双子×双子
最近5000文字投稿が短いと感じる様になってきました…。
「ふぅ~…ユーラン大丈夫…?ほら、お茶」
「ああ…ちー助助かる…普通の女子はこんなにアグレッシブなのか…?あたいはだいぶ疲れたぞ…?」
日が落ち始めた王都リライアの商業区…辺りが魔石の光でちらほらとライトアップされ始めた時、千棘とユーランは青いベンチに腰を下ろしてお茶を飲み干す。
明らかに疲れている千棘とユーランを見たエルリとルエリは頬を膨らませながら腰に手を当てて持論を展開する。
「もう!何言ってるのランラン!こんなの序の口なんだよ!?というかちーちゃんも疲れてるのが意味わかんない!」
「そうだよランラン、ちーちゃん!!僕達からしたらこんなの序の口!!可愛い物は何処にあるかわからないんだからいっぱい回らないと!」
「い、いや…もう商業区の服屋は全部回っただろ…?それに何着も試着したし日も落ち始めて店じまい…」
「いやユーラン…多分二人が言いたいのは次はアクセサリーとか装飾品の事を言ってるんだと思う…」
「ちーちゃん正解!!」
「は、はぁ!?服屋にもあっただろ!?」
「服屋に用意されている装飾品なんてほんのちょっとだよ!」
「エルリの言う通り!装飾品は装飾品だけを扱ってる所で見るのがセオリーなの!!」
「ちょ…ちょっとちー助助けてくれ…」
「あはは…またみんなで遊ぶ時間を用意するから今日は一旦お開きにしよ?夕食もエルとデルが用意してくれてるだろうしさ?」
「…あれ?確かにもうこんな時間だね?」
「…気付かなかったね?ルエリ」
「エルエリの可愛い物好きの深淵を見た…ちー助ありがとう…」
「まぁまぁ。それじゃゆっくり帰ろっか?今から屋敷まで歩けば丁度いい時間だろうし」
「はーい!」
「やっと解放され、あっ…」
エルリとルエリの可愛い物に対する深淵を覗いたユーランは項垂れながらも千棘と一緒に立ち上がろうとした時、履き慣れない靴で長時間歩いたせいで体勢を崩してしまう。
「おっと。ユーラン大丈夫?」
「あ、ありがとうちー助…流石にこの靴で長時間歩くのはきついな…あたいは転移の魔道具で屋敷に帰ってるよ」
「…んや、せっかくだし…」
「はっ?………」
千棘は足の痛みに眉根を寄せたユーランを軽い動作で背中に乗せ、ユーランの履いていた靴を脱がせてインベントリにしまう。
突然の出来事に自分が置かれている状況がわからなかったユーランは千棘に背負われているという事を認識して大声を上げ始める。
「ちょあ!?ち、ちー助!!流石にこれはやめてくれ!!は、恥ずかしいだろ!?」
「…んや、このままみんなで帰ろうよ。足の痛みとかもポーション飲んだら治るんだろうけど、少しは便利すぎるこの世界で不自由なのを楽しまない?」
「っ…」
そうユーランに告げた千棘の表情は優しさに溢れており、そんな千棘の表情を見たユーランは胸が苦しくなる様な…でも心地のいい胸の痛みに顔を赤らめながら早鐘を打っている胸を押さえる。
そんなユーランに気付いたエルリはルエリに目配せをしてクスリと笑いながら声を上げる。
「ふふ…ではランランはちーちゃんの背中っていう特等席にお座りくださーい!」
「ああ、なるほどね…ただいまよりお屋敷に向けて出発しまーす!揺れる事がございますのでしっかりお掴まりくださーい!!」
「よし、みんなで帰ろっか!」
「ちょ!いきなり動くなよ…ったく…」
千棘の隣を歩くのはユーランからエルリとルエリに変わってしまったが、千棘の背中という特等席を得たユーランは千棘の首に緩く腕を回しながら髪の匂いと背中の暖かさを感じて目を閉じ身を委ねていく…。
■
青いベンチからユーランを背負い、屋敷に向かっていた四人はしみじみ今日という時間を振り返る。
「にしても今日はいい感じに気晴らしできたね?やっぱりみんなとの時間を早く作りたいなー」
「うんうん。久々にこんなのびのびお店みたかも!」
