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再始動 -Second Life on-line- そして第二の人生が始まる  作者: 絢奈
第六章 天使の使いと巨龍の使い
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魔王の過去、因子、そして座

本日ギリギリ二話目です。

「貴方が魔王でよろしかったかしら?」



 コルの問いかけを聞いた魔王は忌々しいと言いたげに表情を歪め、舌打ちをしながらコル達に命令をする。



「頭が高い、我に伏して話す事を許そう」



 その魔王の一言にコル達は一瞬だけ従わなければいけないという気持ちが沸いたが首を垂れることはなかった。



「あら、魔王は洗脳がお好きなのかしら?貴方がどれだけ力を使おうとも、わたくし達にその様なものは効きませんわよ」


「ほぉ?なかなか肝が据わっているのだな?だが、お前達は我と同じ目線で喋る事は許可出来ん、跪け」



 魔王が人差し指を下に向けた瞬間、膝を付かせようとする重力の重みを感じるがコル達には全く効いていなかった。



「洗脳の次は重力魔法で私達をどうにかしようと思ってらっしゃいますの?生憎ですが、わたくし達にはそれも効きませんわ」



 涼しい顔で言い放ったコルに少し驚いた魔王は手を叩きながら言う。



「ほぉ…これはなかなか上物じゃないか。なら我と同じ目線で話す事を許可しよう」


「案外簡単に折れるのですね?ではお言葉に甘えて色々聞かせてもらいますわ」



 そう言いながらコルはフェイナ達より前に歩み出てしっかりとサクラバ・シンジの面影を残した魔王に問う。



「まずはそうですね…ユリウス・フォン・ドルギス・ファーレン教皇はそちらのご老人で間違いないかしら?」


「そんなつまらぬ事を聞きにここまで来たのか…?全く興が削がれる…」


「答えて頂ければきっと貴方が心を躍らせる話をしてあげますわよ」



 やれやれと言った感じで玉座に肘を付いていた魔王はコルの一言に目の奥が光った様な錯覚を覚える。



「ほう、ならその話を聞くまでは付き合ってやる。もし心が躍らなければ即座にお前達の首を刎ねてやる」


「そんな事どうでもいいですの。で?どうなんですの?」


「せっかちな女はいい男を逃すぞ?お前の言う通り、この老人を模した『オートマトン』…まぁ言ってもわからぬと思うが、ユリウス・フォン・ドルギス・ファーレン教皇、我の人形だ」



 コルはオートマトンの教皇をチラッと見るが、隣に立っているサクラバ・シンジと同じように虚ろな目をして口を開くことは無かった。



「わかりましたわ。では次、その隣に立っているサクラバ・シンジも貴方が作った『オートマトン』ですのね?」


「そうだとも」


「では何故、貴方の面影があるのでしょう?」


「簡単な事だ。我の絶望を忘れぬ為に絶望を味わった時の我の顔を模して作ったからだ」


「そうですか。なら次、何故、神子の聖女にその人形を付き人として傍に置いていたんですの?」


「その事か。…クックック…あれは傑作だった」



 魔王は笑いを堪えつつ愉快そうに理由を話すが、コルにだけは魔王の目の奥が希望に縋る様な、寂しい物を見た気がした。



「最初はただの実験だったのだよ。たかが機械如きに人間と同じように感情を持てるのかどうかのな」



 その魔王の悪趣味としか言えない理由にフェイナとアルメラは表情を歪めるが、コルとバハムートは表情を変えずに続きの言葉を聞く。



「まずは作り出した人形に偽の記憶を植え付けて様子を見た。だがそれだけでは人間の感情を模倣する事はなかった。だがな?その神子の聖女の傍に置き始めた途端、恋心なんていうモノを持ち始めたのだ!しかも神子の聖女は力を使うたびに記憶が無くなっていく…だからこそ神子の聖女にも簡単に自分が救った人が付き人になったと信じ込ませる事が出来ていい実験になった!愉快極まりない!!」



 手を叩き、音を鳴らしながら高笑いする魔王に流石のバハムートも表情が歪み、目の前にいる魔王を叩きのめしたい気持ちを必死に抑える。



 バハムートすら表情が歪んだのにも関わらず、コルは平静さを保ちながら続きを問う。



「そうですか。ずっと気になっていたのですが、何故、神子の聖女を殺さずに人間の感情を持つかどうかの実験台に選んだんですの?神子の聖女は神の魔法を使える存在でしょう?貴方の道を邪魔する障害ではないんですの?」


