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再始動 -Second Life on-line- そして第二の人生が始まる  作者: 絢奈
第六章 天使の使いと巨龍の使い
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乙女の覚悟

「…ルノ…感じる…?」


「うん…この息苦しくて潰されそうな魔力…間違いなくここに魔王がいるね…ユリス、他に何か感じられますか?」


「私は魔力とか感じられないけど…いつもより空気が違うのはここに潜入してからずっと感じてるし…人…いや、魔族の気配が一切感じられないのが不気味…」



 ユリス、ルノアール、フィーヤの三人は聖地セルファスで一番大きい建物…城の様な神殿にいち早く潜り込んでいた。



 何故、彼女らが先行して敵の本陣とも言える場所に乗り込んでいるのか…それはコルからサクラバ・シンジが魔族側に捕まったと伝えられ、その救出を任されていたからだった。



 だが、コルから救出する際に注意事項を何点か伝えられていた。



 一つ、魔族に抵抗なく連れていかれているのを那奈が目撃している…これは意識を失っている可能性がある為、ユリス達が能動的に動いて探さなければならない事。



 二つ、意識を失っておらず、魔族側に寝返ってこちらの情報を伝えている可能性…もし、このパターンなら遠慮なく命を絶つという事。



 三つ、魔族、もしくは悪魔との接敵した場合、可能な限り一撃で相手の命を絶つ事…もし無理そうなら即離脱。



 四つ、探している間に魔王と接敵してしまう可能性…接敵した場合は即離脱をする事。



 五つ、離脱が出来ず、戦闘になってしまった場合は攻める事を捨ててでも、命を落とさない事を最優先にする事。



 六つ、さっきまで言った事と想定外の事に遭遇した場合は自分達の判断を信じる事と、私を強くイメージする事。



 ユリス達はコルから伝えられた注意事項を肝に銘じてサクラバ・シンジを捜索しているが、悉くはずれを引いていた。



 そしてある場所に近づいていくにつれて、息苦しくて禍々しい雰囲気を持つ存在をユリス達の頭に嫌でも認識させてくる。



 城で例えるなら謁見の間…神殿や教会で例えるなら礼拝堂の役割をする部屋にその存在…魔王がいるという事を。



 ユリス達は的確にその場を避けてサクラバ・シンジを捜索していたが…考えたくない事が脳裏を過る。



「…ルノ、フィー、私の感が正しければ…サクラバ・シンジは魔王と一緒にいると思うけど…二人はどう思う?」



 ルノアールとフィーヤもやっぱりという表情を作りながらユリスの問いに答える。



「…私もそう思います。ここからは私達がどうにか出来るレベルではないと思うので、チヅル様の判断を仰いだほうがいいかもしれないです」


「うん…魔王の魔力を無理やり数値化するならチヅルさんの…アエリアさんと同じレベルの魔力を感じる。私達の数倍は上だから、無理に『そこの者共が今回の騒動を引き起こした害虫か?』…ッッ!!」



 フィーヤが答えている時、突然後ろから声をかけられて反射的にバックステップを踏みながら戦闘態勢に移るユリス達。



「ルノ、フィー…全く気配がなかった…転移魔法?」


「転移魔法だけじゃないですね…透明化に魔力遮断…」


「これだけ魔王の魔力が濃ければ簡単にごまかせるから…」



 ユリス達は警戒していたのにも関わらず突然後ろを取られたのか推察していると、相手は戦闘態勢を取ったユリス達に向かって疑問をぶつける。



「おい害虫共。こちらが問うているのに何故答えん?」


「…別にあんたに答えをあげる必要性がないからよ」


「…そうか。我が名はガルダンリー、害虫共を駆除する為にわざわざ足を運んでやったのだ…強き者なら我が王の贄にさせてもらう」



 ガルダンリーと名乗った者は陰で隠れていた身体をユリス達の前に晒し…ユリス達の目には頭を抱えたくなるような光景が映る…。



「……どういう事なの…?」


「…やっぱり私達の敵は…」


「…サクラバ…シンジ!?」



 ガルダンリーと名乗った者の顔はサクラバ・シンジと同じ顔をしており、その後ろには髪の色や目の色が変わったサクラバ・シンジと同じ顔の者が五人…計六人の魔族の角と羽を持ったサクラバ・シンジが立っていた…。



