ダンジョンはデートスポット?
もう一話投稿したかったのですが難しそうなので今日の投稿はこれで終了です…。
「おー!ねぇねぇちーちゃん!これ凄いよ!?何このおもちゃ!」
「なんでしょうねぇ…?すごいくるくるまわってますけどぉ…」
コルとフェイナは手元でくるくる回るだけのおもちゃを二人で見つめていた。
…本当にただ回っているだけなのだがあり得ない速度で回っていた為、フェイナは目を輝かせてた。
「やっぱ商業が盛んなおかげか、お店もなんかワンランク上って感じするよねー?」
「ですねぇ。ここだけ時代が一つ進んだような気分ですねぇ」
「ねー!生産者ギルドに向かうまでの道でこんなに目が惹かれちゃうと着くの夜になっちゃうよ~」
「ふふ、じゃあ早くいかないといけないですねぇ」
フェイナの手を繋いで大きい子供をあやすように引っ張り、目的の生産者ギルドまで向かう。
その光景を見ていた人たちは「子供お母さんだ…」とコルの事を見ながら呟いていた…。
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「うっわ…すっごい大きさ…他の場所より規模が違くない…?」
「え、ええ…デパートみたいな大きさですねぇ…」
コルとフェイナが見た生産者ギルドは通常のギルドは1階建て、大きくて2階建ての建物だったが、首都ハルシオンの生産者ギルドは5階建ての煌びやかな場所で、冒険者ギルドも5階建ての建物で横並びに建てられていた。
まず生産者ギルドは1階にクエスト等を受けるフロアになっており、その階で情報収集をしたり、軽い打ち合わせが出来るような飲食スペースが設置されていた。
2階は作った武器を鑑定したり納品したりするフロア、3階は防具、4階は回復ポーションや薬系のフロア、5階はクエストの完了報告であったり採集物を納品するフロアになっていた。
冒険者ギルドも同じように1階は生産者ギルドと同じフロア、2階は都市外での討伐報告や魔獣の素材買取、3階は都市内の雑用系の報告フロア、4階は護衛などの長期間依頼の報告、待ち合わせフロアになっており、5階はダンジョン産のアイテムや素材の売買、入退管理を行うフロアとなっていた。
その圧倒的な存在感にコルとフェイナは気圧されながらも生産者ギルドの飲食スペースへ向かい、テーブルに着いてそこら辺で情報交換を行っている人たちの会話を流し聞きしていた。
「ん~なんかあんまり有力な話は聞こえて来ないね~…でもさっき言っていた一年に一回開催される作った武器や防具をアピールする為の大会っていうの?それを使って試合するやつ!それ楽しそう!」
「そうですねぇ…もしかしたらそれに金欠幼女…が参加しているかもしれませんしねぇ…ねぇ、ウェイナ?やっぱりこの呼び方やめませんかぁ?」
「えー!事実だし、ここでどんな名前でやってるかわかんないしさー!」
「んー…まぁ仕方ないですねぇ…」
「その大会は1ヶ月後らしいし、あれなら参加してみるー?」
「んー…そうですねぇ…まぁ確かにいい考えかもしれませんねぇ…でも参加資格として何処かの工房から依頼を受けてその武器と防具を使わないといけないですしぃ…エルラシアではチヅルの名前は売れてますけどこっちだとほぼ無名でしょうしぃ…協力してくれる方いますかねぇ?」
「んー?ウルで作ってちーちゃんが出ればいいじゃん?」
「でも何処かにお店を構えないといけないですよぉ?」
「あーそっかぁ…むーなかなかうまくいかないねー!」
「そうですよぉ。それにお店を構えるなら手続きもいーっぱい必要ですしぃ、後ろ盾になってくれる商会を探さないといけないんですからぁ」
「まぁ…まだ1ヶ月もあるし、出場出来る方法を追々探してこー!」
「ですねぇ。…それでですけどぉ…ウェイナ?ダンジョンに興味ありません…?」
「ん!あるある!ずーっと気になってたの!いこーよダンジョン!」
「ふふっ、ではダンジョンに明日から行って見ますかぁ。チヅルの名を売ったりする事にも役にたちそうですしねぇ」
鍛冶師達がこぞって参加する『武具大会』という大会に参加する為にダンジョンに潜り、千棘の名前を売りながら協力してくれる工房を探す計画を立てるとコルとフェイナは拠点にする宿へ帰りゆっくりとした時間を過ごした…。
■
「はい…Aランク冒険者のチヅルさんとウェイナさんですね。…はい、これで手続きが完了しました。この証を持ってダンジョンの入り口付近にもう一つ入退を管理する受付があるのでそこに渡してください。詳しい話はそちらでお話致しますので宜しくお願い致します」
