始まりの話

本日二話目です。

(あぁ…しくじった…あんなの初見殺しじゃないか…)



 コルは自分の身体から出ている夥しい量の血を見つめながら桜庭 信仁…魔王が放った対物ライフルの考察をしていた。



(銃弾だけを僕の背後にワープさせて、そのまま貫通させてフェイナを後ろから攻撃…初手で頭を狙わなかったのは僕の頭を吹っ飛ばしてもフェイナに当たる確率が下がるからか…でも、初手で頭を吹き飛ばされなかっただけ運がいいか…)



 頭に回るはずの血が腹から流れ、逆に冷静になってきたコルは即死しなかっただけ運がいいと割り切ってフェニックスの不死の炎を使って自分の傷を癒していく。



(…くそ…明らかに治りが遅い…魔王の能力の中に傷を治させない系のチートがあるなこれ…だけど、こっちはゲーム由来の耐性スキルがある…ある意味対抗出来るのは『僕達』しかいない…けど、これ…治りきるまでに意識が持つか…?…またアルメラにこき使われそうだなぁ…)



 コルは自分が撃たれ、仲間に心配をかけてしまっている事を自覚しながら自分の意識が途切れる前に対物ライフルで撃ち抜かれた腹を癒していると、コルの耳に怒声が届く。



「ムーちゃん!アルメラ!!ちーちゃんが撃たれた!!早く回復して!!」



(この声…フェイナか…きっと守り切れなかったと思ってるんだろうな…後で…謝らないと…)



「千棘!?どうして撃たれてるの!?」



(アルメラ…完全にロールプレイ忘れてるじゃん…ごめんな…心配かけてしまって…)



「母上!?アルメラ殿!!ここはわらわが弾いておくからすぐに母上を助けるのじゃ!」



(流石バハムートだよ…苦労して契約しただけあるよ…)



 そんな事を思いながらコルはこちらに誰かが寄ってくる気配を感じ取り、血溜まりに浸かった自分の手をどうにか動かそうとしても動かせない手に苛立ちを覚えていると、背中にポーションがかけられてどうにか手が動かせるようになる。



「千棘の傷の治りが遅い!!このままじゃ死ぬかもしれない!!」



(アルメラ…僕は死なないから…大丈夫だよ…)



「そんなの絶対にダメ!!絶対に治して!!」



(フェイナ…そんなに怒鳴ったらダメだよ…)



「そんな事言ったって傷の治りが遅いんだって!!!」


「だったらどうにかして早く治して!!」


「だからどうにか出来たらとっくにやってるってばフェイナねぇ!!」


「…ごめん!アルメラ!ちーちゃんはどれくらいで復帰出来そう!?」


「わかんない!千棘にぃの出血量が明らかにヤバいんだよ!!どうしたらいいの!?」



(アルメラ…本当にごめん…)



 コルは知っていた…アルメラは高校生になりたてでみんなの事をそうやって呼んで慕っていた事を。



 そんな子をここまで心配させてしまっている自分は何をやっているんだと叱咤し、気力を奮い立たせて近くにいるアルメラの手を掴み、顔を寄せさせて伝える。



「わた…くしは死に…ません…わ…それ…よ…り、あの…銃弾…()()()…します…わ…気を…つけて…す…ぐに復帰…し…ますの…それ…まで、近づ…いて、銃を…使わ…せないで…」



(やば…喋ったら一気に力が抜け…)



「ち、千棘にぃ!?ねぇ!千棘にぃ!?」



 コルはアルメラを必死に手繰り寄せていた手から力が抜け、自分の血を跳ねさせてアルメラを血染めしてしまった事に気付かなかった。



 それでも必死に呼びかけてくれるアルメラに答えてあげたいコルだが喋る事が出来ず、魔王に向けて指を差す事しか出来なかった。



「…わかった…行ってくるから千棘にぃ死なないでね」



(アルメラ…気をつ…)



 コルは意図をしっかりと汲み取ってくれたアルメラが自分の元から遠ざかっていく背を、全てが二重になって掠れて見える視界の中で見送り、そこでコルは遂に意識を手放してしまった…。





 ■





(この感じ…あの時の…)



 コルは懐かしい感覚を覚え、このネシアの世界に来る前に来た真っ黒な空間を思い描いていると自分の思考を読んだかの様に言葉が頭に直接響く。



『そうですよ?千弦さんがネシアに来る時にいた空間ですよ?』



(やっぱり…()()()()いや…()()()()()()…)



 千弦はこちらに言葉を直接届けている人物…女神の名を呼ぶ。



『もーやだなぁ…スリーサイズを教え合った私と千弦さんの仲じゃないですかぁ…女神セッテ様なんて仰々しいのはやめてください。ナナかセッテって呼んでください』



(いやいや!?教え合ってないよね!?)



