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Blade:9

「うー、寝不足なうえに体痛てー」


目をこすりながら待ち合わせ場所であるギルドに向かう。シェオルの奴め、アインが帰ったら自分はさっさと寝やがって。俺の睡眠時間を返せ!しかも体中に縄の跡が地味に残っているし。変な勘違いをされたらどうするんだ、まったく。

……俺こんなんで今日竜なんか倒せるのか?

そんなことを考えているとギルドが見えてきた。まあうじうじしていても仕方がない。ここは気分を入れ替えて頑張るとするか!


「むっ、来たなってお前……なんだその隈は?」


ギルドの中ではイリーナと他二名の騎士が俺を待っていた。


「ああ、昨日ちょっとあってな。てかお前こそなんでここにいるんだ?今日来るのって騎士団の誰かって国王様は言ってたぞ?」


「私だって騎士団長という騎士団の一員だ。今は誰かのせいで仮団長の状態だがな」


ギロッと俺を睨みつける。おお、今日も絶好調だなイリーナは。


「あ、あの……」


「ん?」


イリーナと話していると片方の騎士に声をかけられてそちらを向く。

うっほお、またえらく可愛い騎士を連れてきたな!これも国王様の差し金か?まあ、何にしてもグッジョブ、国王様!


「カイル様……ですよね?決闘場での戦い凄かったです!まさか団長に勝てる人が居るなんて思いませんでした!あ、握手してください!」


凄い剣幕で迫られる。おおう、思っていたよりパワフルだな。お兄さんびっくりだよ。ていうか様付け?


「それはいいけど、君は?」


「あっ、はい!私はセウスバルト騎士団の団員、シオン=ダルキウスです!今回のクエストには自分から志願しました。未熟者ではありますがよろしくお願いします!」


ペコリと綺麗にお辞儀をする。

うむうむ、礼儀正しい子だ。誰かさんとは大違いだ。

イリーナに視線を向ける。すると俺の視線に気付いたイリーナはなんだ?と若干俺を威圧するような態度をとった。

まったく、よくあんな上司からこんないい子が育ったな。奇跡としか言いようがないぜ。うん。


「それで……その、握手を……」


「ん?そうだったな。はい」


シオンに右手を差し出す。すると彼女は自分の右手を服で何度も拭いたあと意を決したように俺の手に視線を向けた。


「そ、それでは失礼しまして……」


指先がそっと触れる。

始めは恐る恐るだったが、触れている場所が指先からだんだんと手のひらに移っていき最後には完全に手を握るようなかたちになっていた。


「わぁ……カイル様の手、大きいです。それにとても温かい……」


「そうか?まあ、男だからな。これくらい普通だよ」


三十秒くらいの間触れ合って手を離す。シオンは満足そうに俺に微笑んだ。


「ありがとうございました、カイル様!」


「ふっ、これくらいならお安い御用だ。なんならキスもしてやってもいいぞ?」


「ふぇっ!」


ボンッとシオンの顔が茹だったタコのように真っ赤に染まる。くくく、イリーナの部下なだけにこの子もからかうと面白い。


「貴様、私の部下に何をする気だ!」


「ぜぜぜ、是非お願いします!!」


「シオン!お前もなに言ってんだ!?」


イリーナがなんか言ってるが無視だ。多分どうでもいいことだろう。

すぐさまイオンの肩に腕を回し優しく体を引き寄せる。


「ふぁ……あぁ……」


「おい、ちょっ、お前たち!公共の場だぞ!慎みを持て!」


はいはい。イリーナは無視無視っと。


「うぁ、ひゃんっ、カイル様ぁ……」


シオンが艶っぽい声を出す。その嬌声を耳にしてギルドの中にいた男ども全員がこっちに注目した。

フハハ、モテない哀れな男どもよ、俺の勇姿に歯噛みするがいい!!