「わかりました、ご丁寧にありがとうございます。ウェイナ、さっそく行ってみよ?」
「おっけー!」
冒険者ギルドの5階でダンジョンに入る為の受付をし、ダンジョンのある場所まで街を歩きながらダンジョンの情報をおさらいする。
「さてと、ダンジョンだけど…この首都には3つのダンジョンがあって難易度って呼ばれてるけど、敵の強さは階層を下に下がっていく毎に上がっていくらしいよ」
「ふむぅ…その3つって何が違うのー?」
「そのダンジョンでの魔獣の種類が違うのと、そこで採れる資源が変わってくるみたい。武器防具を作る為の鉱石が取れるダンジョンと、食材に出来るような魔獣が出るダンジョン、後は生活のインフラとかを支える魔石が取れるダンジョンがあるみたいだよ」
「魔石?でも、それって他の魔獣からも出るでしょ?」
「うんうん、だけどこのダンジョンで手に入る魔石は質のいい魔石が多いらしいんだ~。上層は一般的なんだけど、どんどん下層に下がれば質のいい魔石が出るらしいよ」
「にゃるほどね~…生活するには魔石や食材が手に入るダンジョンに潜らないといけないし、そこの魔獣を倒す為にはいい武器や防具が必要になって鉱石のダンジョンにいく。うまくできてるね~、それならここもこーんなに栄えてるのも納得!」
「それに加えて金欠幼女の噂。今は乗りに乗ってるって感じだね」
「ふーん…で、今回行くダンジョンはどこに行くの?」
「鉱石ダンジョンだよ。一応珍しい鉱石とかは自前で持ってるけど、たくさんあっても困らないしね。それを融通して協力をお願いする事も出来るかもしれないし!」
「おっけー!鉱石ダンジョンなら硬い魔獣が多いのかな?」
「かもしれないからまぁ様子見しながらてきとーに回ってみよ~」
「はーい!…受付ってあれかな?」
「んー…冒険者っぽい人達が集まってるからそうかも?行ってみよっか」
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「すみません、鉱山ダンジョンに入りたくてギルドの受付からここに案内されたんですけど…」
「はい、こちらで大丈夫ですよ。ではギルドでもらった証を頂いても?」
「はい、これであってますか?」
「ええ、大丈夫です…Aランク冒険者のチヅルさんとウェイナさん…お二人でダンジョンに潜られるんですか?」
「そうですね、なにか問題でもありました?」
「いえ…基本三人パーティーが多くて、二人というのは珍しいなと思っただけなので他意とかはありませんよ?」
「あー確かに三人パーティーがバランスいいですもんね…」
「ええ、では今から受付をさせて頂くのですが、何か聞きたい事などはありますか?」
「そうですね…このダンジョンって何階層あるんですか?」
「はい、現在この鉱山ダンジョンは100階層まであって、現在の到達階は70階層のボス前となっております。実は1ヶ月前までは60階層のボス前までが到達階になっていたのですが、凄腕の冒険者がソロで一気に70階層ボス前まで突破したのです」
(ソロで一気に到達階層を更新した…?)
「おお、それは凄いですね?」
「ええ、女性の冒険者らしいのですが、私はまだ見た事ないんですよー」
「…ねぇ、ちーちゃん…」
「…可能性は…あるかも」
「…?どうされました?」
「あ、いえ…凄い人もいるんだなーと思いまして、ははは…」
「そうですか?ほかに聞きたい事とかはありますか?」
「…何度かボス前と言っていたのですが…」
「ええ、ボスフロアに入る前と入った後に転移する為の水晶が置いてあるんです。なので討伐した後もボス前に転移すればもう一度ボスに挑戦出来ますし、倒した後の水晶も登録すれば、ボスを討伐しなくても先に進む事が出来るんです。他はございますか?」
「なるほど…んー…今の所は大丈夫です。ウェイナはなんか聞きたい事ある?」
「私も大丈夫だよー!」
「なんだか姉弟に見えますね?小さいのにお兄ちゃんぽくて、大きいのに妹っぽく見えます」
「え!私がおねーちゃんじゃないの!?」
「ウェイナ…そう言う所だと思うよ…」
「え?どういうこと!?」
「ふふ、仲がいいんですね?…では最後にこちらの腕輪を付けておいてください」
「この腕輪は?」
