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再始動 -Second Life on-line- そして第二の人生が始まる  作者: 絢奈
第二章 黒猫は何を想う
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血染めの天使、咲き乱れ

『ごめん!!戦闘が始まった!!地下に来て!!!』


 …


「で、こちらが男爵の…チヅル様?如何なさいましたか?」


「いえ、何でもありません。続きをお願いします」



(フェイナ!?地下…図書館の地下の事だよな…何があったんだ…!?多分まだここには地下で戦闘が始まった事は伝わっていないはず…でも既にフェイナが行動を始めてしまった…くそ!まだ手を回し切れていないのに…!)



 執事のフェイの話を聞きながら何故フェイナが戦闘する羽目になったのか必死に考えつつ、この後に打つ手の殆どが急ごしらえになってしまう不安感や焦りが千棘の心を煽る。



(このままフェイナにもう少しだけ耐えてもらうか…いや、もしかしたらフェイナの事を傷つけれる人がいるかもしれない…フェイナがいきなり行動したのにもきっと何か理由があるはず…でもここでこの場からいきなり去ったら何か対策されるかもしれない…くそ!…でもとりあえず、今回の貴族のリストは今フェイが持っている。これを奪って、ここに居る護衛の5人を動けなくして侯爵を縛れば…くそ、くそ!何迷ってるんだ!国家反逆罪がなんだ!すぐにフェイナの所にいかないと!!)



「チヅル様?先程から様子がおかしい様ですが、どこかお加減でも悪いのでしょうか?」


「フェイさん、後、この場にいる護衛を含めた皆さん、すみませんが少しだけ寝ていてもらいます」



 そう言葉を残した瞬間、フェイが両手に持っている資料を奪い取りそのままインベントリに収納するとインベントリから7個アイテムを取り出し、首にぶら下げていたマスクをつける。



 そして、掌に7収まる程の大きさの緑色の玉を思いっきり床に叩きつける。



「なっ!?何だこ………れ…」



 叩きつけた瞬間にバンッとという破裂音と共に一瞬で部屋の中に緑色の煙が隅々まで充満し、千棘の声を聞いて警戒していた護衛や侯爵、フェイもその煙を吸い込みそのまま前のめりに倒れた。



「よし…これで後は縛って…」



 倒れている護衛と執事と侯爵を縄で縛り上げ、猿ぐつわを付けて声も出せず身動きが出来ないようにすると部屋にカギと閂をかけ、窓を開け放ち、緑の煙と一緒に窓の外へ出る。



 三階の窓から飛び降りるが千棘には特に問題もなく、そのまま屋敷の庭に着地してフードを被りフェイナが待っている図書館へ走りながら指示を飛ばす。



『ユリス!フェイナ!フェイナはそのまま聞いていてくれ!まずユリスは図書館が俯瞰で見える所に行って、誰か逃げださないか監視をしてくれ!今、フェイナの元に向かっている!』


『わかった!チヅル、簡潔に伝えるよ!今回、関わっている貴族の名簿は私の方で確保した!それとこの一件、他国の貴族が関わってる!』


『は!?どういうことだユリス!少し詳しく話してくれ!今ノエルも繋げる!…よし、いいぞユリス!』


『あら?チヅルさんどう…』


『ノエル!黙って聞いて!今回のクーデターは隣国、シドフィア帝国の貴族、アルマート公爵家が絡んでるの!その文書は今私が持ってる!ずっと前から計画していてフェルミット侯爵家に王都を攻める為の資金提供とか物品提供があったみたいなの!それで今回のスラムの一件をでっち上げて、エルラシア国王様を血も涙もない人に仕立てて王国を乗っ取る計画なの!!』


『くそ!他国も絡んでるのか!ノエル!話は聞いていたはずだ!すぐ兵を王都に用意出来るか!?』


『それがあの後も説得を続けたのですが、他の貴族がそんな事はありはしないとエルラシア国王様も交えた会議の場で発言を繰り返していてダメなんです…一応、国王様は兵は用意するとは言っていたけれど、クーデターの規模に対抗できる戦力じゃないわ。守れて城ぐらいしか守れないはずよ』


『くそ…!そいつらもグルの可能性が高いな…!近くに国王は…いるわけないか…ノエル!ダメ元でいい!国王様にこの件を話してイヤリングを渡して話せるようにして欲しい!ダメならそれでいい!後、王都が戦場になる可能性があるからフリエスとアリエス、可能なら『慈悲の四姉妹』って言われている冒険者を囲って身の安全を確保してくれ!!』


『わかりましたわチヅルさん。ご武運を』


『ユリス!これで何とかなるはずだからそのままこっちのサポートを頼む!』


『わかった!既に位置についたから監視する!』



(まさか他国が絡んでるなんて…!!フェイナ待っててくれ!!)