『ふふっ。ようやく調子が戻ってきたみたいですね?ずっとそのままだと何が何だかわからないですよね?自分の姿をしっかりとイメージしてみてください。千棘でもアエリアでもコルでもいいですし、リアルの自分でもいいですよ?』



 セッテにからかわれながら千弦はすっかり癖になっている自分の姿をイメージするという行為を難なく行い、千棘の姿になる。



『うんうん、その千弦さんも可愛らしくていいですね?なら次はあの時会った私の事をイメージしてみてください。もし難しかったらお母さんの方の那奈をイメージしてもいいですよ?』



(ちゃんと覚えてますよ…あの日は特別な日だった…だから忘れてませんよ)



 そう思いながら千弦は初めて宝くじ売り場で会った、綺麗な茶髪をポニーテールにしていた奈々の姿をイメージすると真っ暗な空間が一気に白く染まっていく。



 そして白が黒を全て飲みこむと遠くから青い色が千弦に向かって色付いていき、少し手前で止まって青から白…砂の色に変わっていく。



「…ここは…海?」



 真っ暗な空間からいきなり海に変わった事を認識していると後ろから声がかかる。



「千弦さん?こっちですよ~」



 名前を呼ばれ、千弦が後ろを振り返るとそこには白いワンピースにビーチサンダルを履いたセッテが手を振っており、アンティーク調の白い丸テーブルとそれに合わせたアンティーク調の椅子が二脚あった。



「千弦さんって私と海にでも行きたかったんですか?それなのに私が水着じゃなくてワンピースなんてどういう事なんです?というより、少し胸が大きくないですか?私はもう少しいい感じの大きさでしたよ?」


「僕にもわかりませんし、胸に関してはあの時詳しく見るわけにもいきませんでしたし……まぁ、このシチュエーションには多少、心当たりがあると言えばありますけど…」


「そうなんですね~。千弦さんはこの大きさが好きと…ふむふむ…それより座って少しお話しませんか?」


「別に大きい方が好きとかっ…いや、そうですね…どういう状況なのか…僕は死んだのかも聞きたいですし」



 そう言いながら千弦とセッテは向かい合わせで椅子に座ると、何もない所からティーセットが現れる。



「どうです?結構便利でしょう?女神の力を使えば無から有を生み出す事なんて朝飯前なのですよ」


「神の力を何に使ってるんですか…」



 少し得意げになりながらセッテは行儀よく紅茶を飲んで喉を潤して千弦に問いかける。



「それで、千弦さんは何が聞きたい…いえ、ここは女神パワーで当てて見せます…そう、千弦さんは私のスリーサイズが知りたいんですね!?」


「違いますよ!!というより、ふざけてないでちゃんと話をしましょうよ!!僕は死んだとしてもフェイナ達の事を助けないといけないんですよ!!」


「ふふっ。死んでも助ける…まるでおとぎ話の勇者…王子様みたいですね?」


「…いいから話をし『ここはネシアとの時間関係はありません。ここに何年いようとネシアでは1秒にも満たない時間しか過ぎませんよ』…」


「だからゆっくり、しっかりとお話しましょ?千弦さん?」


「…わかりました…」


「ふふっ。じゃぁそうですねぇ…まず千弦さんが死んだかどうか…千弦さんはどっちだと思います?」



 千弦は普通に教えたら面白くないと思っているだろうとセッテを見つつ、紅茶を飲みながら答える。



「…普通に考えたら死んでますよね。だって対物ライフルで腹を撃ち抜かれて、傷が治らない様なチート能力を重ねられてたら死にますよ。でも、きっと死んでないんでしょう?」


「ええ、千弦さんは()()死んでいませんよ」



 千弦はセッテの言った『まだ』という言葉を聞いて納得したような表情を作る。



「まぁ…そりゃあ、まだですよね。あの傷の治り方と出血量…もし助かっても、このままじゃ魔王に殺される…それも含めてまだという事ですよね?」



 千弦の答えを聞いたセッテは満面の笑みで親指と人差し指で輪っかを作る。



「正解です。このままじゃ千弦さんを含めて全員が死んでしまいますね。()()()()()()()()()()