「この腕輪は自身の到達階を記録してくれる魔道具です。先ほどお伝えしたように水晶の様な物が階層の入り口にありまして、5階層ごとに水晶はあります。この腕輪に記録さえしてしまえば到達階層を5階層刻みで転移してくれるという仕掛けです。なので長期間ダンジョンの中に潜らないといけないという事はないのでご安心ください。こちらはギルドカードに貸し出した記録を付け、帰った時に返却して頂きます。そして到達した階層の記録はギルドカードに保存されるので、腕輪を返却しても、新しい腕輪に情報を取り込めばまたそこから開始する事が出来ます。ちなみに、持ち主が死亡してしまった場合は腕輪だけがここに転移してくる仕組みになっているので…」
「なるほど…それで誰が死んだか死亡確認ができるって事ですね…わかりました、ありがとうございます」
「はい、ではご武運を」
腕輪を二人で装着した後、不気味な口とも錯覚するような暗い洞窟に入るとすぐに下に降りる階段があった。
その階段を二人でしばらく降りていくと階段がなくなり少し広い空間に出た。
「ほえ~ここが鉱山ダンジョン…『SL』のダンジョンとはなんか違うね?」
洞窟内は鉱石がむき出しになっていてその鉱石が若干発光しているおかげかダンジョンの中は外よりは暗いが特に問題ないほどの明るさになっていた。
「うん、道がやっぱり整備されていないって言うのが違うんだと思う」
「あー道かー確かに足取られやすいかも?まぁ気にならないかなー私は」
「まぁ僕達はね…そういうスキルも『SL』の時に習得してたし…」
足元は洞窟の中なので小さい突起や窪み、気を付けていないと足を取られたり、足の装備によっては足が滑り戦闘がとてもし辛い環境になっていた。
『SL』の時に習得した『悪路走破』というパッシブスキルがあった為、特に気にせず千棘とフェイナはどんどん奥に進んでいく。
場所によっては鍾乳洞のようになっていたりしてそこから水が滴っていたり、水がある所は鉱石の光によってキラキラと光ってデートスポットのような綺麗な光景が広がっていた。
「わぁ~!ちーちゃん!すっごい綺麗だよ!!」
「確かに…これは凄い綺麗だね…デートスポットとかにもなりそうだよね…」
「ねー!こんなに綺麗だとダンジョンの中って事、忘れちゃいそう!」
「うんうん、まぁ1階層から19階層までは戦闘の出来ない生産者が数人の護衛を付ければ頻繁に来れるようにしてあるみたいだから全然魔獣もいないし、サクッと19階層まで降りようか?20階層はフロアボスがいるみたいだし、そこからスタートって感じかな~」
「よーし!サクッと20階層にごー!」
「ちょ、ウェイナ!いきなり走らないでよ!」
いきなり走り出したフェイナを追っかける為に千棘もフェイナと同じ速度で走り出す。
走っている間に数匹の魔獣…ダンジョン内ではモンスターというものが出てきたが、あまり姿形も確認せずに白い鞘に納められた白雪で斬り捨てていく。
倒されたモンスターは一定時間経つとダンジョンの床や壁に取り込まれ、新しいモンスターとして還元される様子で、その還元される前に剥ぎ取れば素材として扱う事が出来るという環境だった。
特に目ぼしい素材もない為そのままフェイナと一緒に19階層まで走り抜けるが、途中で潜っている冒険者や生産者が猛スピードで走ってくる千棘やフェイナを見てモンスターと勘違いして武器を抜かれたが、「驚かしてすみません~!敵じゃないです~!」と叫びながら走りさって特に問題なく19階層まで降りた…。
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「ふぅ…ここまで走ってきたけど…流石に時間かかったね…」
「はぁ…はぁ…ちーちゃんやっぱり足速い…んにゃー!もう無理ー!」
「いきなり走り出すからでしょ~?…ふぅっ…とりあえず19階層まで降りたし、腕輪も更新しないといけないから少し休憩してボスと戦ってボス後で更新して宿に戻るか、ボス前で更新だけして宿に戻って明日また来るかどっちがいいー?」
「んー…少し休んでボス倒してからにする!」
「りょーかい、じゃあウェイナはそのまま休んでていいからボスの情報を聞いてね?」
「んく…んー!」
「えっとね、20階層のボスは…クリスタルワイバーンって言うらしいよ?普通の武器じゃ固くて弾かれるから、斧とかハンマー系の武器で身体の周りにあるクリスタルを砕いて防御力を落とすと刃が通るらしいねー」
「ふーん…なんかそれだけならちーちゃん一撃で終わるでしょ?」
「そうだねー…まぁ弓で頭狙い撃ったらそれで終わりだね…」
「んー…なら回復したし、ちゃっちゃと倒して宿で休憩しよー…お風呂入りたい!」
「なんというか…おっけーじゃあワイバーン倒して帰ろうか」
