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再始動 -Second Life on-line- そして第二の人生が始まる  作者: 絢奈
第六章 天使の使いと巨龍の使い
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眠り姫の鍵

「やっほー!ナナさん起きたから、みんなちーちゃんの部屋に集合ね!」



 フェイナは訓練場にいるユリス、ルノアール、フィーヤ、エル、デルにナナが起きた事を伝え、アエリアが寝ている部屋に集まるように言う。



 その一言でユリス以外の人は目がキラキラと輝き、一気に距離を詰めてくる。



「わっ!?み、皆さん足が速いんですね…」



 あまりの迫力にナナは驚いて尻餅をつきそうになるが、フェイナがナナの身体をしっかりと受け止める。



「ほら、ナナさんが怖がってるからあんま詰め寄んないの。てか興奮しすぎてユリスぶん投げてるじゃん!」


「あ…すみません、つい…」



 ユリスを抱えていたルノアールは我先にと詰め寄ったが、仲間をポイ捨てしていたのだ。



 エルはここにフェイナが来たことを幸いとし、訓練の報告をする。



「フェイナ様、本日ルノアール様とフィーヤ様はデルとの訓練の際、傷をつける事に成功致しました。わたくしもユリス様に傷を付けられましたので、訓練の第一段階は終了とさせて頂きます」



 エルの報告を聞いたフェイナは嬉しそうな表情を作る。



「おー!よくやったねー?今日はぱーっとお祝いしないとねー!」



 そう言うとルノアールとフィーヤは嬉しそうな表情に変わるが、フェイナはあっと言葉にして続ける。



「それも大事なんだけど、やっとナナさんが起きたからちーちゃんが起きるか試してみよ?」


「私の力で目覚めさせる事が出来るのかわかりませんが…全力を尽くしたいと思います」


「ありがとうございます…私のせいで一年以上眠ったままなんです…」


「ルノ、まだリアさんが起きるとは決まってないからうまく行ったらその話しよ?」


「フィーヤの言う通り、今はナナさんとちーちゃんとこ行くよー。エルとデルも一応ついて来てもらっていい?」


かしこまりました(かしこまりました)


「よし、じゃあみんないこっかー」





 ■





「なぁアル?ちー助が起きたらどうする?」


「どうするって?」


「心配かけやがってってぶん殴るか?」


「…多分ぶん殴る雰囲気にならない。ユリスもルノアールもフィーヤもいるし、一番千棘に起きて欲しいと思ってるのはフェイナだよ」


「まぁ、あたい達に指示出ししたり、慣れない事を一年もやらせちまったしな…」


「それだけじゃないけど…そういえば鏡は?」


「ん、さっき聞いたらこっち来るってよ。嫁も連れてくるんだと」


「そう。にしても鏡がこっちで結婚するとはね」


「ああ、物好きもいたもんだよなぁ…」


「わりぃな色物でよ。でもおめぇらもだいぶ色物だぜ?」



 ユーランとアルメラが話しているといつの間にか後ろにいた鏡が会話に混ざり、二人は鏡の方を向くとその斜め後ろにはアルメラと大体同じぐらいの身長のエルフが一人いた。



 そのエルフは金の糸の様な長い髪、胸はかなり大きく締まる所は締まっている身体つきで鏡の好みにばっちりあった人物だった。



 そのエルフが言う。



「初めまして、わたくしはアンバーウッズ森王国王女、セイラーン・アンバーウッズですわ。今はまだ王女という立場ですがすぐに王女では無くなり、ただのセイラーンとしてお仲間に加えていただく事になると思いますわ」


「ん、よろしく。私は…」



 鏡と目が合い、鏡が頷いたのを見て言う。



「私はアルメラ」


「あたいはユーランだ、よろしくな」



 そう答えるとセイラーンは目をキラキラさせて二人の手を握る。



「鏡様のお仲間…ダフネの十英傑…!お会い出来て光栄ですわ!!」



 ユーランとアルメラは鏡を見つつ、ユーランが問う。



「なぁ?確かセイラーンは他種族を嫌ってたんじゃないのか?」


「ああ、それな?俺様の仲間に他種族がいるって言ったらすぐに考え方を切り替えたみたいでな…特に今は問題ないぞ。そういう今までの考えを捨てて、新しいものを受け入れる思考の柔軟さはすげぇぞ」



 セイラーンは褒められたと思いユーラン達の手を離して頬を染めながら鏡へ抱き着く。



 その光景を見たユーランは苦笑いしながら思う。



(これ、鏡がわりぃ奴なら傀儡女王の出来上がりじゃねぇか…)



