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Blade:20




「さすがにそろそろ休憩しないか?」


「うーん、そうですね……。では少し休みましょうか」


あのあとから露店を七、八軒も回ったと思う正直俺はもうギブアップだ。よくフィアは疲れないよな、最近のお姫様はタフなのか?


「じゃあどこか休むのにいいところは……って、うん?」


休憩する場所を探しているとフィアと手を繋いでいる方とは反対の肩をつつかれた。なんだと思って振り返るとなんとも見た目から雑魚っぽい男三人組が俺に気持ちの悪い笑みを浮かべていた。なんだこのへんちくりん集団は?


「おい、兄ちゃん。可愛い子を連れてるな。俺たちにもその子の相手をさせろよ、独り占めは良くないぜ?」


ああ、またバカな奴らがやってきたよ。この辺には変なのがたくさん居るな……フィアを一人にしないで正解だったぜ。


「断る。痛い目に遭いたくなかったら俺の目の前からさっさと失せろ、バカども」


「んだと、このガキ!」


俺に声をかけてきた男の取り巻きの一人が顔を真っ赤にして憤慨する。その取り巻きAを手で制して声をかけてきた男が一歩踏み出して俺を睨む。


「痛い目に見るのはお前だよ、坊や。さっさと女を置いてママのところに帰りな」


ギャハハハ、と路上でバカみたいに笑う三人組。どっかの田舎の不良のような奴らだな。……つーかそうゆうのやめてくんないかな。さっきからフィアが怯えているだろ?俺の腕をしっかりと掴むフィアのその手は恐怖で少し震えていた。


「ビビって声も……「ていっ」ぎゃあああああっ!?」


さっきからベラベラ喋っている男の股間に思いっきり蹴りをぶち込む。ゴンッと鈍い音と僅かな金属音を残して男は白目を剥いて仰向けに倒れた。ズボンの中では男の象徴が大変なことになっているだろう。ククク、ざまぁ♩


「な、なんてことを……」


「こいつ、一切の躊躇いもなくやりやがった……。これが人間のすることかよ!」


泡を吹きながら崩れ落ちた男を見て取り巻きA、Bが股間を抑えながら恐怖で顔を青くする。俺を侮辱したんだ、いつもの五割増しで蹴ってやったぜ!


「お前たちもこうなりたくなかったらさっさと失せな。……さもないと使い物にならなくなるぜ?」


「「う、うわああああ!!」」


ニタァと口を歪める。

それを見た取り巻きどもは自分の股間を隠すように抑えながら器用に倒れた男を連れて逃げていった。


「ふう、正義は必ず勝つ。……どんな手段を使ってもな」


我ながら見事な足捌きだった。これなら国どころか世界を狙えるかもしれない。


「か、カイル君。あれはやり過ぎなんじゃ……」


震えて俺の影に隠れていたフィアがひょっこりと顔を出す。その顔には困惑の色が浮かんでいて、気絶した男のことを心配していた。あの変態にも慈悲の心を……ってなんか二話ぐらい前にも同じことを言った気がするな。