フェイナが立ち上がり、スタスタとダンジョンの奥に進むのを見ながらインベントリから紫色の水晶弓を取り出し、調子を確かめながらフェイナの後をついて行く。
奥に進むと重厚感のある扉と水晶の様な置物が現れ、二人でまず水晶の置物に触れて20階層のボス前転移が出来るように階層更新を行う。
二人で扉に触れ、勝手に扉が開くとその奥はドーム状になっており、広さは入ってきた扉から次の階層に降りる為の扉まで1km程の距離が開き天井も空の様になっていてどのくらいの高さなのかは検討が付かなかった。
「んー…何か不思議な感じ…」
「ゲームで言うインスタンスダンジョンっぽいかな?」
フロアボスのルームは明らかに別空間にいるかのような感覚になった為、ここはダンジョンと違う場所なのかな?と思いながらも上空を見ると、上空から身体が水晶で覆われた翼を持つトカゲの姿をしたクリスタルワイバーンがゆっくりと降りてきていた。
「ギュアアアアアアアアアア!!!」
「うるさっ…とりあえず…バンってね」
それを見た千棘は紫の水晶で出来上がった矢を取り出して弓を引き絞り、頭に狙いを定めるとまだ上空にいるクリスタルワイバーンに矢を放つ。
「ギャッ!?!?」
頭に当たった矢は硬質な音を響かせた後、頭のクリスタルを貫通して頭に突き刺さり、そのまま矢が破裂して頭が爆ぜた。
「綺麗な花火だぜ…って感じ?」
頭部を失ったクリスタルワイバーンはそのまま力が抜けた様に落ちてきており、このまま地面に激突したら身体の水晶が砕けて素材にならないと思った千棘は落下地点に素早く移動し、まだ上空から落ちてきているクリスタルワイバーンの高度までジャンプして飛び上がり、インベントリに死体を収納して着地した。
「お~!ちーちゃんやっぱり腕は鈍ってないね~!」
「まぁね!こんなもんよ!」
クリスタルワイバーン倒した後、奥にあった下の階に続く門に向かいまた二人で触ると勝手に開く。
開いた先に入る前と同じような水晶の置物があったので二人で触り、ボス討伐後の場所を記録する。
「こうすればクリスタルワイバーンと戦う事も出来るし、戦わずに次の21階層にもいけるし、やる事も終わったから転移して宿屋に帰ろっか」
「うん!早くご飯とお風呂はいりた~い」
もう一度水晶に二人で手を置き、ダンジョンの入り口の風景を頭の中で思い浮かべると体がフッと浮き上がる様な感覚の後、視界がいきなり外の風景に切り替わる。
外に出た二人は入る前に受付した所に腕輪とギルドカードを渡して到達階層を記録してもらい、腕輪を返却する。
短時間で20階層まで行ったことに少しだけ驚かれたが、特に珍しい事ではなく、凄いですね~とその一言だけ頂いた。
冒険者ギルドの5階へ戻り、先程倒したクリスタルワイバーンの買取をしてもらおうとしたが、頭だけ綺麗に吹き飛ばし、身体の水晶がほぼ傷がついてない状態で納品された事は初めてだったらしく、ギルドの職員もかなり驚いてて少しだけ騒ぎになった。
買取には少しだけ時間がかかったが、正直びっくりするような金額で買い取ってもらえたので屋台で適当なお菓子を買いつつ宿に帰り、今日の疲れを一緒に癒してゆっくりと睡眠を取った…。
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「なぁ親父さん、本当にあたいらは武具大会に出ていいのか?」
「なーにいってんだてめぇは。うちの工房は出場枠が3つもらえてんだ。その一枠をお前らが出ても誰も文句は言わねぇ」
「いやでも…一年に一回の鍛冶師の大会だろ?それなのに新参のあたいらが出たら他の職人たちがいい思いしないんじゃないか…?」
「まぁな。鍛冶師の大会、『武具大会』…これに出て優勝する為に俺達は毎日汗水たらして頑張ってる。だがな?この工房でお前の腕にケチつけるようなちいせぇ奴はいねぇ。それは新参だろうが腕がありゃ代表だ。それにお前の作った物を使うのはあいつだ。お前らならきっと優勝するって確信しているから任せるんだ。だからしっかりお前らでやれ。俺らは手伝いも何もしてやらねぇが工房は貸してやる」
「…親父さん…わかった、絶対優勝してやる!親父さんやお前らには負けねぇから覚悟してろよな!!」
空が暗くなり、星空が輝いている首都ハルシオンのとある工房で赤髪のドワーフの女の子が、工房にいる鍛冶師達に武具大会での優勝宣言をする。
その光景を少し離れた窓辺で見ている女性が赤髪の女の子を見ながら小さく微笑み目を閉じる…。