 彼女らが救出しようとしたサクラバ・シンジの顔、声…そして街で相対した魔族なんかよりも明らかに格上な者達を前にユリスは情報を引き出す為に問いかける。



「…ちょっと!ガルダンリーとかいうの!あんたのその顔は何なの!?」


「お前達は我の問いに答えなかったろう?だから我も同じように答えん」


「ユリス…取り付く島もないです…どうしますか?」


「…ここにいる奴らはエルさんとデルさんよりは弱い…けど、三対六…一人で二人の計算…無茶すればいけるけど、どうする?」



 ユリスは苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべながらルノアールとフィーヤに伝える。



「…初手の選択をミスった…ごめんリア……ここはお互いにフォローし合いながら、撤退してリアへの報告を優先に『そうはさせんぞ』…!!」



 ユリスの言葉を遮る様にサクラバ・シンジの顔を持つガルダンリーが声を発しながら指を鳴らす。



 するとユリス達の視界が一瞬で建物の中から真っ黒な空間に切り替わり、お互いの背を守るように三人でまとまる。



「やられた…!ルノ!フィー!この結界を突破できる!?」


「わかりませんがやってみます!」


「私も手伝うわ!!」


「だからそうはさせんぞ?」



 ユリス達の上からガルダンリーの声と攻撃魔法が降りてきてユリス高速の跳躍、ルノアールとフィーヤは短距離の転移魔法で距離を開いて攻撃を避けると、もう一度ガルダンリーが指を鳴らす。



 三人が離れ離れになってしまった瞬間、三人を隔離するように強固な魔法障壁で囚われてしまう。



「ちょ!!ルノ!フィー!!」


「――――!!――――!!!――――――」


「――――――――――!!」


「…声が聞こえない…!やられた…!!」


「念には念を入れさせてもらうぞ?お前達の仲間は相当強い個体の様だからな」



 ユリスはゆっくりと声がした方に向き直り、両手の短剣をくるくると回しながら睨みつける。



「…ハッ!女の子相手に二対一?どんだけ臆病なのよあんた達。私達を分断しただけで勝てると思ってんの?」



 ガルダンリーは首を傾げながらユリスに言う。



「…戦術の基本は数だろう?少数は多数相手に不利になる。これは正々堂々の決闘とは違う。己の命を賭けた殺し合いだぞ?人の性別が何の材料になるというのだ?」


「…あっそ、乗ってこないってわけね。…んで!?もう一人の魔族さんはお喋りしないのかな?」


「……」



 ガルダンリーの隣にいるユリスの相手…もう一人の魔族にコルとの通信を試みる為に時間稼ぎとして話しかけるが、応答は無機質な…何も映していないかのような虚ろな視線を向けるだけだった。



(通信は…やっぱり繋がらないか…リア…)



「こっちはダンマリ…まぁいいわ。とっとと終わらせてあげるからかかってきなよ」


「我はお前達と遊ぶつもりもない。一瞬で終わらせて贄にさせてもらう」



(リア…絶対に生きて帰るって約束守るからね!!)



 そうガルダンリーが言うと言葉を発さなかった魔族も戦闘態勢を取り始めて二対一の殺し合いが始まる…。





 ■





「――!!――!!――――!!」


「――――――――――!!」


「ユリス!!フィーヤ!!!…声が届かない…」



 ルノアールは分断された状況に陥ってもすぐに落ち着きを取り戻して、通信を試みる。



「…通信も出来ない…ガルダンリーと名乗った魔族はユリスの所…二対一の状況を作られたのですか」



 そう呟きながらルノアールは自分が囚われた障壁の中を見渡すと、二人の魔族が視界に映る。



「…貴方達は何故、みんな同じ顔をしているのですか?」


「…」


「…」


「…答えてはくれない感じですね。ならすぐに倒して二人を助けさせてもらいます」



 ルノアールが指揮棒の様な杖を取り出して戦闘態勢を取ると、二人の魔族がようやく口を開くが…ルノアールの耳には聞き慣れない言葉が発せられる。



「敵対行動を確認…対象…人間族…魔力量…平均値より所持している事を確認…」


「データ参照…対象識別コード…ルノ…別個体へデータ転送…完了」



 ルノアールは二人の魔族が発する言葉を理解しきれなかったが、こちらが敵である事を認識して戦闘の合図として無機質な声を響かせる。



「これより対象識別コード、ルノとの戦闘を開始します。データは各個体へ随時転送、最適化を行います」



(チヅル様…私も成長しています…その姿をお見せ出来ないのは寂しいですが…それでも私は貴方の為にこの命を賭けて戦い抜きます…!!)



