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再始動 -Second Life on-line- そして第二の人生が始まる  作者: 絢奈
第四章 双子の精霊が守りたいモノ
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鍵の王子

 海上王国アクエリア王都サンティエスの冒険者ギルド近くにあるカフェで黒いスーツに派手な白と黒の髪を二つに分けた人物は、脚を組みながら情報誌を読んでいた。



 カフェが開店すると同時に入店してずっとギルドを出入りする冒険者を監視して気づいたのは、冒険者ギルドの建物に何らかの結界が張ってあり、その中に入ると軽度の洗脳状態に陥るという事。



 魔法適性の高い魔法使い等は無意識に無効化していたようで、建物から出てきても洗脳状態になっていない魔法使いがちらほらいた。



 魔法を使わない近接戦闘スタイルの冒険者は軒並み洗脳状態だった。



 ただ、ギルドで洗脳したとしても昨日の軍人のような人間以外の種族に激しい嫌悪感を抱くのではなく、「この国は元々そういう国だ」という認識を植え付けるだけだった。



 仮説としては、より強度の強い洗脳をする為の下地として強度の弱い、誰にもほぼ影響のない洗脳を行い、身体を慣らしているという仮説。



 だがこの仮説が合っているか答えを教えてくれるものはいない、いるとしても王城にいる女王、もしくは宰相のどちらかだろう。



 なのでここからはまず女王か宰相の協力者と思われるギルドの人物に接触し、更なる情報を引き出す予定なのだが…もし、襲撃したことがすぐに伝わってしまったら国対1人という構図になる事を懸念し、慎重に情報を集めていく。



(んー…これ以上アエリアで情報を集めるのは厳しそうね…昨日暗殺者を撃退したけれど、暗殺者が来る時点でアエリアの情報は筒抜けよね…まずは一旦、アエリアで国外に出たと思わせて千棘でギルドに入って情報収集の方がいいかしら…)



 アエリアは情報誌をテーブルに置き、飲みかけの飲み物を飲み干してカフェを後にしてそのまま国外へ行こうと思ったが…



(いや、暗部すら出てくるなら門番に情報がいってるはずよね…ミスるところだったわ…エルリとルエリの手紙を見てから無意識に焦ったのかしら…?適当な所で監視を振り切ってそのまま千棘になるのが良さそうね…)



 門番に捕まる可能性を考えていない事に気付き、気配はしないが監視されている気がするので街を練り歩き、人混みが多い所で時間を過ごしていく。



 頃合いを見て宿屋に入り、店主に一部屋借りる事を伝えて手続きをして部屋に入る前の廊下で孤児院へ転移し、即座に子供達を転移させた部屋まで行って千棘をイメージして姿を変える。



 そのまま視認出来ない速度で孤児院を後にして路地裏へ駆け込み、そこから何食わぬ顔で人混みの多い道に出て紛れ込む。



(対象追跡の魔法とかで監視されていたらどうしようもないけど…でも人力での監視ならこれで振り切れたはず…後はこの入国バッジなんだよな…偽造出来ないようアエリアの名前で登録されているはずだからこれが必要な所は絶対に近づかないようにしないと…)



