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再始動 -Second Life on-line- そして第二の人生が始まる  作者: 絢奈
第三章 赤と桃の二重奏
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初歩的な勘違い

「ウェイナ、今日はこれで切り上げようかー」


「おっけー!まだまだいけるけど、帰らないとご飯食べれないもんね~」



 千棘とフェイナがいるのは鉱山ダンジョンの65階層ボス前の転移クリスタル前。



 クリスタルワイバーンを倒した日から半月程経ち、武具大会出場する為の工房探しも難航していた。



 鉱山ダンジョンは20階層から10階層ごとにボスフロアがあり、千棘達はゆっくりと攻略して武器を作る鉱石などを稼いでいた。



 その稼いだ鉱石を持って色々な工房に持ち込み、武具大会にどうにか出場出来ないか交渉したが1年に一回の鍛冶師達の大会、いくら鉱石を提供したとしても首を縦に振られる事はなかった。



 もし出られないのであれば大会は観戦する事にして、ソロで70階層ボス前まで到達したソロの女性冒険者に会うという目標に切り替えた。



 だがソロ冒険者はあの後、70階層ボス前から85階層まで階層を進めた為、結局会えずじまいでただただ自分達の到達階層を更新する日々が続いていた。



 そして今、首都ハルシオンに来てから日課となっている腕輪の返却手続きと素材の売却を済ませて、フェイナと宿に向かっている道中だった。



「今日もお金いっぱいだねー?」


「正直ここなら本腰入れて稼いだらかなりの金額稼げそうだね…」


「うんうん…にしてもやっぱ大会参加出来ないのかな~…」


「まぁそれはほとんどの工房で断られちゃったから後は自分でお店作るしかないよ…もし作るにしても手続きとかで時間かかっちゃうし…」


「てかさ、ちーちゃん?今思ったんだけど、絶対にここでお店出さないといけないの?」


「え?…え?」


「だからさー、ハルシオンで絶対にお店出さないといけないわけじゃないでしょー?別の国や地域からも出場するんだし。それにエルラシア王国のリライアならノエルちゃんにお願いしたらお店一つぐらいすぐ出来るんじゃないの?」


「…」


「というか出場資格って本当にお店出さないといけないの?私達、名前売るのに意識向けてたからそういう詳しい話とかちゃんと聞いてないよね?」


「…」


「そもそも今回大会に出る工房ってさ、ふつーお抱えの冒険者がいるよね?それをいきなり私達を起用するってそのお抱え冒険者達にも悪いし何より契約結んでたら契約違反だよね?」


「…」


「信用第一の生産者の流儀に反しちゃうし、それなら私達のお願いを断るのも仕方ないよね?」


「仰る通りで…」


「…ちーちゃんもしかして…ダンジョンに潜るのがふつーに楽しくてあんまりその辺考えてなかったでしょ…?」


「っえ?っん?そ…んな事ないよ?うんうん、ほら、ソロの冒険者の件もあったしね?そっちの方も確かめないといけなかったわけだしさ?」


「あんまりそうやって言い訳するちーちゃんは嫌いだよ?」


「…はい…ぶっちゃけダンジョンに潜るのが楽しくてソロ冒険者の件もあったから丁度いいかと…」


「よろしい!それでこそ私達のギルマスだからねー!まぁもう時間も遅いし、宿のご飯の時間もあるから明日一緒に生産者ギルドに行って情報確かめてみよ?」


「うん…ウェイナありがとう、確かにここで店を出す必要ないよね…ちょっとノエルにも確認して見るよ。ここだと聞いてる人もいるかもしれないから部屋に戻ったらね?」


「よーし!そうとなったら宿にちょっこーだよー!」


「わっ!ちょっとウェイナ!?」


「ふふーん!」



 宿への帰り道、フェイナに初歩的な間違えとダンジョンに潜るのが楽しくて大会に出場する為の情報収集を碌にしていなかった事を指摘され、少し落ち込みながら歩いてた千棘を後ろから抱きかかえ、フェイナは持ち前の素早さを生かして今日も色んな商人と買い物客でごった返している人混みをするすると抜けて宿まで直行し、ちょっとお高めのご飯を食べた後、フェイナは先に入浴して一人で部屋に残ってノエルと連絡をしていた。