「そうねルエリ。みんないっぱい働いてるから私達だけ先に堪能ちゃったけど…ランランも楽しかった?」
「……」
エルリはユーランにも今日の感想を求めたが反応が無く、不思議に思いながら首を傾げてもう一度問おうとするが千棘が人差し指を口元に添えてエルリに伝える。
「あれ?ランラ『シー』…ふふ、寝ちゃったのね」
「うん。慣れない事をしたからかぐっすり寝てるよ…ありがとね?エルリ、ルエリ」
千棘は今日一日色々頑張ってくれたエルリとルエリにお礼を告げるが、ルエリは首を傾げながら千棘へ言う。
「…僕は何もしてないよ?頑張ったのはエルリだもん」
すると千棘は苦笑しながらもルエリが頑張っていた事をちゃんと説明する。
「いやいや。エルリから頼まれたんでしょ?ユーランのお披露目する為に僕の気を逸らす様に」
千棘から言われた内容に心当たりがあったルエリは笑顔を作りながらも視線を逸らし、渋々と言った雰囲気をわざと作りながら千棘の言葉を受け取る。
「…まぁ、野暮な事は言いっこなしにしよ?一応僕もちーちゃんの感謝を受け取っておく!」
「私は素直に受け取っとくね!」
「あはは。…にしてもびっくりしたなぁ…ユーランってこんな可愛い格好似合うんだね?」
そう千棘が言うとエルリが自然と口を開くが、途中まで言って失言した事に気付く。
「ランランはみんなにバレない様に一人で結構可愛い服を部屋で着て…あっ、これ内緒だからね?」
「え、それ僕も知らなかった!」
「いくらルエリでも女の子の着替えを覗くのはダメだもん。…まぁ、私達だけの秘密って事で」
「りょーかい。三人だけの秘密って事で」
三人でユーランの意外な一面に微笑ましい表情を作り、内緒を共有した千棘はふと違和感を感じる。
「あれ…ここってこんな人通り少なかったっけ…」
「もう夜になるしこんなもんじゃない?ね?エルリ」
「まぁ夜になるし…こんなもんなのかな?」
もうすぐで魔石の光が無ければ暗闇に包まれる時間帯だとしても、明らかに人通りが全くない事に気付いた千棘は周囲に意識を集中させると、誰かがこちらを見ている様な感覚を覚える。
「ん…ちょっとエルリ、ルエリ?」
「ん?どうしたの?」
「…今気づいたんだけど、誰かに見られてない…?」
するとエルリとルエリがさっきまでの楽し気な表情から鋭い目つきに変わり、何処から襲撃されてもいい様に身構えるがエルリとルエリは何処から見られているのか分からず、少し焦ったように口を開く。
「ごめんちーちゃん…僕、何処から見られてるのかわからない…」
「私も…ちーちゃんどの辺から見られてるの…?」
「いや…気のせいと言えば気のせい何だろうけど…おかしいな…」
そう言いながら千棘は背負っているユーランを胸の前で横抱きに抱え、右眼に意識を集中させて神の権能を使って事象を読み取っていくが…
「あれ…ダメだ。何も視えない…?」
「ちょ、それ不味いんじゃないの!?ルエリ備えて!」
「わかった!」
これから起きるであろう事象が全て霧がかかった様に見え、これから何が起きるかわからないにも関わらず、焦って武装をインベントリから取り出すエルリとルエリとは対照的に、千棘は不思議と危機感を一切感じなかった。
「いや…エルリ、ルエリ。剣をしまっていいよ」
「え!?」
「まず神の権能が阻害されている時点でおかしい……あぁそう言う事か」
「…?」
勝手に一人でこちらを見ている人物に結論付けて納得している千棘をエルリとルエリは不思議そうに見つめると、突然千棘がユーランを起こさない程度に抑えて声を上げる。
「おーい!そんな所で見てないでこっちおいでよセッテ!」
「えっ!?セッ!?」
千棘が呼んだ名前に驚いたエルリとルエリは大声を上げてしまうが、ユーランが寝ている事を思い出して両手で口を塞ぎながら千棘が見つめている建物の陰を一緒に見つめると、建物の陰から人の様なシルエットを形どった白い布が音もなくこちらに近づき目の前で止まる。