 入国の際にもらったバッジの偽造防止の機能も考慮しつつ色々回り道をしながら先程アエリアで利用したカフェまで戻り、そこで同じように飲み物を飲んでいると…



「聞いたか?近くの孤児院でシスターが国家転覆を企んでるって話…」


「ああ、なんか聖職者とは思えない姿をしているらしいな?いつもより街の警備が凄いと思ったけどそれが関係してたのか」


「何でもこの国の騎士様を一人やっちまったらしいぞ」


「マジかよ…最近物騒すぎるな…」


「ああ、でも国の騎士に一人物凄い強い奴が入ったらしいぞ?」


「へー?どんなやつなんだ?」


()()()()でSランク冒険者らしいぞ?この国に依頼をしに来たらしいんだけど、それが国のお偉いさんの目に留まってスカウトされたらしい。大出世だよな」


「ぶっ!?…あ~今日もいい天気だなぁ…」


「…?…へぇ…冒険者って一気に成り上がれるんだな…俺達商人はコツコツやってくしかないか…」


「まぁ俺達みたいに酒場経営じゃどう頑張っても国のお偉いさんには目を付けてもらえないがな?ハッハッハ!」



(やっぱりかああああ!!ライゼン…!冒険者ギルドで双子の精霊の噂を聞いた後にお礼で依頼を受けるって言ってたもんな…ていう事は仮説が一気に正しく感じるな…ギルドで軽く洗脳して、何処か依頼と評して連れていき、そこで強い洗脳…マジか…ライゼンが敵側にいるならどうにか接触して助けないと…他に考えられる最悪のケースも想定しないと…ライゼンが洗脳されていなくて何かやむを得ない事情で協力しているとかか…?この場合ならそのやむを得ない事情を解決してあげないとこっちには引き込めない…くそっ!進むと思ったらまた問題ごとが出てきた…!)



 表情に出ないよう極めて冷静にニコニコしながら飲み物を飲み、考えていく…。



 その千棘を見た道行く人たちは「あそこのカフェ、あんな顔しちゃうような物出てくるのか…入ってみよう」という感じでカフェは一気に満員になったのでカフェを後にする。



(うーん…これならライゼンと同じ道を辿ってみるのもありか…?もしかしたらだけど、洗脳魔法なんて誰もが使えるわけじゃない…しかも各国を旅して猛者と試合して自分を高めるのが好きなライゼンだし…そんな強力な魔法は黒幕しか使えないはず…なら黒幕と接触できるチャンスかもしれない…それに千棘なら状態異常無効まではいかないけど耐性はかなりある…建物に入れば洗脳されるとわかっているならギルドから出たらキュアポーション飲めば解決だ…よし…)



 千棘はギルドカードを手元に用意し、冒険者ギルドへ入っていく…。





 ■





(ライゼンなら多分こう言うはずだよな…)



「すみません、この辺りで強い人がいるとか聞いたことありませんか?後、噂になってる双子の精霊のお話も聞きたいんですが…」



 ギルドへ入った後そのまま受付に並び順番を待ち、自分の番になったので受付嬢にライゼンが言いそうな事を伝えて、暗に自分強いですよと思わせる。



「強い人の話ですか…?…そうですね…つい最近Sランクの冒険者さんが来た事ありますが…双子の精霊の話はもう王都中でも噂になっていると思いますが、見つけて王城に連れていけば一生遊んで暮らせる金額がもらえると王家からのお話ですね…」


「双子の精霊は幸運を運んでくれるって聞いてたので王家の方もあやかりたいんですかね~…その、Sランクの冒険者ってまだこの街にいるんですか?」


「あの時も私が対応させて頂いて、お話のお礼という事でクエストを一つ受けていってくださいましたよ?既に完了されているので居場所までは…」



(この人がライゼンを対応した人か…黒幕の協力者の可能性がある…調べてみるか……っ!?)



「…?どうされました?」



(ヤバい、表情に出たか!?)



「いえ、もういないのなら模擬試合してもらう事が出来ないなぁってちょっと残念に…」


「そうですか…?これでお話終了でしょうか?」


「ええ…情報のお礼として僕もその冒険者を見習ってクエストを受けようと思ってるんですけど、なんか受けて欲しいような厄介なクエストだったり、塩漬けのクエストはありますか?」


「そうですね…でしたらこの依頼とか如何でしょうか?」



 そう言ってギルドの受付嬢…もとい、()()の受付嬢から依頼の内容が書かれている書類を一枚渡される。



(王城での騎士との訓練及び模擬試合…?ライゼンは依頼を受けた後、すぐ国外に出ていったはず…軽い洗脳なら僕に誤情報を渡すとは考えられない…素直に騎士と模擬試合をしてくるって言うはず…なら直接黒幕には接触出来なさそうか…)



「ええ…これはかなり珍しいクエストですね…?でも僕なんかがいいんですか?このクエスト受けてしまっても…」


「ええ、他国とはいえ、一度貴族様からの指名依頼を達成している実績や、12歳で飛び級Aランク、もう少しでSランクに到達するかもしれないという情報も確認しておりますので、特に不足とは思いませんよ?」


