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再始動 -Second Life on-line- そして第二の人生が始まる  作者: 絢奈
第六章 天使の使いと巨龍の使い
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人を繋げる権能

「エルの料理は美味しいわね。それにお米が出てくるなんて思わなかったわ」


「ありがとうございます。正式名称は違いますが、お米はアズマ国で仕入れが可能ですのでお好きな時に召し上がって頂けるかと」



 鏡がエルフの王女と婚約したという衝撃の事実から固まってしまったアエリアは天使のメイド…エルが用意してくれた料理によって活動を再開した。



「そう。ちょっと行儀が悪かったけれど書類も全部目を通したし、状況は把握したわ。やっぱり私達以外にもいたわね…でも、プレイヤーは今の所私達だけって言うのがわからない所ね。他は勇者召喚だったり転生でここにいるわけでしょう?」


「確かにねー…そこは魔王を倒した後にでも調べよー?」


「そうね。終わった後にでも捕まえてるサクラバ・シンジから聞くのもありだわ」



 アエリアとフェイナが話していると扉からノックの音が響き、入室を許可すると悪魔のメイド…デルが一人で入ってきた。



「アエリア様、現在ナナ様は湯あみをされておりますのでもう少々時間がかかるかと思われます」


「そう、わかったわ。ならエルとデルも座ってお茶に付き合いなさい」


かしこまりました(かしこまりました)



 二人はアエリアの言う通りに自分達でお茶を用意し、開いてる席へ腰を下ろす。



「さて…エルリとルエリの定時連絡まで後一時間って所ね…その連絡を聞いてからどう動くか決めましょうか」


「そうだねー。あの二人はちーちゃんが起きない事で取り乱してたのに、あの時手が離せないって言って来なかったっていうのもちょっと気になるんだよね…」


「そこまで心配してくれていたのに姿を見せないのは確かに気になるわね…割と急いだほうがいいかも知れないし、全員用のポーションを作ったりしないといけないわね」


「アエリア様、申し訳ございません…ユリス様、ルノアール様、フィーヤ様との訓練でかなりのポーションを使用してしまいましたので、在庫が心もとない数になっております…」


「エル、別にいいわよ。それだけ本気でやってくれたのでしょう?もう魔法なしの近接じゃユリスに勝てないかしらね」


「エルが神軍の黒衣を使用しても一太刀浴びせておりましたので、その可能性は十分あり得るかと思われます」


「あら…ユリスが予想以上に強くなってるわね…それならエルとデルには後でみっちり付き合ってもらわないとね」



 そんな他愛のない話で時間を潰していると扉からノックの音が響く。



「誰かしら?」


「ナナです」


「エル、デル、お願いね」


かしこまりました(かしこまりました)



 二人は席を立ち、自分達で使用していたお茶を片付けて扉を開け、ナナを入室させる…そしてナナの姿を初めてしっかりと見たアエリアは驚愕の表情に変わる。



「…あ、貴女が神子の聖女…ナナさん?」



 そう問いかけるとエルとデルに連れられて席についたナナは首を縦に振る。



「はい、ダフネの十英傑アエリア様。私は神子の聖女と呼ばれているナナです。今回はとある事情からアエリア様達の秘密を伺う必要がありましたので、この場に居させて頂いております」


「そう…私達の秘密をね…」


「一応私からあの場にいる全員の名前は教えたけど、それ以外は何も伝えてない。それ以降はちーちゃんが起きたらって話にしてあるよー」


「その…一つ先にお伺いしても?」



 ナナが不思議そうな表情でアエリアに問いかける。



「な、何かしら?」


「何故、アエリア様はフェイナ様にちーちゃんと呼ばれているのでしょうか?それに…ルノアールさんとフィーヤさんはアエリア様の事をチヅル様、チヅルさんと…」



 アエリアはああ、という納得した表情をしながら千棘をイメージする。



 いきなりアエリアから光が発せられてナナは目を塞いで光を遮り、光が収まった事を確認すると自分と瓜二つの女の子が視界に飛び込んできた。



「信じられないかも知れないけど、僕は千棘。アエリアとコルの身体を一人で使い分けてるんだよ。だから僕はアエリアでもあってコルでもある…一人三役って所だね」



 ナナは驚いたのか口を塞いで千棘を見つめる。



「それでまぁ…僕達の名前ってこの世界じゃ十英傑って呼ばれてるでしょ?だからみんな偽名を使ってこの世界で暮してたんだよ。みんなはちーやちーちゃん、ちー助って呼ぶけど、チヅルって呼ぶのはルノとフィーヤちゃんだけかな」