 アルメラも同じことを思っていたのか、苦笑いしながらユーランを見ていた。



 すると部屋の扉が開かれてフェイナの姿が見える。



 その後ろにはナナ、ユリスを抱えているエルとデル、ルノアールとフィーヤも部屋に入ってきてセイラーンの自己紹介などをしていく。



 ルノアールとフィーヤはエルフの王女という事で酷く恐縮していたが、鏡への態度を見てすぐにそこまで恐れなくていいというのを感じ取っていた。



 ある程度お互いの事を知り合った所でフェイナがナナさんに紹介する。



「ナナさん、この人がナナさんの神託で言っていた白黒の眠り姫…リアって言うの」


「この方なのですね?少し状態を見させて頂きます…」



 ナナはアエリアが寝ているベッドに近づき、床に膝をついてアエリアの身体に触れる。



 頭から足、足から頭と何度も手を往復させて胸と頭に手を置いて動きを止める。



 その光景を見ている皆は人知れず表情が辛そうに歪んでいく。



 もし起こせなかったら…そんな事が脳裏をよぎる。



 するとナナの雰囲気が突然変わり、辺りの空気が重く、濃く、息苦しくなる感覚が皆を襲う。



「…リアさんは私と同じ神の力を…」



 ナナが突然口を開き、独り言を呟いていく。



「…ルノアールという少女の肉体を巻き戻す…自分で神の力を作り出したのですか…?その影響で精神の時間が止まった…でもそれなら貴女と繋がりを得たはずです…私の為…?何故そんな事を…言えない…?()()()()()()()()…?何を言っているんです…?私に未練なんて…まさか…あり得ない…いえ、この世界ならあり得る…?そんな奇跡みたいなことがあるわけが…貴女の力…?待って、ちゃんと説明をして…この方の秘密が私の未練に繋がる…?それだけじゃわからないわ…だって私は何も残せていない…この方と居ればすぐにわかる…?…わかりました…私の魔力なら出来るのですね…はい…」



 ナナがアエリアに触れている手を離すと重苦しい空気は無くなり、心配そうに見守っている皆に向き直るとフェイナが問う。



「どう?やっぱり起こせなさそう?…それにいきなり独り言言ってたけど、神と話してたの?」



 ナナはその問いを聞き、軽く頭を左右に振ってから笑顔を作る。



「いいえ、起こす事は可能です。ウェイナさんが言った通り、私が信仰している女神セッテと話をしていました。そして私は貴女達にお願いをしなくてはいけなくなってしまいました」



 フェイナは起こす事に条件が必要なのだろうと何も言わずに頭を縦に振る。



 ナナは了承してくれたと思い、お願い事を伝える。



「この方を起こした後で構いません、貴女達の秘密…全て教えてくださいませんか?」


「私達の秘密…それも神に聞いたってわけね…なら一部だけ今言うよ。私達はダフネの十英傑って呼ばれてる。今ナナさんが起こそうとしているのはアエリア。私はフェイナ、ピンクの髪の子がアルメラ、赤髪の子がユーラン、背の高いエルフが六月一日 鏡、ここにはいないけどエルリとルエリって子もいるけど、これから先はアエリアを起こして続きを聞いて」



 ナナは十英傑の名前を聞いたが特に驚くこともなく、一度頭を下げてから言う。



「十英傑の方々だったのですね…わかりました。では私は今からこの方を起こしたいと思いますので、申し訳ありませんがこの屋敷全体に魔力が漏れないように結界を張って頂いても宜しいでしょうか?」


「ん、鏡、ルノアール、フィーヤ…後エルとデルもお願い」



 フェイナが言うと皆が屋敷全体に魔力の膜を張り、結界を作っていく。



「おう、問題ねーぜ」


「ありがとうございます…今から起こしますので少し離れていてください」



 ナナはお礼を言い、もう一度アエリアの身体に触れながら自分の魔力を流し込んでいく。



 ナナがアエリアの身体に魔力を流し始めた途端、部屋の中に質の違う魔力が充満し、部屋にいる者達は苦しそうな表情を浮かべ始める。



「皆さんすみません、私の魔力は人の魔力じゃないんです…私が信仰している女神セッテの魔力と同じ質の魔力なので息苦しいかも知れませんが、もう少し耐えてください。もし、耐えれなければ部屋から出て頂ければ大丈夫ですので…」