「そうですか…ではこれを受けさせていただきます」


「わかりました、では明日、こちらの依頼書を持って王城の門番にこの書類をお渡しください。渡して頂いた後は騎士の方の指示に従って頂ければ大丈夫です。ギルドのクエストとしては門番へこの書類をお渡しすれば完了となります。完了報告は門番からされるので、訓練が終わった後は宿等に直接お帰り頂いても構いません」


「わかりました、ありがとうございます…最後にお名前を伺ってもいいですか?」


「私はそんな安くないのでお誘いなら高い所へ連れてってくださいね?名前はライアって言います」



(偽名か…そりゃそうか)



「ライアさんですね、わかりました。依頼が終わって報酬をもらったらどこか高い所にでも食事にいきましょう。ではまた」


「ええ、お待ちしておりますね?ご武運を」



 悪魔の受付嬢とやり取りを終え、ギルドから出てすぐに路地裏へと移動し、自身の状態を確認する。



(洗脳はされてない…うまくレジスト出来たみたいだな…建物に入った瞬間、生暖かいような空気だったからあれが洗脳魔法かな…洗脳がかからないからこのクエストを渡してきたと思えば…案外黒幕に近づいたかもしれない…しかもあいつ…悪魔だったぞ…!しかも魔族の眷属だった…!ていう事は魔族が黒幕でその眷属が協力者…()()()()()()()()()()()()()…一気にこの国だけの問題じゃなくなったぞ…)



 今回は黒幕の協力者と接触するだけのはずが、そこから重要な情報が舞い込んできた。



 海上王国アクエリアで魔族が国の上層に入り込んで何か企んでる事を察知した千棘は一度、人目の付かない場所でアエリアになって屋敷へ転移する。



 その後、イヤリングを持っているライゼン以外全員へ緊急事態な事を伝え、王都にいないものは転移魔法で迎えに行き、屋敷に集まってもらい今回の情報を全て伝える…。





 ■





「で、これがエルリとルエリが渡してきた手紙よ」



 そう伝えて皆の前に手紙を出し、回し読みをしてもらう。



 ――――――


 ちーちゃんへ



 今、私達は精霊の国で『みんな』を守ってます。


 私達はアクエリアの国を救おうと思ったけど、ちーちゃんが来たから任せるね?


 国にはよくない者がいるみたい、気を付けて。


 私達は協力出来ないけど、精霊の国で待ってます。


 ウィールは『未来の鍵』だから必ず守ってね。



 エルリ ルエリより


 ――――――



「さっきみんなに伝えた情報も合わせると、国によくない者は『魔族と悪魔』、エルリとルエリは姿を消した『精霊族』がいる場所を守っているから手伝えない、ウィールは『未来の鍵』…これはアクエリアの『未来を変える存在』…だと思うわ。誰か違うと思う人はいるかしら?」



「あたい的には特にその事に関しては間違ってるとは思わないぜ。だけどよぉ…流石にちー助だけってのは間違ってねぇか?」


「国は人間以外の種族に激しい嫌悪感を抱くよう洗脳されてるわ。ここで戦える人間はわた『だからその考えが間違ってるって言ってんだよちー助』…」


「ユーランの言う通り。簡単な事すら考えれてない」


「ちーちゃんさぁ?洗脳されてるなら一旦、王都だけでも洗脳解除して私達がいけばいいんじゃないのー?」


「っ……そうね…確かにその通りだわ…」


「ねぇリア?私達の心配してくれて嬉しいけど、私もリアと戦えるぐらい強くなったよ?魔法なしだけど…」


「私やシエル、フリエスやアリエスは役職的にも今回の事はお手伝い出来ないわ。だけど、最悪な場合を想定して準備しておく事が出来る。だからもし、失敗したとしても国として助けれるよう頑張るわ」


「ええ!お母様の言う通りです!私もまだまだですが説得します!」


「ユリス、ノエル、シエル…」


「私の方でももっと遡って海上王国アクエリアがどうなってるか冒険者ギルドで調べてみます」


「私もこの前はあんまり力になれなかったから今度こそ!」


「アリエス、フリエス…」


「という事だ、ちー助。エルエリの事だけじゃなくてライゼンの事もアクエリアの事もって一人で抱えていい量じゃないだろ?エルエリの事だけなら任せたけど仲間が敵側に行っちまってその敵は国。なら少しぐらい頼ってくれていいんじゃねーのか?」