 ルノアールは二人の魔族へ杖を向けて、ここにはいない大切な人を思い浮かべながら自分の命を賭けて目の前の障壁に立ち向かっていく…。





 ■





「――!!――!!――――!!」


「――――!!――――!!!――――――」


「声は聞こえないけどみんな無事そうね!!」



 フィーヤはユリスとルノアールの無事を確認しながらこちらをじっと見つめてくる一言も発さない魔族に視線を向けて問う。



「さっきから一言も発さないで私の事見つめてるけどなんかあんの?」


「…」


「…」


「黙っててもわからないんだけど?なんかいったらどうなのよ!!」


「…」


「データ受信…対象識別コード…フィーからフィーヤへ上書き…対象識別コード、ルノとの戦闘データ受信…完了。当機は対象識別コード、フィーヤとの戦闘データを各機へ転送…」


「は?データ受信?対象識別コード?なんかの暗号なの?」



 そう言いながらフィーヤは魔族二人が戦闘態勢を取ったのを確認し、ルノアールの杖と似た指揮棒の様な杖を腰のホルスターに納めて両の掌を合わせ、フィーヤが編み出したオリジナル魔法…青い炎糸を作り出しながら相手の出方を伺う。



「当機はこれから識別コード、フィーヤとの戦闘を開始します」



 そう無機質な声が告げた後、二人の魔族がフィーヤ目がけて瞬発してくる。



「私の質問の答えがこれね…私の改良した魔法の恐ろしさ、体感させてあげる!!」



 フィーヤはそう言いながら合わせていた両の手を離し、魔族二人を爪でひっかくように両手の五指をまげて振る。



 すると隠蔽魔法で存在を消した炎糸は二人の魔族の側面に何重にも展開された魔法障壁をいとも容易く切り裂いていく。



 魔族二人は不可視の攻撃を確認してフィーヤとの距離を羽を羽ばたかせて上空に距離を開く。



「対象識別コード、フィーヤより不可視の魔法攻撃を観測…該当データなし。検証を行います」



 魔族二人はもう一度魔力障壁を展開させながらフィーヤ目がけて高速で降下していくが、先程と同じように魔法障壁がバターの様に切り裂かれる。



 その工程を何度か繰り返した二人の魔族はお互いの情報を共有し合う。



「仮説、空間属性の魔法による斬撃…空間干渉が認められず否」


「仮説、風属性の魔法による斬撃…空間に風の流れが認められず否」


「仮説、炎属性の魔法による斬撃…空間温度の変化を確認。検証を開始します」



 二人の魔族は自身に展開していた魔力障壁に氷属性を付与すると、魔力障壁から白い靄の様な物が発せられる。



「検証を行う為の対策案として魔力障壁に氷属性を付与。温度の変化をより明確に致します」



 フィーヤは魔力障壁から発せられる白い靄を見ながら、内心で悪態をつきながらも自分の作戦が上手くいっている事に喜ぶ。



(くそ…こっちの出方をずっと伺ってる……でも、()()()()()()()()()()()()()()事は悟られてないわ…もし、それすら見破られても()()()はあるし、仕込みはもう完璧よ…!それにそれを破られたとしてもまだユリスとルノにも披露していない手もあるし…私だってチヅルさんの役に立つんだから!!)



 自分の作戦を見破られたとしても奥の手を用意しておく…以前千棘から教えられた事をしっかりと自分に刻み込んで成長したフィーヤ。



 彼女にはもう油断や慢心と言った弱点は姿を消し、ルノアールよりダフネの十英傑アエリアに最も近い存在となりつつあった。



「…さぁ、どっからでもかかってきなさい!!あんた達なんてバラッバラにしてやんだから!!」

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