「ん?ああ、大丈夫大丈夫。もしかしたらダメかも知れないけど俺はあいつを信じるよ」


「そんな適当な……」


まったくもって根拠の無い理由でフィアを納得させようとする。あいつがどうなろうと俺は知ったこっちゃ無いし。


「そんなことよりあのベンチに座ろうぜ?フィアも今のでヘトヘトだろ?」


「はぁ、そうですね。分かりました」


こうして二人して木陰のベンチにへと腰を下ろしたのだった。













途中で変なのにも絡まれたがその後は順調に露店廻りが出来たと思う。気付けば時刻は夕方になっておりちらほら家に帰る者も多くなってきた。この辺が潮時かな……。


「そろそろ帰るとしようか?」


「え、もう帰るのですか?」


露店で購入した水飴に悪戦苦闘しているフィアにそう切り出す。

城への帰還命令に露店を回っている間ずっとはしゃぎ回っていたフィアが不満気な表情を浮かべた。

出来ればもっと付き合ってあげたいのだがさすがに帰らないと本格的にマズイからな。


「名残惜しいのは分かるけど、今日はここでお開きとしようか。さすがにこれ以上みんなに心配かけるのも悪いからな」


今頃城では血眼になって捜索していることだろう。イリーナが必死になってフィアを探している姿が浮かぶ。


「そう……ですね、分かりました。帰りましょう、カイル君」


城に向かって歩きだす俺とフィア。城までの道中は今日行った露店の話や普段の城での生活の様子などを話しながら帰った。まあ、後者はほとん愚痴のようなものだったが……。


「ああ。ところで、もう帰るだけだし『フィア』って呼ぶのも終わりにしたほうがいいのかな?」


このフィアという呼び名はソフィア姫だというのがバレないためにそう呼んでいただけであり、今となってはその名前で呼ぶ意味はなくなった。


「いえ、そんな、今日だけだなんて寂しいじゃないですか……。ですからカイル君さえ良ければこれからも私を『フィア』と呼んでください。その方が私も嬉しいですし……」


もじもじとこちらの様子を窺うように俺を見つめるフィア。その躊躇うように体を捩る姿がとってもキュートだ。できることなら是非ともお持ち帰りしたい。


「……本当にいいのか?」


「はい!その代わりこれからも『カイル君』とお呼びしたいなと。……ダメ、ですか?」


ぐっふわああああああ!なんだこの強烈な破壊力は!?もうこんな風に上目遣いで迫られたら男だったら絶対断れませんよ!


「滅相もない!好きなだけ呼んでいいぞ!」


「ふふっ♩ありがとうございます、カイル君」


クスッと笑うフィア。彼女の仕草のひとつひとつがとても愛らしく、見るものすべてをその虜にする。なんであんなに人気があるのか分かった気がする。


「城も見えてきたことですしもうここまでで大丈夫です。送ってくれてありがとうございました。カイル君」


「いや、気にするな。俺もフィアとデート出来て楽しかったからよ」


久しぶりにリア充気分を味わった。シェオルとなら昔に何度かデートと名目で一緒に街を歩いたが、それ以外の女の子となるとフィアが初めてかもしれない。


「……いつでも気兼ねせず会えるイリーナが少し羨ましいです」


「へ?それはどういう……?」


「どういう意味かは自分でよく考えてくださいね。でもここでただ別れるのもつまらないですし……、そうですね、カイル君ちょっと屈んで貰えませんか?」


「なんで?」


「いいから早くしてください」


「あ……ああ、わかった」


妙な迫力に押されてフィアの言うとおりに体を屈める。変な態勢なのでちょっと腰が辛い。


「ほら、言われた通り屈ん……」


「ちゅ……」


不意に右頬に温かく柔らかいものが触れる。それがフィアの唇だと脳が認識するのに数秒の時間が掛かった。


「ふふっ、一日守ってくれたお礼です。本当に今日は楽しかったです、また一緒にデートして下さいね?誘ってくれるの待ってますから」


フィアは恥ずかしそうにそれだけを俺に伝えるとそそくさと城の方へと走って行ってしまった。

……今、触れたよな?

ええ!?姫からほっぺたにキッス貰らちゃったぞ俺!くぁwせdrftgyふじこlp!!

……落ち着け、ここは深呼吸だ。ひっひっふー、ひっひっふー。

ふう、段々みなぎってーーーじゃなくて落ち着いてきたぞ。


「これがセウスバルト王国の姫の底力か。……フィア、恐ろしい子!」


一人寂しく芝居を打つ。もちろん返してくれる相手はいない。何とも言えない虚しい空気が辺りを包む。

ーーーだが、


「ぐへへへへへ」


そんなこともお構いなしで今の俺は舞い上がっていた。だってねえ、国中で噂の姫に頬とはいえキスされたんだぞ!これって俺に気があるとかそーゆー意味だと思うんだ。うん。

ああ、これで遂に俺にも春がーーーー。




「春がなんですって?」




ーーー訂正、春どころか極寒でした。

浮かれ度MAXな俺の背後には恒例の黒い精霊様が立っておられました。いやぁ、すっかり神出鬼没が板に付いてきましたね、シェオルさん。気配遮断スキルとか持ってたりします?


「こ、これは我が愛しのシェオル様ではありませんか!この私めになにかご用「……あのキスはなにかしら?」……」


ちきしょう、全部見られてました☆これじゃあ弁明のしようがないぜ、もう困っちゃうね!


「あのー、黙秘って出来ますでしょうか?」


「死にたいのかしら?」


「い、いえ、滅相もございません!すみません、調子こきました!」


地面に頭をなすり付けてシェオルに土下座する。我ながらなんて無様なんだ。てかもうシェオルには一生掛かっても勝てない気がする。割と本気で。


「詳しくは家で聞かせて貰うわ。ねえ、カイル?」


妖艶な笑みと一緒に紡ぎ出された死刑宣告。こんな状況でなければ見惚れるほどに美しく感じただろうその微笑みも今の俺には恐怖を募らせるだけのものでしかない。せめて、フィアの豊満な胸に触れてから逝きたかった……。


こうして、俺とフィアの一日はその幕を閉じ、ついでに俺の人生も幕引きになったとかなってないとか、そこは君たちのご想像にお任せしよう。

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