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第7話 なんで藤原だけは?

 美術の授業は、ペアになってお互いの上半身を鉛筆で描くというもの。

 遅れてきた俺と藤原はペアにされた。


 まずは藤原が描く番。


 藤原は画用紙に向かわず、腕組みをして正面から俺を見つめた。

 真剣……どころか、視線が痛いくらい厳しい。

 クラスイチの美少女と見つめ合うという状況なのに、早く解放してほしい思いが募ってく。


 五分以上経ってから、やっと描き始めた。

 それでも、相変わらず俺を見る目はキツい。


 そもそも、隅っこの方で生きてきた俺は、他人に見られるのに慣れてないんだ。

 見てる相手が相手だけに、よけいにキツい。

 決められた十五分が過ぎた時、めちゃくちゃデカいため息が出た。


 次は俺が描く番だ。


 藤原はこちらを向いて、凛としたきれいな姿勢でイスに座ってる。

 長くてまっすぐな髪は前に流してた。

 艶のある黒髪は、真っ白い肌によく合ってる。


 もう、フツーにカメラで撮りたい。

 俺が絵で描く必要を感じなかった。


 それでも描かねば。

 向き合う藤原はまるで人形のよう。特に無表情なとこが。

 ラーメン屋じゃ、あんなにかわいく笑ってるのに。


「藤原、ちょっと笑ったりできる?」


 なんとなく言って、ヤベとなった。

 教室中がざわめき、みんなして俺と藤原を交互に見てる。

 ひそひそ声まで聞こえてきた。


 藤原が、強烈な喋りかけるなオーラを周囲に放射する。

 教室中が、今度は一気に静まりかえった。


「ですよね~」


 以降、できるだけ藤原の目を見ないようにしつつ、絵を仕上げてく。

 当たり前だが、出来上がりは不満足。

 モデルがよすぎるせいで、絵の下手さが際立ちすぎた。


 藤原が自信満々といった顔で先生に提出してたので、自分がどういうふうに描かれたのか気になって、こっそり見る。


 小学生?


 ヘンに目が大きかったり、そもそも顔がデカすぎたり、人のことは言えないが、これであの自信満々?と思ってしまった。

 しかもなぜか先生に褒められて、学校では珍しい、ご機嫌な表情になってる。


 芸術は分からん。




 昼休み。

 クラスメイトがカードゲームの話をしてたから、声かけてちょっと入ってみた。

 俺はカード買ってないけど、基本的なルールは覚えてる。

 キラキラのカード見せてもらって、「へぇ、これレアなの?」と聞いてみたり。

 そして始まる解説を、リアクション入れつつ最後まで聞く。

 さらにクラスメイト同士で盛り上がり始めたタイミングで、すっとその場を去る。


 俺の場合、クラスではこういうふうな付き合い方しかしてない。

 我ながら上っ面。

 だから、この学校に友達はいなかった。


 それで何の問題もないと思ってる。

 満たされないだとか負い目を感じるだとか、何もない。


 なのに、藤原真砂だけが違っていた。


 好きになられるのは面倒だ、と言ってる女。

 俺と似てるようで、違っていて。近いようで、遠いやつ。


 そういうやつは、今まで周りで見たことない。

 だから、もっと覗いてみたくなった。


 絵が下手だと知れただけで、その日は一日、満たされた気分だ。

 訳が分からない。


 学校で話しかけるのはマズいらしいので、ラーメン屋に行くしかなかった。

 まぁいいや、ラーメンは気に入ってるんだし。

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