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再始動 -Second Life on-line- そして第二の人生が始まる  作者: 絢奈
第六章 天使の使いと巨龍の使い
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緑色の瞳

「ったく…もうぜってーあたいはエルドアースにはいかねぇ…」


「もーランラン、それ言い始めてから三日だよー?もう行けって言わないから安心してー」


「まぁ、気がないのに言い寄られてもイライラするのはわかる。けど切り替えも大事」


「わかってらぁ。んで?鏡の方はどうなんだよ?嫁出来たんだろ?」


「らしいよー?エルフの王女様だって。一応こっちの事情はちゃんと把握してくれてるらしいから変に引き留められたりはしないらしいし、いいんじゃないかな?」


「まぁあたいも恋愛すんなとは言わねーし、作戦にも支障がないならいい」


「そうね。聖女がここにきて約5日目、そろそろ起きるはず」



 ユーラン、フェイナ、アルメラはアエリアと聖女が寝ている部屋で聖女が起きるのを待っていた。



 ユーランはエルドアースから帰ってきてからずっとエルドアースの愚痴を言っており、心底嫌な思いをしたのだとフェイナとアルメラは感じていた。



 そして鏡はセイラーンとの婚約をしたらしく、フェイナと通信した後にセイマス王へ報告しに行ったら大歓迎してくれたとの事。



 そこで他種族の仲間がいると伝えたらセイマスは排他的な国は元々望んでおらず、昔からいる重鎮達がただ拒否しているだけらしいので、これを機に改革を行えると忙しそうにしているらしい。



 このままいけば鏡は王家に婿入りという流れになるが、王女セイラーンは王族という立場を捨ててただの一人のエルフとなって鏡と居たいと進言したという。



 ただ、すぐには決められないとの事でその調整も合わせて行っているらしい。



 ユーランが持ち帰ってきてくれた情報で魔王が聖女を探し始めた事を事前に察知した為、バックアップ組の両ギルドのギルドマスターフリエス、アリエスには冒険者達に秘密を漏らさない様お願いし、マクナス公爵家のノエルとシエルにはファーレン聖教国から使者が来た際、王家と連携して聖女はこの国にいないという情報を流してくれと依頼していた。



