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【番外編】所内ゴルフコンペ

 五人は休日を利用してミエスクがホークワイド領に作ったゴルフ場にやってきた。


 ユウイチは、この日のためにスウィフトに頼んでゴルフウェアを作ってもらった。


「私だけ着ていると、また"リリアモデル"と言われそうで心配です」


 ゴルフウェアが入った紙袋を渡されたリリアは、キャリーケースとスーツの再来を恐れているようである。


「だから、皆の分を作っておいたんだよ。

 女性陣は更衣室で着替えてくると良いよ」


 そう言ってユウイチは他の三人にも紙袋を渡した。


 暫くすると、着替えを終えた四人が戻ってきた。


「所長、色が決まっているのは何の意味があるのか説明してくれない?」


 トップスは赤のカットソーで、白のパンツを履いたリーネがユウイチに説明を迫っている。


「私は青でも構いませんわよ」


 青のポロシャツに白のパンツを履いたミレイは満更でもなさそうである。


 恐らく、パワードスーツ風子供服の様に青のポロシャツの売上げが一番になる自信の現れである。


「私はフェアウェイやグリーンに溶け込んでしまわないでょうか?」


 緑のパーカーに白のキュロットスカートとハイソックスを履いたアルマが心配している。


「今日は絶好のゴルフ日和ですね。

 早く打ってみたいです」


 黄色のニットセーターに白のキュロットスカートとハイソックスを履いたリリアはブンブンと素振りを繰り返している。


「スウィフトさんと商業ギルドがゴルフウェアの販売に乗り気なんだよ。

 だから、詳しいことは商業ギルドに聞いて欲しいな、あははは……」


 ハンチング帽に茶色のポロシャツを着てニッカポッカを履いたユウイチがリーネに釈明をしている。


 このところ、スウィフトの作業場に商業ギルドの職員が足繁く通い、新しいデザイン画を見付けると直ぐに販売企画を立てているようである。


 販売するに当たって、広告効果の大きいエンジェルズを利用しない手はない。


 故に四人はメンバーカラーのウェアを着用することになると言うからくりである。


「いいわ、帰ったら服飾担当者に確認するから!」


 子供服騒動以来、リーネは服の色に敏感になっているようである。


 リーネの怒りの矛先が向かった服飾担当者に何もして上げられないユウイチは、"どうか無事でありますように"と祈りを捧げておいた。


「そんなことより、スタート時間ですわよ。

 早く参りませんこと」


 切実な問題を"そんなこと"扱いされてリーネがムッとした顔をしているが、お構い無しにミレイは一番ホールへと歩いていく。


「じ、時間を守るのもマナーのうちです」


「あ、アルマ様の言うとおりです。

 早く行きましょう!」


 この場で竜虎が合間見えると誰にも止められそうにないと、アルマとリリアは空気を読んだ。


「そうだな、今日は日常を忘れてゴルフを楽しもう」


 ユウイチはアルマとリリアに全力で乗っかって、その場を離脱したのであった。


 それから、五人は一番ホールのティーグランドにやってきた。


 今日は所内コンペなので、ミレイの従者は同行していない。


 だから、ゴルフバッグなどは自分で運ぶことになる。


 その為、ユウイチはキャリーカートを用意しておいたのである。


「ゆ、ユウイチ所長、これは販売しないのですか?」


 キャリーカートを引きながらアルマがユウイチに尋ねる。


「要望があれば考えるが、貴族ならキャディーが付くだろうし、庶民なら自分で担いで移動する人もいると思うんだよ」


 恐らく、ゴルフ場でプレーするのは貴族が圧倒的に多いはずである。


 だから、キャリーカートは余り必要とされないかもしれない。


「アルマ様、販売するとなると色々な機能が付きますよ。

 私には音声機能があれこれと指示を出している未来が見えます」


「わ、私には、自走するキャリーカートがボールを打っている姿が見えました」


「はははは……

 二人ともさすがにそれはないと思うぞ」


 "タイガーVSドラゴンバトル"が始まるよりも、自分の魔導具を馬鹿にされている方が穏やかでいられるユウイチである。


「へぇー、教会本部が主導した割にはちゃんとしたコースになっているわね」


