それぞれの役割
エルラシア王国 王都リライア 屋敷のとある一室…
「さて…三名程顔がボロボロだけど…一日経った後、みんな頭冷えた?」
「あたいは元から冷静だ」
「なーにいってんのランラン、ハンマー振り回してきょーちゃんぶっ飛ばしてやるって息巻いてたじゃん?」
「それぐらいの気概があったってこった」
「アルメラもきょーちゃん殴ってすっきりした?」
「殴ってない」
「んじゃぁ、昨日の話で納得したのね?」
「うん」
「よし、エルリとルエリも落ち着いた?」
「大丈夫だよ」
「よし、きょーちゃんは元から大丈夫だよね?」
「おう…」
「んじゃ…そこのユリス、ルノアール、フィーヤ。昨日の喧嘩でスッキリした?これからはちーちゃんが起きるまでみんなで足並み揃えないといけないの。余計な遺恨を残してたらこれからの行動に支障が出る。もしまだ残ってるなら訓練場で殺し合いでも何でもいいから解消してきな。それでも解消出来ないなら今後、私達は貴女達の事を仲間とは認めない。イヤリングも返してもらうし、これまでの事も全部忘れてもらう、どう?」
「私は大丈夫、ずっとうじうじしているわけにはいかないし、リアの為にもみんなの為にも私も動く」
「はい、私もチヅル様の…仲間の為に」
「私も大丈夫ですフェイナさん」
「…三人とも顔が酷くてよくわかんないけどスッキリしたみたいね…んじゃポーションあげるから、ちゃっちゃと治しちゃって」
フェイナはインベントリから生命力ポーションを取り出し、三人へ手渡す。
ユリスはいつもピンと立っている耳が片方折れて、顔も青あざだらけ、片方の目は紫に腫れあがって目が開いてない状況。
ルノアールも顔が青くパンパンに腫れあがっており、刃物で切ったと思わせる爪のひっかき傷がかなりひどい状況。
フィーヤはやり過ぎないように見張っていると言っていたが…どうやら参戦したらしく、ルノアールと同じ状況になっていた。
喧嘩が終わった後、アエリアの傍にいたフェイナの所に三人揃って来た時は夜の部屋も相まってホラー映画も顔負けな状態で現れ、可愛らしい悲鳴をあげていたフェイナ。
そして三人ともポーションを使い、元の可愛い顔に戻ったのを確認して宣言する。
「さて、これからちーちゃんが起きるまでの間、私がみんなの指揮を執るけど文句がある人はいる?」
全員の顔を見るが特に反対の色はないと見てフェイナは続ける。
「じゃあ、代理で私が引き継ぐね。まずはちーちゃんがやろうとしたルノアール…勇者ルノアールを正式に勇者っていうしがらみから解放する。次に魔王復活の阻止…これは天然の勇者をとっ捕まえてちーちゃんが勇者になっちゃったから仕方ないけど私達でやるよ。今目立っているのは帝国だけど、きっと色んな国で同じような事が起きていると思う…だから本当に申し訳ないけど、この中で転移魔法が使えるきょーちゃんに各国に行ってもらいたい。それと同時にノエル…マクナス公爵家と協力して転移の魔道具の製作をお願い。ピュリピュリの捜索は魔王復活の阻止と合わせて行うよ。んで、一番優先度の低いのは…ちーちゃんを目覚めさせる方法の模索…」
最後の目標を伝える時のフェイナの顔は辛さに歪んでいた。
元々の仲間はみんな仕方ないといった表情をしていたが…新しく仲間になったユリス、ルノアール、フィーヤは声をあげる。
「な、なんで!?リアを目覚めさせるのが一番優先度低いの!?」
「そ、そうですよフェイナ様!何故チヅル様の優先度が低いんですか!?」
「チヅル様が目覚めたほうがきっと効率が良くなると思います!優先度は一番高いと思います!!」
三人の声を聞いてフェイナは俯きながら伝える。
「起きるのか起きないのかわからない不確定なモノを優先的にするほど…私達には余裕がないの。魔族程度なら私、ユリス、ルノアール、フィーヤ以外なら一人で簡単に倒せる…けど、魔王もそこまで弱いとは限らない。なら、復活させない事に越した事は無い…それにもしかしたら勝手に起きてくるかもしれないし。後、何でもかんでもちーちゃんに頼ってるようじゃ、私は貴女達に何も任せられないから…こんな時こそ、私達で何とかしなくちゃいけない…わからないなら、この話し合いから外れてもらっていいよ」