「復讐…という事はやっぱり、セッテがあの魔王…信仁をこの世界に呼んだんですね。そして止められるは僕達しかいないって事ですか」


「その二つも正解です。実はですね?信仁君は私が千弦さんにお会いした後にこの世界に来てるんですよ?」


「えっ?そうなんですか?」


「そうなんですよ~。千弦さんにくじを売るという仕事を終えた私はすぐ近くの路地に入ってここに戻ってこようとしたらですね…あの世界には珍しく、親もいなくてごみの山から腐った食べ物を漁って生きている一人の子供を見つけたのですよ」



 セッテはその時の事を思い出しながら頬に人差し指を当て、首を可愛く傾げながら言う。



「私はあの世界で異世界のスラムの住人と同じように命を繋いでいるその子に不思議な感覚を覚えましてね?少し調べてみたんですよ。そしたらなんとびっくり!その子は()()()()()()()()()()()だったのです!」


「は、はぁ!?別のいせっ!?ね、ネシア以外にも異世界があるんですか!?」



 千弦はセッテの言葉に激しく動揺し、テーブルに身を乗り出してセッテに詰め寄るが、セッテは人差し指を千弦の唇に当てて小悪魔の様な表情を浮かべながら椅子に座らせる様に軽く押す。



「千弦さんは興奮すると子供みたいで可愛いですね?異世界はいっぱいあるんですよー?千弦さんがいるネシアもそうですし、地球だって異世界の人からしたら異世界ですよ?」


「そ、そうですよね…そりゃそうだ…何で気付かなかったんだ…」


「それでですね~?異世界を救った信仁君は元の日本に帰ってきたんですけど…異世界での記憶やら何やらを全て無くされて、子供の身体にさせられて日本に戻されたみたいなんですよ。しかもびっくりな事に信二君は最強としか言えない()()を持っていたんですよ!」


「い、異能?超能力とかそういう話ですか…?」


「んー…もっとわかりやすく言うと()()ですかね?…ここでクイズです!異世界を救った勇者、信仁君は何故、全て失い、子供の姿で日本に戻ってきたのでしょうか!」



 世界を二度も救い、今は魔王になってしまった桜庭 信仁の最強の異能…最強の体質について千弦は頭を悩ませる。



「最強の異能…体質……体質?時間が止められる異能を体質とは言わない…体質と言い換えた訳…身体機能の異能…?」



 考えている事が口から漏れ出ているのにも気付かず、千弦が思考の海に溺れているのを見てセッテは母の様な、慈愛に満ちた愛おしい者を見ている様な表情を浮かべる。



(はぁ…やっぱりいいなぁ…那奈ちゃんをこの世界に連れてきた時、那奈ちゃんの心残りを覗いて千弦君を一目見て、見守りたくなって見守り続けてたら…)



 セッテはそんな事を思いながら生まれてからずっと見守っていた我が子同然の千弦を見ていると驚いた表情を浮かべたのを見てクスリと笑う。



「その様子だと、一回で正解に辿り着いちゃいました?」


「…そんな事…あり得るんですか…?…()()()()なんて…」



 セッテは難問が解けた子供を褒めるように頭を撫で、頬を緩ませながら告げる。



「正解です!流石ですね~?信仁君には不老不死の異能があったんですよ。それで彼は私とは別の神に異世界に呼ばれ、そこで()1()5()0()0()()()()()()()()()()()()()()()!普通の人じゃ発狂しててもおかしくないですよね?」



 セッテのとんでもない言葉に千弦は頭の中が真っ白になり、1500年も世界を守り続けていた桜庭 信仁の立場に自分を置き換えて考え…恐ろしさに身体が震える。



「何で…何でそんな事が出来るんだよ信仁…あり得ないだろ…1500年も一人で…仲間が出来てもその仲間が死ぬのを何度も見送ってきたって言うのか…?僕には絶対に無理だ…今の仲間が全員いなくなったらきっと僕は何もできない…」



