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「これはさっきの火の魔法に、対応する複数のプレハブを加えて威力を増強してるんだ」
ヴェイルが再度掌から炎を出す。使用者の多い魔法は、それだけ改変のツールも沢山出回っている。正直全ては追えない。
「じゃあ次は、連続した攻撃と行こうか!フゥちゃん!!」
火球を投げつけるように振り抜く。ヴェイルの手元で火球が割れ、前方を広範囲の爆炎で包む。フゥの姿は消えない。ヴェイルの後ろに立っている。
ヴェイルはすぐに振り返り、両手から小さな火球を連続で放つ。火球はまるで、フゥの身体をすり抜けるように、手前で消えて後ろで出てくる。
そのうちの何発かが、ヴェイルの頭上に送られる。ヴェイルはそれを避けながら、弾幕を辞めない。
「……先生?どういうこと?」
イグリアが僕の袖を掴む。
「何に対する質問?」
「私、何が起きてるのか、さっぱり分からない……」
イグリアは薬学の学科だ。専門外だから仕方ないか。
「頭巾の子、フゥは現状転移魔法しか使ってない。それを使って、飛んでくる火球を転移させたり、自分が動いて攻撃を避けている」
「そんなこと出来るの?」
「あの火球に、炎の粒に、魔力が付いているから、理論上は出来る。魔力のおこりはわかるだろ?」
魔法を使用した際に生じる、残穢みたいなものだ。今ヴェイルが避けられているのも、それを的確に認識しているからに他ならない。
「うん。あれ?」
「魔力のおこりより、もっと本質だ。こればっかりは才能の世界だよ」
確かリヒトも、それを持っていた。魔物の攻撃を上手く避けるリヒトは、攻撃よりも手前に、相手の魔力が迫ってくるから分かると言っていた。魔力が見えるというのは、どういう感覚なのだろう。
「……凄いんだ、あの子」
ただし、それはあくまでも磨いていない究極の才能の話。フゥはここまでで、少しずつ処理が遅れ始めてる。咄嗟に身体を動かしている場面もあり、少しずつ押され気味だ。
僕の元に来る前の事はもちろん分からない。もしかしたら彼女は魔王なのかもしれないし、魔王と戦ったのかもしれない。それでもこの新しい手脚を手に入れてから初めての戦闘にしては、かなり過激で長い。
ヴェイルもそこは理解しているだろう。フゥという才能の原石を見て喜んでる一方、「凄い、俺の負けだよ」と言う気は一切ない。
少しずつ、片目を塞ぐ。いつそれが崩れるか、見ていられない。治癒魔法が使えるからと言って、フゥが焼けるのは見たくない。
「シャッテン先生?」
見知った声に手を退ける。魔法学科の生徒のメルプだ。制服の上に山吹色のケープを羽織り、首からゴーグルを提げている。何故かイグリアが僕の袖を握る手を強める。
「なーんか派手にやってますね」
「……メルプって、転移魔法使ってたよな?」
「え?はい。結構弄ってるんで、どっか飛ばしてくださいは無理ですよ?」
「いや、あれに割り込んでくれない?」
目の前に居る大柄な生徒がこっちを見る。メルプは首を傾げる。
「いいですけど……止めたらいいんですか?どっちを?」
「火球をブッパしてる方。経験者が初心者に持久戦を押し付けてる」
「や。それは面白く無いですもんね。じゃあメルプ。行きまーす」
メルプがケープのフードを被り、首に掛けたゴーグルを付ける。大柄な生徒に向かって突っ込む。メルプを捕まえようとしたのを、メルプは跳躍して軽々と踏み越えていく。
場内に入ったメルプを、ヴェイルが睨む。
「邪魔すんなよ!!」
ヴェイルの爆炎を、メルプは大きく飛び跳ねて避ける。そこにヴェイルが、追い討ちで火球を撃ち込むが、メルプは既に地面に居る。
「チッ!」
ヴェイルの火球を、メルプは魔法を使わずに躱して行く。左右に動き、身体を捻り、あっという間にヴェイルの目の前まで来た。
「よっ」
「舐めてんのか?」
ヴェイルが徒手格闘を仕掛ける。メルプはそれを最小限で受け止めた後、大振りの蹴りを入れた。ヴェイルは当然のようにそれを受け止める。
「馬鹿がよ!」
ヴェイルのカウンターパンチを、メルプは最小限で受け止める。姿勢が変わっている。
「は?」
メルプの次の大振りの蹴りは、ヴェイルの顔面に綺麗に入る。ヴェイルが顔を戻すよりも前に、既にメルプの追撃の拳が入る。そこからはメルプの連続攻撃になった。
「え?え?」
「視界がバグるよな」
イグリアはもちろん、止めようとした生徒までもが、それを見て止まっている。
「えっと、転移魔法、なんですよね?」
「あくまでも素体が転移魔法なだけで、改変されてるから」
通常転移魔法は、指定する人や物を、指定した場所に転移するという手順を挟む。プレハブ内でそれを予め決めておくことで、発動に掛かるコストを抑える事が可能になる。
「メルプの転移魔法は、自分を、最後に瞬きをした位置に転移するって改変魔法だ。回避にも使用しているが、メインの使い方は攻撃後の後隙消し。モーションキャンセルだね」
ダウンしたヴェイルの前でメルプがフゥにピースをする。
「イェイ」