 コースを見たリーネは既にプレイモードに入ったようで、ユウイチはホッと胸を撫で下ろした。


「先ずは、リリア様からどうぞ」


 四人の中で、ドライバーの飛距離はリリアが群を抜いている。


 三人は前世の一般女性の平均(170ヤード程)であるが、リリアは女子プロの平均(240ヤード程)を軽々と超えているようである。


 これには三人とも心を折られるようで、いつもリリアにファーストショットを譲っている。


「では、お言葉に甘えて先に打たせてもらいます」


 そう言って、ボールをセットするや否やリリアは直ぐにスイングした。


 "バシッ"と快音を残したボールは、あっと言う間に遥か彼方へと飛んで行った。


「ラフに捕まってはいるが、凄い飛距離だな……」


 双眼鏡を覗きながらユウイチが呟いた。


「えへへ、私は飛距離だけは自信があるんです」


 飛距離を褒められたリリアが照れながら答える。


 数年も経てば"飛ばし屋リリア"の異名が付いているかもしれない。


「ボールをセットして、一呼吸おいてから打ってみると真っ直ぐ飛ぶかもしれないぞ」


「私は、難しく考えずにボールを打つ方が性に合っています」


「な、なるほど……

 それなら仕方ないな」


 ユウイチのアドバイスはリリアには響かなかったようである。


 そんなリリア曰く「ゴルフはシンプルイズベスト」だそうである。


「次はわたくしの番ですわね」


 そう言って、ミレイは悠然とティーにボールをセットしてアドレスに入った。


 背骨を真っすぐな一本の軸として前傾姿勢を保ち、お尻を少し突き出すようなセットアップは正に理想的である。


 グリップは力まず右手の力が程よく抜けている。


 それから、両腕と肩の三角形を維持したままゆっくりとスイングを始動させると、背骨や首の付け根を軸にしてコマのように体を左右に回転させた。


 頭の位置が上下左右に動かず、首の付け根を支点として腕とクラブが一本の棒のように動いている。


 恐らく、自分の力で振り回すのではなくクラブの重さを利用して自然に振り下ろしているようである。


 その結果、"パシッ"と快音を残してボールは美しい放物線を描いた。


 ミレイのティーショットは飛距離ではリリアに及ばないものの、見事にフェアウェイのど真ん中を捉えた。


「ミレイ君、全てがお手本の様なスイングだな?」


「ふっ、それほどでもありませんわ」


 口ではそう言っているがユウイチの褒め言葉に満更でもなさそうな表情である。


 そんなミレイ曰く「完璧なアドレスで完璧なスイングをすれば、結果は完璧」だそうである。


「つ、次ぎは私です」


 そう言って、アルマがティーグランドに立って風向きを見ている。 


 だが、前世のゴルフマンガでよく見る指をペロッと舐めるような、はしたない真似を貴族の令嬢はしない。


 後で聞いたのだが、アルマには風向きや強さによって風毎に違った色が付いて見えるようである。


 ボールが色の境目に沿って飛ぶと、風の影響を受けないらしい。


 逆に、フォローやアゲインストの風を利用することもできるようである。


 アルマ曰く「これは、風魔法ではありません」とのことなので信じることにする。


 もしかしたら、アルマは何処かの風が吹く谷の生まれかもしれない。


 だとしたら、緑のパーカーではなく青のパーカーの方が良かったかもしれないとユウイチは思った。


 余談はこれくらいにして、アルマの打ったボールもミレイと同じような位置に止まった。


「最後は私ね」


 そう言って、ティーグラウンドに向かうリーネの手にはメモらしき物が握られている。


 メモには自分で考えた各コースの攻略法がこと細かに書かれている。


 ユウイチは帰り際に見せてもらったのだが、そのまま販売できるほどの出来映えであった。


 リーネ曰く「戦いは前日に終わっている」そうである。


 だが、そんなリーネのボールもフェアウェイを捉えているがリリアの半分位の距離しか飛んでいない。


「さぁ、二打目に向かおう!」


「ゆ、ユウイチ所長、冗談にしては面白くないです」


「いや、俺は昔からゴルフは苦手だから……」


 何だかユウイチの歯切れが悪い。


「所長さん、苦手なら練習して克服しなければなりませんわね」


「そうね、上手くいかないのもゴルフの楽しさの一つよ」


