美女のバハムート、双子のいたずら
「ここが結界を張るクリスタルが設置されている場所だ」
先程足を運んだ謁見の間は普通の謁見の間になっており、あの空間は結界までたどり着けないよう、異空間を作り出す防衛機能の一つという事を話された後、玉座をずらし、その下に隠れている地下への階段を精霊女王が幾重にも張られた結界を解除しながら下り、クリスタルのある場所まで案内してくれる。
一番下まで下りると木の根が幾重にも重なる壁があり、精霊女王が精霊光を発すると道を開けるように木の根が動き、クリスタルまでの道を開けてくれるのだがその奥にはどす黒くなっているクリスタルがあり、本来であれば虹色の美しいクリスタルの姿をしていると言われた。
魔族アルマロスを退けるのにかなり無茶な使い方をしたらしく、ずっと不調のまま使い続けて碌に防衛が出来ない為、クラーケンにここまでくる船を退けてもらっていたとの事。
だからテルカが最近見かけないと言っていたのも納得しながらクリスタルへ近づいてく。
「かなり大きいですねぇ…精霊女王、このクリスタルを作った時に色んな精霊や幻獣、聖獣の力を借りて作ったとフェンリルから聞いたのですが間違いはありませんか?」
「ああ、間違いない。ちなみにこの国の下にいる亀も聖獣ファスティトカロンといい、その背中に住まわせてもらう代わりに魔力を提供しているのだ」
「聖獣ファスティトカロン…今まで聞いた事ありませんねぇ…もし作ったのが私が知っている者達なら楽なのですがぁ…ちなみにこのクリスタルを作った時に力を貸してくれた者のお名前はわかりますかぁ?」
「ああ、この資料に載っているから是非見てくれ」
「助かりますぅ」
精霊女王から見せてもらった資料には今までどの精霊、幻獣、聖獣に助けられたか等が詳しく記載されており、その中で存在を隠し、外敵を寄せ付けないようにするクリスタルの項目を見ていく。
「んー…なるほどぉ…ちょっと私も関わった事ないのもいますねぇ…私が関わった事ある子達で何とかなればいいのですがぁ…まずはノーム、来てください…えいっ!」
可愛い掛け声で召喚された体長10㎝程のノームはクリスタルの下でぴょんぴょん跳ねており、その足元に手を差し込み、顔の近くまで持ち上げる。
『お母様!お久しぶりです!』
「んーやっぱりみんなお母様って呼ぶんですねぇ…ええ、ノームお久しぶりですぅ」
『どうしたんですか?もしかして後ろのクリスタルを直すのですか?』
「ええ、お願いしたいのだけどぉ…ノームだけじゃ難しいですよね~?」
『んー…見た感じ、無理に出力を上げてたから魔力を貯めている場所に穴が開いて魔力が漏れてるのと、透明化の魔法陣と忌避の魔法陣が消えかかってるから…魔力の穴は私でも防げる!』
「なるほどぉ…んー…ならピクシーとぉ…バンシーですかねぇ…ピクシー、バンシー来てください、えいっ!」
するとノームより10cmほど大きい白と黒の妖精が現れ、コルの頭の上でぐるぐると追いかけっこを始めた。
『こらバンシー!今日という今日はとっちめてやるんだから!』
『はっは!お前みたいなちびっ子には一生おいつけないぞー!』
「ほらほらピクシー、バンシー…仲良くしてくださいねぇ?」
『お母様!』
「ふふふ、喧嘩はダメですよ?実は二人にお願いしたい事があるんですぅ。あのクリスタルの中にある魔法陣を直せますかぁ?」
『うーん…これ透明化の魔法陣?これなら私直せるよ!』
『忌避の魔法陣…これ誰も近づきたくないって思わせればいいの?それならここに来たら死んじゃうって思わせるだけだから大丈夫だよ!』