そう告げると三人は口を閉ざして下を向くが、この部屋からは出ていかなかった。
「…よし、この場に居なかった人には解散した後、私から全部伝えるから問題ないよ。それで、今日はエルラシア国王に謁見…そんな堅苦しいのじゃないけど、ノエルに無理言って整えてもらったからここにいるみんなで話に行くよ」
ひとまずの目標を決めたフェイナは皆に何か質問があるかと問う。
「フェイナ、あたいからの質問だ。鏡についてなんだが、今は教師やってんだろ?各国を回るのは流石にきついんじゃねーか?」
「それに関しては事前に鏡から提案されたの。ルノアールとフィーヤも同じく、学校のある時はしっかりと授業を受けて知識や戦う力を身につけてもらう。今回の出来事の発端はこの三人、だから私達の中で比重が重いのは仕方ないよ」
「そうか、鏡が納得しているならあたいからは何もねぇ、鏡…そこの不満そうにしてる二人にもちゃんと言っとけよ?」
「おう」
ルノアールとフィーヤは学校を辞めて、魔王復活の阻止を手伝うつもりでいたので不満そうな表情をしていた。
「一応全体の目標はこんな感じ。次は個人の目標を言いたいんだけど、転移の魔道具がないと動き辛いんだよね…」
「その点問題ありません」
ここにいる誰でもない女性の声がドアの方から聞こえ、全員反射的にドアを見る。
すると綺麗な金髪をリボン一つに結び、青いドレスで着飾ったノエルが入室してきた。
「あれ?ノエル、もう国王との話し合いの時間だっけ?後、問題ないってどういう事?」
「話し合いはもう少し後です。実はフェルミットの一件で回収してもらっていた転移の魔道具の解析が終わりまして、作れるようになりました」
「ま、マジで!?」
「ええ、だからその魔道具にキョウさんの転移魔法を籠めれば特に問題ありません。これはまだ国王にも報告していない極秘中の極秘です」
「で、でも…かなり時間かかるって言ってなかった…?」
「量産体制を取るのに時間がかかるだけで、ここにいる人達に渡す分ならすぐにでも」
「た、助かる!!さっき鏡に言った事だけど、魔道具があるなら鏡は各国を回らなくてよし、ノエルが人数分の転移魔道具用意出来るらしいから追加で個人の目標言っていくよ!」
ルノアールとフィーヤはいきなり貴族の中で一番偉い公爵様!?と驚いていたが、そんな二人を置いて皆頷くのを確認したフェイナは伝える。
「まずランラン、ドワーフの国、エルドアース鉱王国に行って魔王関連とピュリピュリの情報収集ね。魔王とピュリピュリの情報はこの後のみんなも同じね」
「あたいに任せときな」
「次、アルメラ…は方向音痴だから私と一緒に獣人の国…ビルスト獣王国に行くよ!」
「…わかった」
「鏡は学校で教師を続けながら、エルフの国…アンバーウッズ森王国に行ってもらうよ?」
「おう」
「エルリとルエリは別行動、エルリはアトラティア海底王国に。ルエリはドルファニス地下王国に。おっけー?」
「おっけー!」
「ユリスは一人で山の国…セレンティス王国に行ってきて」
「…了解」
「残りの国…アクエリアとシルトは大丈夫だし、カルフィードは近いから片手間で、雲の上の国は何処にあるかわからないから除くけど…ファーレン聖教国、アズマ国か…流石にルノアールとフィーヤを一人で行かせることは出来ない。任せるにはまだ強さが足りないからこの屋敷の地下に訓練場があるから、そこで訓練して強くなって。ちーちゃんが訓練用の装備だったり、ポーションとかを全部作って倉庫に入れてあるからそれを好きに使ってね」
「はい」
「後のバックアップ組は後で動きを伝えるからお願いね」
「任せてください」
「よし、じゃあみんな行動するよー!!!」
クラン【ダフネ】のメンバーは、リーダーであるアエリアを除いて各々の仕事に取り掛かっていく。
そして1年後…まだアエリアは目覚めていなかった…。
この話で第五章終了です。
鏡とルノアール、フィーヤの閑話を投稿した後に六章を開始したいと思います。
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