 指示を飛ばし終え、更に走るスピードを上げてフェイナが待っている図書館に向かう。



 図書館の前に一人の男が見え、猛スピードで近づいてくる千棘を見た瞬間に腰に下げた剣を抜き放ち迎撃しようとするが、



「と、止まれ!!」


「邪魔だ!!!」


「っ!?」



 振られた剣をインベントリから出した白い鞘に納められた刀を抜き放ち、剣の刀身を斬り捨てて刀を返し、峰打ちを当てて図書館の扉を蹴破る。



「誰か…いた」



 蹴破ると一人の男がカウンターから千棘の事を驚いた表情で見つめるが、それすらも煩わしい千棘はカウンターに飛び乗り、男の胸倉を掴みながら首筋に白雪を当て…



「時間が惜しい、早く地下の入り口を教えろ」



 と殺気を込めたいつもより2トーンは低い声で脅す。



「ひっ…殺さないで…」


「いいからさっさとしろ!!」



 それを聞いた男はすぐ後ろの扉を指差したのでドアを蹴破るとレバーの様な物ものがあり、そのレバーを下げるとカウンターの方から何かが引き摺られる様な音がした後、用済みになった男を緑色の煙で眠らせた。



「…くそ!面倒くさい仕掛けだ…なっ!」



 カウンターの方に戻るとすぐ隣にあった本棚がじりじりと動いている状況で、時間が無いのにちんたらと動く本棚を蹴りつけると地下への階段が現れ一気に一番下を目指す。



(フェイナはここにいるはず…あの扉か!見るからに頑丈そうだな…!)



 千棘の視界に鉄で出来た頑丈な扉が飛び込んできた。



 近づくほどに重厚感が増す扉に向かってスピードを緩めず突っ込み、自分の身の丈以上あるハンマーを取り出すと身体に染み付いた動作をなぞる。



「コメット…ストライク!!」



 流星の如く一撃…重厚な扉は真ん中から拉げて雷がすぐ近くに落ちたような爆砕音を奏でながら吹き飛び、そのままの速度で中に入ると大勢の人から魔法や武器で攻撃されている一人の黒猫と、床に倒れて黒猫に庇われている三人が見えた。



「ウェイナ!来たぞ!!」


「ちーちゃん!!!待ってたよ!!!」





 ■





「え…そんな…何でここにいるの…!ペイン!!」


「おいおい、いきなりご挨拶だな?鉄壁の黒猫さん?」


「そうだよ~私もいるのにペインばっか~」


「イーナ…ていう事はシャンもここにいるの…?」


「おう、俺もいるぜ!」



 フェイナがネシアに来た時に街に連れて行ってくれて色んな事を教えてくれた冒険者の3人がいる事に困惑を隠せずにいると、



「おい?ウェイナどうしたんだ?」


「…何でペイン達はここにいるの?」


「ああ、ウェイナと別れた後、俺達は隣のシドフィア帝国にいたんだけどよ?あっちでAランクの冒険者になってなー。んで貴族様から依頼を受けてここに来て協力してくれって言われたんだよ。だけどこんな人数集まってどうすんだ?」


「ペイン、イーナ、シャン、手短に言うわ。ここはエルラシア王国の王都リライアでクーデターを起こす為に集められた人達がいる場所なの。あなた達はシドフィア帝国貴族に使い捨ての駒としてここまで来させられたの。そしてもう少しでクーデターが始まる。だからあなた達は逃げて」



 絶句する3人のうち、シャンが、



「お、おいおいウェイナ。流石に俺でもそんなぶっ飛んだ話、信じらんねーぞ?」


「本当の事なの。今、私の仲間が未然に防ぐために動いてくれている。だからあなた達は早くここから逃げて!」


「そ、そんな事言ったって帝国の貴族様の依頼だから流石に…」


「ペイン!依頼と命どっちが大切なの!?」


「お前そりゃ…」


「おい、お前達そこで何こそこそやっている?」



 フェイナをここまで連れてきたフードを被った人物がこそこそと話しているフェイナ達を見つけ問いかける。



「っ…別に?私の知り合いがいたから話してただけ。何か悪い?」


「そうか…だが気付いたようだな。お前ら4人ともここで死んでもらう」



 そうフードを被った人物が言い放つと身体に何かが当たった気がしたがフェイナはなんだろ?と訝しげに当たった感触がした部分を見るが何もなかった。



「何ともな…っ!?」



 ただ足元に銀色の細長い針が落ちているのを見てすぐにペイン達に視線を向けるとフェイナの視界には膝をついて小刻みに震えている3人が映る。



「ペイン!イーナ!シャン!大丈夫!?」



 声をかけるが舌がうまく回らないのか一言も喋らずウェイナを見つめるだけだった。



「くそ!麻痺毒か!ってうわ!!」



 3人の症状を見ていたフェイナは背中から何か来る感覚がして振り向くと斧を振りかぶった大男が目に入り、咄嗟に盾で斧を防ぐと鉄と鉄がぶつかり、火花が散った後に硬質で重厚感ある音が部屋全体に響いた。