「そ、そうなのですね…やはり、皆様は異世界人という事でしょうか?」


「そうだね。僕達は確かに異世界人だよ」



 ナナは千棘達が異世界人だと認識したうえで問う。



「チトゲ様達は…どのようにこの世界に来られたのですか?」


「…僕達はかなり特殊な方法でこっちの世界に来てるかな。詳しくはわからないけど…僕は案内人と名乗る神様みたいな人にこの世界へ連れてこられたんだ。フェイナは気付いたらこの世界にいたんだよね?」


「うん、気付いたら森の中でどーしよって感じだった」



 千棘はそっかと呟いてテーブルに額を付けて思案する。



 しばらくそうした後、覚悟を決めた表情をしながら伝える。



「さっきフェイナにも言ったけど、僕がナナさんの名前を聞いた時に驚いた事と…共通点の話をするね?僕がこの世界に来た時、その案内人の名前もナナって名乗っていたんだ。だからここにいるナナさんがその時の案内人なんじゃないのかと思ったんだよ」



 フェイナは千棘の言葉を聞いて驚きの声をあげているが、ナナは納得できた表情で話す。



「そういう事だったのですね。チトゲ様をこの世界に連れてきたのは案内人ナナと名乗ったのですね?」


「え?うん…?もしかして何か知ってるの?」


「はい。その案内人と名乗った者は私が信仰している女神セッテで間違いありません」



 千棘とフェイナ、エルとデルは驚きすぎて何も言葉を発する事が出来なかった。



 ナナはお構いなしに話していく。



「私が信仰している女神セッテは時と空間、人の繋がりを司る女神と言われ、かなり特殊な女神なのです。そして私もこの世界の住人ではなく、日本と呼ばれる所で死に、この世界に新しい命として生まれ変わった転生者です」



 小さく息を吐きながら言う。



「私は病気で命を落とし、女神セッテに新しく人生を送らないか、貴女が求めているモノはこの世界にある、と言われました。私は承諾して新しく生まれ変わり、特別な力を女神セッテから頂きました。それが神の声を聞く力と、神の魔法を使用出来るという力です。そして…人の繋がりを司るという権能を利用して私とチトゲ様達は繋がったという事になります」



 千棘はナナの生まれ変わりに案内人と名乗った者が関わっており、更にはその案内人が女神セッテと呼ばれて人の繋がりという権能を利用してこの場の出来事を仕組んだという話を聞いて心臓が跳ねる。



「まさか…こんな所で繋がるなんて…」


「ええ、私も驚いています。セッテにここに連れてこられた、それもかなり特殊な方法でとチトゲ様は仰ってました。どのような方法で連れてこられたのですか?」



 千棘は今まで誰にも言わなかった《SL》の部分を話す時だと思った。



「…実は、僕達、ダフネの十英傑って呼ばれている皆は《Second Life on-line》って言うゲームをプレイしていたらゲームで使用していたキャラクターの身体になってこの世界にいたんだ。そしてこの世界はそのゲームの頃から500年後の世界らしくて…」



 ナナはここがゲームの世界だという事実に驚きながら言う。



「げ、ゲームの世界!?それはどういう事なのですか…!?」


「ぼ、僕にはわからないんだ。ただ、ここは現実と何も変わらない。僕達は確かにゲームキャラクターの身体だけど、本物の身体である事は変わらないし…それこそセッテに聞くことは出来ないの?」


「確かに…少しお待ちください」



 ナナは落ち着いた様子で目を閉じる。



 部屋の空気が変わり、重苦しい雰囲気になった時、ナナは独り言の様に呟く。



「…私達の話を聞いていたのなら教えてください……………つまらないし面白くないから教えない?………そんな事言わずに教えてくださいセッテ。……………()()()()()()()()……?それが何になるのです?…………面白い事になる?私の為?………ちょっとセッテ!!」



