表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

73/87

【番外編】クーポン券

  私の名はリーネ。


 最近は"リーネレッドの方が有名ね"と言う件はもう飽きてしまったわ。


 今日は休日で、私は自室の机の上にある絵の描かれたニ枚の紙を見詰めている。


 これは、研究所でインターホンと言う魔導具の発明に繋がる雑談をしていた時に所長から渡された物なのだけど……


 一体、どう言う物か説明を聞き忘れていたことに気がついたわ。


 所長が"くーぽんけん"と言っていた記憶はあるけれどそれだけでは何のことかさっばり分からないわ。


 もし、"クーポン犬"ならこの紙に餌を与えると犬になる魔導具じゃないかと私は考えた。


 あの所長のことだから、それぐらいのことは平気でやるはずよ。


 取り敢えず私は台所にあったキャットフードを与えて暫く様子を見ることにした。


 フッ……


 さすがに"クーポン犬"のはずがないわね。


 私もアルマ様と同じように所長の思考に毒されているのかもしれないわ。


 私は冷静になるために大きく深呼吸をした。


 そして、"クーポン犬"でないのなら、"クーポン剣"の可能性があるかもしれないと考えたわ。


 素材採集の時に私が所長から貰った双剣の様に振れば斬撃が飛ばせるかもしれない。


 でも、ペラペラの紙にそのようなことができるかしら……


 あの所長ならやるかもしれないわ。


 物は試しね。


 取り敢えず、紙を持って双剣の様に振ってみた。


 ふー、ただ疲れただけだわ。


 "クーポン剣"ではないのなら"クーポン拳"かもしれないと思って紙を握って交互に繰り出してみた。


 ふー、更に疲れが増しただけだったわ。


 私は、ひょっとしたら攻撃ではなく防御のための物かもしれないと思ったわ。


 確か、素材採集の時に所長が"痛い思いをするのは嫌だから防御力に極振りした"と言っていたわ。


 だとすれば、これは結界を張る魔導具の"クーポン圏"の可能性が考えられる。


 もし、"結界の魔法"が発動するのなら、魔法陣が必要になるのだけど何処を探しても見当たらなかったわ。


 もしかしたら、"クーポン腱"かもしれないけれどこれは確かめようがないわね。


 私は方向性が間違っていたと思って暫く考え方てみたわ。


 何かを研究するための"クーポン研"や何かの料理を提供する"クーポン軒"の線も考えて見たけれど徒労に終わったわ。


 "クーポン件"だと何かの単位みたいだし、"クーポン権"だと何かを主張しそだけど、それなら紙にする必要性を感じないわね。


 私は、ここに来て完全に煮詰まってしまった。


 こう言う時は、"甘いもの"に限るとリリア様がよく言っていたのを思いだした私は買っておいたバーガー・カテドラルの新作スイーツを頂こうとお茶の用意をしたわ。


 お茶を一口飲んで私はリラックスできた。


 そして、バーガー・カテドラルの紙袋からスイーツを取り出した。


 その時に一枚の紙が床に落ちた。


 そこには、"バーガー・カテドラル専用クーポン券の説明"と小さな文字で書いてあったわ。


 表面には絵が描かれていたけど、裏面は文字ばかりが書いてあった。


 リラックスすると、こうした新たな気付きがあるものなのよね。


 文字を読んでみると"お会計の時に提示すると一割引き致します"と書いてあったわ。


 私は、ハッとして表面を確認した。


 机の上の二枚の紙にも同じデザインの絵が描かれていた。


「何よ、これを知っていたら昨日買ったスイーツは一割引きだったじゃないの!」


 私はガックリと肩を落としたわ。


 私の名はリーネ。


 昨日、少しだけ損をした女。



 だが、この出来事がリーネの原動力となった。


「所長、店舗がクーポン券を配布するメリットはあるの?」


 翌日、研究所に出社するや否や目を輝かせたリーネがユウイチを見付けて質問した。


「リーネ君、藪から棒にどうしたんだ?」


「これよ、これ!」


 リーネがバーガー・カテドラルのクーポン券をユウイチの目の前でヒラヒラさせている。


 ユウイチは作業の手を止めて、暫く考えをまとめてからリーネに次のような説明をした。


「店舗の主なメリットは、低価格や無料特典で心理的ハードルを下げて、お試し利用を促進すれば新規顧客が獲得できる。

 "再来店クーポン"で顧客離れを防ぎ、来店頻度を高めればリピート率が上げられる。

 "銀貨一枚以上で割引"などの条件で、関連購入や複数購入を促せば客単価の向上に繋がる」


 ユウイチは思い付いたメリットを簡潔に話した。


「何それ、店舗には良いこと尽くめじゃない?」


 リーネの目の輝きが更に増した。


「もう一つ、閑散とする時間帯や平日限定のクーポンで来店を分散させれば売上の平準化を図れる」


「所長、完璧じゃない!」


 リーネは喜びの余りユウイチに抱きつかんばかりの勢いである。


「だが、競合店とのクーポン券合戦になればメリットは失われる」


「なるほど、その辺りは店舗ごとにメリハリを効かせる必要がありそうね」


 こうして、クーポン券に付いて理解を深めたリーネは商業ギルドの加盟店に次々とクーポン券を導入していった。


 店舗毎の経営状況を考慮したリーネの巧みな戦術が功を奏して、加盟店の売上げが上がり商業ギルドの手数料収入も増加した。


 このことにより、リーネは後世で"クーポン券の伝道師"と呼ばれることになるのであった。

 


*****************


リーネの一人称の場面の最後に少し文章を追加しました。

2026.5.7


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