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VRMMORPGの世界の果ての果ての果てまで旅をする  作者: 8TR残響
第一章、ゲームプレイ1日目
5/27

第四話 「はじめての町、はじめてのVRMMORPG」

 季節は春めいている。現実のそれと同期してるのかな? そこでゼファーに聞いてみたら、

「いや、そうではない」

 といわれた。ん?

「要するにだな、この世界は、常夏のところもあれば、常「冬」のところもある。じゃあ常「春」もあれば、現実と同じように四季があるとこもある。そんななんでもアリのファンタジー世界なんだよ」

 ふうん。まあ、そのほうが、世界にバリエーションがあっていいのかな。なにしろ、規模だけはデカいゲームなんだし。

 両足で、草の柔らかな感触を味わう。さくさくと。丘陵は一面、草萌ゆる。ところどころに、小さな春の花が咲いている。平和だなぁ。

 それにしても、こんなフードつきのマント(死神ルック)をしてるとはいえ、あまり暑くない。むしろ結構快適だといえる。こんな春めいているのに。

「あんまり暑さとかって反映されないのかな」

「まぁ溶岩地帯のダンジョンとかだったら話は別だが、基本ゲームだしなぁ。都合のいいお約束ってやつだ」

「ご都合主義だね」

「快適なご都合主義を否定していては、人生暗いぜ」

 それもそうか。


 んでもって、私たちは丘をくだったところにある、城壁のついたファンタジックな町にたどり着いた。

 城壁……うーん、ほんとヨーロッパの古都みたいな町ですな。

 入り口には衛兵が立っている。頑丈そうな鎧に身を包み、槍を持つ。顔つきはいかつい。ゼファーはそのひとに軽く手を挙げ、町の中に入っていく。

「今のもプレイヤーのひと?」

「うんにゃ。NPCノンプレイヤー・キャラクター。モブキャラだよ。ゲーム内キャラで、リアルプレイヤーじゃない」

「手を挙げる必要あるの?」

「まあそこはロールプレイって奴だ。あんまり【これはゲームだ】って決めつけてクールぶったプレイするより、この世界に浸りきったほうが感情移入できるぜ」

「本を読むとき、【こんなん現実じゃありえねー】とかっていちいち突っ込み入れるのが野暮なように?」

「わかってるじゃねえか、それでいんだよ」


 城壁は頑丈そうなレンガの壁。私が殴っても、私の手が折れるだけっぽい感じ。

 で、衛兵さんが立っているのは、そのレンガがアーチ状になってる門。うーん、作り込みが細かい。私が趣味で読む旅行記の写真を徹底的にリアルに再現したようだ。まあ当然であって、こういったゲームのリアリティは「いかに現実を再現するか」だから、作り込み大事だよね。それくらいはわかる。

 うーん、なんだか楽しくなってきた。


 町の中は、非常ににぎわっている。

 というか、雑多といっていい。

 着流しのお侍さんみたいな服装をしてる男のひともいれば、エルフの商人じみたひとが荷物を運んでいたりもする。背の低いドワーフなひとが斧をかついで闊歩していたりすれば、まるで騎士のような甲冑に身を包んだひとたちが、グループを組んでいたりする。

 年齢も、性別も、ごっちゃごちゃ。すごい幼いっぽい見かけの子供もいれば、後ろから蹴り倒せば即ぎっくり腰になりそうな爺様もいる。でもまあ、だいたいは若者が多いかな。

 なんだか、リアルの町みたいだ……ていうか、リアルの町よりも、活気があるように見える。


「にぎわってるね」

「まあなぁ。一応、ここいらのサーバのメイン都市であるし」

「サーバ?」

「うーむ、そこから説明か。要するにだな、このゲームのプレイ人口はすげー多いわけだ。ひとつのサーバだけではまかないきれない。そこで、ログインしたひとは、全国の空いてるサーバに振り分けられる。んでな、ひとつのサーバは、ゲーム内のある区画と対応してる。たとえば、俺たちがやってきたサーバは、日本の関東サーバのわりに新しいとこだ」

「それじゃ、ここは関東にあたるところ?」

「大ざっぱにいえば、な。ゲーム内の大陸の、極東の一都市ってとこだ。もちろん、ゲーム内の地理と、現実の地理は違うが、たとえばアメリカのN.Y.サーバでログインしたら、やっぱりゲーム世界のアメリカに対応したとこにいくわけだ」

「じゃあ、アメリカっぽいとこに行こうと思ったら、サーバを移転するわけ?」

「ざっくり言えばそうだ……つか、おまえ、世界の果てまで、って比喩でなくてか? あっちのほうにまで行くつもりか?」

「ていうか、この世界を本当に、果ての果ての果てまで、ほんとうに、全部回ってみようと思ってるんだけど」

 

 そこで、ゼファーは天を仰いだ。

 沈黙。

 なんかものすごい検討違いのこといったのかしら、私。でも私がやりたいことは、全世界の踏破だし。現実ではなし得ない、そのことをやりたくてこのゲームはじめたわけだし。


「なんか変かいな」

「お前……このゲームって、ものすげー広いんだぞ。現実とそんなに変わらねえんだぞ」

「だから行ってみよう、って思うんじゃない」

「いや、それはこの辺り一帯を散策してから言うセリフだな。様々なクエストは、ここの辺りだけでもいっぱいある。俺はてっきり、日本サーバの範囲をふらふら回る、って具合のもんだと思ってた」

「それは私にとって、ワンステップにすぎないよ。私は、世界の果てまで行きたいんだ」

「…………」


 再びゼファーは、天を仰ぐ。

 そんなにおかしいこと言ってるかいな私。

「あのな、ルルィ」

「なんでしょう」

「実は、このゲームは、始まって以来、世界一周、全世界踏破、っていうのは、【誰もしたことがねぇ】」

「誰も?」

「そう、このゲームのプレイ人口は、90年代の単なるMMOゲー時代から勘定して、もはや数えるのがバカらしくなるくらいの人数なんだが、そのうちの【誰も】、世界制覇はしてないんだ」

「なんで?」

「広すぎる、からだ。超シンプルだろ」

「でも、シンプルだからといって、達成難易度は低い、というわけではない?」

「ザッツ・ライト。そのもともとの広大さと、次から次へと有志によって拡張される新しいダンジョン、新しい町、そう、新しい区画。このゲームのウリだな。それは日進月歩で次から次へとどんどん拡張されていく。その事実ひとつとっても、この世界全踏破なんて無理なんだよ」

「なるほどねぇ。でもやるけど」

「話聞いてるのかお前」

「もちろん。その【踏破できない理由】は、私にとって【挑戦する理由】になるんだけど」

 

 そこで、ゼファーは天を三度仰ぐ……と思ったら、肩をすくめて、くっくっく、と笑った。

「まあ、お前らしい、っていえばそうか」

「呆れてる?」

「そりゃなぁ。でもまあ、そんなバカがいてこその、このゲームの深み、といえばそうかもしれん」

「バカで悪うござんした」

「まったくだ。とりあえず、まずはこのゲームのルール、というか基本事項を把握しろや。話はそこからだ。んじゃ、装備とか整えるぞ」

 その言葉は、言葉だけ見たら皮肉っぽいが、でも、言い方はすごく暖かかった。

 こいつはそういう性格なのだ。

 ゼファーは歩きだした。まあ確かに私は初心者だ。何事も基本は大事だ。それを押さえることにする。これもまた夢の第一歩だね。

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