アカズのダンジョンと異変1
「実習用のダンジョンに変な人がいて駈君の力を試していった、か……」
分かっている。
自分が変なことを言っているのは。
ただ、全て真実なのだから仕方がない。
旧きものが変な人に変わっている以外は。
まぁ、旧きものも変人だったので、あながち間違いではないだろう、うん、きっと。
駈は言い訳するように内心で自己弁護を繰り返していた。
「その人が、駈君にそれを渡していったと」
蓮火から返却され、今は駈の腰元に戻った脇差を見て、彼女は話の内容を反復する。
「はい。何だか気に入られた……って言えばいいのか分からないんですが、贈り物だと言って置いていきました」
「ふむう。不思議な話だなぁ」
ヤバい、勘づかれたかっ。
そう思い、バレないよう蓮火の顔をそーっと伺い見る駈。
しかし、蓮火は首を傾げながらも、駈の話を疑っているような素振りは見せなかった。
(やっぱりピュアだ、この人……)
蓮火の将来が少しだけ心配になる駈である。
まぁ、いざとなれば魔法で全て解決出来るだけの力を持っているので、それは無用な心配であるかもしれないのだが。
「その人はボクが小さい頃、会ったことのあるおじさんなのかなぁ……」
「そう言えば、彼は着物……というか昔の侍みたいな恰好をしていましたね」
何か思うところのある蓮火の様子を見て、駈はたった今思い出した情報を彼女に伝えた。
「着物、きもの、キモノ……それと、侍かぁ」
うーん。
それでも蓮火の様子は変わらない。
駈がしばらく待っていると、
「あああ、もう分からないや!考えるの止め!!」
蓮火が頭を振り乱して突然叫び出す。
驚いて少しビクッとした駈。
「あっ、驚かせてごめんね?」
「いえいえ。もういいんですか?」
「うん!なんかもう考えたって分からないからさ!」
その内、何か分かるでしょ!
蓮火はそう言って、スッキリした表情を見せる。
蓮火の顔を見ても、先ほどのような何かに悩んでいる様子は見受けられない。
彼女の中では本当に、すでに終わった話として処理しているよう駈には見えた。
実に男らしい切り替えだった。
自分も、もう考えないようにしよう。
駈がそう思ったその時だった。
「ーーー」
「ん?」
誰かがすすり泣くような音がしたのは。
「ん?どうしたの?」
駈の様子に気付いたのか蓮火が声を掛けた。
「えぇっと、何か聞こえませんでした?」
「何かって……何が?」
「えぇっと…」
「ーーー」
「!?今です!」
蓮火は怪訝な顔をする。
その表情を見て、この音が聞こえているのは自分だけらしいと、駈は悟った。
「えぇっと……ボクには何も聞こえないけど……って、えぇ!?」
「どうしました?」
蓮火の視線を追ってみると、自分の身体の中心辺りに向けられている。
駈はとっさに、自分の股間を隠した。
「うぇっ!?いやいやいやっ、そっちじゃないから?!今の流れでなんでそこを見るのさ?!」
ボクがそんな女に見えるのかい!?
そう言って、憤る蓮火。
しかしながら、気を取り直すようごほん、と一咳入れる。
そして指を一本、上に突き出し上下させるようなジェスチャーをした。
もっと上ということだろうか。
自分の股間の上となると、めぼしいものは腰に駆けた脇差くらいしかないのだが。
そう思いながら、駈が自分の腰元に目をやると。
「な、な、なんじゃこりゃーーー!?」
先ほどまで黒かった脇差が。
驚くほと真っ白に染まり、ほのかに光っているのだった。




