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その箱を開けた世界で  作者: ナガズボン
第1章 鳳凰院 蓮火(仮題)
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ダンジョン入り口前にて

よろしくお願いいたします!

 駈と蓮火はダンジョンの入り口前に着いた。

 そこは夜八時を回ったのにも関わらず、乗ってきたバスの中身同様に混んでおり、行列ができている。


「君!入場規制がかかっているから、そのランクではこのダンジョンに入れないよ!おい、そこの君!列に割り込まない!はい次っ、君は入れない、ってこれもう5回目のやり取りだぞ!?いい加減帰れ!」


 冒険者証を確認する係員は忙しなく声を上げ、動き回っている。


 この混雑具合にも関わらず、二人の人員で回しているようだった。

 明らかな人手不足である。


 その様子を見た駈と蓮火は、げんなりとする。


「何かあれだね……入りたくないね」


「ええ、そうですねぇ……でも僕、授業料とか生活費とか装備代とか稼がないといけないので…ここまで来ていただいてあれですけど、もし嫌だったら無理しなくていいですよ」


「いや、乗りかかった船だからさ。手伝わせてもらうよ」


「ありがとうございます、助かります」


 二人は列に並び始める。

 すると、あることを疑問に思ったのか、蓮火が口に出した。


「それにしても、いくらなんでもこれは混みすぎじゃないかな」


「そうですねぇ。久しぶりに自然発生したダンジョンだからって少し変かもしれないですねぇ」


「うん。まあ、自然発生したばかりのダンジョンに入るのは初めてだから何とも言えないけどね」


 最後に日本でダンジョンが自然発生したのは十年ほど前。

 二人がまだ、初等教育に入ったばかりか否かくらいの年だったため、そこに潜るのは今回が初めてだった。


 そう言えば、と。

 駈が今思い出したというような口調で蓮火にしか聞こえないよう話し出す。


「隠し部屋がありそうだっていうのを聞きました」


「ええ!?聞きましたって……君それ誰に聞いたんだい?公式に出ているような話じゃないよね?」


 隠し部屋。

 モンスターハウスか、それとも宝箱ルームか、様々な場合があるが、大抵は良い影響があることの方が多かった。

 そのため、隠し部屋があると早い段階で分かったダンジョンは、初めに混雑する場合がほとんどだった。

 滅多に分かることはないが。

 入場規制が低ランク冒険者への支援と言われている1つの所以である。

 

 隠し部屋は、最初に気付いた者以外、そこへの入場を拒絶する、正確に言えば、その入り口を見えなくする。

 そのため、その存在を知った者はよっぽどのことがなければ他者には知らせない。

 自分だけで稼ぐためだ。


 しかし、モンスターハウスで強敵がおり倒せない、もしくはランクの高い宝箱があって自らの箱明けの魔法では開けられないといった場合、ギルドにその情報を売ることもできる。

 その売値も割高のため、隠し部屋を最初に発見した人物はどちらに転んでも良い思いをするのだった。


「はい。吉川先生、えぇっと、僕のクラスの担任の先生に聞きました」


「ああ、吉川先生ね。知ってるよ。有名な人だからね」


 それに、と続ける蓮火。


「前にあの10年ダンジョンに潜れって言ったの、吉川先生だからね」


 はっ、とする駈。

 やおらに頭を下げ、大声でお礼を述べる。


「その節は誠にありがとうございました!大変助かりました!!」


「ちょっ、いいよ!っていうか、声が大きいよ!注目されちゃうよ!!」


「すいません、わざとです」


「だろうね!分かってたよ!」


 おふざけに慣れた蓮火の様子に、駈は寂しい気持ちになった。

 駈はその寂しさを押し殺し、先ほどの話の続きをする。


「以前……稼ぎの良いオススメのダンジョンがないか聞いた時に教えてくれました……少し経ったら、すげえダンジョンが出来るぞ、と……もしかしたらそれが……今回のダンジョン……なのかもしれないです…」


「ああ、そう。君なんかテンションが下がってない?なんかごめんね?」


 押し殺せていなかった。

 駈は気持ちを切り替える。

 

「っていうか、それって自然発生する前の話だよね?もはや予言だね」


「詳しくは知らないですけど、そういう特性らしいです」


 羨ましいですねぇと。

 その声には様々な思いが込められている、蓮火はそんなことを感じた。


「でもさ」


 蓮火は何かに気づいたというようにある点について指摘する。


「それだったらさ。みんなはそのこと知らないはずだよね」


「うーん、確かにそうなんですよねぇ」


 駈は蓮火の言葉に同意する。

 そのことは、説明していて自分でもおかしいと思っていた。


 ならば何故だろうと。

 二人で首をかしげる駈と蓮火なのだった。

お読みいただきありがとうございました!

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