少年と少女のじゃれ合い1
バスは順調に、駈と蓮火を目的のダンジョンの最寄りのバス停へと運んだ。
蓮火との密着という極度の緊張からか身体のこりが酷く、冒険者の流れに沿ってバスを降りた後、駈は彼女に少しだけ時間をもらい、その固さをほぐした。
その後、辺りを見回すとダンジョン周辺の簡易な案内板があることを蓮火が見つけたため、二人はそれを確認する。
ここから十分ほど歩いた位置に目的地があるらしかった。
ダンジョンが自然発生したことを学校内の広報やテレビのニュースで知った時、すぐに行きたいと思った駈だったが、いかんせん初めての出来事だったため、少し敬遠していた。
予定が合えば、たまに一緒にダンジョンへ潜ることのある鈴や輝子を誘って一緒に行こうと機会を伺っていたのだが、都合がつかず。
結局、いつも潜っている学校からほど近いところにある、低ランク冒険者向けのダンジョンという慣れ親しんだ場所にせっせと通うのだった。
ちなみにそこは、低ランク冒険者への支援政策として、自治体が独自に入場規制を敷いている種のダンジョンだった。
一発の大きな稼ぎはないが地道にコツコツ潜っていれば、何とか授業料と生活費、ほんの少しの蓄えを出来る程度にはなるため、駈はそこに非常にお世話になっていた。
「ふーん、4年目なんだ」
バスを降りてからも十分ほど歩く必要があるとは知らなかった駈と蓮火だったが、その時間を使って先ほどの話の続きをしていた。
「ボクは5年目だから君が一つ年下だね!」
そう言って蓮火はなぜか、嬉しそうな顔をする。
駈と蓮火は同じ冒険者学校に通っていた。
そも、同じダンジョン、同じギルドで会った時点で予想はしていた駈だったが。
自分の方が歳上だと自慢気になる蓮火の様子を見て、駈は一つ、イタズラを思い付く。
「いや、俺の方が歳上だな」
口調も少し変える。
蓮火は訝しげな表情を見せた。
「俺は3年ほど遅れて冒険者学校に入ったからな」
その言葉を聞き、え、と口を開け間の抜けた顔になる蓮火。
それからあたふたし始める。
「そ、そうなんだ。じゃなくてそうなんですね!そうとは知らず失礼しました」
そう言って、勢い良く頭を下げた。
「そうだぞ!なのにさっきから生意気な口をききやがって」
口調を強いものにする。
その顔は笑っていたが。
蓮火はビクッとし、さらに謝ろうと急いで顔を上げる。
そして、駈の表情を見ると動きが止まった。
「すいません。冗談です。僕の方が年下です」
ペロッと舌を出す駈。
その顔を目掛けて、平手が飛んでくる。
平手かと駈は思ったが、その拳は強く握り締められていた。
何て男らしく躊躇のない動きだと思いながら、何とか避ける駈。
髪がうっすら赤くなっており、ゾッとした。
完全に自業自得であった。
「ちょっ、すんませんした!謝るんで許してください!」
「もうもうもう!ボクをからかったなー!!」
そのじゃれ合いはダンジョンの入り口近くに着くまで続いた。
傍目から見ると、美少女と戯れる駈。
その姿は冒険者たち男たちの嫉妬の視線を集めるのだった。




