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レオロスが歩み始める。レオロスの周りに半透明の結晶板が浮かぶ。防御魔法だ。


「……わい、複数戦ってあんまり得意じゃないんだよね」


メルプがフゥに話しかけるが、フゥは頷くだけだ。


「それはただ、自分が実力不足だって言ってる様なものだぜ?戦いの行き着く先は戦争だろう?」


「じゃあ、それでいいよ」


メルプがケープの裏から短剣を抜く。フゥに向かって笑いかける。


「じゃあ……よろしくね。フゥちゃん」


フゥがサムズアップをする。レオロスに向き直ったメルプが駆け出す。空中に複数氷柱が出現し、メルプに突っ込む。メルプに当たる前に、氷柱は順番に姿を消して、レオロスの背中に現れる。

レオロスの結晶板がその氷柱とぶつかり、お互いが砕けて消える。


「なるほどな」


最後の氷柱が結晶板とぶつかった瞬間、レオロスが弾かれるように前に出る。一瞬でメルプとの間合いに入った。


「へ?」


レオロスの縦斬りを、メルプが横に飛んで回避する。レオロスがメルプの避けた方を見た時、メルプは避ける前の位置に立っている。


短剣の突きが結晶板で塞がれる。その瞬間、結晶板が光り、メルプが後ろに弾かれるように体勢を崩す。そのメルプを狙って、空中に氷柱が召喚される。


「わっ」


「避けろよ」


レオロスの剣が赤黒くなる。そのレオロスの目の前に、覆い隠すように氷壁が出現する。その氷壁から、赤黒い飛ぶ斬撃がメルプに迫る。


「やばっ」


メルプに当たる前に、赤黒い斬撃が消える。地面を手で押して、メルプは氷柱を避けながら身体を起こす。

氷壁が自壊し、嗤うレオロスがゆっくりと前に出てくる。


「あー。そういやそうだったな。魔力があったら全部ダメか」


「……フゥちゃん。ありがとう」


横で見ていたヴェイルが、口を半開きにして僕を見る。


「なにあれ」


「広く普及してる防御魔法と、斬撃を飛ばす魔法と、氷魔法だな」


「改変の中身だよ」


「詳しく知ってるわけないだろ。魔導書の中身はパンツと同じだぞ」


「……俺がフゥちゃんのパンツ覗いたみたいになるだろ」


カシアンの氷壁については、おおよそ検討がつく。あれは中身の当たり判定を消している、コライダー削除だろう。

外側の見た目だけを召喚するから魔力消費も少ないが、攻撃性能は一切ない。


よく使われるのは火の魔法だろう。木造の屋内で灯り使用する際、当たり判定が無いことで火事の心配は防げる。

 

幻術の類だが、普通に攻撃を当てた方が強いから、基本的に戦闘用の物でその設定をいじる事はほとんど無い。

今みたいな視界妨害に使うのか。面白い発想だ。それ以外にどう使う気だろうか。


メルプがフゥをちらりと見る。フゥは首を傾げるが、すぐに2人とも前を向いた。メルプがレオロスに走り出す。カシアンの氷魔法を全て避けながら、メルプは持っていた短剣をレオロスに投げた。

レオロスがそこに結晶板を合わせる。しかし結晶板は砕けない。メルプはすぐそこに居る。短剣も手元にある。


「フゥちゃんの」と、横のヴェイルが呟く。


メルプは更に1歩、少し横に踏み込む。読み合いの押し付けだ。メルプの短剣の突きを、レオロスは剣で受ける。一瞬の火花。レオロスがメルプの踏み込む直前の転移予測位置に結晶板を置くが、メルプが転移したのは、踏み込んだ後の場所だ。


メルプはゴーグルをしているので、瞬きの瞬間は相手には分からない。


この際、カシアンの氷魔法は一度も2人の視界には入らない。全てフゥが受け流している。ひとつを転移させ、次の氷魔法にぶつけて相殺する。

混ぜられた贋作を空のあらぬ方向に飛ばし、飛ばして砕けて、キラキラと落ちてくる氷は、パレードの演出のようだ。


メルプの短剣がレオロスの脇腹に刺さる。抜きつつ蹴りでレオロスから距離を取りつつ、もう一度短剣を投げる。


短剣はレオロスが結晶板で受け止める。その瞬間、メルプがレオロスに引っ張られるように前に出た。メルプの居た場所に短剣が落ちる。


レオロスの剣を、メルプがギリギリで躱す。転移頼りの守りに入る。


2人の足元から氷玉が出てくる。それが爆ぜて全方位に飛び散る。メルプの姿勢が崩れるが、ダメージは無い。当然レオロスにも無いが、彼はそのまま突っ込む。


2人の目の前に、短剣が現れた。レオロスがそれを剣で弾き飛ばす。彼が視線を戻した時に、メルプは彼の目の前には居ない。後ろだ。


レオロスが結晶板を張りながら、振りかぶった剣の先にもうメルプは居ない。後ろに回る前、つまりまた後ろ。


1回目の転移はフゥの転移。2回目の転移で、メルプ自身が戻った。メルプの転移の中に、突然メルプの転移のルールを無視した転移が入る。相手からしても厄介だろう。


メルプの蹴りを、レオロスの結晶板が守る。メルプが後ろに仰け反る。


レオロスの剣が赤黒く光る。大きく回転斬りをして、周囲に斬撃を飛ばす。氷壁が周囲に乱雑に立つが、そのほとんどを斬撃は貫通して行く。カシアンの前にある氷壁を除いて。


その氷壁の上に、メルプが立つ。既に短剣は拾ってある。カシアンと顔を合わせる。


「っ!!」


カシアンが構えた瞬間、カシアンは胴に大きく袈裟斬りを受ける。レオロスの斬撃の攻撃範囲に、カシアンが転移させられた。フゥから意識が逸れたせいで、フゥの転移対象に引っかかった。


「なっ!?」


「……気にするな。ギリギリ守った。まだ行ける」


カシアンの服の裏から、氷の粒が落ちる。


「…………それはそれで、俺の攻撃守られてんじゃん」


よろめきながらもカシアンは体勢を立て直す。観客は皆静まり返っている。魔法戦闘なのに、ほとんど肉弾戦だ。


状況が目まぐるしい。氷魔法が大量に弾けて落ちていく。



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