 もしかしたらユリス達の姿を見られている可能性も考慮してユリス達はこの街にはいないという情報も流してもらっている。



「にしてもよぉ…ほんとちー助に似てんな?」


「でも私達の身体ってキャラクリじゃん?似てても因果関係無くない?」


「…でも千棘のリアルの方の顔とも似てる。というより、リアルの顔を元にキャラクリしたって言ってた」


「んー…謎だね?」


「謎だな」


「謎」



 そんな話をずっとして日が落ち始めた時、ベッドから衣擦れの様な音が聞こえて一斉に目線をベッドに動かす三人。



 すると茶色の長い髪を揺らして起き上がる聖女が目に映る。



「…ここは…聖域じゃ…ない?」



 少し掠れた声で聖女が声を出す。



「お、起きたー?ここは私達の屋敷なんだけど、えーっと…誰だっけ…?」


「あれだ、フィールド・ブロッサムだろ?」


「サクラバ・シンジでいいと思う」


「まぁそのサクラバ・シンジ、フィールド・ブロッサムから神託を聞いて、魔王を倒す為に貴女をここに連れてきたの。何でも質問してちょうだい」



 そう言うと聖女は千棘と同じ緑色の瞳をこちらに向けて問うてくる。



「その…フィールドは何処にいますか?」


「フィールドは地下の牢屋にいるよ」


「ろ、牢屋…?何故ですか!?」


「フィールドは魔王のスパイだったの。貴女が聖域に入った後の監視をしたり、情報を流したりしていたらしいわ。ちなみに本人がそう言ってたから嘘じゃないよ」


「そ、そんな…」



 聖女はサクラバ・シンジが魔王のスパイという事にショックを隠せなかったのか俯いてしまう。



「まぁ、スパイっていきなり言われてもショックだよね…本人に確認したければ案内するけどどうする?」


「…連れてってもらえますか…?」


「りょーかい、アルとランはどうする?」


「あたいはここで待ってる」


「私も待っとく」


「了解、んじゃ聖女…ナナさんいこっか」


「はい…」



 まだ俯いているナナの手を取り、フェイナはサクラバ・シンジがいる牢屋へと向かって行く。



「そういえばナナさんはいつから神の声が聞こえるようになったの?」


「え…っと?」


「ああ、ごめんね、私ウェイナって言うの」


「ウェイナさんですね…神の声は生まれてから…いえ、生まれる前から聞こえます」


「う、生まれる前?…んー、転生の時に聞いたとか?」


「っ!?て、転生をご存じ…なのですか?」


「え?うーん…まぁそうかな?フィールドも異世界からの転移者でしょ?」


「え!?フィールドもそうなのですか…?」


「あ、そういう事か…ナナさんは神格魔法を使って記憶が混ざったり消えたりしちゃうんだっけ…」


「そ、そうなのですか…?」


「お、おおう…なんか天然娘を相手してるみたいだ…っと、ここがフィールドの居る場所だよ」



 サクラバ・シンジがいる牢屋…牢屋と言っても鉄格子の牢屋ではなく、普通の部屋なのだが牢屋として使っている。



「ちなみにこの中では魔法も魔道具も使えないから気を付けてね?まぁないとは思うけど、万が一もあるから私から離れないでね?」


「わ、わかりました…」



 フェイナはノックをしてサクラバ・シンジが中にいるか確かめる。



「どうぞ」


「やっほーシンジ君。ナナさんが会いたいって言うから連れてきたよ」


「フィールド…」


「な、ナナ様!!」



 部屋奥のベッドに腰かけていたサクラバ・シンジがナナの姿を見た途端、素早く近づいてきのでフェイナは遮るように手を伸ばす。



 すると自分の立場を思い出したサクラバ・シンジは部屋の中程で立ち止まり、その場で膝をつく。



「ナナ様…申し訳ございません…」


「いえ…フィールドは魔王のスパイだったのですか…?」



 サクラバ・シンジはナナからスパイについて問われると渋い顔をする。



「…やはりお忘れになられていたのですね…私がナナ様に蘇生され、ナナ様の護衛をしながら旅をした時、魔王がナナ様の情報を掴んで接触をしてきました。その時に私はナナ様の監視役をする代わりに、ナナ様の命を取らないという約束を取り付けました。そして一緒にファーレン聖教国へ行ったのです。ナナ様は信仰を集めて神の力を増強する為に信者を集め、私はそのナナ様をお守りしておりました…」


「…そうですか…私はそのように…やっぱり記憶を失ってしまうのですね…」


「はい、なので極力力を使わない様、調整はさせて頂きましたが…どうしても避けられない事に関しては…」


「わかりました…この方、ウェイナ様が魔王を倒す為の騎士様なのですね?」


「はい、白兎、姫を憂う少女二人、その者に連れられて黒の騎士、薔薇の騎士とも出会いました」


「…フィールド、ご苦労様です。後は…私が頑張る番です」


「はい…私はこの部屋から出る事が出来ません。ですのでどうかお気を付けて」


「…ウェイナ様、ありがとうございます。早速ですが白黒の眠り姫に会わせて頂いても宜しいですか?」


「りょーかい」



 まだ膝をついているサクラバ・シンジに背を向けてフェイナとナナはアエリアの元へ向かって行く。



 フェイナはふと思い出した事があった為ナナに問う。



「ちょっと向かう前に寄りたいところあるんだけどいい?」


「…寄りたいとこですか?私は構いませんよ?」


「ん、ありがとー。このまま地下にいこー」





 ■





「んぐ…!!!」


「ユリス様?もっと踏ん張らないとまた吹き飛ばされてしまいますよ?」


「わか…ってるよ!!!」



 黒い天使はユリスと鍔迫り合いしながら思う。



(開始から2分…本当はもう少し耐えて欲しいのですが…)



 そう思いながら左右から挟み込むよう真っ黒の刀を短剣で受け止めているユリスの腹に蹴りを入れてくの字に吹き飛ばす。



「っぐああ!」



 まだ吹き飛んで空中にいるユリスの背後に黒い天使は回り込み、背中から突き刺そうと真っ黒の刀を後ろに引き絞った時、ユリスは踵で顎を狙いすました様な蹴りを下から放つ。



「ここっ!!」


「!」



 黒い天使は無理な体勢からの追撃に目を見開き、バックステップをして回避をすると蹴りの勢いを利用して背中を床に向け、黒い天使が吹き飛ばした勢いを使って吹っ飛んでくる。



 両手の短剣は正確に黒い天使の喉元に吸い込まれていくが、邪魔をするように真っ黒な刀が現れ、受け止められてしまう。



(咄嗟の機転…少し面食いましたね)



 そのまま空中で腹筋を使って身体を起こし、黒い天使の背後に着地しようと腹筋に力を入れた瞬間、黒い天使の振り上げる様な蹴りが背中の真ん中に叩きこまれ、天井に跳ね飛ばされる。



「ぐえぇ!!」



 潰れたカエルの様な声を出しながら蹴られた勢いが天井で殺され、床目がけてユリスが落ちてくるのに合わせて黒い天使は回し蹴りを叩きこむ。



(…笑み?)