「さぁ、遠慮せずにユウイチさんも打って下さい」


 そう言われたユウイチは、渋々ではあるがティーグランドに向かった。


「ふぅー、タンタンメーン」


 前世のゴルフマンガを少しだけアレンジした掛け声で、ユウイチはフルスイングした。


 すると、ボールが"ポテッ"とティーグランドに落ちた。


 推定飛距離は十センチほどで、いわゆるチョロにも満たない。


 実はユウイチは子供の頃から球技が苦手なのである。


 前世では、バスケットボールで突き指をして、バレーボールを顔面でレシーブ、野球のボールは股間を直撃し、ピンポン玉は口の中に飛び込んでくる始末であった。


 ユウイチ曰く「俺はボールに愛されていない」そうである。


「皆さん、二打目に向いましょう」


 リーネは、この惨劇を無かったことにしたようである。


 四人が二打目に向かって"ワイワイガヤガヤ"と話しながら歩く後をユウイチはトボトボと付いて歩く。


 この後、リーネの二打目はリリアの一打目を越えた辺りに落ち、ミレイとアルマのボールはグリーン手前で止まった。


 そして、またしてもフルスイングをしたリリアはグリーンをオバーして奥のバンカーに捕まってしまったようである。


 だが、この後の三打目でリリアを含めた全員がしっかりとグリーンに乗せた。


 これをワンパットで沈めればパーセーブである。


「ほう、パット勝負になったな」


 ポンコツプレイヤーから只の観客になったユウイチが勝負の行方を見守っている。


 リーネは三打目がベタピンだったため、オッケパットでパーセーブ。


 片やリリアはカラーからのパットがオーバーして返しのパットも外してしまいダブルボギーとした。


 アルマはロングパットがショートしたが次を決めてボギーで収めた。


 ミレイは入れごろ外しごろの距離をしっかり決めてパーセーブである。


 リーネ ±0

 ミレイ ±0

 アルマ +1

 リリア +2


 観客からリーダーボード係りになったユウイチがスコアを掲げて歩く。


「やはり、ミレイ様との一騎討ちになりそうね


「私は、やるべきことをやるだけですわ。

 そうすれば、スコアは後から付いて参りますわ」


 どうやら、竜虎の一騎討ちはゴルフ対決へと戦場を移したようである。


「わ、私は、お二人に付いていけるように頑張ります」


「私は思い切り飛ばせれば、それで満足です」


 アルマは謙虚な姿勢であるのに対し、リリアはゴルフがストレス発散のようである。


 リリアは研究所以外で過酷な労働でもしているのだろうかとユウイチは心配になる。


「ゆ、ユウイチ所長、優勝したら何か頂けるのですか?」


「そうね、聞いてなかったわ」


「優勝するのは私ですから、皆さんは聞く必要がないと思いますけど……」


「私は端から参加賞狙いです」


 ユウイチは、いつも肝心なことを伝え忘れる癖がある。


「優勝者にはレアな逸品を用意してある。

 それから、参加賞は新作のスイーツでどうだろうか?」


 スイーツは、食後のデザートにと始めから用意してあったが急遽として参加賞に昇格した。


「それを聞くと気合いが入るわね」


「フフフフ、空回りしない様に気を付けて下さいませ」


「わ、私は"レアな逸品"と言うフレーズが気になります」


「取り敢えず、参加賞は確保できました」


 この後、四人は各々のペースで九ホール目迄を終えた。


「ほう、意外と接戦じゃないか!」


 ミレイ +2

 リーネ +4 

 アルマ +4

 リリア +5


 ミレイは二つのロングホールで一打づつ叩いた以外は堅実であった。


 対するリリアはバーディーありボギーありの出入りの激しいゴルフを繰り広げている。


 アルマとリーネは、"我慢のゴルフ"と言った感じであるが何とかスコアをまとめている。


「午後からもこの調子で参りますわ」


 ミレイはユウイチ特性のクラブサンドを一切れだけ食べて、お茶を飲んでいる。


「お腹一杯になりました。

 これで午後からも大丈夫です」


 ユウイチ特性のクラブサンドをたっぷり食べた上にスイーツも平らげたリリアは気合い満点である。


「この食感は癖になりそうです」


 クラブサンドには手を出さずに新作スイーツだけを食べたアルマも満足そうである。