不思議そうに白い布を見つめていた千棘達はいきなり勢いよく白い布が宙に舞った事に驚き、白い布に隠された姿が見えた瞬間、驚きの表情のまま声をあげてしまう。
「「え!?ちーちゃん!?」」
「はぁ…いつになったら気付いてくれるのかなと思ったら…私が人払いしなかったら誰も気付かないでお屋敷に帰ってましたよね…?…皆さん?私の話、ちゃんと聞いてます?」
「い、いや…せ、セッテ…だよね?」
「はい、セッテですよ?」
「ちーちゃんが二人…?」
「何言ってるんです?エルリちゃん、ルエリくん。私はセッテですよ?まぁ、姿は千弦さんと同じなのでエルリちゃんとルエリくんみたいに双子ですね?」
白い布から出てきたセッテの姿は何もかもが千棘と瓜二つで、今着ている服すらも一緒だったがある一ヶ所だけが確実に千棘と違っていた。
「ええっと…それ…む、胸…だよね?」
「ふふふ。千弦さんはすぐ胸に目を付けるんですね?エッチですね?」
「い、いやいやいや!?そ、そうじゃないでしょ!?」
「私は女神ですよ?胸があって当たり前じゃないですか?」
「だ、だからって僕の身体を女体化させる!?ってか、何で僕と瓜二つなの!?」
「しー。ユーランちゃんが起きちゃいますよ?」
「っ…な、何でセッテは僕と瓜二つの身体を作ったの…?」
声を抑えた千棘はもう一度何故その身体を作ったのか問うと、セッテは千棘とそっくりな笑みを浮かべながら指を立てて説明する。
「本当はちょーーーーぜつ美人なパーーーーフェクトな女神ボディを作ろうと思ったんですけどね?流石に一からだとすーーーーっごい時間がかかりますし、時間短縮という事で千弦さんをこの世界にお連れした時の情報を元に、身体をそのまま引用して女神バストだけを作ったんです。どうです?完璧な胸でしょう?スリーサイズ聞きます?」
「「「………」」」
「ご清聴ですね?えーっと確か上から『聞きたくて黙ってたわけじゃないから!』…まぁまぁ冗談は置いておきまして、実際は千弦さんの身体を元にしたのは時間短縮だけじゃないんですよ?」
「「「………」」」
「そんなに疑いの目を向けないでくださいよ…例えば千弦さんの今の身体がいなきゃおかしい場面で、アエリアちゃんの身体やコルちゃんの身体でやらなくちゃいけない事が出来たら…どうします?」
「……ああ…そう言う事か…」
「そう言う事です。なのでこの姿が丁度いいんです。それに元々女の子だったとしても可愛い顔だったので一石二鳥ですね?千弦さん」
「うう…自分と喋ってるみたいで違和感しかない…エルリとルエリはいつもこんな感じなの?」
「いやー…私達は生まれた時から一緒だから…」
「うん。特に違和感はないよ?逆に一緒じゃないと僕達は違和感を感じるかな?」
「そ、そうなんだ…?」
「ふふふ。エルリちゃんとルエリくんみたいに双子になりましたね?」
「それ二度目…母さんが若くして二歳しか年の離れてない双子の母親になっちゃったよ…ってか、母さんは最初から知ってたの?」
「ええ。那奈ちゃんは一週間前ぐらいから知ってましたよ?」
「マジか…なら何でもっと早く教えてくれなかったの?」
「どっきりサプライズですよ、サ・プ・ラ・イ・ズ。面白いじゃないですか」
「忘れてた…面白いか面白くないかで動くって事を…」
「まぁまぁ、立ち話もなんですし、お屋敷にいきましょ?私お腹空いちゃいました」
「そ、そうだね…エルリ、ルエリ…」
「う、うん…」
妙に疲れた表情の千棘と、嬉しそうな表情のセッテを見比べながらエルリとルエリは微妙な表情を浮かべ、自分達と同じ双子になった千棘の後についていきながらセッテの呼び方を考える。
「んー…ちーちゃんだし、せっちゃんかな?」
「…そうねルエリ。これからはちーちゃんとせっちゃんね」
千棘は後ろでセッテの呼び方を決めているのを聞きながらユーランを抱き直し、自分と瓜二つの姿で楽しそうにはしゃいでいるセッテを見つめて苦笑いするしかなかった…。