「お前達!この4人は裏切り者だ!ここで殺せ!」



 とフードを被った人物が言い放つとその部屋にいた近くの人物達がフェイナ達に殺気を飛ばし、魔法や矢を飛ばしてくる。



 近くにいた大男はすかさず距離を取り、巻き添えを食らわないようにして警戒している。



「だから言ったのに…!早く逃げろって…もう!」



 そう吐き捨てたフェイナはイヤリングを起動して助けを求める。



『ごめん!!戦闘が始まった!!地下に来て!!!』



 そう叫んだ1分後、



『ユリス!フェイナ!フェイナはそのまま聞いていてくれ!まずユリスは図書館が俯瞰で見える所に行って誰か逃げださないか監視をしてくれ!今フェイナの元に向かっている!』



(さすがちーちゃん!やっぱ頼れるギルマスは今も健在だね!)



 と思いながら、ユリスとノエルに向けられた千棘の声を聞きながら相手の攻撃を防ぐ。



「遠距離攻撃は効かない!物量で押しつぶせ!!」



(的確に嫌な事してくるなー!もう…!)



 そうごちっているとさっきの大男を筆頭に10人程の冒険者が突っ込んでくる。



「前を防いでる時に後ろの3人が攻撃されるのはナンセンス…だったら…!シャットシェル!!」



 フェイナはその場から動かずに仁王立ちしながら盾を地面に突き立て戦闘スキルの発動を感じた。



 シャットシェルは自身から半径3mの周囲を守るスキルで、条件として自分がその場から動けなくなるのと『SL』で言うスタミナの減りが早くなる技だった。



 通常であればスタミナを徐々に回復してくれるポーションを飲んで使うスキルなのだが、ポーションを飲む暇が無かった為、そのまま膝立ちすらも出来なくなった足元に倒れている3人の元でスキルを発動させた。



「くそ!なんだこれ!攻撃があたんねーぞ!」


「構うな!殴り続けろ!」



 そんな声を聞きながら千棘が来てくれる事を信じて待つ。



(早くちーちゃん来て…!流石にポーション飲んでないからしんどくなってきた…!)



 フェイナは守る事にプライドを持ち、『SL』では倒れるまで笑顔で耐えきるという程に守りを重視していたからこそ、うっすらと汗を浮かべながらも余裕の表情でスキルを発動し続ける。



(流石に2分も展開した事なかったけど…きっつい…早く…ちーちゃん…!)



 今までであればフェイナがこのスキルを使った後は千棘やアルメラ、エルリ、ルエリの誰かが周囲の敵を殲滅してくれていたからほぼリスクなしで使えていたが、今はそのサポートをしてくれる人がいない。



 疲労で挫けそうになりながらも千棘が来てくれる事を信じていると願いが叶ったのか…



「ウェイナ!来たぞ!!」


「ちーちゃん!!!待ってたよ!!!」





 ■





 フェイナが背に庇っている3人を見て千棘はごちゃごちゃになった頭の中を一瞬で整理する。



(あれはフェイナの知り合いか!?だから戦闘が始まったんだな)



 そう簡潔にこの状況を考えてシャットシェルを使っているフェイナに視線を移すと、いつも守る時は笑顔のフェイナが少し苦し気な笑顔になってるのを見て千棘は頭が真っ白になった。



「お前ら…ウェイナに手を出したな…?」



 そしてハンマーから黒鞘に納められた両刃の直剣に持ち替え、鞘から抜き放つと黒い炎が剣にまとわりつき、それを振り払うかのように瞬発してフェイナに群がっている10人ほどの男達を斬り伏せる。