『ノエル、聞こえる?チヅルだけど』


『チヅルさん?こんな時間にどうしたんです?』


『ちょっと急ぎで確認したい事が出来て…もしさ?ウルが王都で鍛冶屋を出したいって言ったらすぐ用意出来たりする…?』


『鍛冶屋ですか?…ああ、カルフィード共和国の武具大会ですか?』


『え、ノエル知ってるの?』


『ええ、カルフィード共和国はエルラシア王国の友好国ですし情報は知っていますよ?』


『そ、そうなんだ…』


『ウルで鍛冶屋を出したいのはその武具大会に参加する事が目的ですか?』


『そうなんだよね。今探している金欠幼女…が多分それに出てくると思うから出場したいと思って…』


『なるほど…でも、大会が終わった後に接触するっていう方法もあるのでは?』


『そうなんだけどね…あ、ほら!リライアの鍛冶師もハルシオンの鍛冶師に負けてないぞー!ってアピール出来るんじゃないかな!?』


『かなり取ってつけた名目ですね…大方、そのさんが任せる方と戦いたいって素直に仰った方がいいと思いますよ?』


『…はい…その通りです…』


『…わかりました、でもそうですね…新しく作るなら正直に言って間に合いませんわ』


『そうだよねー…』


『ええ、新しく作るなら、です。私が出資している工房がいくつかありますので、今まで武具大会に出ていない工房の名前であればお貸しする事が出来ますがどうでしょう?』


『え?いいの?』


『ええ、構いませんわ。明日にはウルがその工房の鍛冶師であるという書類を用意しておきますのでそれを持って大会の出場受付をして頂ければ問題ありません』


『ありがとう…じゃあ明日またこの時間に書類を取りに行くって事で大丈夫?』


『ええ、この時間であれば大丈夫なのでそのまま私の屋敷に来て頂ければお渡し致します』


『了解、こんな時間に無理言ってごめんね?』


『いえいえ、その金欠幼女さんが仲間の方だったら紹介お願いしますね?』


『うん、必ず』


 …


「ふぅ……?わぁぁ!?」


「ふふーん?その感じだとフェイナちゃんの提案はうまくいった感じかな~?」



 千棘はノエルとの通信を切った後、うまくいったと小さく息を吐く。



 ノエルとの話に夢中になっていた事もあり、後ろにお風呂上がりのフェイナがいるのに気付かずひどく驚き、その場で軽くジャンプするほどだった。



「あ、ああ…うまくいったよ。ありがとフェイナ。とりあえず明日のこの時間に工房所属の鍛冶師っていう証明の書類をもらったら登録しに行くって流れかな?」


「ていうことはー…明日の書類が出来るまでは特にやる事がないって事?」


「んー…僕はしばらくの間、武器とか防具の製作に力を入れないといけないから…もし武器も防具も全部作らないといけないならこの残り時間だとギリギリになるかもしれないし、明日は朝一で生産者ギルドに行って防具は作らなくてもいいのか聞いて、防具も作らないといけないなら明日からはずっと製作に時間使う感じかな…」


「ふむ…じゃあ一旦別行動かな?」


「そうだね、フェイナには悪いけど…」


「別に大丈夫だよ!とりあえず私は明日から金欠幼女が何処の工房で働いてるか探しながら観光かな~」


「よし、じゃあそっちは任せるから無理はしない程度にお願いね?」


「了解!」



 フェイナの提案から一気にやる事が増え、二人は別行動を取る事にして各々の目的を果たす為に宿で一夜明かした後、動き出した…。





 ■





 千棘はコルの姿になり、朝一で生産者ギルドの受付に赴き大会の詳細などを聞き出す為に話しかける。



「あのぉ、すみません~、最近噂の武具大会に出場したいのですがぁ」


「…えっと、鍛冶師の方…ですよね?」


「ええ、そうですよぉ?あまりそう見えないですかぁ?」


「え、ええ…どちらかというと薬師の方と言われた方がしっくりくる感じでしたので…えっとギルドカードの提示をお願いしても?」


「はい~こちらですぅ」



 金色のギルドカードを受付に渡すとそのギルドカードから情報を確認していく。



「はい…えっとエルラシア王国の…えっ!公爵家の専属薬師…ってやっぱり薬師じゃないですか!?」


「あらあらぁ、薬師じゃないとは言ってないですよぉ?それに私、鍛冶も出来るんですぅ」


「は、はぁ…わかりました。では大会出場の登録させて頂きますので、どこの工房に所属しているかの証明書類を確認させて頂いてもよろしいですか?もしお持ちであれば推薦状なども一緒にお願いします」


「推薦状…?えっと、その書類を忘れてしまってぇ、今王都からこちらに送って頂いてるんですぅ。私こう見えてよく抜けてるって言われててぇ…どうしてなんでしょうねぇ?」



(いや…明らかにふわふわしててドジしそうに見えるけど…)



「え、ええ…そうなんですね…えっと、でしたら今登録する事は出来ないので書類が届いてからもう一度来て頂く事は出来ますか?」


「はい~わかりましたぁ。ちなみに聞きたいんですけどぉ…その武具大会って必ず武器と防具を作らないといけないんですかぁ?」


「えっと、武具大会は必ず武器と防具を作らなきゃいけないというわけじゃないです。武器だけでもいいですが、防具だけはダメです」


「ふむふむぅ…武器の種類は剣だけとか決まってますかぁ?」


「特に規制はありません」


「ではぁ、数に制限はあったりしますかぁ?」


「数ですか?…えーっとそうですね…特に本数の指定はないですね」


「ふむふむ…ちなみに推薦状ってなんですかぁ?」


「ええ、有名な工房にはカルフィード共和国の上の方から大会に出場しないかっていうお知らせを送らせて頂いてるんです。それを受け取った方は予選などを抜きにして本選の出場からという待遇になるんです。後は…今まで出場した工房の実績によっては、通常であれば一枠の枠組みに最大で3つまでの枠が与えられますね」


