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「フゥ様の筋肉は、我々とは全く違う付き方をしています。我々が知るどの生物とも一致しませんでした」
どう調べたんだろうというのは置いておく。
「体の中とか分かるの?」
「ある程度は。また、現在の状態を"完治"として扱っていますが、この状態からの怪我は従来の治癒魔法で問題なく回復します」
フゥを抱き寄せる。こいつら、フゥを切って中を見たな。どこまで行っても、根は最低だよ。まぁ、僕も人のことは言えないか。
「内臓とかは?」
「それは、近しい生き物が幾つか見られます。特にフゥ様には、魔力を生成する器官が見つかりました。これは主に、魔物に見られる器官です」
「解剖学って、そんな進んでたんだ」
「いいえ。それに魔力を生成する器官は、他の生物にも稀に見られる事があります」
「人間にも?」
「…………それは、まだ」
「魔族にも?」
「…………」
濁したなぁ。人間の解剖は強く否定されるから、そりゃあ言えないか。
「1つ、質問しても?」
「ご回答出来るかどうかは、内容によります」
「フゥは、魔王城の最上階、"空席の玉座"の前で保護されたと聞いたんですが、これは一言一句正しい情報ですか?」
「はい。私が直接見た訳ではございませんが、同じように聞いております」
「その玉座とは、我々が見てそう判断したってことですか?それとも、本当に玉座があったんですか?」
いや、ノクターンは聞いてないなら、答えられないか。
「と、言うと?」
「仮に玉座が事実なら、魔王は座るという行為をしていたと考えていいですよね?それならば、魔王は少なくとも人型であるはずです、フゥが具体的にどんな筋肉の付き方をしたいたか僕は見ていませんが、仮にフゥが人間でないなら、魔王である可能性は低くなるかなと」
「……あぁ、確かに」
まぁ、じゃあフゥは何なんだという話だけど、僕にとっては、フゥは"リヒトにとって"なんだったのか。気になるのはそこだ。
……リヒトは本当に、僕なんて眼中に無かったんだろうか。ずっと俺の中のあいつを見てたんだろうか。
「シャッテン様の想像する魔王とは、どんなものですか?」
ノクターンが聞いてくる。考える仕草をする。
「そうだなぁ。人っぽくて、角があって、すごい魔法を使ってて」
「角は草食動物の特徴ですよ」
「まぁ……」
これもあいつの記憶か。産まれた時からここにあったその記憶や感情のせいで、僕は純粋な僕じゃない。今回それを思い知らされた気分だ。
「つまり魔王は、人と似たようなものだと?」
「では、ノクターン様の考える魔王とは?」
「王冠を被った魔物?」
「外付けの王冠は人の特徴ですよ」
フゥを見る。僕がペンを取り出した時には、ノクターンが机に紙を置いていた。ペンをフゥに渡す。
「フゥは魔王を見たんだもんね?」
フゥは頷く。
「どんな姿だったか、ここに描いてみてくれない?」
ペンを受け取ったフゥが、紙を見つめる。ペンを置いて、紙を持ち上げて見せてきた。
「………………」
「……それが魔王?」
「あ」
「白紙ですね」
「白紙だね」
フゥが文字の練習をする時、少しだけ絵について教えたこともある。絵という概念を知らないことは無い。その上でこれだ。
「姿がない。と、捉えるべきですか?」
「僕もそう思う」
でも、フゥは魔王は死んだと言ってた。怖いとも言ってた。確かに存在があって、それが死んだ。
「フゥは魔力が見えてます。もしもそいつが、魔力が見えないと存在すら認知出来ないとしたら」
「……玉座の説明は?」
「無理です」
「そうですか」
魔力を見る、というのは、あいつもやっていた。それを少しだけ見てた。手から溢れる極彩色。あれを纏った何かだろうか。
「フゥ、聞いてもいい?」
フゥが僕を見る。
「魔王の死体って、どこに行ったの?」
フゥが紙に書いた。
食べた
「は!?食べた!?どうやって……じゃなくて、なんで?」
フゥの肩を掴む。フゥは顔を逸らした。
「……ここまでの会話は、モスウッド様に報告させていただきます」
ノクターンが立ち上がる。
「ちょ……」
「大丈夫です。最後の会話は不明瞭な情報の為、混乱防止として公開しません」
「……いいの?」
「目に見えない魔王という情報すら、公に出たらパニックの対象です。情報の統制です」
「……そう」
「では、私はこれで。引き続きロズベールを監視に置きます」
ノクターンだけが退室する。静かになった部屋でフゥを見る。
「……フゥ、教えてくれないか?魔王を食べた理由を」
「…………い」
何か言おうとして、フゥは紙を取った。
にんげんになりたい
それだけ書いて、フゥが転移魔法を使った。ロズベールと残された部屋で、フゥが書いた紙を手に取る。魔王を食べることと、なんの関係があるんだ。
「……探さないと、不味いですよ」
後ろからロズベールがつつく。そんなことは分かってる。




