表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRMMORPGの世界の果ての果ての果てまで旅をする  作者: 8TR残響
第一章、ゲームプレイ1日目
7/27

第六話 「はじめてのギルド(2)」

 んで、私は、ゼファーにつれられて、彼のギルド「氷中のフラワー・イン・ザ・アイスが保有する施設にやってきた。

 ここは町の中心部からやや離れたところで、しかし城壁に隣接するほど町の遠隔部でもない。静かなところで、でも利便性もきっちりとある、という優良物件だ。……私は不動産屋かっつの。

 まあでも、そのような一等地に拠点を構える、ということは、実力もあって賑わってるギルドなんだろう。 

 建物だって悪くない。というか趣味がいい。古い煉瓦づくりで、その煉瓦の多くは落ち着いた色彩。年月を経ていることを伺わせる。それだけ古い建物で、しかも堅牢そうだ。

 その煉瓦づくりの壁に、ツタ状の植物が這っているところもまたいい。ただでさえ古い感じのデザインなのに、そのような「自然と同居してる感」があるというのは、また独特の味わいを醸し出すものだ。……だから私は不動産屋かっつの。

 

「うーす」

 適当きわまりない挨拶をしながら、ゼファーはそのギルドハウスに入っていく。私も入る。しかし、どんな挨拶をすればいいのかわからない。とりあえず、不作法だとは知りつつも、ただゼファーの後を追うだけにとどめる。

「ようゼファー!」

「おかえりなさい、ギルマス!」

 そんな快活で、ひとのよさそうな声が響く。暖かい雰囲気だ。

 ゼファーもそれに答える。

「はっはっは、相変わらず暇そうなシケた面白みのねえ顔してんなてめえら!」

 するとギルド内のメンバー、

「殺すぞ」

「くたばれ顔だけイケメンクソ野郎」

「入ってきたなり何ですかこの人は。さっき手に入った高ランクどく……じゃなかった、ステキな植物をさしあげましょうか」

 一気に剣呑な言葉でボロクソ言われるゼファー! ああ、リアルとぜんぜん変わってない!

「てめえら……ギルマスに向かっていい度胸じゃねえか、かかってきやがれ! 全員叩きのめしてくれるわ!」

 そうやって軽口をまた叩くゼファー。BOO、BOO!とブーイングがあがる。まあ、ノリのいい連中であることはよくわかった。

 そんで、

「……あれ? ゼファー、後ろのひと誰?」

「女の子だよ……ね」

 怪訝そうな声、表情で私に注目が集まった。どうしようか。まあきちんと自己紹介はしとこう。 

 ……と思ったら、私がいう前にゼファーが口を開いた。

「ああ、連れてきたんだ、俺のリアフレ」

「マジで? ゼファーのリアフレ?」

「嘘いってどうすんよ」

「お前信用ないからなぁ」

「はっはっは、斬るぞ」

 たぶん、このひとたちをそのままにしておいたら、基本的にゼファーを中心にして、話がいつまでも先に進まないんだろうなぁ、って思った。たぶんそれがこのギルドの正解なんだろう。

 しょうがない。やっぱり私から口を開こう。

 それに、いつまでもフード被ったままで挨拶ってわけにもいくまいよ。ということで、フードを後ろにやる。髪がちょっとごちゃっとしたので、手で梳いて流す。

「ルルィと言います。ゼファーとは……まあ、リアルの知り合い。よろしくお願いします」

 

「「「………………」」」

 なんか、みんなの時が止まった。私のほうに完全に視線が固定化される。

 不思議なことしたかいな。

 すると、声があがる。ぽつぽつと。

「うわっ……」

「なにこのひと……」

「こんな知り合いいたのかよ……」

 え、なんか、知らず知らずの間に、ミスとか、失礼なことしたのかい私? 顔には出さないけど。こういう場合、突然うろたえるのは失策である。もしなんかあった場合、余計に混乱することになるのを、よく見てきたから知ってる。主にライヴとかで。

 ていうかミスあるならはよ言えよゼファー……というところで、再び声があがった。一斉に。


「「「すっごい美人!!!!!」」」

 ……その反応は、私考えてなかったよ!!!