「取り敢えず、ショートホールで差を詰めたいわ」


 リーネは、クラブサンドとスイーツには手を出さず、お茶だけ飲んでメモ帳とにらめっこをしている。


「よし、残りは九ホールだ。

 皆、頑張ってくれ!」


 ランチタイムを終えて勝負再開である。


 ミレイからリリアまでは三打差であるが、崩れないミレイをリリアが逆転するのは難しそうである。


 ユウイチは、ミレイとリーネの優勝争いだと予想している。


 午前中と同様に四人は各々の持ち味を活かしたゴルフを展開して遂に最終ホールまで辿りついた。


「泣いても笑っても最終ホールだけだな」


 ミレイ +5

 リーネ +6 

 アルマ +8

 リリア +8


 ここまで、スコア的には大健闘の四人である。


 だが、ミレイと三打差のリリアとアルマには優勝の芽は無さそうである。


「おほほほ、勝っても私は泣きませんわよ」


 リーネとミレイは一打差だが、刻むことの多いリーネはロングホールではパーが精一杯かもしれない。


 ミレイはよっぽどのミスをしない限り勝てると踏んだようで、これは事実上の優勝宣言である。


 ミレイの高笑いを聞いたリーネは不敵な笑みを浮かべていた。


「いっけーーー!」


 リリアの雄叫びと共に"パシーン"と快音を残してボールが飛んで行った。


 これで全員が一打目でフェアウェイをキープした。


 しかし、予想に反してリーネのボールはミレイやアルマより遠くに飛んでいる。


 先ほどのリーネの不敵な笑みは、刻まず攻める作戦の現れだったようである。


 続く二打目はアルマがフォローの風にボール上手く乗せ、ミレイは相変わらずそつの無いプレーで共にフェアウェイをキープしている。


 注目のリーネは刻んでスリーオンが狙える絶好の位置に付けた。


 そして、最後にリリアが二打目を打った。


 飛んで行ったボールは、かなり低い弾道で他の三人とは明らかに違っている。


「リリア君、グリーン手前の花道辺りまで飛んでいるがクラブは何番を使ったんだ?!」


「あっ、スプーンとか言うクラブを使ってみました」


 リリアはあっけらかんと答えているが、フェアウェイでスプーンを使うのは高い技術を必要とすることをユウイチは知っている。


 だから、普通はアイアンと同じような感覚で打つことができるユーティリティーを使うのが一般的である。


「リリア様、思考が所長さんの影響を受けておりますわね」


「そ、そうでしょうか?……」


 ミレイからの指摘にリリアは困惑しているようである。


 だが、これはユウイチの影響と言うよりも明らかに"天然"のなせる業である。


「い、今の一打は見なかったことにします……」


「そうね、私達は普通のゴルフをしましょう」


  アルマとリーネは現実逃避をすることにしたようである。


 だが、ゴルフはメンタルスポーツであることを忘れてはいけない。


 平静を装っていたもののメンタルが乱れたアルマとリーネはスリーオンを逃した。


「伯爵令嬢たるもの、如何なる時でも平常心を保つものですわよ」


 だが、ミレイが放ったショットは、力が入り過ぎたようでグリーンを越えて奥のバンカーを直撃した。


 さすがのミレイもリリアのショットでメンタルを乱していたようである。


「この時点で、スリーオンの可能性があるのはリリア君だけだな」


 この空気を読まない発言は、鋼のメンタルが備わっていなければ出来ないものである。


「つ、次はリリア様の番です」


 五人は、リリアのボールが落ちたであろうグリーン周りの花道までやって来た。


「確か、リリア君の二打目は花道辺りまで飛んでいるはずなんだが……」


「あれは、私のボールよね?」


 リーネが打った三打目は、惜しくもショートして花道に落ちている。


「り、リリア様のボールが見当たりません」


「もしかして、鳥が咥えて持ち去ったとか?」


 又しても鋼のメンタルを持ったリーダーボード係の戯れ言である。


「所長、冗談言ってないで真面目に探しなさい」


 全員で、リリアのボールを探すが何処にも見当たらない。


「ん、未だここを探していなかったな」


 そう言ってユウイチがピンを抜いてカップの中を覗き込んだ。


「所長さん、まさかですわ」


「そうね、あり得ないわ」


「あ、あったら奇跡です」