「楽には終わらせないぞ…」



 斬られた場所から黒い炎があがり、斬られた男達はいろんな声をあげながらフェイナの周りで喚き散らしている。



「ぐあああ!な、なんだこれ!この黒いのきえねえ!あ、あちぃ!!」


「あああああ!いてぇぇえええ!!なんなんだよこれええええ!!」


「…ウェイナに手を出したことを後悔しろ。今からここに居る全員叩きつぶす…全員無傷で帰れると思うなよ…?ウェイナは回復しておいてくれ、後は任せろ」


「わかった、ちーちゃんありがと…!」



 傍観している冒険者の群れへ瞬発し、身の丈程の大剣に持ち替えて力任せに振り回すと一気に6人ほど腹を斬られ吹き飛んでいく。



「まだまだいくぞ雑魚共」



 色んな武器を持ち替えながら次々と冒険者を血祭りにあげて血飛沫を咲き散らす。



「鎧…?正規兵…?関係ないな」



 途中から全身鎧の同じ装備の集団がいたがそんな事お構いなしに更に蹂躙、蹂躙、蹂躙…相手を無力化し続けていく。



 その光景を見ていたフェイナの足元に倒れている3人は驚きの表情を浮かべながらフェイナの声を聞く。



「…どお?あれが私の仲間なの。すごいでしょ?キレてるのにまだ誰も殺してないなんてちーちゃん位しかできないよ」



 スタミナを回復させるポーションを飲みながらそう笑顔で千棘の事を自慢するフェイナ。



 まだ痺れが取れないのか喋らずに倒れながらその光景を見ていた3人の目には恐れと憧れ、敬意が混ざったような視線を向けながら事の顛末を見届ける。



 するとフードを被った人物が、



「な…なんなんだ…あの化け物は…あんなの人じゃない…化け物…悪魔!ああああ悪魔悪魔悪魔悪魔!!!!」



 と千棘の事を悪魔と呼び続け頭を掻きむしり始めた。



「はぁ…?ちーちゃんが悪魔…?」



 それを見たフェイナは少し怒ったようにその男に詰め寄り胸倉を掴んで吊るす。



「私の仲間を悪魔呼ばわりとかいい度胸じゃん。ちーちゃんは私達の大切な仲間で親友だから親友の悪口言われて黙ってられる程、私は大人しくもなければ情けない奴じゃないんだよね。歯ぁ食いしば

れ」


「お、お前!あ、あああああのリアとかいう女がどうなってもいいのか!!あいつは俺達が捕まえているんだぞ!!」



 後ろからは千棘が斬り捨て続けている人の悲鳴が響き続け、フードを被った人物は悲鳴が聞こえる度に身体を震わせる。



「リアの事なら何も心配いらないし。だってあの写真をあんた達に送り付けたの私と、そこで戦っているちーちゃんだもん。クーデターを起こす日が近づいた所為で満足に裏取りもしないで、誰がどう見ても怪しいものを差し出されたまま使ってるようじゃいいように使われるだけだよ。ご愁傷様」


「くそ!!!くそ!!!!帝国に報告しなければ!!!エルラシア王国は悪魔と取引している事を伝えなければ!!!」


「だからちーちゃんは悪魔じゃないっつーの。あんな天使みたいな見た目してるのに節穴なの?しばらくそこで…寝てろ!!!」



 そう叫ぶフェイナは両腕で胸倉を掴み直し、力の限りフードを被った人物を壁に叩きつけ…



「ふん!私に攻撃能力がなくても力任せに壁に叩きつければ痛いものは痛いもんね!!それにこいつは帝国側の人間っぽいし捕まえておいてそんはないでしょ」



 気絶したのを確認してインベントリから出した縄で縛り上げるとフードを外し、顔を確認するも特に誰ともわからなかったがその男を肩に担いで3人の元に戻る。



「ペイン、イーナ、シャン、お待たせ。もう少しで終わるから待っててね?」



 そう言ってインベントリからキュアポーションを取り出して飲ませていくと身体が光り、自分達の身体から麻痺が完全に消えている事を確認した3人はフェイナに、



「ウェイナ…あの…人は何者なんだ…?」



 とペインが呟き、



「俺様…あんなすげぇ人がいたら絶対に知ってるはずなのに…」



 シャンが呟き、



「あんな凄い人の仲間なんて…ウェイナは何者なの…?」



 イーナが締めくくった。



 3人の答えにいっぺんに答える為にフェイナは、



「すごいでしょ?あの人が私『達』を纏めていた人で親友で仲間。私達の事はいずれ話す時がくるかもしれないし、こないかもしれないけど、ちーちゃんはちーちゃん。化け物でも悪魔でもない私達のギルマスだよ!」



 にっといい笑顔を3人に向けて戦い終わった千棘に手を振るフェイナ。



 納得したようなしないような顔をしながら笑顔のフェイナを見た後にその視線の先にいる千棘を見る。



 千棘も笑顔のフェイナを見て血まみれの身体を気にせずに、ニコニコしながら手を振ってこちらに歩いてくるその姿を見て3人は『血染めの天使』…と呟き、周りの惨状と二人の温度差に困惑しながら部屋を見渡すのだった…。

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