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再始動 -Second Life on-line- そして第二の人生が始まる  作者: 絢奈
第四章 双子の精霊が守りたいモノ
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死神の未来は?

 泣き疲れたサリィはようやくアエリアの胸から顔を離し、真っ赤になった目を閉じて涙や鼻水で濡れている顔を隠すようにシスター服の袖で拭こうとするが、アエリアが手を掴んで止める。



「女が下がるわよ?」



 インベントリから綺麗なタオルを取り出して渡してあげると素直にタオルを受け取り、顔を綺麗にして顔を赤くしながらアエリアを見つめる。



「ごめんなさい…今まで我慢してたものが一気に…それにリアさんの服まで汚しちゃって…」


「これぐらい気にしなくていいわ。いい女に胸を貸した勲章よ」



 サリィが気負わないよう気取った言葉をかけて指を一回パチンとならす。



 するとアエリアの服が黒のミニスカシスター服から、上下ともぴったりとした黒のパンツスタイルスーツに黒のネクタイ、白と黒の髪を分けるように二つに纏めた姿に変わる。



 先程までのシスター服と印象がガラリと変わり、カッコいいアエリアの姿を見たサリィは更に顔を赤くしてもじもじし始める。



「ほら、この格好も悪くないでしょ?」


「ええ…とても素敵でカッコいいです…」


「ふふっ、さて…サリィ?みんなを移動させてもいいかしら?」


「はい、お願いしますリアさん」


「じゃあ、奥の部屋に全員運んでおいてちょうだい。私は屋敷の仲間に貴女達のお世話するよう今頼むから」


 ……


『ユリス?まだ起きてるかしら?リアよ』


『リア?ついさっき訓練終わった所だけど…』


『ユリス…あんまりやりすぎて精神的に追い詰められないようにしなさいよ。…それで急なんだけれど、アクエリアで知り合った孤児院の人達を屋敷に転移させるから部屋とかその辺任せて大丈夫かしら?』


『え?孤児院?…んまぁ了解!』


『ありがとねユリス。またこっちの問題片付いたら連絡するわ』


 ……


「サリィ?準備いいかしら?」


「大丈夫ですが…どうやって移動するんですか…?」


「今から貴女達だけを私の屋敷に転移魔法で送るわ」


「て、転移魔法!?そんな高度な魔法が使えるんですか!?」


「ええ、だから屋敷に着いたらうさ耳の仲間が案内してくれるから好きに過ごしてちょうだい」


「わ、わかりました…ではリアさんまた…」


「ええ、終わったらまた呼ぶわ」



 サリィ達を転移魔法で王都の屋敷に移動させた後、さっきまでいたホールの様な場所に戻って音を消していた魔法を解除する。



 一つ小さく息を吐いて椅子に座ると、複数の人の気配とテーブルの上に手紙があった。



 サリィが泣き始めた辺りから人の気配がある事に気付いていたが、テーブルの上の手紙には全く気付かなかった為、首を傾げながら手紙を手に取る…。



 ちーちゃんへ

 エルリ ルエリより



 その手紙に書かれてる文字を見てアエリアの心臓が強く跳ねた。



 今すぐ開封して読みたい気持ちをどうにか抑えてインベントリにしまい、大きく息を吐いて気配のある方へ身体を向けて問いかける。



「さっきから女同士の内緒話に聞き耳たててた寂しい奴ら。さっさと出てきなさいよ」



 すると孤児院の玄関ドアから一人の人物が入ってくる。



 他に隠れている奴らはそのままの位置で動かずに、監視を続けていた。



「あら、素直なのはあんただけみたいね?他は一人の女の前にすら姿が表せない臆病者なのね?」


「煽っても無駄だ。海上王国アクエリアの騎士を殺した罪で捕らえさせてもらう。拒否権はない、大人しく投降しろ」


「国家の暗部って事ね。それにしても朝方の出来事だったはずだけれど…接触するのに時間がかかり過ぎなんじゃない?しかも誤情報、私がやったのは脚を消し飛ばしただけ、殺してなんていないわ。この国の程度が知れちゃうわね…はぁ…」



