幕間 とある国でのとあるやり取り
とある国の薄暗い部屋で行われたやり取り。
「そっか、彼らは失敗しちゃったか」
「……ええ、どうやらそのようです。――と――から連絡が届いておりました」
それは動物好きと金髪ロングの名前だった。
「いつも通り、共にダンジョン実習なるものを行なった、と」
「ふーん、そっか」
「……いかがいたしましょうか?」
「うーん。あっ、そう言えば依頼を出した彼らはどうしてるのかな?――から前に写真を見せてもらった、あの醜い顔をしたリーダーのいる。えーと……」
「……モンスタークラスでしょうか」
「そうだ、モンスタークラス!」
「彼らの情報は……驚くほど入ってきておりませんね」
「そっか。まあ、ブサイクだからしょうがないよね」
「……否定はしません」
「あはは。それ肯定するよりも酷い回答だよ!」
あははは。
男は笑い続ける。
やがて笑い疲れたのか、目をこすりながら男は彼女に伝える。
「まぁ、彼らはもういいや。めんどくさいしブサイクだし」
一呼吸置いて、気軽な口調で鼻歌でも歌うかのように男は少女に伝える。
「次は君が行ってみるかい?――」
「……お望みとあらば」
少女は執事服のようなものをその身にまとっていた。
美術品としても名高い西洋剣のように整った顔は、キリッと引き締まっており、体型は細身でスーパーモデルのようにスレンダーだ。
百六十センチ後半という少女にしては高い身長も相まって、男装の麗人という言葉がピッタリ当てはまるような様相だ。
その髪は漆黒の闇よりも暗く、うなじを越えるほどの一本結びで、両こめかみからあごの方に向けて、たらっと一つずつ垂らしている。
「うん。じゃあまあ、そのうちね。ぼくが思うに、君は同年代の子との触れ合いが足りないような気がするんだ。まあ、諸悪の根源とも言えるぼくが言うのもなんだけど」
「……そのようなことは決してありません」
「ふふ。君は優しいね――」
「……そのようなことは……」
「はい、この話はもう終わり!」
パチンと両の手を叩き、男は少女に命令する。
「時期はぼくから伝えるとして、まずは目の前の仕事をこなそうか」
そう言うと、男は懐から手紙を取り出し、少女に手渡す。
「君のお父さんからの連絡だよ。ばかな人間がまた何か始めるらしい」
気にくわないよね、他人の都合に振り回されるのは。
男はさらに続ける。
「君は確か、あそこのところの娘と仲が良かったよね」
「……顔見知りではありますが」
「うん、まぁ、それでもいいんだけれど。その娘に手紙を渡してほしいんだ。あとは自分で判断すると思うから」
「……承知しました」
「うん。お願いね。あ、あいつらが気付く前に秘密裏に処理したいからなるべく迅速にお願いね。まあ、あいつらの中に、今回の首謀者がいないとも限らないけどさ」
彼らは劣等感だけはいっちょまえだからね。
男はそう言葉を締めくくった。
「……承知しました」
それだけ言うと、少女はその身に自らの髪と同じほどの闇色をまとい。
その場から忽然と姿を消した。
「うん、やっぱり彼女は天才かもね。魔法のキレがすごいや。親の教えがいいのかな?ねえ、どう思う?」
男が何もないかのように見える、暗色の空間に向かって、そう何思すると、そこが揺らぎ始める。
「お褒めの言葉、大変恐縮です。しかし、あれもまだまだです。私に気付きませんでしたからね」
「……ぼくでも気付かない時があるからね、君は。しょうがないと思うよ」
「お戯れを」
揺らぎから男が出てきて、自らの娘をそう評価する。
その顔は無表情かに見えたが、わずかに口元が緩んでいる。
娘を褒められた親バカの顔だった。
「……君ら父娘は時々、ものすごく分かりやすいことがあるよね」
「む、何ですかな」
「いや、何でもない、こっちの話」
それよりもさ。
元から部屋にいた男は、自らの手足と目、耳となっている男に向けて、もう一つのオーダーを出す。
「あの娘のフォローをお願いね」
やるなら徹底的にやらないとね。
それを聞いた男は少し、身震いをすると。
「……御意に」
それだけ言って男もまた、闇に消えていく。
誰もいなくなった部屋で、彼女たちの主でもある男が呟く。
「まあ、どういう手段かは知らないし、どういう手段で生き残ったのかも知らないけどさ。ぼくの戯れ事で死ぬ程度じゃ困るからね」
そういう意味では、一先ず及第点と言えるのかな。
それは誰も聞くことのない呟き。