 セッテと叫んだ後、重苦しい雰囲気はさっぱり無くなり、セッテとの交信が切れてしまったと感じた千棘は言う。



「つまらないし面白くない…か。確かに僕の知ってる案内人もそんな理由で案内人と名乗ってたな。『いつかまたどこかで』…一方的にこっちを見てるって事か」



 ナナは小さく溜め息を吐き、セッテに言われた通りの事を千棘に伝える。



「はぁ…チトゲ様?セッテが私が日本にいた時の名前を伝えろと。きっと面白い事になるとも、私の為になるとも言っていました」



 千棘は首を傾げながら問う。



「え?日本の時の名前?」


「はい…私が転生する前は胡桃 那奈(くるみ なな)と呼ばれていました」



 その名前を聞いた瞬間、千棘は目を見開きながら口を手で塞ぐ。



 その名前にフェイナも目を見開きながらもナナへ問い詰める。



「ちょ!?その名前本当なの!?」



 明らかに様子のおかしい二人に動揺したナナもなんとか言う。



「え、ええ…私は胡桃 那奈と呼ばれておりました。日本の漢字で名前を書くとこう書きます」



 そう伝えて巫女服の袖からメモ帳を取り出して名前を書いてフェイナに見せる。



 フェイナはその漢字を見て言葉を失う。



「うそ…そんな事…ちーちゃんと同じ苗字…?」



 フェイナの呟きにナナも目を見開き、口を塞いでいる千棘を見る。



 千棘もフェイナから見せられたメモ帳の字を見て信じられない言葉をナナへぶつける。



「まさか…()()()()()()…?」



 千棘の言葉を聞いたナナは目から涙を流しながら言う。



「…()()…なの?セッテ…そういう事なのね…私の未練はこの事だったのね…だから私にしか開錠出来ない様、千弦に封印を施したのね…」



 ナナは千棘に近づいて抱きしめる。



「あなたが本当にあの千弦かまだわからないから教えて欲しいの…貴方は小さい時にお母さんを病気で亡くしてる?」



 千棘も震えながら伝える。



「た、確かにそうだけど…」


「貴方を育ててくれたのはお祖母ちゃんで、そのお祖母ちゃんはナミという名前で間違いないかしら…?」


「ナミお祖母ちゃん…確かにナミお祖母ちゃんだ…」


「貴方のお母さんの名前は…?」



 震える声で千棘は伝える。



「胡桃 那奈…」


「貴方の本当の名前は?」


「胡桃…千弦…」



 その答えを聞いた那奈は抱きしめている腕に力を入れて言う。



「貴方は本当に千弦なのね…!私は貴方が物心がつく前に病気で死んじゃったけど…こんな形でまた会えるなんて…!」



 千棘も今、自分が本当の母に抱きしめられている事を自覚し、涙を流しながら抱きしめる。



「お母さん…!」



 死に別れた母と子は異世界で親子の再会を心から喜び合う。



 これが人の繋がりを司るセッテの権能だと言う事を理解するのは容易だった。



 フェイナとエル、デルもその親子の光景に込みあげる思いがあったのか静かに涙を流していた…。





 ■





「えーっとナナさん?…んーやっぱりお義母様って呼んだ方がいいのかな?」


「あらあら、お義母様だなんて…ふふふ」


「ちょ、ちょっと母さんもフェイナも何言ってんだよ…」


「お義母様、お茶のお代わりをご用意致します」


「お義母様、何かお申し付けがあれば遠慮なく仰ってくださいませ」


「ちょっとエルとデルまで何言ってんの!?」


「千弦は可愛い女の子に囲まれてるのね?誰がお嫁さんになるの?」


「ちょっと母さん…落ち着いてって…」


「でも、他にもルノアールちゃんとフィーヤちゃん…ユリスちゃんよね?あの子達も千弦に気はあるのでしょう?それにユーランちゃんとアルメラちゃんも…」


「だ、だからちょっと待ってって母さん!みんなそう言うのじゃないって!仲間なんだよ仲間!」


「ふふふ、今はそう言う事にしておきます」



 千棘と那奈の再会を確かめ合った後、皆で談笑をしていた。



「それにしても、息子がまさか娘になってるとは思わなかったわ…」


