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その箱を開けた世界で  作者: ナガズボン
第1章 鳳凰院 蓮火(仮題)
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アカズのダンジョンと異変4

よろしくお願いいたします!

 このまま帰ることが出来ると。

 そう思っていた駈と蓮火であったが。


 問屋が、卸さないよーっと二人の前に現れて来るような状況になる。


―――――――――――――――――――


 その異変に最初に気付いたのは駈だった。


 場所はダンジョンの二階層。

 あと二十分もすれば入り口に着くというところであった。


 駈は足を止める。

 そんな駈の様子を不審に思ったのか。

 蓮火は駈に問いかける。


「どうしたの?」


「蓮火さん」


 そう言って駈は壁の一部分を指差す。

 蓮火はそこを見た。


「潜ってきた時にこんな道ってありましたっけ?」


「えぇっ!?」


 なぜだか、すごく驚いている様子。

 今度は駈が蓮火の方を不審に思いながら問いかける。


「えぇっと、そんなに驚くようなことでしょうかねぇ?」


「だ、だって……」


 蓮火はとても言いづらそうに言葉を区切った。


 蓮火の様子を見た駈が少ししてまさか、と。

 

 駈は蓮火の続きの言葉を促すように声をかける。


「だって、そんな道なんて見えて……?」


「ないんだ……」


 駈は頭を抱える。

 そう言えば。

 輝花、あの何でも見通しているのではないかという駈のクラスの担任教師が言っていたではないか。


「もしかして……」


 蓮火も同じことを思い出したのか。

 ハッとした顔をする。


「「隠し部屋っ!?」」……ですかねぇ」


 という結論に二人して至った。


 あとさ……。

 気まずそうな、まるでこの事実に気付かなければ良かったと思っているような表情をして。

 蓮火が切り出した。


「他の冒険者って、このダンジョンに入ってから見たっけ……?」


 異常だ。

 異常が起きている。

 なぜそんなことにも気付かなかったのか。

 駈は自分を罵りたくなった。


「いや……見てない……ですねぇ」


 そうだ、明らかにおかしい。

 あれだけ入り口の前が混んでいたのにも関わらず。

 冒険者の姿を全く見ていない。

 人っ子一人見ていない。


「明らかにおかしいですねぇ」


「だよね……」


「もっと最悪な想像を言ってもいいですか?」


「出来ればやめてほし……」


「このまま道に沿っても外に出れないかもしれないですねぇ」


「やめてほしいって言おうと思ったのに?!」


 うがっー、と。

 耳を押さえ、その長い髪を振り乱す蓮火。


「蓮火さん」


 駈は蓮火の名前を呼ぶ。

 しかし、蓮火の取り乱しようは変わらない。

 駈は大きく息を吸った。


「蓮火!!」


「?!」


 初めて蓮火の名前を呼び捨てで呼んだ駈。

 その内心は、出来ればもっと甘いシチュエーションで呼びたかったと思っていたが。

 蓮火は大人しくなる。


「蓮火。僕のわがままを聞いてくれないかな?」


 蓮火は何も答えない。

 反応がないのを不審に思う駈だったが、辛抱強く待つ。


 やがて。


「はいぃ……」


 小さな小さな声で了承の返事をしたのを駈は聞いた。

 蓮火の顔は熱に浮かされたような。

 火を出すのではないかというくらいの真っ赤な顔をしていた。


 こんな状況じゃなかったらどうにかなってるんじゃないだろうか。

 蓮火の顔を見て、駈はそんなことを思った。


「僕はこっちの道に進みたいと思うんだ」


 そう言って、隠し部屋の入り口かもしれない、蓮火にとってはタダの壁に見えているだろう場所を指差す。

 敬語に戻すタイミングが分からなくなってしまった駈は、このままの口調でいくことにした。


「な、なんで……ですか?」


 顔はそのままだが、何とか気を取り直した様子の蓮火が駈にその理由を聞く。

 なぜか敬語で。


 さっきまでと立場が逆になっていると思った駈である。


「うーん、強いて言うなら勘、なんだけど……何か胸の中がざわざわするというか」


 それに、さ。

 駈は続ける。


「見てよこれ」


 さっきから気になってたんだけど、と前置きをして駈は自らの腰にある脇差の紐を緩める。

 それを手に取って、壁の方に向けた。


「光りが強くなってる気が……というか明らかに強くなっているんだよねぇ」


「ほんとだ……」


 壁の中へ続く道は見えなくとも、駈の手元の光りが強くなるのは分かった蓮火。


 改めて、駈は蓮火に向き直って問いかける。


「着いてきてくれるかな、蓮火」


 果たして蓮火は。


「はいぃ」


 弱々しいが、しっかりと意志を持った口調で駈に答えた。


 どうでもいい話だが。

 後日、この時のことを思い出す駈は、恥ずかしくなって数ヵ月は定期的に身悶えるのだった。

お読みいただきありがとうございました!

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