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Blade:18





あの竜退治から数日。俺が竜を倒したという噂は国内全体へと知り渡ったが、当の俺は相変わらずちびちびとギルド通いを続けていた。


「あーあ、面白いことないかなー」


トボトボと一人活気付く街の中を歩く。ここ最近は一人で歩いていると様々な人から声をかけられるようになった。挙句の果てはすれ違ったどこの誰かもわからないおっさんにも声をかけられる始末だ。竜を倒すだけでこんなにも知名度が上がったりするものなのか?


「まあ、いいか。ナンパ、ナンパと……」


ギルドに通う道中でナンパをするのが俺の日課だ。一日三ナンパがモットーの俺は常に回りの女の子に目を光らせている。

おっ、なかなかの美人さんを発見……って、ちぃ、男連れか。

じゃあ引き返えそーー


「や、やめてくださいっ!」


「いいだろ、ちょっと付き合えよ」


ーーうとしたが踏みとどまる。

どうやらカップルって訳ではなさそうだ。見た感じではあのガラの悪そうな男が女性に無理やり迫っているように見える。

ふむ、ここは紳士カイルの出番だな。


「おい」


「あぁ?なんだ……ってグバァ!?」


声をかけて振り向いた男に右ストレートを入れる。

不意打ちも一つの戦い方です、全然卑怯ではありません。


「いきなりなにすんだ……って、ゲ!お前はあのドスケベな上に変態で有名なカイル!!」


「誰がドスケベで変態で淫獣だああああ!!」


「そこまで言ってなっ……げふぅっ!」


人のことを変態呼ばわりしたクソ野郎にアッパーカットを決める。

クソ野郎の体は綺麗に宙を無い、そして顔面から地面に不時着した。ケッ、ざまあみろ。


「女の子を大切に扱わないお前にナンパは百年早えよ」


ナンパするもの常に紳士たれ、だな。

それにしてもまた一つこの国に蔓延る悪を倒してしまったぜ。

国王様、俺、またこの国を守ったよ!


「あ、あの……」


女性から声をかけられて振り向く、ってあれ?よく見るとこの人どっかで会ったような……。


「お嬢さんすみません。失礼ですがどこかでお会いしたことありますか?」


「わ、私です、ソフィアです」


ソフィアさん?

ソフィア……ソフィア、ソフィアか……。

ん?そういえば姫様もソフィアって名前だったな……って、あれ?もしかしてこの人って……、


「姫様?」


「はい!久しぶりです、カイル様」


ニコリと姫様が微笑む。

おお、姫様だ。服装と髪型が違うから全然気づかなかった。服と髪型を変えるだけでこんなにも雰囲気が変わるのか……女の子って不思議だ。


「姫様がなぜこんな場所に一人で……?」


「えっと、実はですね……」


















「………つまり、いままでの話を要約すると、退屈で城を抜け出して来たと?」


「はい!目立たないように服と髪も変えまして……」


確かに、服装は街の中に居ても目立たないような飾り気のない麻の服を着て普段真っ直ぐに流している長い栗色の髪を後ろで束ねていた。よく顔を見られなければ姫とはバレることは無いだろう。

でもなあ……マズいだろ。一国の姫様がこんなところを一人でウロウロしているのは。


「大丈夫なんですか?」


「ええ、もう五回目ですし」


もう既に五回も抜け出しているのか。大丈夫なのか、この国の警備は。


「でも、さっきこいつに絡まれてましたよね?」


地面に転がっている男を爪先で軽く蹴る。蹴られた男は気を失っているにも関わらず細かく痙攣し始めた。キモいな。


「えっと、それはですね……」


語尾を濁す姫様。どうやらなにも考えていなかったらしい。俺が通らなかったら結構ヤバかったんじゃないか、これ?


「こいつのような不埒な輩はたくさん居るんですから、姫様みたいな美人が一人で出歩いているのはとても危ないんですよ?」


「び、美人…ですか?」


美人と言われ恥ずかしそうに顔を赤く染める姫様。

あーもう、そういう反応するから余計危なっかしいんだよな。


「そうです。姫様は綺麗な方なんですから特に気をつけないとダメですよ、分かりました!?」


「は、はい。ごめんなさい」


しゅん、とうな垂れる姫様。ちょっと言い過ぎたと思ったが、これぐらい言わないと分かってくれそうも無いしな。


「じゃあ、城に帰りますよ。俺が送りますから」


「そ、そんな!まだ出てきたばかりというのに……。お願いですカイル様、ここは見逃してください!」


「でも、そういう訳には……」


「そう……ですよね。ごめんなさい、我が儘を言ってカイル様を困らせてしまって……」


うーん、このまま姫様を城に返すのは簡単だけどそれではあまりにも可哀想だな。よし、ここは俺が一肌脱ぎますか!


「分かりました。今回は特別に見逃します」


「え……、ホントですか!」


「でも条件があります」


「条件……ですか?」


見逃すと聞いて顔を輝かせた姫様だったが俺が口にした条件という言葉に首を傾げる。おお、可愛いな。


「姫様には俺と行動を共にして貰います。そうすれば変な輩からちょっかいをかけられることは無いでしょうし」


「でも、それではご迷惑なのでは……?」


俺のことを気遣って遠慮しようとする。本当に優しい姫様だ。


「俺は大丈夫ですよ、どうせいつもみたいにダラダラとギルドで依頼を受ける予定でしたから。それだったら姫様のような美人な方と一緒に街を歩いたほうが何倍も得ですし」


二カッと笑ってみせる。

前の世界のアイドルのように人気がある姫様と街でデート出来るなんてこの国の男どもが聞いたら発狂するな。


「なら……お願いします、カイル様」


「はい、不肖ながらこのカイル、姫様のお供をさせて戴きます」


こうして俺の今日の予定は姫様の護衛と決まったのだった。


「じゃあ、時間が無いので早速行くとしますか」


「はい、ですがこの方はこのままでよろしいのでしょうか?」


未だに伸びている男に姫様が視線を送る。こんなゴミ野郎にも慈悲をかけるとはなんてお優しい方なのだろう。シェオルなら話しかけた時点で消し炭にするのに。


「大丈夫ですよ、姫様。そのうち誰かが来て掃除してくれますよ」


「お掃除、ですか?」


「ええ、『掃除』です」


後で騎士団の連中に伝えれば飛んできてこいつを捕縛するだろうしな。


「では、改めて行きましょうか、姫様」


「はい!今日は宜しくお願いします、カイル様!」

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