 顔を両手で押さえ、フェイナ達が居ない世界を想像した千弦はその恐ろしさに泣き出しそうになる。



 するとセッテが震える千弦に近づき、その震えを止めてあげるように優しく抱きしめる。



「ええ、千弦さんのその感情が正しいんですよ」


「信仁は…ずっと一人で1500年も世界を守っていたんですか…?」


「…厳密に言うなら一人じゃありませんでしたよ」



 セッテの言葉に千弦は顔を上げてその先の言葉を余さず聞き取っていく。



「信仁君はその世界である一人の女性と仲間になり、そして獣王…ネシアの世界で言うと魔王ですね。その獣王を討伐したんです。そして世界に平和が…とはなりませんでした」



 セッテは千弦の震えが止まったのを確認して身を剥がすと、千弦からあっと小さい声が漏れる。



「今は子供みたいですね?私が恋しいんですか?」


「…続きを聞かせてください…」



 そう続きを促す千弦の顔は赤くなっており、セッテはそんな千弦を見て笑顔になりながら続きを話す。



「ふふっ。実はその後何度も獣王が復活してしまうんです。そして、その仲間の女性は不老不死とは言えませんが、その世界で()()()()を繰り返していたんですよ」



 千弦が驚く様な表情をしているのを見つつ、セッテは続ける。



「最初は信仁君も老いて死んでしまった彼女見て自分の不老不死という異能を酷く憎んで自暴自棄になっていました。そんな時、ある一人の女性が自暴自棄になっている信仁君を見つけて世話を焼いていたんですよ。そして信仁君はだんだんその女性に心を開いていった頃、獣王がまた復活してしまったんです」



 セッテは空になったお互いのティーカップに紅茶を注ぎ、クッキーを生み出しながら話し続ける。



「信仁君はその女性と世界を守る為に獣王の討伐に出向く時、その女性もついて行くとわがままを言ったみたいなんです。当然、危ない所に好きな女の子を連れていくわけないですよね?でも信仁君はその光景…やり取りを()()しているんですよ」


「それが輪廻転生した…」


「ええ、その時は偶然だろうと思っていたみたいでそれでも突っぱねて一人で行こうとした時、彼女が勇者として覚醒したんです」


「勇者として覚醒…」


「はい。まぁ、一回目の獣王の討伐の時、彼女は勇者の信仁君についていけるだけの素質はありましたし、実際に勇者の器としては完璧だったのでしょう。信仁君を助けたい、一人にさせたくない、そんな思いが実って彼女は勇者になり、また二人で獣王を討伐しに向かいました。…そして獣王を討伐し、幸せにその女性と暮らしていましたが…信仁君は()()()()、彼女は()()()()…わかりますよね?」


「信仁は老いない身体で最愛の人が老いて死ぬのを二度も見届けた…」


「そうです。その女性が命を手放す時、信二君に言ったんです。『初めて見た時から不思議と懐かしいと思っていたけど、その理由が今になってようやくわかったの。()()()()()()()()()()()、シンジ』…と」



 セッテは千弦が静かに涙を流しているのを見て自分の手で千弦の涙を拭って続きを話していく。



「そこでようやく信仁君は最初に愛して添い遂げた人と、次に愛して添い遂げた人が同じ人だったという事に気付きました。…そこから先はわかりますか?」


「信仁は当然…生まれ変わった彼女を探し出す…」


「ええ、そして探し出した彼はきっと彼女と結ばれる」


「また獣王が復活して、彼女が勇者として覚醒して世界を平和に…」


「ええ、そしてまた彼女は老いて死ぬときに言うでしょう。また会えて嬉しかったわ…と」


「そしてまた探し出して結ばれて…勇者になって世界を守って最愛の人が老いて死ぬのを見届ける…」


「そして彼女はまた言うでしょう。また会えて嬉しかったわと。だから信仁君は1500年の間、本当に一人だったという事はなかったんですよ」



 1500年という途方もない時の流れで何度も最愛の人と出会い、何度も最愛の人を看取る…そんな世界に信仁は居たのかと思った千弦はふと、違和感を感じる。



「…待ってください…じゃあ、()()()()()()()()()()()()()()()()1()5()0()0()()()()()()()()()()()()()()?」



 セッテは千弦がそう質問をしてくる事がわかっていたかの様に目を閉じ、紅茶に口を付けて一息ついて意地悪をする様な表情を作りながら千弦へ問い返す。



「その答えを教えてしまったら面白くありません。なのでまたクイズです。何故、信仁君は最愛の人と半永久的に過ごせる世界を捨てて日本にいたのか…何故、1500年でその最愛の人との生活に終止符が打たれたのか…千弦さんはどう考えますか?」



 女神はお互いのティーカップに何度目かわからない紅茶を注いでいき、千弦はもう一度思考の海に溺れていく…。

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