「ちゅっ」


シオンの額に唇を落とす。

さすがに初対面の女の子の唇を奪うほど俺も非常識ではない。

イリーナの時?ああ、胸を揉んだあれな。あれは俺的には不本意ではあったがあの状況を打破するために仕方なく……そう、仕方なくやったのだ、他意はない。……ホントダヨ?


「今はこれで我慢してくれな」


「あ…ふぁい。ありがとうごひゃいました」


スッとシオンを離す。ちょっぴりフラフラしているけど大丈夫だろうか?やり過ぎたか?


「お前は誰にでもあんなことをするのか?」


イリーナが俺を睨みながら尋ねてくる。あんなことっていうのは先ほどのシオンにしたキス……ようするにセクハラのことだろう。


「まさか!そんなわけないだろ!」


俺は俺が可愛いと思った女の子にしかセクハラをしない。むさ苦しい男などに興味はこれっぽちもない!!


「そ、そうか。そうだな、お前にもちゃんと考えがあるんだな。すまない、つまらないことを聞いた」


「ああ、俺がセクハラするのは可愛い子だけだ!」


「それって誰にでもってことじゃないか!!」


うがーっ、とイリーナが吠える。

ああ、誰にでもってそういう意味だったの?俺ってばわかんなかったわ。テヘリンコ☆


「まあまあ落ち着けよ。せっかくの綺麗な顔が台無しだぞ?」


「フンッ!お前の言うことは真に受けない!」


それだけ言うとスタスタとイリーナは未だ夢心地のシオンを連れて依頼の受注をするためカウンターに行ってしまった。ありゃりゃ、怒ちゃったかな?


「ふふっ、さすがですね。カイル殿」


この一連のやりとりをずっと黙って見ていたもう一人の騎士のイケメン兄ちゃんが口を開く。おおう、てっきり喋らないのかと思った。


「さすがってどういうことだ?えっと……あんた、名前は?」


「これは申し遅れました。私はセウスバルド騎士団副団長のレスタ=ハーダリアと申します。レスタ、とお呼びください」


「ああ、わかった。レスタだな。ところで話は戻るが『さすが』ってのはどういう意味だ?」


俺が尋ねるとレスタはフフッと笑う。そういうのはいいからさっさと教えろよ。


「すみません、でも可笑しくって……。団長があそこまで感情を露わにする方なんて今まで居ませんでしたから」


「そうなのか?」


なんか常に俺に対して怒っているような気がするが。


「団長は寡黙な方でして、あんなに表情を変えるのは私も始めて見ました」


「あいつが寡黙?あれのどこが?」


嘘つけ。あいつが発する言葉の殆んどが俺に対する罵声だぞ?


「私も大変驚いているのですよ。団長があなたの前ではあんなにも感情を露わにする、私たち騎士団が出来なかったことをあなたは簡単にしかも無意識にこなしてしまった。それにどこか悔しさすら感じます」


そう言ってレスタは何処か寂しげに笑う。

その横顔にあるのは後悔と羨望に俺には見えた。



「……お前はイリーナのことが好きなのか?」



その言葉を受けてレスタがフッと笑う。そして少しの間を開けて俺に告げた。










「いえ、私は熟した果実にしか興味ありませんから」










ま☆さ☆か☆の熟女好きだとおおおおおおおお!!

それじゃあなんだったんだよ、今までの会話は!

俺めちゃくちゃ恥ずかしい奴じゃん!

後悔と羨望が~とかちょっと思ちゃったじゃん!

なんでそんな思わせぶりなことするの?バカなの?死ぬの?


「女性は四十を超えてからが一番美しいのです。団長ではあまりにも若過ぎますから」


なにこいつ?こんなにイケメンなのに熟女好きとか残念にもほどがあるだろ……。


「ああ……、もういいよ」


まだ〈地竜(アースドラゴン)〉と戦ってすらいないのにどっと疲れた。

てかこの国の騎士団には変人しかいないのか?


「ははっ、これからも団長をよろしくお願いしますね。カイル殿」


爽やかにレスタが俺に告げる。

ホント、かっこいいのに勿体無いな。こいつ。

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