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第2話 ラーメン屋に行く

 ラーメン屋『飛龍』は、黄色いひさしが色あせてる、地元密着型っぽい店だった。

 どこかのチェーン店ではなく、店長の拘りが前面に出すぎてる店でもなく。


 気楽に入れそうな雰囲気なので、制服のまま気楽に入った。


「いらっしゃいませ!」


 全開の笑顔で迎えてくれた美人には見覚えがあった。


 後ろで縛った黒髪なびかせ、藤原は奥の方へと駈けていく。

 そして、どんぶりをテーブルの上に置いた。


「チャーシューメン、お待ちです!」

「おう! ありがと、マーちゃん!」


 明るい声出す藤原に、いいガタイをした中年男性が陽気に応える。


「ごゆっくり!」

「ゆっくりしてたら冷めちまうよ!」

「あはは、いつも言ってるやつ」


 軽く手を振りながら、軽やかにテーブルから離れる。


 誰だ、あの女???


 俺の頭からハテナが消えない。

 姉妹? それも双子の?

 ドッペルゲンガー。アンドロイド。鏡の向こうの人間。俺の幻覚。俺の妄想。俺の願望。ここは夢。今まで現実だと思ってたのが実は夢。

 いろんな可能性が脳内を駆け抜けてくが、どれも確信が持てない。


 藤原が向かってくるのにも気付くのが遅れた。


「ありがと、来てくれてっ!」


 さっきと同じような、親しみを感じさせる笑み。

 無表情しか見たことないから、振れ幅でかすぎて天使とかそういうのの笑顔にしか見えない。


 そもそも、俺たちそんな親しい仲だっけ?

 絶対違うって断言できるんだけど。


「え? 藤原? 本物?」

「偽物のわたしなんているんだ? 初耳」


 片手を口元にやり、ちょっと首を傾げて笑う。

 媚なんかどこにもない、自然な、けど確実に男心を惑わせる仕草。


「すまん、脳が熱暴走してた」

「それより中へどうぞ。ひとりだよね?」


 俺がうなずくと、カウンターの空席に案内された。

 メニュー渡してくるのは、どっからどう見ても愛想のいい店員。


「うちは醤油なの。麺は並でも割と多めだよ」

「へぇ」


 ラーメンは無料券の対象だけど、それだけでいいのか?

 タダ券で食うだけ食って帰る。

 それはマナー的にどうなんだろう? 教えて、マナー講師!


「じゃあ、ラーメン並と餃子一人前」


 小心者の俺は、ケチな野郎と思われずに済むだろう選択をした。


「はい、ラーメン並と餃子一人前!」


 元気に復唱した後、藤原の顔が耳のすぐ側まで来た。

 急な接近に身体が硬直する。


「餃子も無料だからね」

「いや、それじゃ意味なくって……」


 気ぃ遣ったのにと焦ったら、今度は口の真ん前に人差し指を立てられた。


「いいから」


 一瞬、教室の時みたいに目付きがきつくなる。


「はいっ、ごちそうさまです」

「よろしい」


 晴れやかに笑うと、カウンター向こうの店長らしき人にメニューを伝えた。


 いや、ラーメン屋の匂いじゃないだろ、あんな甘いの。

 近付かれた時のことを思い出し、顔が熱くなった。

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