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第3話 キャラが違いすぎる

 白菜とニラたっぷりのラーメンを食べ終わる。

 なんというのだろう、懐かしい味だった。

 醤油ラーメンに思い出のある人生ってわけじゃないんだけど。


 美味いのは美味い。けど、絶品かというとちょっと違う。

 ただ、何十年でも食べ続けられるのは、こういう味かもしれない。

 そういうラーメン。


 会計してくれたのも藤原だった。

 とはいえ、タダ券渡すだけなのだが。


「ごちそうさま、美味かった」


 ラーメン評論家でない俺は、よけいなこと言ってスベる愚を避けて言う。


「よかった、ありがとう!」


 満開の笑顔を至近距離で浴びてしまい、目と心臓が潰れそうになる。

 美少女って、殺人兵器なんだ?


「また来るかも。今度こそ絶対にお金払わせてほしいし。それだけ美味いラーメンだった」

「えへへ、うれしい褒め言葉。お父さんにも言っとくね」


 やっぱり家族経営だったのか。

 この店が本当に好きなんだなっていうのは、ずっと感じてたけど。


「じゃ、また明日」

「え、明日も来てくれるの?」


 驚いた顔されて、こっちこそ驚いた。


「いや、学校で?」

「ああ、そっか」


 あんま興味なさげな言われ方。

 まぁ、今まで学校じゃほぼ話してないしな。


 最後、じゃっかん微妙な空気になりながらも、腹満足でラーメン屋を後にした。




 次の日の朝。

 いつものように、始業のチャイムの五分前に藤原が現われる。


 カバンを机の横にかけたとこで声かけた。


「おはよ」


 向こうは一センチだけ頭を下げて自分のイスに腰を下ろす。

 いや、会釈したのでなく、単に座るモーションの一部だった気もする。


 あれ? そういうかんじなんだ?

 昨日のあの愛想はどこ行った?


 今の俺、全然親しくない相手に馴れ馴れしく声かけた、距離感分かってない奴みたいになってた。

 いや、昨日あんな態度だったのに、今日こんなだって思わないよね、普通?

 俺はそう主張したかったが、周りは今のやり取りを気にしてないようだったので、主張する相手がいなかった。


 もやもやが消えないまま授業は進む。

 四時限目の現国で、急に横から鋭く睨まれた。


 いや、被害者面はよそう。

 朝からずっと、彼女をチラチラ見てた俺が悪い。

 それから放課後まで、藤原の存在を意識しないことだけを意識して授業を受けた。


 藤原とどう接すればいいんだろう?

 家に帰ってから寝るまでずっと考えたが、答えは出てこず棚上げすることに決めた。

 対人コミュニケーションの引き出しが少なすぎるんだよな、俺。


 なので、次の日はあいさつしない。

 向こうからも何もなく。

 今までどおりに戻ったわけだ。


 ラーメン屋をきっかけに関係が進展するかも?

 心の中なので正直に言うと、そんな期待はちょっとあった。

 しかし、あまりに甘い考えだったみたいだ。

 隣の人間は、いつもどおり喋りかけるなオーラを身にまとってる。


 それはそれとして、だ。

 一昨日行ったラーメン屋『飛龍』は、リピートしたくなる店だった。

 ラーメンは懐かしい味で、食べ飽きそうにない。

 店員がどうとかでなく、俺は単にあのラーメン屋を気に入った。

 これは誓ってウソじゃない。


 さらに次の日、母さんが夜勤なので夕食は俺ひとりになった。

 いつもなら、母さんが用意してくれるか、俺が自分で何か作ってる。

 でも、たまには外食もいいだろう。


 俺はあくまでラーメン食べに、ふたたびラーメン屋『飛龍』を訪れることにした。

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