「ふふふ、じゃぁそれでお願いしますねぇ?ノームも魔力貯める為に穴を塞いでもらっていいですかぁ?」
『はーい!』
「ふふふ。…さてぇ、精霊女王?これで結界の方は大丈夫ですよぉ」
「ま、まさかこんなに早く…コル様…助けて頂いてありがとうございます…」
精霊女王は深く頭を下げてお礼を伝えようとするが肩を抱いて頭を下げさせないようにする。
「それはちゃんと全部終わってからですよぉ。まだ直すのに時間がかかると思うので防衛力の方に移りましょ~」
「う、うむ…そうだな…でも防衛力と言っても一朝一夕で我らが強くなるものなのか…?」
「まず無理ですねぇ…なので精霊女王とカルラにはこれをお渡ししますねぇ」
インベントリから通信が出来るイヤリングを4つ、白銀の指輪を二つ取り出す。
「まずこのイヤリングは遠くでも会話できる魔道具で私が作りましたぁ。なのでこれはエルリとルエリ、精霊女王とカルラにお渡ししますぅ。後はこの白銀の指輪は魔力を込めるとフェンリルを呼び出す事が出来ますぅ」
「な!?こんな指輪でフェンリル様を呼べてしまうのか!?」
「お母様…これはすごいですね…」
「ねぇねぇエルリ似合うー?」
「ルエリよく似合ってる!私はどう?」
「うん!似合ってる!」
「ふふふ、みんな喜んでくれたみたいですねぇ。フェンリルの強さは身を以て知っていると思いますのでお渡ししておきますねぇ?でも、これは守る為の力で攻める為の力じゃないですからねぇ?」
「ああ…ちゃんとわかっているつもりだ」
「私もしっかり肝に銘じておきます…」
「ふふふ。…後、お二人にちゃんと言っておきますね?過去の事を水に流せとは言いません…だけど未来永劫ずっと手を取り合わないというのはきっと精霊族が辛くなってしまいます。ゆっくりでいいのです…逆に我らに昔何したか覚えているのか?と言って少し有利に交渉していくぐらいが丁度いいです。…でもやり過ぎたらダメですからね?」
「ああ…流石に今すぐにというのは国民も賛同しない…だからまずはコル様やその仲間達をこの国に招いて、他種族との交流も悪くないと…そう伝えるつもりだ」
「ええ、それぐらいならいつでもお力を貸しますぅ。エルリ、ルエリもそれでいいですかぁ?」
「もちろん!」
「本当にありがとう…後、私とカルラ以外の記憶も消して重鎮達にも貴方達が十英傑だというのもしっかり隠させてもらうから安心して欲しい」
「そこまでしなくてもいいんですけどねぇ…そこはお任せしますぅ」
『お母様!修理終わったよ!』
『私も透明化の魔法陣描き直した!』
『俺も終わったよ~前のより強力にしたから魔獣も寄り付かないぜ!』
「三人ともありがとぉ、これ、私が作ったお菓子だから食べてくださいねぇ?」
コルのお手製お菓子を三人に渡して送還し、精霊女王に最初の一歩を踏んでもらう。
「さぁ、精霊女王、賢王への一歩目…あのクリスタルに貴女の魔力を注いで民を守り、未来へ歩き出してください」
「ああ…!本当にありがとう…!カルラ、一緒にやるぞ!」
「はい!お母様!」
しっかりお互いの顔を見合わせ、笑顔でクリスタルに向かっていく背中を見つつ、賢王への一歩目をコルとエルリとルエリは見届ける。
真っ黒だったクリスタルは徐々に色を取り戻していき、虹色の綺麗なクリスタルに色を変えていく。
その光景を見た精霊の親子は顔を見合わせて嬉しさに涙を流して抱き合っていた…。
■
今、エルリとルエリはこの国でお世話になった人達へこの国を離れるけど遊びに来ると伝えまわっていた。
そんな二人の居室に精霊の国でやる事を終えたコルは二人で寛いでいた。
「ふふふ、小さいバハムートは可愛いですね~?」