 わざとらしく溜め息を吐きながら煽り続け、頭の中でこの場にいる暗殺者が逃げられないよう結界を張る為のイメージを構築していく。



「私達は荒事を好まない。お前が一人になるのを待っていただけだ。それにこの国家の騎士に危害を加えた時点で捕らえる事は必定」


「あら?なけなしのプライドを傷つけられて反論しちゃったわね?国家の暗部が聞いて呆れるわ…こういう場合はさっきのシスターと孤児達諸共問答無用で殺しに来るのが暗部として正解よ。そして…私の時間稼ぎの話に付き合ってる時点で…お察しよ。()()()()()()()



 指を鳴らし、孤児院を丸ごと覆うように結界を発動させる。



 外に待機していた暗殺者は張られた結界にすぐ気づき、結界を破ろうとしたが全く壊れる気配がせず、すぐに穴を掘って抜け出そうとするが、地中にもしっかり結界を張った為出る事が出来ずにいた。



「あら?あんたの部下はここに穴を掘りに来たのかしらね?土遊びが好きな子供は躾けが大変だものね?心中お察しするわ…」



 そう言葉を続け、インベントリから白黒の手袋、無慈悲な手(モータルハンド)を手に嵌めて目の前の暗殺者に人差し指を真っ直ぐ向ける。



 指を向けられた暗殺者は肩を小さく振るわせながら、極力抑えた声色でアエリアへ言葉を投げる。



「どこまでも私達を愚弄する気なのだな…生かして捕らえろと言われたがここで殺す。殺せば結界も消える」


「ハッ!やれるもんならやってみなさい!さっき私は言ったわよ!チェックメイトって!」


「っ!?ぐあああああ!?」



 アエリアは指していた人差し指を横に振る…すると目の前の暗殺者は、脚を膝上から切断され、体が前のめりに倒れる。



 即座にそのまま人差し指を下に向けると結界内の孤児院の外全体に地面が一段陥没する程の重力が生じ、外にいる暗殺者を力尽くで地面に寝かしつける。



「まっ、こんなもんよね」



 誰も動いていない雰囲気を感じ、脚を切断した暗殺者にゆっくりと近づくアエリアは大量に血が出ている脚にハイヒールをかけて出血多量で死なないよう処置を施すと…



「もう少し手荒に行くわよ」


「うっ!?がああああああああああ!!!」



 自分の切断された膝上から下の足を怯えた状態で見ていた暗殺者の肘に足を振り下ろし、両方砕いてフードを掴み身体を起こさせる。



「わかったかしら?最初の一撃はわざと脚にしてあげたの、首だったらあんたは即死。最初から私に関わった時点であんたは詰んでいたのよ。素直に話してくれたらあなたの身体はちゃーんと戻してあげるわ。どう?私とちゃんとお話しできるかしら?」



