↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/33

23

魔物。


魔王の名前が出るよりも前から、海の中や山間部の奥地等で生息が確認されている生き物。地域によって見た目の変化はあるが、共通して魔力を持っている。


「フゥ!!」


ヴェイルを狙った触手の振り下ろしは、何も捉えることなく地面を抉る。レオロスとカシアンも手元にある。構えるヴェイルを阻むように手を出す。


無視したヴェイルが火球を撃ち込む。魔物の身体が焦げるが、動きを止める様子はない。


「いい、逃げるぞ」


「大丈夫先生。殺せる」


「かもな。だから逃げるんだよ」


「は?」


「今は色々五月蝿いんだよ。フゥ、頼む」


既にレオロスとカシアンは転移済だった。次にヴェイル。僕。旧校舎の影に転移した。魔物からはそれなりに距離がある。最後にフゥが転移する。


「あれじゃ、今度は街に行っちまうぞ!?」


「かもな」


「…………だったら、さっさと殺さないと」


「街での無断討伐、ましてや魔法の使用は禁止だ。教えたはずだ」


「そんな事言ってる場合かよ」


「万一市民に魔法が当たったら、その責任はお前の家が持つ事になるんだぞ」


家、という言葉に、ヴェイルは黙る。僕だって、馬鹿らしいとは思ってる。


「その通りだ」


声に振り返る。2m程ある鎧が歩み寄ってくる。フルフェイスの兜で顔は見えないが、声からしてモスウッドだ。


「……本当に重そうな鎧だ」


「そうでも無いさ。スーツの方が息苦しい」


こちらを一瞥して、モスウッドは魔物の方に向かう。街の周辺の魔物等の危険生物の討伐は、近衛騎士か正式な依頼を受けた冒険者以外は認められない。

故に対処にはワンテンポ遅れる。市民が発見してから、何時も建物ひとつは破壊されている。


だから今回のモスウッドは早すぎる。現れてまだ3分も経ってない。


モスウッドが剣を抜く。太い直剣を逆手に持つ。魔物の触手を左手だけで弾いて受け流す。

走ることなく、怯むことなく、止まる事なく、ただ淡々と魔物に近づいていく。


その触手の攻撃を受け流し、魔物の体勢が少し下がったタイミングで、モスウッドは触手の根元に剣を突き立て、そのまま引いて裂く。吹き出す血に、僕の近くで座り込むヴェイルの喉が小さく鳴った。


怯む魔物に、モスウッドはまた歩み寄る。腰に提げていた鎖を取り出し、先端を振り回す。逃げようとした魔物の身体に、鎖を投げて巻き付けた。モスウッドは確かに大きいが、それは人間の中の話。魔物の大きさは、モスウッドの5倍はくだらないのに、魔物はモスウッドに引っ張られて動けない。


魔物が暴れるのを、モスウッドは鎖を引きながら、剣で受け流し、ステップで回避し、何度も剣を突き刺しては裂いていく。


何度目かの突き刺しの後、魔物がぐっと項垂れ、そして動かなくなった。モスウッドが剣を抜き、鎖を解く。


「さて……」


鎖を巻き終えたモスウッドが、こちらを振り向く。


「魔王が出たと、そう通報を受けたのだが。君たちで合ってるかな?」


ヴェイルが中腰になる。モスウッドが飛ばす鎖は、ヴェイルには当たらなかった。フゥがヴェイルを少しだけ転移させた。


「抵抗は認めたことになるが」


「……なんだよその言いがかりは」


周囲の人は何も言わず、ただこちらを指さす。横たわる虫の息のレオロスの呼吸が、嗤い声にも聞こえる。


最悪だ。モスウッドは何のつもりだ。そうならない為に、校長に金を受け取らせたんじゃないのか。


「フゥちゃん!逃げよ!!」


ヴェイルがフゥの手を取る。フゥはヴェイルと僕を交互に見る。


「……フゥ、お前の選択に任せる」


ヴェイルがフゥを強く引く。ふたりが1歩進んだ時、右腕に鋭い痛みが走る。肘から先が無い。地面に転がっているのは、僕の腕だ。

髪を掴まれる。腹から剣が突き出した。叫び声は出ず、呼吸もままならない。モスウッドの兜が、視界の横から顔を出す。


「お前……マジふざけんなよ……」


モスウッドは返事をせず、こっちを見て棒立ちのヴェイルとフゥを見る。ヴェイルは恐怖の顔をするが、それでも脚は前を向いている。


「君たちが魔族では無いと証明したいのなら、立ち止まりなさい」


モスウッドが剣を捻る。僕の脊椎にそれが当たる。痛みだとかそんな生易しいものでは無い。何故か頭も痛い。


「フゥ…………大丈夫……」


それだけ振り絞る。ヴェイルがフゥの手をぐっと握る。


「………………」


「……フゥちゃん?」


フゥはヴェイルの手を振りほどいた。そして僕の元に駆け寄ってくる。捕えられるヴェイルが微かに見える。


2人は逃げた方が幸せだったかもしれない。僕がもっと上手くやれていれば、こんな事にはならなかったかもしれない。


ざまぁみろって言うつもりでここまで来たのに、これじゃまだ言えな

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。