「え?一応この身体は男だよ?」


「えっ!?千弦はそういう趣味だったの!?」


「そういう趣味って…まぁこの顔も自分の顔をベースにして作ってるし…母さん似だったんじゃないかな?」


「あら、私に似たのなら本当によかったわ。それにしてもこっちでもそっくりだなんてびっくりね?」



 フェイナは那奈の言葉を聞いて二人を見比べる。



「確かにそっくり…ていうかお義母様とちーちゃんの眼、同じ模様がない?」


え?(え?)



 千棘と那奈はフェイナに言われ、お互いの眼を覗き込む。



「あら…本当だわ。という事は千弦もセッテとの繋がりを得たのね」


「え?セッテとの繋がり?」



 千弦に問われて那奈は首を縦に振り、眼に意識を集中させる。



 すると時計の様な模様と箱の様な模様が左右の眼に浮かび上がる。



「時計の模様は時の象徴、四角い箱は空間の象徴。一種の魔眼…いえ、神眼と言うべき物ね」



 千棘も目に意識を集中させて模様を浮かび上がらせ、インベントリから手鏡を取り出して覗きこむ。



「神眼…何か特殊な力があるの?母さん」



 すると那奈は首を横に振る。



「それがわからないの。セッテに聞いても面白くないから色々試してとしか言わないし…」


「セッテらしいのか…というか何でセッテはナナって名乗ったんだろ?普通にセッテと言えば…それだと面白くないから…?」



 那奈は千棘の疑問を聞き、人差し指を立てて言う。



「それならわかるわよ?セッテはイタリア語で数字の7を意味しているの。だからナナって名乗ってたのよ」


「そういう事…じゃあ、神眼についてはまた今度調べるか…」


「意外と分かるとあっけないモノね?そういえばさっきから気になってたのだけど…千弦の身体の中に何か良くないモノがいないかしら?」



 そう那奈が言うと千棘とフェイナはあっという表情をする。



「そういえばちーちゃんゴエティアの首輪使ってそのままだったよね?」


「そうそう、多分そのデバフがまだ残ってるんだよね…」


「デバフ…状態異常の事かしら?それなら私の魔法で何とかなるかしら?」


「ああ、この状態異常はどんな事しても治らないんだよ。治す方法は時間経過のみって感じなんだ。別に今は支障ないから心配しなくていいよ?お腹壊した時のぐるぐる感があるだけだから」


「そう…わかったわ」



 那奈がそう言うとフェイナが問う。



「でも一目見ただけでよくわかりましたね?お義母様」


「あら、丁寧な言葉遣いはしなくていいわよ~。なんていうか…黒いもやもやみたいなのが千弦の身体から漏れてたからそう思っただけなのよ」


「僕の身体からもやもや…」


「ちーちゃん汚そう?」


「フェイナ酷くない!?」


「ふふふ。それはそうと、なんか不思議な感覚ね?私は16歳の身体でお母さんだなんて…しかも14歳の息子がいるなんて」


「確かに!普通じゃ考えらんないよねー…」


「この世界に来てこの身体も14歳になってるのか…アエリアならもう20歳、コルですら18歳か…」


「私も20歳だしねー…」


「アエリアちゃんもコルちゃんも千弦なら…私は娘も二人いるって事になるのかしら?」


「16歳の身体で三人の子供…しかもアエリアとコルはお義母様より年上の娘…なんかすごい家族構成だよ!?ちーちゃん!」


「そう言われるとそうだよね…」


「ならまだ見た事ないコルちゃんに変わってくれる?どんな娘なのか見てみたいわ」


「ん…それなら丁度いいからポーションとか魔王討伐の準備とかしながら話そっか」



 千棘はコルをイメージして水色の狼に姿を変える。



「わあ!狼っ娘なのね!?それに赤ずきんちゃんみたいだわ!」



 那奈はコルの姿を見ると抱き着いてモフり始める。



 フェイナはコルと那奈がわちゃわちゃしているのを見ながら呟く。



「んー…エルリとルエリからの定時連絡がない…なんかあったのかな…?」

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