「そうね…少し気持ちが先走ってしまったわ…なら、ノエルとシエル、フリエスとアリエスは情報や上とのやり取りでバックアップをお願いするわ」


「わかりました、皆さん行きましょう」



 ノエルの一言で名前を呼ばれたバックアップ組は屋敷を後にし、各々の役割を果たしに向かう。



「さて…一緒に戦ってもらう組だけれど……」


「まぁあたいは集団を押さえる為に氷系の武器でも作るか!この世界に来て初めてあたいの得意分野で仕事出来るぜ!」


「私はフェイナと王城の中に誰も入れないようにして援軍を防ぐ」


「私もアルメラと頑張るよ!」


「私は速さ生かしてライゼンを探そうかな…もし戦闘になってもなんとかなると思うし…」


「……じゃあ私は元凶の魔族の女王か宰相を探して叩きのめすわ」


「何時頃やるんだ?ちー助」


「一応明日、千棘で王城の中に入るクエストを受けているから、そこで転移出来るよう色々歩き回るわ。決行はその次の日…明後日の夜ね」


「んじゃ明後日の夜までに武器作ってくるわ!」


「んじゃアルメラは私と一緒にユーランに装備整備してもらお!」


「わかった」


「私はもう少し訓練してこようかな…」


「ユーラン、フェイナ、アルメラ少し待って。…ユリスも訓練はしなくていいわよ。しっかり休んでいて欲しいわ」


「…わかった、じゃあ子供達と遊んでくるね!」


「気を遣わせて悪いわね…いつかユリスにも全部話す時が来るから…それまで待っていてちょうだい…」


「大丈夫!ちゃんと待ってるから!」



 ユリスはそう言葉を残して部屋を退室していき、今部屋に残っているのはアエリア、ユーラン、フェイナ、アルメラの《プレイヤー》のみになった。



「あなた達…この状況、気付いてるわよね?」


「ああ、この状況に似ているクエストがあったな~」


「あれでしょ?ユーランがぶっぱし過ぎて武器無くなって死にかけたレイドクエスト!」


「あった。ぶっぱしかしなくて私とフェイナが前線で動きにくかったやつ」


「変なこと覚えてんなよ!!…一つの国が魔族に支配されて、魔王復活の為に国民の命を生贄にするレイドクエスト…しかも王子が行方不明でその王子を見つけないと倒しても国は潰れてなくなるしっていうやつだな」


「ええ…何度も失敗してその王子を探すのにも時間がかかったわ…この状況は多分エルリとルエリもわかってるはず…だからウィールを『未来の鍵』って言ったんだわ」


「てことは、ウィールは()()()()()()()()になるんだねー…んーやっぱり状況同じだよね?アルメラ」


「うん。でも魔王復活のクエストは他にもあるし、復活させてしまった時のクエストもある」


「その中の一つにエグイのあったよな?全ての種族の生贄を捧げるってやつ」


「多分エルリとルエリはそのクエストも視野に入れて精霊の国を守っているはずよ…翼人族は雲の上の国だから安心だと思うけれど…だから今回の事を防いだとしてもこれから先、同じような魔王復活クエストが関わってくると思うわ」


「やっぱ《SL》の500年後なんだねーここは……ていう事は()()()()クエストもあるんじゃない?エンドコンテンツの超大型レイド…」


「ええ、フェイナの言う通りそれも視野に入れるなら()()()()()()()()()()()()()()()…だからその為にも…今回の事件は絶対に解決してアクエリアに後ろ盾になってもらわなくちゃいけないわ」


「あの時は20ギルドでローテ組んで取り組んだ。流石に私達だけじゃ無理」


「んじゃこれからはそういう最悪クエストが来るかも知んねーって事で、備えておける時に備えておくわ。早速、二人の装備整備したいからついてきな」


「はいはーい、アルメラいこ!」


「わかった」


「あなた達よろしく頼むわ…私もアクエリアに戻って準備してくるからまた後でね」



 ユーランとフェイナ、アルメラは装備整備の為に部屋から退室し、一人になった部屋の中でアエリアは頭を抱えて大きい溜め息を吐く…。

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