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ドラゴン。地上の生命の頂点に君臨する種族。
その生態については、詳しくは解明されてないが、彼らが地上最強を誇ることは間違いない。
水属性のブルードラゴン。
風属性のホワイトドラゴン。
地属性のグリーンドラゴン。
火属性のレッドドラゴン。
そして、彼らの王たるブラックドラゴン。
総じて鱗はどんな物質よりも堅く、魔術も通じない。
近寄るべからず。不幸にして出会ってしまったら、決して刺激することなく、気配を殺してやり過ごせ。
それがわずかに残された生存への可能性となるだろう。
ギルドの図書館にあるドラゴンに関する書物には、大体こんなことが書かれている。
というより、それ以上のことはだれも知らないのか、書かれていない。
ドラゴンが数百年を軽く生きるだとか、幼生の頃は鱗がまだ堅くないとか、人間に擬態してギルドで冒険者やってるとか、そんなことは全くもって書いてなかったよ!!
「呆れたわぁ。それじゃぁ私の姿を見て、ラズリが怯えたのもうなずけるわよ。」
「え?エドガルドがラズを泣かせたの?」
「泣かせてない!だからそんな殺意に満ちた目で私を見ないで!!」
確かに初めて会ったレッドドラゴンに、これ以上ないくらいにビビりましたけどね。
泣いてません。腰が抜けるかとは思ったけど、泣いてません。
というか、クロは私に自分がドラゴンである事を黙ってたという事を、エイミィで有耶無耶にしようとしてない?
してるよね?
そうは問屋が卸さん!!
「クロ?」
腹に力を込めて名を呼べば、クロは一瞬びくっと肩を揺らした。
「クロ?」
もう一度。
そこでようやく渋々とクロが私の方を向き、ごめんなさいと呟いた。
「何に謝ってるのかわからないんだけど?」
「・・・ドラゴンって黙っててごめんなさい。」
心からの謝罪なのだろう。
真剣な表情で、やや身を乗り出して、まっすぐに私を見つめるクロに、苛立ちがすっと引いた。
クロは嘘をつかない。
でも私に言わないことは沢山ある。
それが私にとって良くないことであればあるほど、クロは私に隠そうとする。
私は今までそうして、心無い悪意たちからクロに守られてきた。
黙っていられることは正直寂しい。
私はそんなに弱くはないのに、クロは何もかもから覆い隠して守ろうとする。
信用されてない。そう思ってしまう。
自分の本性を教えなかったのも、私が信用されてなかったからなのかな・・・。
あー、なんか落ち込みそう・・・。
と、心が俯きかけたその時。
「ごめんね?俺がドラゴンだって話してれば、今回の依頼も安心して受けられたんだと思う。でも、半泣きで震えてるラズが可愛くて、ついうっかり愛でちゃって。あと、わざとSとかAの仕事を受けてくると、ぷりぷり怒るラズがもう食べたくなるくらい可愛いから、つい。」
「そういう事かよふざけんなこん畜生がぁぁぁぁぁ!!」
怒りゲージ瞬時にMaxで、クロの膝に乗って、胸ぐら掴んだ私悪くない!
ぎゅっと襟を絞められてるのに、嬉しそうに頬を緩めるクロに、ますます怒りが上昇し、がっくんがっくん揺さぶる。
「何を嬉しそうに笑ってんのよ!!」
「え?だって、ラズが可愛いから。」
「会話がつながらない!コミュニケーションがとれてない!!」
誰か!通訳!!
「ちょっと、気持ちはわかるけど、落ち着きなさいよ。」
「もうこのバカやだぁぁぁ!!」
「ええ~?俺はラズ大好きだよ?」
さも心外そうに言うな!
本当に会話が一方通行だな!
