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フゥとヴェイルとイグリアが廊下を歩いているのを遠巻きに見つける。明らかに周囲が意図的に距離を置いているのが分かる。ヴェイルは気にしてない顔をしているが、イグリアは定期的に周りを見ては、隠れて不安そうな顔をしている。
『フゥを魔法学科に行かせるのはやめろ』
エンバーの言葉を思い出す。どこかからまた、あの呼び方が聞こえてくる。
「魔王だ」
ここまで酷いものだと、僕が理解していなかった。そこに問題がある。ムムに聞いていたら分かっただろうか。
「お、マーちゃん」
レオロスが3人の前に立つ。フゥは普通に手を上げて挨拶をする。ヴェイルは少しだけ間を置いて、普通のように挨拶をする。
「どうも」
「お前には言ってねぇよ」
「は?」
イグリアは何も言わず、ヴェイルの後ろに隠れる。
「マーちゃん、また決闘しようぜ。次はタイマンだ。マーちゃんなら、それでも余裕だろ?」
レオロスとフゥの間に、ヴェイルが割り込む
「マーちゃんって誰だよ」
「こいつの事だよ」
「フゥちゃんだけど?」
「マオーのマーちゃんだよ」
「……お前人の名前覚えるの下手なのか?悪いのは耳と頭のどっちだよ」
「あ?」
流石に歩み寄る。これはまずい。
「そもそも決着はついただろ。男なら潔く引けよ」
「ついてねぇよ引き分けだわ。あと男なら勝つまでやるだろ意気地なし」
「おい」
「「なんだよ」」
ヴェイルとレオロスが一斉にこっちを向く。一旦、泳がせよう。
「……いや、続けて。やばいなら割り込む」
2人とも訝しむが、そのまま口論を再開する。言い出したのはヴェイルから。
「マオーのマーちゃん?お前それが差別だって分かって言ってるのか?」
「おいおい、被差別同士だから意気投合か?じゃあここに居る奴らに聞いて回ってみろよ!お前らがあんな派手にドンパチやっておいて、何言ってんだよ」
「……テメェ」
「……やるか?」
「…………」
レオロスを睨むヴェイルの肩に手を置く。
「ヴェイル。やらなくていい。この口論はレオロスの負けで確定だ」
「三下の教師が何取り仕切ってんだよ」
「そういう立場だからね。その言葉をそのまま相手にぶつけた時点でアウトだ。影でコソコソ言うのなら、まだ千歩譲るけど」
「そんな事、教師が言っていいのか?」
「だからお前みたいな卒業伸ばしは嫌なんだ。余計な軋轢を産む」
「……ムカつくな」
「そもそもレオロスは、ヴェイルに勝つつもりでいるのか?」
「当たり前だろ」
「僕から言わせてもらうと、無理だと思うぞ」
「…………いい加減にしろよ!」
拳を振り上げたレオロスに、防御魔法の結晶板をねじ込む。そこに拳が触れたレオロスが後ろによろける。
「お前の改変魔法を再現してみた。引力の方も試そうか?」
「…………」
「流石に見れば分かるよ。教師なんだし」
さっき組んだままだった。
「………………」
レオロスは何も言わない。これで黙ってくれるのなら、これ以上介入の必要は無いか?
周囲のざわつきの大きさで、失敗したことを悟る。レオロスの眼は、今この場で殺る眼だ。
「……いいや、決闘だ」
ヴェイルが僕の前に出てくる。レオロスが立ち止まる。
「俺がどうとかじゃねぇ!友達が差別されてて引っ込むなんて出来ないね。カシアンだっけか?あの雑魚も連れてこいよ。2人ともボコボコにしてやるよ。死な無い程度にな」
「……テメェふざけやがって!!」
思い切り踏み込んだレオロスの間に入る。防御魔法は間に合わず、拳をモロに食らう。どっと周囲の声が大きくなるのと、視界が暗くなるのは同時だった。
グッと起き上がる。自分では一瞬のつもりでも、ここが保健室のベッドな時点で、もう次の段階に進んだ事を見せ付けられる。横にはイグリア。フゥが居ない。
「フゥは!?」
「…………」
その沈黙が答えだ。ヴェイルと行ったのか。
「もう決闘が始まるよ」
同じく教師のフィオナが顔を出す。呆れた顔で僕を見る。
「ただの研究員が、戦闘特化の生徒に口出しなんてするもんじゃないよ」
靴を履いてベッドから立ち上がる。それどころじゃない。
「ちょっと、聞いてる?」
「悪いが聞いてない」
「あの頭巾の子なら、自分から決闘に行ったよ」
俯いてるイグリアの手が小さく震えている。
「私……何も出来なくて……フゥちゃん、ヴェイルと決闘出るって……」
どこで間違えたかと言えば、おそらく最初からだ。
社会の目に晒す事で、より公平な視点を手に入れる?結局は強さと見た目で、魔族を通り越して魔王呼ばわりだ。モスウッドはこれを狙ってたんじゃないかと思いたくなる。
それとも僕が、フゥの意思を蹴ってでも、魔法学科を辞めさせるべきだったかもしれない。
保健室を飛び出す。とにかく急げ。