「ああ…そうだな…」



 コルの言葉を聞いた魔王は笑うのをやめ、疲れたように玉座に背を持たれてコルに問う。



「お前は神がいると思うか?」


「…普通ならいない、そう答えるでしょうね。でもわたくしは一度、神に会っておりますわ」


「…ならやはり、この人形から記憶を抜き取った時に思った我の考えは正しかった様だな。神は異世界人をこの世界に案内する…いわば案内人だ。お前達は異世界人なのだろう?神という案内人にこの世界に()()()()()()()()のだろう?」


「…呼ばれてしまった…?一体どういう事ですの?」



 そう問うと憎しみを隠さずに表情を歪めて魔王が激昂する。



「あのクソみたいな案内人は!!この世界で俺に絶望を与えやがった!!何が勇者として魔王を討伐して欲しいだ!!魔王を倒したら最初は称えられたさ!!だがな!?魔王を倒した時に()()()()()って言うのが俺の身体に取り込まれちまったんだよ!!そしたらどうだ!?今度は俺が人間共から化け物だ魔王だと手のひらを返したように罵ってくれやがった!!!!それでも俺はこの世界を救った勇者として我慢して責められようとも!!魔王がいなくなった世界で色々な国や街を旅して魔獣の被害に会ってる人達を助けてやったんだぞ!!!なのに行く先々で魔王が暴れているって話になりやがる!!死にかけていた子供がいたから助けてそいつの親の元に送ったら俺はその親に何て言われたと思う!?『魔王がうちの娘を殺した』だぞ!?俺は一体何の為にこの世界を命がけで世界を守ったんだよ!?何がこの世界で貴方が求めるものが得られるだよ!!得られたのは魔王として嫌われて!!救った者達からは罵声と化け物を見るような視線だけだ!!こんなクソみたいな世界なら元の世界でごみを漁っていた人生の方がよっぽど幸せだった!!!」



 コルは魔王が泣き出してしまいそうな悲痛な表情で自分の内に貯めた想いを聞いて初めて表情が歪む。



「俺はそれでも頑張ってこの世界を助け続けた!!魔王の因子は確かにこの身体にある!!だがな…!!俺は魔王になるつもりなんて一切なかった!!だから顔も何もかもを隠して世界を助け続けた!!!でも言われ続けるんだよ!!!勇者桜庭 信仁(さくらば しんじ)は魔王になったが、()()()()()()()()()()だとな!!!ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと!!!!!お前達を助けているのは空想の人間達じゃねぇ!!!ここにいる、勇者桜庭 信仁だったはずだ!!!!なのに誰も俺の事を勇者として英雄として見ようとしねぇ!!!フードや仮面を取ったら魔王だと叫びながら逃げていきやがる!!!俺の何がダメなんだよ!?魔王の因子が埋め込まれたからか!?だけど俺は魔王の因子なんか関係なく人を救ったんだぞ!?」



 魔王…元勇者、桜庭 信仁の言葉はコル、フェイナ、アルメラの心に突き刺さる。



 同じく強大な力を持ち、たかが魔王の因子という不確定な要素の為にこの世界から迫害され続けた勇者と、ただのゲームとして遊んでいたこの世界でゲームキャラの身体を使って何もせずにダフネの十英傑だと崇められ、人を助けていたコル達とでは言葉の重みが違った。



「…そしてもう何もかもが嫌になって森の中で一人で死のうとした時、一人の女が俺の自殺を止めた」



 コル達は先程まで泣き叫ぶように激昂していた桜庭 信仁の雰囲気が変わった事に気付き、何も言わずに聞き続ける。



「その女…シンシアはな…ずっと俺の事を殺そうとしてた暗殺者だったんだよ。…笑えるだろ?暗殺者に同情されて、俺がそのまま自殺すればシンシアもこんな危ない魔王なんかを付け狙わなくてよくなんのにさ」



 懐かしむ様な、目の前に暗殺者だったシンシアがいるような表情で桜庭 信仁は語る。



「シンシアは俺が無償でずっと人助けをしているのを見て、俺が魔王なんかじゃないって言ってくれた最初で最後の人だった…それから俺はシンシアと森の中でひっそりと暮らし始めたんだよ。…だけどな、そんな幸せは長くは続かなかった…」



 俯いた桜庭 信仁の目から一滴の雫が膝に落ちた瞬間、右手を力いっぱいに握りしめて玉座のひじ掛けを粉々に砕いて言う。



「シンシアは俺の代わりに街で食料を調達しようとした時!!!所属していた暗殺部隊に捕まって辱められた上で街に晒され殺された!!!!シンシアは初めてこの世界に来て心の底から欲しかった物をくれた最愛の女性だった!!!!何故この世界は俺から全てを奪う!?俺はこの世界を救っていただけだ!!!人を殺した事なんて一度もなかった!!!盗賊ですら気絶させて騎士団に突き出していた!!!なのに魔王を倒して因子が植え付けられたからってこの仕打ちかよ!?!?」