イライラしながら、紅茶をぐいっと仰ぐようにして飲み干す。
はぁぁぁ。
ため息を肺の中が空っぽになるまで吐き出し、ぐったりとテーブルに伏せた。
「あーもー。クロがドラゴンってのはもういいわ。というより、その方が納得がいくわ。人の話は聞かないし、時々突拍子もないことしでかしてくれるし。」
「なんか、色々苦労しているようね?ドラゴンを代表して謝るわ。でも、クロムヴェルグだからそうなのであって、ドラゴンは秩序と平穏を重んじるからね?」
紅茶のお替りを注ぎながら、すかさずエイミィからのツッコミが入ったけど、エイミィ含むで私の中のドラゴンの評価は一気に庶民的になりましたから。
「このままだとラズリがドラゴンを間違った知識で理解しそうだから、ちゃんと教えてあげるわよ。だから、そんな目でこっちを見ないで。」
じと~んとエイミィを見ていたら、疲れたようにため息を吐かれた。
エイミィ先生のドラゴン講座~。
「まずは、ドラゴンの生態について。ドラゴンの寿命は約600年。人間の10倍は長く生きるわね。卵から生まれ、幼生、つまりドラゴンとして不完全な時期は、竜峰と呼ばれる竜たちの里があって、そこで集団で育てられるのよ。とはいっても、ドラゴンの出生率は驚くほど低いから、幼生が全くいない時期もあるわ。今は確かブルードラゴンとホワイトドラゴンの幼生が一匹ずつだったかしら?」
「あれ?ホワイトドラゴンが産まれたんだ?」
「ええ。あんたが竜の里を出て少ししてからね。」
今のエイミィみたいに小さな幼生のドラゴンには興味がありますが、それよりも今は、ドラゴンの寿命が600年て、すごい長生きデスネ。
私たち人間の寿命は大体60歳。80歳まで生きる人は稀で、私たちのような冒険者は、もっと平均寿命が低い。
「ドラゴンの主食は、この世界を取り巻く魔素。魔素というのは、魔力を生み出す素となるものね。余談になるけど、人間は魔素を取り込んで、自らのエネルギーに変換させて、それをさらに魔術として操ってるのよ。魔獣たちは元々魔素が澱んで形になって生まれた、生命としては異形のモノ。だから、知性を持たないし、どれだけ駆除しても消えてなくならないの。」
おいおいおいおい。なんか余談というのが、私ごときが知っちゃダメな話のような気がするよ!?
魔獣たちは未だ研究途中にある、狂暴且つ獰猛な未知の生命体で、その生態系は全て謎だというのが、冒険者の間での常識だ。
それが、魔素が澱んで形をとった?
王宮のお抱え学者様でも、そんなこと知らないんじゃないの!?
「魔素自体は自然にあるものだから、悪いものじゃないわ。むしろ、世界の調和には不可欠のエネルギーね。世界が変わることなく存在していられるのは、魔素があるからなのよ。そして、ドラゴンは卵として生まれたその時から、魔素を取り込んで成長する。勿論、こうやって食べることも好むけど、これはあくまでも娯楽に近いわね。食べることは絶対不可欠ではないわ。」
甘くて香ばしいクッキーを、一つ撮んで口の中に放るエイミィ。
食費かからないって、本当に経済的だな。
「私の鱗が赤いのは、火の魔素を多く取り込んで卵から孵ったからね。」
「人間と違って、両親がレッドドラゴンだからといって、生まれる子もレッドドラゴンとは限らない。卵の時に、どんな魔素をより多く吸収してきたかによって決まるんだよ。」
「そう。青の鱗は水の。白の鱗は風、緑の鱗は大地の魔素の影響を受けて生まれたドラゴンなのよ。」
ドラゴンがやたら魔力が高い生き物な理由も、魔力の元となる魔素を主食としているからだってことはわかったし、摂取する魔素によってドラゴンの属性が変わるという事もよくわかった。
でも、それならブラックドラゴンは?
「ブラックドラゴンはどうやって生まれるの?」
「ブラックドラゴンはね、命を食べるんだよ。」
・・・・は?命?
ぎょっとしてクロを見上げると、薄ら笑みを浮かべて私を見ていた。
初めてみる酷薄ともとれる表情に、ぞわりと背筋が冷たくなる。
「命といっても、生きているものを頭から食べるってわけじゃないから安心しなさい。ブラックドラゴンは、命が生み出す魔素を食べているのよ。」
「命が生み出す魔素?」
「魔力って言った方がラズにはわかりやすいと思う。魔素を取り込み、魔力に変えて人間は魔術を使う。そして、命が一番魔素を多く放出するのが、死の瞬間だね。だから、冒険者とかやってると、結構便利だよ。」
・・・・まさか。
まさか、クロは。
「ここまで言えば流石にわかったでしょうけど、クロムヴェルグはブラックドラゴンよ。」
まーじーでーすーかー。