 そしてナナはアエリアの身体に自分の魔力が行き渡った事を確認して呟く。



「セッテ……鍵を開けてちょうだい…」



 女神セッテに語り掛けた瞬間、ガチャンと重い鍵が開く様な音が部屋に響く。



 その音はかなりの大きさで、部屋にいた人物は皆同じように耳を塞ぐ。



 更に鍵が開く音は何度も何度も響き、まるでアエリアの身体に見えない鍵が無数についていて、その全てを開けていくようだった。



 余りにも長い間、鍵の音を聞いていた皆は耳が馴れ、耳から手を離して音を聞いていく。



 大きい音なのは変わらないが、中には扉の鍵を開ける音や南京錠を開けるような音、金庫を開けるような音等、様々な音が響いていた。



 そして最後に鎖が擦れるような音と鍵の開錠音が響くと部屋の中に静寂が戻ってくる。



 そして…



「ん………きょ……る……か…?」



 アエリアが言葉を発する。



 その声は掠れていて聞き取れないが、間違いなくアエリアの声だった。



 アエリアが目覚める事を心の底から待っていたフェイナ、ルノアール、フィーヤは口を押えて涙を流し、鏡、ユーラン、アルメラ、エル、デルは笑顔になる。



「ちーちゃん…本当に良かった…本当に…」



 もう我慢が出来ないフェイナはアエリアに駆け寄って抱きしめる。



 長い間、光を見ていなかったアエリアは視界が掠れてよく見えず、何もない空間を見つめているが誰かが抱き着いている事を認識して、震える手で抱き着いている者の背に手を当てて名前を呼ぶ。



「フェ…ナ…?」



 ずっと聞きたかった声、その声で呼ばれたかった名前、掠れて聞こえ辛くてもずっと待ちわびていた言葉…フェイナは声にならない声で子供の様に泣く。



「フェ…イナ…耳が…うまくきこ…ないんだ…きょ…いる…?」



 フェイナに泣きつかれながら鏡を呼ぶアエリア。



 鏡はアエリアに近づき、手を握りながら言う。



「ああ、ここにいんぜ、ちー。お前はルノをちゃんと生き返らせたから安心しろ。おいルノ、フィーヤ、顔見せてやれ」


「チヅル様…!」


「チヅルさん!」



 鏡は手を離し、抱き着いているフェイナを引きはがしてルノアールとフィーヤに握る様手を差し出す。



 ルノアールとフィーヤはアエリアの手を握りながら、何もない場所を見つめているアエリアの目の前に顔を持っていき話しかける。



「私…チヅル様のおかげで今こうして生きています…!身体も普通の身体にちゃんと戻ってます…!チヅル様…!」


「私もチヅルさんのおかげで生きてます!本当によかった…ぢづるざん…!!」


「ルノ…フィー…ちゃん…よかった…」



 その声を聞いたルノアールとフィーヤはアエリアに抱き着き、フェイナと同じように泣き続ける。



 二人の頭があるであろう場所に、震える手を動かして撫でる。



 見えていないのか頭ではなく背中を撫でられていた二人だが、それだけで二人の泣き声は大きくなる。



 ユーランとアルメラもアエリアの近くに行き話しかける。



「寝坊だぜちー助。お前、一体…何時まで…寝てやがんだよ…!」


「ほんと…どれだけ私達に…心配かければすむのよ…!」



 二人は声を震わせながらアエリアに言う。



「ユーラン…アル…メラ、ごめ…ん、心配かけ…たね」



 少し慣れてきたのかはっきりと言葉を伝えて、声の方に両手を伸ばすアエリア。



 その手を片方ずつ二人で取り、静かに涙を流していく。



 鏡もそんな二人を見て泣かないと決めていたのにも関わらず、もらい泣きしてセイラーンに涙を拭かれていた。



 エルとデルは終始笑顔でその光景を見守っていたが、何時までたっても起きないユリスにムッとして頬を叩いて起こし続ける。



「ユリス様、アエリア様がお目覚めになられました。何時まで寝ているのですか?」


「エル、それじゃ起きません。こうやるのです」



 デルが指を折り曲げてユリスの額に狙いを定め、全力で弾く。



 明らかに額を指で弾いた様には思えない音がしたが、そのおかげかユリスが目を覚ます。



「うっ!?!?い、いったあああああい!!ちょっとデル!!何するのよ!!」


「こんな時まで寝ているユリス様が悪いのです。あちらをご覧くださいませ」



 デルはそう言い、ベッドの方に手を差す。



 ユリスは額を押さえながら手が向けられている方に視線を動かすとアエリアの姿が見える。



 一瞬何が起きているか理解が出来なかったユリスだが、徐々に状況が理解出来て身体を震わせた。



「エル」


「危ないですね」



 エルとデルはユリスの様子を見て、アエリアに抱き着いているルノアールとフィーヤをエルが抱え、手を繋いでいるユーランとアルメラをデルが背に庇う。



 次の瞬間、ユリスは寝かされていたソファーからアエリアの胸に一直線に跳ねて胸に飛び込む。



「リアああああああ!!!よかった!!起きたんだね!!本当によかった、リアあああ!!!」



 アエリアの名前を連呼しながら胸の中で嬉しさを表現するように身体を縦に揺らすユリス。



「ちょ…ユうぺっ…ユリむぐっ…おちつげっ…おち…」



 ユリスの頭が胸にあるせいでピンと立っているうさ耳がアエリアの顔をずっと突いており、うまくしゃべる事が出来ないアエリア。



 泣いている者もいれば、笑っている者もいる優しい空間でただ一人だけ、驚きの表情で固まっている人がいた。



「まさか…セッテ、そういう事…なの…?」



 ナナだけが別の意味で口を手で塞いでいた…。

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