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レオロスの防御魔法には、少なくとも2つの改変部品が組み込まれている。斥力と引力。
発動条件は、防御を成功させた時に出ると見た。
攻撃に利用できる程の出力は無いが、転移魔法と同じく、お互いの位置や体勢を崩す為のサブウェポンに近い。
高威力の技魔法は、それ単体でも容量が大きい。本人の魔力容量をオーバーして使うと、技の不発や遅延などの不具合が起きる。
軽量化をして使う手もあるが、本人の魔力容量はどうしようもない。軽量化してまで使うくらいなら、捻りを入れた魔法で相手を騙し、物理の一撃を入れた方が遥かに効率がいい。
レオロスの脇腹から血が滲む。本人はやる気十分だが、リミットは5分といった所か。それ以上は止めないと、流石に死ぬ。その傷口を、カシアンの氷が塞いだ。
「さーて。どうするかな」
「レオロス。メルプとのタイマンは行けそう?」
「……まぁ、やってみるかな」
レオロスがメルプに向かって駆け出す。メルプも前に出る。カシアンは、棒立ちだ。
レオロスの剣を、メルプが短剣で流す。レオロスが剣を下ろし切る頃には、メルプの短剣はレオロスの首を捉える。そこに割って入る結晶板に触れる直前、メルプがまた構えに戻る。
「お前の事、ずっと芋くさい根暗だと思ってたぜ。お前も勇者目指してるのか?」
「おかしい?」
お互いが致命打を入れられない。持久戦になるなら、傷を負ったレオロスが不利だ。フゥはもちろん、カシアンは相変わらず棒立ちで立ち尽くしている。
「どういう状況?」
ヴェイルが聞いてくる。
「物量と贋作では無理だと判断したんじゃないか?」
もちろん推察だ。カシアンはじっと前線を睨んでいる。その時を待っているのだろう。
パッと、メルプがレオロスの背中に動く。背中合わせの状態から、レオロスが振り向くフリをして正面に剣を振り下ろす。
メルプは転移しておらず、振り返ってレオロスの背中を捉える。その間に、氷の玉が浮いている。その氷玉をフゥが転移する一瞬は、レオロスが振り返る余裕を十分に確保する。
メルプの転移。再びレオロスの背中を取った瞬間、レオロスは振り下ろした剣を結晶板に当て、背中からメルプに突っ込む。
押し出されたメルプが転移で位置を戻した所に、レオロスがメルプの背中を切り付ける。
よろめいたメルプは止まらず、レオロスに向かい合わず、カシアンに向かって走り出した。
「え」
「クソッ!!」
レオロスが体勢を戻して走り出したが、そこをフゥが転移して距離を離す。
「邪魔だテメェ!!」
レオロスがフゥに切りかかるが、フゥは転移でパラパラと剣の軌道の外に転移していく。
レオロスがカシアンの方を見た時、氷魔法で妨害していたカシアンは既にメルプに距離を詰められている。レオロスの横の一閃が、フゥの義足を破壊した。
「魔力切れか?」
「…………」
カシアンの氷魔法をメルプが襲うが、メルプはそれを滑らかに躱す。氷を腕に纏わせたカシアンが、メルプの蹴りを受け止める。一瞬で体勢を戻すメルプが、蹴りと短剣を混ぜた攻戦を仕掛ける。
カシアンが氷の剣を生成する。メルプの短剣の攻撃に合わせるが、メルプの短剣は氷の剣をすり抜けた。
メルプが体勢を崩す前に転移して立ち直す。その背中にレオロスが構える。メルプの背中から剣を突き刺す。ニヤリと笑ったカシアンが、氷柱を生成する。
「……待て!!」
レオロスが叫ぶが、その前にカシアンはそれをメルプに向けて放つ。氷柱はレオロスの肩から、胴に向かって突き刺さる。フゥの転移魔法だ。位置を見誤り、氷柱を僅かに掠めた結晶板が崩れる。
「レオロス!!」
レオロスが倒れ、メルプから剣が抜ける。腹部からの血を無視して、メルプがカシアンに歩み寄る。
「…………やめろ」
「…………」
カシアンの氷魔法はメルプに当たらない。フゥの転移魔法で、全てが空中でぶつかり合う。フゥはわざと義足を壊させた。本当に魔力切れなら、今カシアンの氷魔法を捌けるはずがない。
贋作が空を舞う。パレードが終わる。
カシアンの前に立ったメルプの短剣が、カシアンの胸にゆっくりと沈んでいく。青白い氷と、赤い血が地面に落ちていく。
横のヴェイルは何も言わない。すぐに場内に走り出した生徒の中に、イグリアの姿があった。
凄惨な空気は一瞬で、治癒魔法を受けた3人が起き上がる。これが、治癒魔法が発展した世界の、僕の作ってしまった、嫌な常識だ。