『母上…久しぶりに呼び出してくれたのにそれはあんまりではないか…?』
「え~?でも戦闘の時だけしか呼び出さない方があんまりじゃないですかぁ?それにこうやってお話し出来るようになりましたしぃ」
『まぁ…確かにそうだが…我は一応、神龍と呼ばれておるからあまり威厳の無い姿は…』
「そう固い事言わないでください~。バハムートは人型に変わったり出来るんですかぁ?」
『ああ、変われるとも母上』
「お~是非見てみたいですぅ!」
『ふむ…仕方あるまいか…』
渋々と言った雰囲気でコルの膝から小さい羽を羽ばたかせて距離を取るが、尻尾が左右に振れているのを見てまんざらでもなさそうと思いながら人型になるのを見守る。
すると人型になったバハムートは、黒く長い髪に金色の瞳、頭には竜を思わせる立派な角が二本生えており、背中には立派な黒い竜の翼と尻尾があった。
だが…女性の身体で真っ黒なドレスを着ていた。
「ふう、これでいいか母上?」
「えええ!?バハムートって女の子だったんですかぁ!?」
「む?我に性別は無いぞ。男よりこっちの方が人間達は好きそうだからそうしたまでだ」
「むむむ…アエリアよりかっこよく見えますねぇ…」
「ああ、母上をイメージしたからな。同一なのだろう?」
「アエリアも母上なんですねぇ…まぁ確かにそうですねぇ」
「まぁいくらでも好きに呼んでくれ、母上の頼みなら何でも引き受けよう…ではな母上」
「ふふふ、ありがとねぇ」
バハムートとの会話が終わるや否や、バハムートから召喚を解除し元居た所へ戻ってしまう。
しばらく手持ち無沙汰になりながら二人の帰りを待っていると一人帰ってきた。
「ちーちゃんただいまー!」
「おかえりなさい~。一人は珍しいですねぇ?」
「そう?僕達もたまには一人になるよ?」
「ふふ、そう言う事ですかぁ…ルエリはその扉で待っているのですか~?」
「え!?ちーちゃん何言ってるの!?僕がルエリだよ!?」
「あなたはエルリでしょう?左右のツインテールが少し違いますよぉ」
「え!?うそ!?そんな事ないよ!?ルエリと確かめ…あー!もう!ここなら頭の上にプレイヤーネームでないからバレないと思ったのにー!」
「ちーちゃんすごい!なんでわかったのー??本当にツインテールが少し違った?」
「誰がどう見ても同じですよぉ。強いて言えば感ですねぇ…いつも見ていた二人を間違うはずありませんよぉ。それより皆に挨拶は済んだのですかぁ?」
「うん!してきたよ!」
「ふふふ、では王都のお屋敷に帰りますかぁ…ちゃんと二人の部屋もあるので安心してくださいねぇ」
双子のいたずらを見破り、ちょっと誇らしげな顔をしながらコルは最後に精霊女王とカルラに挨拶をして、アエリアの転移魔法で王都の屋敷まで帰ってきた。
エルリとルエリは興奮気味で自分達の部屋を決めて早速模様替えをしており、その間にフェイナやアルメラ、ユーラン、ユリス、ノエルにシエル、フリエスにアリエス、ライゼンを屋敷に転移させて歓迎会を盛大に開いた。
その日の朝は皆、はしゃぎすぎて二日酔いになり、頭を抱えながらみんなと朝の挨拶を交わしていたのだった…。
■
「ちーの野郎、だいぶ派手に動いてんなー…この熾天使ってアエリアだろ絶対…まぁそろそろ手紙の一つでも出すか…久しぶりにみんなの顔もみてぇしなぁ~」
とある一室で口調の荒いエルフ族の男性は仲間の顔を思い浮かべながら羽ペンを取り、手紙を書いていく。
「うっし、最後は『ミラー様』っとな」
これで第四章終了です。
第五章を書きながらエルリとルエリの閑話でも書こうかと思ってます。




