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クロが・・・ブラックドラゴン・・・・?
本当に?本当だとしたら・・・。
「・・・ドラゴン一族大丈夫なの?」
「それ、どういう意味かな?」
思わず呟いたのを地獄耳で捉えたクロが、ずいっと顔をこちらに近づけてくる。
どういう意味もこういう意味もない。
「クロが仕切った依頼で、無事に終了したことなんてあったっけ?」
「失敗なんてあったっけ?」
ん~?と首を傾げる超ド級マイペース男。
自覚なしかよ!!と、思わず目の前のほっぺを両側から撮んでギリギリと引っ張った私悪くない。
「いたたた。だって、俺もラズも無事だったでしょ?」
「奇跡的にね!!一緒にパーティ組んでた人たちは、ズタボロだったじゃん!」
「そうだっけ?」
ダメだこいつ。周りに気を配らないにも程があるわ!
というか、肌がきれいでさらにムカついてきたわ!!
「はいはい。そのくらいでじゃれ合いはやめておいてくれるかしら?」
エイミィの呆れ声に、渋々手を離したが、なんでクロが残念そうな顔をするのかが理解できません。
クロの事は放っておいて、そろそろ話をもとに戻さないと、いつまでたっても帰れなくなりそうだ。
仕方ない。この件については、帰ってから決着をつけてやる。
「で、クロがブラックドラゴンなのは、理解したけど、ブラックドラゴンって、ドラゴンの王様みたいなものなんでしょ?ほいほいうろついてて良いの?」
少なくとも六年は、人の姿で私と一緒に行動をしているわけで、その間ドラゴン一族放置?
だとしらた、半分は私に責任があるんじゃないの?
まずいなぁと背中に冷や汗が流れる私に対し、クロもエイミィもあっけらかんとした様子。
「ドラゴンは基本群れを成さず、単独で行動しているのよ。それに、ブラックドラゴンはクロムヴェルグだけじゃなくてもう一頭いて、その方が現在の長として竜峰にいらっしゃるのわ。だから、クロムヴェルグがどこを徘徊しようとも、私たち一族に問題はないわ。」
「そうそう。あのじじいがぽっくり逝ったら、竜峰に帰らなくちゃならないけど、それまでは自由の身だよ。」
ドラゴン=フリーダムという図式が私の中で成立しました。
誰が何と言おうと、こいつらはフリーダムです。
ドラゴンについて、色々教えてもらい、そろそろ質問もなくなったかなぁなんて思った辺りで、クロが徐に立ち上がり、にっこりと笑いかけてきた。
「じゃぁ、そろそろエドガルドの鱗剥いで、帰ろっか?」
「へ?」
「へ?って、俺ら遊びに来たわけじゃなくて、依頼でここまで来たんでしょ?」
あ、そっか。衝撃が強すぎて、すっかり忘れてたけど、私たちレッドドラゴンの鱗を獲りに来たんだっけ?
あまりにもエイミィとのおしゃべりが楽しくて、目的を忘れてたわ。
でも、鱗一枚とはいえ、くれるかなぁ?
若干不安に思いつつエイミィを見ると、コテン、と首を傾げて私を見上げてきた。
くっ・・・!あざと可愛いわ!
「そういえばそんなことを言ってたわね。私の鱗なんて何に使うの?」
「いやぁ。ギルドの依頼で、私も使用目的まではわからないんだけど、クロが手付金まで受け取ってきやがりましてね?受けざるを得なかったんですよ。そうでなければ、こんな命が幾つあっても足りないような依頼なんて・・・!!」
「ラズは大げさだなぁ。」
「やかましいわ!!」
「・・・・アンタ、苦労してるのね。」
エイミィの同情の眼差しが、目に染みるわ。
「エドガルド。鱗の一枚や二枚や三枚や数百枚、大したことないでしょ?嫌だって言っても毟り取るから、返事はどっちでもいいけど、さっさとくれた方がお互いの為だと思うなぁ?」
「数百枚も毟られたら、流石にハゲるわよ!!なに笑顔で脅してくれちゃってるの!?」
「逃げてもいいけど、手加減はしないよ?」
「ひいぃぃぃぃ!!ラズリ助けてぇぇぇぇ!」
「やめなさい。そんなにいらないから。一枚で十分です。」
じーりじーりとエイミィににじり寄るクロの後頭部をぺしっと叩き、元の位置に座らせる。
クロってば、エイミィいじるのが楽しくて仕方がないみたいだけど、もうそこまで行くと苛めにしか見えないからね?
それに、ドラゴンの鱗なんてもの、一枚で十分です。
それ以上持ってても、トラブルの元にしかならないわ。
「一枚でいいんだけど、貰えないかな?」
涙目でクロを警戒している、エイミィにお願いしてみる。
これでエイミィが嫌だと言ったらあきらめよう。
また別のレッドドラゴンを探せばいい。
と、心の中で覚悟を決めていたのに。
「ええ。一枚くらいなら構わないわよ。」
実にあっさりとOKが出ちゃったよ!!
拍子抜けするほどあっけらかんとOK貰えたよ!
「流石にいっぱいは嫌だけど、一枚や二枚なら大したことないわ。アンタたちなら悪用もしなさそうだし。ちょっと下がっててもらえるかしら。一度元の姿に戻るから。」
聞いておいてびっくりしている私を見て、エイミィがさも可笑しそうに笑ったあと、壁際まで下がるように促した。
クロに促され壁際まで寄ったところで、クルルルゥ~とまたあの声。
「あれ歌ってるみたいで可愛い声だよね。」
「今度俺のも聴かせてあげるね?かっこいいよ?」
「・・・・・機会ガアレバネ。」
「なんで目を逸らすのかな?」
いいえ。クロがドラゴンになったら、それはそれで面倒なことになりそうだなぁとか思ってませんから。
あっという間に巨大化したエイミィだけど、もう怖くはない。
足元まで近寄ると、鋭い爪で器用に摘まんだ鱗を差し出された。
光を反射してキラキラと輝く綺麗な赤い鱗に、思わず見入ってしまう。
「これがドラゴンの鱗かぁ。綺麗。」
「今度俺のも「はいはい。機会があればね。」・・・あしらわれた。」
隣でクロがいじけて座り込んでいるが無視です。
差し出された鱗を受け取り、エイミィを見上げる。
「ありがとう。ギルドマスターには、絶対悪用しないようにってぶっといクギを刺しておくから。」
「ほ、程々でいいわよ?」
いいえ。しっかりと!クギを刺します。ついでに無茶な依頼をクロに振らないように、脳髄に刻み込んでやります。
ええ。今回はエイミィのような優しいドラゴンだったから良かったものの、調子に乗って他のドラゴンも~とか言い出しかねないからね、あの人は!!