 そう言って三人は他の場所を探している。


「リリア君、アルバトロスだ!」


 ユウイチがカップからボールを取り出して駆け寄って来たリリアに渡した。


「えっ、二打目が入っていたんですか?」


 ボールを受け取ったリリアは信じられないようであるが、花道で弾んだボールは勢いそのままにグリーンを転がってカップに入っていた。


「これでリリア君かミレイ君に並んだな」


 ミレイ +5

 リリア +5

 リーネ +6 

 アルマ +8


 ユウイチはリーダーボードの順位を入れ替える。


 アルマとリーネは何とか平静を保ち、四打目をピン横にピタリと止めて、共にオッケーパットでパーをセーブした。


「残るはミレイ君だけだな」


 皆が注目する中、バンカーで目玉状態のボールをミレイがじっと見詰めている。


「どうしましょう……

 私はバンカーから打ったことがありませんのよ」


 常に完璧を求め完璧なショットをしてきたミレイは バンカーはおろかラフからも打ったことがないらしい。


 この後、ミレイはバンカーから脱出するのに八打を費やした。


 最後は半べそ状態でバットを打って十三打の大叩きであった。


 リリア +5

 リーネ +6 

 アルマ +8

 ミレイ +18


 全員がホールアウトして以上の様な結果になった。


「結果発表ーー!。

 優勝者はリリア君だ。

 おめでとう!」


 リーダーボード係から司会者になったユウイチがリリアを称える。


「ありがとうございます。

 今回はたまたま上手く行きました」


 リリアは勝って驕らずの謙虚な姿勢である。


「今日の結果は甘んじて受け入れますが、次はこうはいきませんわよ。

 それで、次回は何時にいたしますの?」


 ミレイはリリアに対して早くも再戦を要求している。


「私も帰ったら直ぐに戦略を見直すわ」


「じ、次回はゴルフ日和でない風の強い日にしましょう」


 リーネとアルマも望むところのようである。


「それで、所長の用意した優勝賞品の"レアな逸品"とは何なの?」


「これだよ。

 リリア君に優勝賞品を贈呈しよう」


 司会者兼プレゼンダーのユウイチからリリアにゴルフクラブセットが贈られた。


「ありがとうございます。

 次は、このクラブを使ってプレーしてみたいです」


「ゆ、ユウイチ所長、このクラブはどの辺りがレアなんでしょうか?」


 一見すると普通のゴルフクラブと変わりはない。


「ん、これか、これはだな……」


 ここでユウイチはリリアのスライム嫌いを思い出した。


「所長、勿体付けずに教えなさい」


 まるで、いつものプレゼンの関所での取り調べのようである。


「こ、これはだな……

 その何だ……

 め、メタルスライムから作ったゴルフクラブなんだよ」


 お白州の上で、恐る恐るユウイチが白状した。


「優勝賞品が、よりによってスライムだなんて……」


「もしかしたら、巷で流行っていた"魔法のクラブ"なんですの?」


「き、危険です……

 リリア様、そのクラブはとても危険です」


「所長、リリア様に何てものを渡すの!」


 四人の警戒度が一気にアップした。


「いや、魔法陣は付与していない。

 ただ、素材がメタルスライムと言うだけだよ。

 リリア君、そのクラブはよく飛ぶんだよ。

 おまけに軽くて丈夫なんだよ。

 だから安心して使って欲しい」


 ユウイチは必死でメタルスライムで作ったゴルフクラブの良い点を説明する。


「り、リリア様、憎きスライムを使役すると思えば良いのではないですか?」


「そ、そうですね。

 直接触る訳ではないですからね」


 何故か、このアルマの提案をリリアが受け入れた。


「いや、リリア君

 実はグリップの素材もスライムなんだよ……」


 後でバレて怒られないようにユウイチは自己申告した。


「えーー!」


「所長、言わなくても分かってるわね?」


「はい……」


 帰り道、リーネから長々とお説教を喰らったユウイチの鋼のメンタルはボロボロになった。


 "いつか、軽くて丈夫なメタルスライムメンタルを身に付けよう"とユウイチは密かに思うのであった。



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