「おい、ゼファー」

「ちょっと、ギルマス」

 何人かのひとが、ゼファーに話しかける。ていうか詰め寄る。つかみかかる勢いで。

「なんだ?」

「何だじゃねえ、このクソ野郎!」

「リア充、貴様どこでこんな上玉かどわかした!?」

「いや、ただ単に仕事仲間なだけなんだが。まあ……俺が仕事はじめた時からの、一番古い相棒なんだが」

 そうなんだよね。私とゼファー……ミュージシャン・橋場瑠璃と、同じくミュージシャン・風上西乃助は、ほんとに古い付き合いで、「相棒」って言ってるのは、私とゼファー(西乃助)が、基本的に、バンドを組んだり、共同で曲を書いたりしてるからで。生業なりわい的に、一番近しい間柄なのだ。


「死ねっ!」

「くたばれっ!」

「こんなステキなひとと仕事してるって、世の中間違ってますっ!」

 そんな相棒、ものっそいヘイトを食らうの巻。

 で、その中のひとりが、ふと気づいたように言葉を発する。

「……そうか! これはアバターのキャラメイキングで作られたビジュアル……?」

 すると、ゼファーは答える。

「いんや、こいつ、マント以外はリアルのまんま」

「死ねえええええええーーーーっ!!」 

 うーん。なんとしたものか。


 私は、いわゆる「クール系の美人」というカテゴリに属する人間であるらしい。

 まあ顔の作りは整ってるんじゃねえの、とは思うけど、そこまで騒がれるもんかいな、と常々思ってる。

 身だしなみには気を使っているが、それは自分がだらしない格好が嫌い、という意識なもんなだけだし。派手でもないと思うよ。だいたいいつも、色素の薄い長い髪で、カーディガンとシャツで、ロングスカート、というもんだし。それ、今もだし(マントを抜かす)。

 むしろ、こうやって生き生きとヘイトをくらって、大笑いしているゼファーのほうが、どんだけ魅力的に映るか、って思う。愛想のない面白味のない人間だしなぁ、と自覚してるからだ、私自身。加えて、自分の好きなようにしか生きれないし。女子力ってなんだろう。


 しかし。

 困った。完全に、これじゃ外様だ。場の混乱ってもんもあるけど、これじゃこのギルドに入っていけないんじゃないか? って思う。

 

 すると、そこに、奥のほうにいた小柄な少女が、こちらに歩みよってきた。

 

「ゼファーの……相棒……ってことは……お姉ちゃん!? うん、間違いないよ、その顔っ!」


 ん?

 私のことをお姉ちゃん呼ばわりする小柄少女?


 癖のある茶色の髪で、とても元気な様子が、目元からも、全身からもあふれている。

 少女は、ファンタジーの町人のような、キュロットスカートとベストを中心にした服装をしている。全体的に、すごい小柄だ。はっきり言って、高校生というよりは中学生といってもいい。

 でも。

 この顔、この体型、そしてこの「お姉ちゃん」呼ばわりの元気なノリを知っているのだ。リアルで。

 少女は、こちらに近寄ってきて、私の両手をとる。

 

「ひょっとして……」

「そう、いつも後ろのあの子だよっ! このゲームの中では、トルゼって呼んでね、お姉ちゃんっ!!」

 

 後ろっていうのは、この子がいつもギターの後ろで、ドラムを叩いているから。

 トルゼ、こと、北山十子きたやま とうこ。私の、これまた仕事仲間である。つまり、ミュージシャン。ドラマー。ちなみに、お姉ちゃんと呼ばれているが、実際の姉妹ではない。ないのだが……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