 桜庭 信仁は怒りに肩を震わせながら言う。



「シンシアが死んだとわかった時、俺の中で何かが孵った。魔王の因子が遂に芽を出したってすぐにわかった。だからシンシアを見た奴らは両眼を潰してから殺して、シンシアを辱めた奴は全てを斬り落としてそいつらに食わせて殺して、シンシアを殺した国は全部跡形もなく殺しつくした。そして魔王として俺が生まれた。…それから俺はこの世界に連れてきた神に復讐する為に教皇に成り代わって勇者共のチート能力を集めて神を殺す力を備えていた。お前達の力を俺に取り込めば、神をも殺せる。そうしたらこの世界を滅ぼして神の依り代である神子の聖女に神を下ろしてこの手で殺す…その為にあの聖女は生かしていた。…最初はシンシアが生き返ってくれればそれでよかった…だけどあの聖女を見つけた時にはもう200年も経っちまった…()()()()()()()はあってももう魂は何処にもねぇ…」



 コルは桜庭 信仁が何も喋らなくなった事を確認して問う。



「シンシアさんの身体…あのホルマリン漬けの人達と同じようにですの?」


「あのホルマリンに入ってんのは俺の能力で作り替えた歴代の勇者達のオートマトンだ。…お前、アクエリア王国で魔王の儀式を止めた奴の仲間だろ?なら帝国でやってる『人工勇者』の事も知ってんだろ?」



 コルは桜庭 信仁から告げられた言葉で察する。



「…なら、あのホルマリン漬けのオートマトンが…本当の『人工勇者』なんですのね?」


「ああ、そうだ。人間共が信じていた勇者達に蹂躙される。俺様を勇者としてじゃなく、魔王として手のひらを返した奴らには最高な皮肉だろ?」



 そう答えた桜庭 信仁の表情は笑っているのか泣いているのか曖昧な表情をしていた。



 その表情を見たコルはこの真っ直ぐな青年だった桜庭 信仁を()()()()()()()()()()()()()()



 そして先程、桜庭 信仁が那奈の傍にサクラバ・シンジを模したオートマトンを置いた理由を話をした時に、目の奥に見えた気がした()()()()()()がわかった気がして覚悟を決める。



「わたくしの聞きたい事は全て聞かせて頂きましたわ。その対価として、貴方の心が躍る様な事を教えてあげましょう」


「へぇ、楽しみだな?俺の不幸話なんかより楽しいのを期待してるぜ」



 コルは桜庭 信仁にしっかりとした足取りで近づいていくと、桜庭 信仁は警戒した視線を向けてくる。



 フェイナ、アルメラ、バハムートもいきなり魔王に近づいていくコルを止める。



「ちょ!ちーちゃん!!」


「何考えてるのよ!!」


「母上!?何をするつもりなのじゃ!?」



 コルは三人の制止を受け、後ろを振り返って笑顔で告げる。



「わたくし、この魔王…いいえ、勇者桜庭 信仁君を救ってあげようと思ってますの」



 コルから衝撃的な言葉を告げられた三人は絶句してしまい、そんな三人を見たコルは桜庭 信仁の元へ歩いていく。



 桜庭 信仁もコルの言葉を聞いていたのか酷く驚いた表情をしながら近づいてくるコルを見つめる事しか出来ず、手が届く距離まで近づいて来たコルを見つめていた桜庭 信仁は下から見上げるような形になっていた。



「お前…何を言っているんだ…!?俺を救う!?お前は頭がイカれているのか!?」


「ごちゃごちゃ喚くな」



 コルは声のトーンを限界まで下げて威圧するように見下し、さっきまでの雰囲気を豹変させたコルを見て呆けた表情をしている桜庭 信仁の顎を掴んで告げる。



「お前から魔王の座を奪うのはこの私…ダフネの十英傑『千軍万馬(せんぐんばんば)のコル』だ。今からお前を殺して魔王の因子を頂く。そしてお前は魔王としてじゃなく私の仲間として私についてこい。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。これは決定事項だ、拒否は許さない。もし、それでも抗って拒否したいのであれば私達を殺して好きなだけ200年もの間、練りに練り上げた計画で復讐をすればいい」



 コルは一息吸ってもう一度桜庭 信仁へ言い放つ。



「だが私は言ったぞ?これは決定事項だ。拒否は許さない」



 コルは炎の翼を羽ばたかせ、炎を散らしながら『新たな魔王』として君臨する事を此処に宣言する。

ブックマークと評価、いつもありがとうございます。


日に日に増えるブックマークを眺めながら、モチベーションを高めているのでよかったらブックマークのほどよろしくお願いします。

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