「あらあらぁ、そうなんですねぇ…という事は本選はかなりレベルの高い人達の集まりになるんですねぇ。それに加えて実績のある工房は同じ名前で複数の職人を出場させることが出来るぅ…かなり有利なのですねぇ?」


「ええ、予選で篩をかけて本選で実力を示すという流れです。先程ウルさんが言った通り、実績がある工房は有利なのです。だから本選に出るだけでもかなりの実力と認められるので、本選に出場さえすれば来年からの出場は推薦状が届く可能性があるので、予選に出る方達の第一目標としている工房もあるみたいですね」


「なるほどぉ…悪く言ってしまえば予選は遊び半分で来ている人達を落として本選をより良いものにしようって流れなんですねぇ」


「まぁ、言い方悪く言えばそうですね。実際、予選はなんというか…宣伝の場として毎年新興の工房がアピールするんですよね…いわゆる名物です」


「ふむふむぅ、ちなみに総当たり戦なのでしょうかぁ?トーナメント戦でしょうかぁ?」


「トーナメント戦ですので、どの工房と当たるかというのも大事になってきますね」


「ふむぅ…あっ!大事な事聞き忘れてましたぁ!刃引きはどうするのですかぁ?」


「ええ、刃引きは無しです。高位の治癒魔法を使える魔法使いの方と()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()即死さえしなければ問題ありません」



(それって私が作ったやつだと思うんですけどぉ…意外とこの人抜けてるんですねぇ…)



「…わかりましたぁ。では明日に書類を持ってくるのでまたお願いしますねぇ」


「ええ、お待ちしております」



 受付から聞きたい事を聞いたコルは明日書類を持ってくる事を約束してギルドを後にしてそのまま大会で使う武器を考えながら宿へ戻る道を歩いていく…。





 ■





「ん~武器作ったりは専門外だからな~まぁ決勝はちーちゃんと金欠幼女で決まりだし、そこまで心配はしてないけどー…ん!この焼き魚おいし!ちーちゃんにも買っていってあげよ~」



 そんな事言いながらフェイナは色々な工房を回ったり、屋台で買い食いしながら観光していく。



 食べ物をインベントリにしまって図書館で気になる本を読んだり、餌を買って噴水のある広場で鳥に餌をあげたり、服屋で一人ファッションショーをしたりして時間を過ごしていた。



「ん~!王都とは違うからどこも新鮮な感じで楽しかったな~今度は魔道具店とかいってみよっか…な~…?」



 次の日の行動を決めながら辺りを見渡していると一人の人物が目についたがすぐに建物の陰に隠れてしまい、しっかりとその人物を見る事は出来なかった。



「んー…なんだろ…さっきの人影気になるな…」



 そう思いながらさっきの人影が隠れてしまった場所まで小走りで向かうがそこに先ほど気になったような人物はおらず、相変わらず商人や買い物客でごった返している道しか見えなかった。



「金欠幼女ってわけでもないし…んー…まぁ、いい時間だし宿でゆっくりしよ~」



 若干後ろ髪を引かれる思いでちらちらと人物が消えた物陰を見ながらフェイナは宿に帰っていく…。





 ■





「なぁさっき何見てたんだ?」


「なんか一瞬…気になる人影が見えた気がした…」


「お?もしかしてストーカーじゃないのか?命知らずだな~あっはっは!!」


「命知らず…?私は()()()()()()みたいに凶暴じゃない」


「まぁ確かにあの白黒シスターは凶暴だけど、あれが()()()と同一人物だもんな~」


「それよりもこれ、欲しがってた鉱石」


「お!さんきゅー!これで武器は作れるぞ!後は軽鎧作るから軽くて頑丈な鉱石が必要だからそれさえあれば3日で仕上げれるぜ!」


「軽くて頑丈…また下層に行って探してみるけど、もしそういう鉱石が下層になかったら今あるやつで何とかして」


「あいよ!任せときな!あたいはあたいが出来るさいこーの仕事をすっから、大会は任せるぞ!」


「正直言えば普通の両手剣さえ作れば優勝は間違いないと思う。それに私より強い人がいるとは思えない」


「それであたいが仕事で手ぇ抜く理由にはなんねーのよ!あたいはこの世界で今まで作れなかったような物を作りてぇ!」


「そう」


「おう!じゃあ早速取ってきてくれた鉱石であたいらの武器の調整しちゃおーぜ!()()!」


「そうだね、()()。いこう」



 二人は自分達の所属する工房へ歩を進めていく。



 赤い髪を尻尾のように振って歩くドワーフの女の子と、ピンクブロンドの長い髪を風で煌びやかに揺らし、頭には特徴的な角のある獣人族の女性の後ろ姿は、親子を思わせる様な身長差で温度差のある会話をしながら人混みへ消えていった…。

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