 にっこり笑いながら問いかけると首を横にぶんぶんと振る暗殺者。



「そう…と言う事は情報を喋ろうとした瞬間にあんたは死んでしまう可能性があるのね…ふぅん…キュアリンク」



 範囲状態異常解除魔法を唱え結界内にいる暗殺者の洗脳を解き、もう一度問いかける。



「今、あんた達にかかっていた洗脳は解かせてもらったわ。さて、これで喋りやすくなったかしら?」



 洗脳を解いたと伝えた瞬間、首が折れてしまうと思う勢いで縦に振ったので片脚だけ癒女神の息吹(パナケイア・ブレス)で生やす。



「ちゃんと喋ってくれるって言ったご褒美よ。もう一つの脚と両腕を治したかったらちゃんと答えてちょうだい?」



 アエリアの笑顔を見た暗殺者はとんでもない死神がこの国に来てしまったと絶望した…。





 ■





「そう…じゃあ、あなた達が今話してくれた情報を簡潔に纏めるから違う所があったらちゃんと指摘してちょうだい」


「ああ…わかった…」


「いくわよ」



 ・4年前突然、アイシャ・フォン・セルベレス・アクエリア女王様が全領主を集めた国家会議で一人の宰相を名乗る人物を連れてきた。



 ・その宰相が来るまでは全ての政務は女王様が執り行っていたが、その後は全て宰相が執り行っている。



 ・元々この国は人間以外の種族に風当たりは強くなかった、むしろ仕事など協力してお互いの足りない部分を補い合っていた。



 ・いつ洗脳されたのかわからないが、いつの間にか人間以外の種族に激しい嫌悪感を抱いていて、元々そういう国の決まりだと思っていた。



 ・国に仕えている者は人間以外の種族に激しい嫌悪感を抱く程洗脳されているが、何故王都に住んでいる者と洗脳の度合いが違うのかはわからない。



 ・王城勤めだった人間以外の種族は全員地下牢に閉じ込めている。



 ・王国内の人間以外の種族は一つの領地に集められて『管理』されている。



 ・その集められた領地の場所はわからない。



「どうかしら?指摘したいところがあったらしてちょうだい」


「いや…それで俺達が知ってる事は全部です…」



(今の情報でだいぶ絞れた…問題は三つ。女王が裏で宰相と呼ばれる者を操っている黒幕か。宰相が女王の何らかの弱みを握り、操っている黒幕か。洗脳の度合いが何故違うか…って所かしら。多分、どっちかの黒幕の協力者が冒険者ギルドにいて、戦力になりそうな人に浅くてもいいから洗脳を施して、強い洗脳が掛けやすいようにしている…って言うのが私の中でしっくりくるけれど…まさか…女王も宰相も黒幕とか最悪なシナリオじゃなければいいけれど…)



「…わかったわ、ありがとう。私はこれからこの国を裏で操っている人物を特定してこの国を元の状態に戻そうと思っているわ。あんた達はこのままの国がいいかしら?」


「前の国がいいに決まっている…俺は変わらず女王様に忠誠を誓っている…」


「そう。なら私がこの国を元の状態に戻してあげるわ。だからあんた達は私の邪魔を一切しないで。私の情報を一切漏らさないで。…ちなみにあんた達にかかってた洗脳魔法と同じ物をあんた達にかけたから、私の事を喋ろうとしたら頭に花が咲くから…もし咲かせたかったら話していいわよ」



(嘘だけど)



「…わかった…」


「じゃあご褒美にみんなの身体を治してあげるから、この国が元に戻るまで隠れ家にでも籠ってなさい」



 情報提供のお礼として暗殺者達の怪我や欠損を全て治し、孤児院から屋敷の自室に転移してベッドに身体を投げ、インベントリから手紙を取り出す。



「エルリ…ルエリ…」



 そして丁寧に封を開けて手紙の内容を何度も読み返していく…。





 ■





「さぁみんな!この屋敷で自由に遊びなさい!!ちゃんとご飯もあるから遊び終わったらサリィに言って手を洗ってから食べるのよ!解散!」



 アエリアの解散の言葉で孤児院の子供達は一斉に声をあげながら屋敷の至る所に散らばっていった。



 子守をユリスとノエルが呼んでくれたハウスキーパーさんに頼んで昨日の狐型の獣人の子が寝ている部屋に行く。



「起きてたのね。どう?ちゃんとご飯も食べれたかしら?」



 既に起きていたらしく、狐型の獣人の子はベッドから上半身だけ起こした状態だったので、アエリアはその隣に椅子を置いて話しかける。



「う、うん…」


「そう、それならよかったわ。あなたのお名前は何て言うのかしら?後、可愛らしい顔してるけど男の子?女の子?」


「ウィール…男…」



 自分の名前を口にしたウィールの瞳を見つめると紫色で星が散りばめられているかのようにキラキラしていた。



(この子、ウィールの目…星が散りばめられた様な目…確か図書館で読んだ本に…)



「ウィール、いい名前ね。私はリアっていうの。あなたサリィに助けられたのは覚えてるかしら?」


「うん…」


「ちゃんとお礼は言えたかしら?」


「ちゃんと言った…」


「えらいわね。あなた、ごみ捨て場にいたようだけれど、お父さんとかお母さんはいるのかしら?」


「気づいたら一人だった…顔も知らない…」


「そう、嫌な事聞いたわね。…どうしてゴミ捨て場にいたの?」


「…ゴミ捨て場にいけば助かるって()()()()()…」



(…?助かるって見えた…やっぱり()()?)



