【第一章エピローグ】いつか訪れる未來
これは、公爵によるクーデターが失敗に終わった日から数年ないし十数年、或いはもっと先の未来に起こる話である。
「ユリア、玄関でお父様が待っていますよ。
来ないなら置いて行きますよ」
母の呼ぶ声が聞こえてもユリアは椅子に座って何かを夢中で読んでいる。
「また、お父様が大切にしているノートを持ち出して読んでるのですか?」
待ちかねた母がユリアの部屋に入って来た。
「だってお母様、ここに書かれているお話はとっても面白いんですもの」
ユリアの面白い物好きは完全に母からの遺伝である。
「早く来なさい。
本当に置いて行きますよ」
「はーい」
ユリアは読みかけのノートをそのままにして、母を置いて駆け出していった。
「もう、ちゃんと片付けて行きなさい」
母が注意した頃にはユリアの姿は部屋になかった。
「もう、窓も開けっ放しね」
母がそう言った瞬間に窓からの風が机の上のノートをパラパラと捲った。
母は窓を閉めてノートをそっと閉じた。
そのノートの表紙にはこう書かれていた。
≪異世界発明日誌≫
魔導具研究所 ミズシマユウイチ
「あれから随分と経ちましたね……」
ノートを見つめて母はしみじみと呟いた。
「お母様、早く来ないと置いて行きますよ」
玄関から母を呼ぶユリアの声が聞こえた。
「今日は、どんな面白い物と出会えるかしら」
母は微笑みながら玄関へと歩いて行った。