 叩きこむ瞬間、ユリスがニヤっと笑った気がしたが黒い天使は構わずに足を振り抜き吹き飛ばす。



「ぐぅぅ!!……ま、まだや…」



 壁に叩きつけられた後、身体の中の空気が全部吐き出された様だが…それでもすぐに立ち上がり、攻撃を仕掛けようと一歩前に踏み出した後、身体から力が抜けて気絶してしまう。



(蹴った後に顎を蹴り上げようとされましたね…やっと攻撃らしい攻撃をされましたね)



 そう思いながらユリスに近づき血だらけのユリスにポーションをかけて傷を癒すと、気を失っているユリスを荷物の様に小脇に抱えて白い悪魔と二人の少女の元に運んでいく。



「デル、気を失ってしまいました。まだまだですね」


「いいえ、エル。合格と言ってもいいと思いますよ?」


「どういう事でしょうか?」


「自分の太ももを見てください」



 デルにそう言われて足で唯一肌が出ている太ももに視線を向けると、真っ白な肌に一筋の赤い線が刻まれていた。



 その線から微量だが出血とも思える程の血が流れており、エルは自分が攻撃を食らった事を認識する。



「いつ……天井から落ちてきた時ですか…」


「ええ、ユリス様はしてやったという顔をされてましたからね」


「なるほど…であれば、ユリス様、ルノアール様、フィーヤ様は今回の訓練をやり遂げたとフェイナ様にご報告させて頂きます。かなりつらい訓練でしたが、本当にお疲れ様でした」



 そうエルが言うとルノアールとフィーヤは笑顔で抱き合い始めた。



「やったよルノ!!これで何とか先に進めたよ!!」


「本当によかった…やっと先に進めるんだ…」



 ルノアールはそう言うと訓練場の一角に出来ている山を見る。



 釣られてフィーヤも同じ山を見るように視線を動かす。



 その山は約5日の間で壊れた大量の短剣と杖たちの残骸だった。



 杖だけでも一人60本ほど破壊、短剣に至っては120本分の持ち手部分だけが山積みになっていた。



 努力の成果とも思える武器の残骸を見つつルノアールが言う。



「せっかくクリア出来たのにユリスだけ気絶してるね…」


「ほんと締まらないって言うか…」


「ほんとにね?でも今回の訓練で一番驚いたのはフィーヤが一番最初にクリアした事だよ!全員クリアしたらどうやったか教えてくれるって言ってたよね?」


「ああ、あれね?あれは私のオリジナルの魔法なんだけど…簡単に言うと、髪の毛と同じぐらいの細さの炎を張り巡らせて移動出来る場所を狭めてどんどん追い込んでいったの」



 そう言うと目にギリギリ見えるかどうかわからない赤、黄色、白、青色の線がフィーヤの人差し指から小指の四本を繋ぐように左右の指から伸びているのが見えた。



「うわ…ホントだ。見辛いね…これ色違うのってミラー先生が言ってた炎の温度が違うってやつ?」


「そうそう、炎糸(えんし)って私は呼ぶことにしてるんだけど、ただ魔力を込めて熱量をあげるだけじゃダメだったから、ミラー先生が言ってた『何故火は燃えるのか』で教えてもらった通りにやったら熱量がコントロール出来たの」


「ええ、フィーヤ様の発想はとてもよかったです。ですが、魔力の流れを見てしまえば何処に炎糸があるかわかってしまうので、それを隠す為の技術が必要になってきます。ですので、次は阻害系の魔法を練習して頂き、炎糸と混ぜる事で完成する魔法だと思われます」


「デルさんの言う通り、使ったけどバレバレで…苦し紛れにめっちゃくちゃ出したら掠って火傷してくれたからクリア出来たけど…そこが課題だから頑張らないとなぁ。…私の初めてのオリジナル魔法だから完璧にしたいしね…!」


「ええ、フィーヤ様なら出来ます。気を緩めない様にお気をつけ下さい」


「フィーヤの炎糸はかなり使い勝手よさそう…消費魔力も少なそうだし…どうしても私は力押しになっちゃう…」


「そうですね。ルノアール様は相手の身体の水分を内側から遠距離で直接凍結させるという力技でしたね。普通であれば氷魔法を相手に当て、そこから身体の外側を凍結させるものですが…その工程を排除したのは素晴らしい発想です。今のわたくしはこの装備のおかげでかなり魔力の抵抗力が強まっているので指先しか凍りませんでしたが、普通の方なら間違いなく通用する技かと思われます。なのでルノアール様は魔力抵抗力が高い相手でも同じ事が出来るよう、魔力の絶対量を底上げ、相手の魔力抵抗の隙間を縫うような綿密な魔力操作を極めていけばいいかと思われます」


「はい…デルさんの指先を凍らせただけで魔力切れ…そのまま意識失っちゃいましたからね…」


「ええ、魔力の抵抗を力技で上回った結果の魔力切れ。それを避ける為に隙間を通すように発動すれば、ぐっと消費魔力は抑えられるかと思われます」


「わかりました!」


「本当はユリス様にも改善点をお伝えしたいのですが…」


「エル、今は気持ちよさそうに寝ているので起きた後でいいかと」


「そうですね…では一度上に戻り、食事と湯あみの準備をさせて頂きますのでユリス様をお願いしてもよろしいでしょうか?」


「はい、わかりました」



 エルから荷物の様にユリスを受け取ったルノアールはそのままエルとデルが訓練場から出ていくのを見守っていたが、エルとデルが扉を開ける前に勝手に扉が開き、そこから二人の人物が訓練場に入ってきた。



「やっほー!ナナさん起きたから、みんなちーちゃんの部屋に集合ね!」

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