「視えたって何が視えたのかしら?」


「サリィが僕の事…助けてくれるのが視えた…」


「…そう。じゃあ他には何が視えたのかしら?」


「…言いたくない…」


「怖いのが視えたのかしら?」


「…」


「わかった、もう聞かないわ。今、屋敷でお友達が遊んでるからウィールも遊んでくる?」


「…」


「…まぁいいわ。この部屋もお屋敷も好きに使ってちょうだいね」



(もう少し詳しく視えるっていうのを聞きたかったけれど、難しそうね…そろそろアクエリアに戻ろうかしら…)



「…行っちゃダメ!!」


「!?」



 アエリアはウィールをそっとしておく為、退室しようと身体を動かす直前にウィールに止められ、明らかにアエリアの次の行動が視えてると思える言動に面喰いながらもウィールをもう一度見る。



「ウィール…もしかして視えるって…()()()()()()()()()()…?」


「な!?なんで…」


「今、私が部屋を出る未来が視えた、だから止めたのでしょ?…さっき…他に何が視えたか聞いた時言わなかったわよね?私がこの部屋から出ていったらその酷い未来が来るかもしれない、だから何も言わなかったのね?」


「…」



 そうウィールに問いかけると何も言わず膝にかかっているひざ掛けをきつく握りしめて俯くが、アエリアが優しく頭を撫でてあげると触られてびっくりしたのか身体が一瞬跳ねるが特に抵抗するそぶりはないので撫で続ける。



「ウィール、私は大丈夫だから視えた事教えてくれるかしら?」


「………大きい椅子があって、広い所で…リアからいっぱい血が出て死んじゃう…」


「ふぅん…ウィールは今まで未来を視た時、全部同じようになったのかしら?」


「うん…」


「そう。じゃあウィールが視た未来が初めて外れるのね。私は絶対に死なないわ」


「ダメだよ…この部屋から出たら死んじゃう…」


「ウィール、あなたは自分の嫌な未来が視えたらどうするのかしら?」


「……いっぱい我慢する……」


「ウィールは我慢強いのね?とてもえらいわ。…でも我慢しきれなかったらどうするの?」


「…わかんない…」


「それでいいわ、今はね。あなたに最後の質問するわよ?」


「うん…」


「ウィール、あなたは未来を変える事が出来ると思う?」


「……そんなの出来ない…」


「ええ、正解よ。ただ…我慢しているだけならね?」


「…?」


「悪い未来ならそれを良くしようとするのが私達、『人』よ。獣人族もエルフ族もドワーフ族も精霊族も翼人族も全部まとめて『人』なのよ。だから私はウィールが視た悪い未来を、いい未来に今から変えてくるわ。…だから私が未来を変えれたら次はウィールの番よ。私がここに帰ってきたらもう我慢は無しよ」



 椅子から立ち上がり退室しようとドアノブに手をかけるとウィールが引き留めてくる。



「リア!行っちゃダメだよ!死んじゃうよ!」


「ウィール。私は必ずここに帰ってきてあなたの未来を変えてあげるわ。だからサリィ達と安心して待ってなさい」



 そう言い残し、部屋を出てアクエリアの孤児院へ転移する。



(未来視の魔眼か…あんな子に残酷な眼を持たせるなんて…ウィールが視た未来、多分王城で戦闘になって私が死ぬかもしれない傷を負う…って所よね。王城に行くときはしっかり対策しないと…それにエルリとルエリが渡してきたあの手紙の事もあるし…まずは今やるべき事をやりながら考えるしかないわね)



 ウィールが視てくれた最悪の未来に抗う為、対策を練りつつ冒険者ギルドを監視する為に歩き出す…。

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