↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Bon voyage!  作者: 雛樹
第一章 レッドドラゴンの鱗一枚、持ち帰りでお願いします
5/9

5

満面の笑みを浮かべたクロに、怪我や疲労等の様子は見られない。

流石はSランクというべきか。

あの数の屍鬼グールたちに囲まれて無傷なのは、素直に賞賛する。

やっぱり私とは格が違うわ。


だから、そこに問題はない。

問題があるのは、エイミィだ。


クロに頭を鷲掴みにされてる。

短い手足をジタバタさせて、逃げようともがいているのが、可愛いやら可哀想やら。


「ちょっ、離してぇぇぇぇ!助けてぇぇぇぇ!」

「転がってたのを助けてあげたじゃないか。」

「めり込んでる!めり込んでますからぁぁぁぁぁ!!」


どういうわけか、エイミィはクロに怯えていて、クロはそれを知ってるみたいな感じ。

いくら優しいエイミィとはいえ、ドラゴンに何してんのよ。

エイミィがキレて、巨大化したら瞬殺ものだよ!?



「クロ?あんたドラゴン相手に何してんの!?」



呼んだ途端、エイミィを文字通りぽいっと投げ捨てて、両手を広げたクロは、そのまま私のすぐそばまで来てぎゅっと抱きしめた。

ポイから抱きしめられるまで、わずか2秒。

あまりの素早い動きに、反応することもできなかった。



「あ~ラズだ~。ラズの匂いだ。大丈夫?怪我はない?痛いところはない?ラズが襲われた時は、心臓が止まるかと思ったよ。」

「ないから!無傷だから!とりあえず離して!」

「やだ。ラズを補充させて?」

「変態か!!エイミィヘルプ!ヘルプミー!」


ぎゅうぎゅうに抱きしめられて苦しいんじやー!

力加減を考えろ!


兎に角、エイミィ助けて!


と、視線を向けた瞬間。


あんぐりと大きな口を開けたまま、固まっているエイミィがいた。

ちょ、エイミィ?


尋常じゃない様子に、心配になってしまう。

すりすりと頬を、というか、全身を私に擦り付けてくるクロはこの際放置だ。


「エイミィ、大丈夫?打ち所が悪かったの?」


絡みつく巨体を引きずって、やっとの事でエイミィの目の前に辿り着く。


「いや、あー…聞くまでもない様な気はするんだけど、その絡みついてるのって…。」

「これ?私の相棒。クロムヴェルグだよ。って、いつまで張り付いてんの!?暑苦しいんだってば!!」


おでこを私の肩にぐりぐりすんな!地味に痛い!

べしっと頭を叩いてやったら、ようやく力が緩んで、少し離れた。

ふぅ。これでやっとまともに会話ができるわ。


エイミィに向き直ると、先程の状態から脱したらしく、今度は疲れたような顔で長いため息を吐かれた。

その上、なんか憐れむ様な目で見られてませんかね?


「エイミィさん?」

「あ~。なるほどね。」

「ん?なにが?」

「とりあえず、お茶を淹れ直すわ。」



無視ですか?私さらっと無視されました?










再び例の白いテーブルセットでお茶を淹れてもらい、やっと落ち着いた。


「で、あんたたちは、何の為にわざわざこんな山まで来たのよ。」

「あ~・・・えっと・・・。」


あなたの鱗をひっぺがして持って帰るためです。

なんて言えるか!


大分エイミィに対する恐怖は薄れたとはいえ、腐ってもドラゴン。オネエでもドラゴン。

私は私の命が一番大切です!


でも、鱗を持ち帰らない限り、依頼は達成できない。

どうしたもんか。


う~んと悩んでいると、横からすっと手が伸びた。


「エドガルド、鱗ちょうだい?」


ちょ、さらっと言いやがった!まだ何の防御結界も準備してないのに!!


って、エドガルド?って誰?

ここにいるのは、私、クロ、エイミィの三人。

他に誰かいるの?

と尋ねようとしたその瞬間。



「いやぁぁぁぁ!!ヤメテェェェェ!その名前で呼ばないで!!」



と、野太い悲鳴が上がった。



「何言ってるのかな。エドガルドはエドガルドじゃないか。」

「私はエイミィよ!!そんな男臭い名前じゃないわ!」

「かっこいい名前じゃないか。エ・ド・ガ・ル・ド?」

「キィィィィ!!わざとね!わざと言ってるでしょ!!?」



ええと?つまり?エイミィの本当の名前は、エドガルドてこと?

というか、なんでクロはエイミィの本当の名前を知ってるの?

エイミィもクロを知ってたみたいだし?

説明を求む!!



「ちょっと、クロ?エイミィと知り合いだったの?」

「ああ。うん。そう。ここにいるレッドドラゴンがエドガルドだって知っていれば、もっと気楽に来れたのにね。」


いや、あんたは最初から気楽そうだったからね?

というより、こいつが緊張したり、慄いたりする姿を見たことがない。



「どこでどう知り合ったのよ。」

「ああ、エドガルドが幼生の頃、少しの間俺が育ててたんだよ。」

「ドラゴン生の汚点よぉぉぉぉぉ!!」


バンバン!とテーブルを平手で叩き、エイミィは涙目で私に詰め寄ってきた。


「まだ私が純粋無垢な幼生の頃、こいつにどんだけ酷い目に合わされたと思う!?まだ鱗も硬質化されてないくらいに、幼気なこの私を、魔獣の巣穴にぶち込みやがったのよ!?それだけじゃないわ!火属性のレッドドラゴンを湖に投げ入れて、温泉作れるか実験とかもう鬼畜の所業よ!!」


お前は一体何してんだよ。

幼児虐待は、立派な犯罪ですよ!?


ギロッとクロを睨み付けたが、どこ吹く風。

それどころか、うれしそうに笑って私の頭を撫でるなバカ!



「人の子と違って、ドラゴンの子はそうやって強くなっていくんだよ。だからエドガルドはここまで強いドラゴンになれたんじゃないか。」

「え?そういうものなの?」

「そうそう。」

「あっさり騙されてんじゃないわよ!そんなわけないでしょぉぉぉぉ!?」

「お陰で強いドラゴンに成長できたんだからいいじゃないか。」

「結果論!それ凄まじい結果論よ!?」



まぁ、なんだ。

結果的にエイミィ元気に今も生きてるし、ドラゴンだし、エイミィがクロに怯える理由もわかったから良しとしよう。

エイミィとしては全然よくないかもしれないけど、そこはホラ。当人同士の問題だから。


それよりもさ、エイミィって思ったよりもずっと若いドラゴンなのかな?

私と同じくらい?

クロが面倒見たってことは、少なくともクロの方が年上ってことだよね?

まだ20代くらいかな?


そもそも、ドラゴンってどうやって年齢を見分けるんだろ?

人間みたいに皺が刻まれたり、白髪になったりはしないだろうし。

よし。チャンスだ。聞いてみよう。



「はーい!しつもーん!」


右手を上げて、左手でテーブルをぺしぺしして、言い合う2人の注意を引く。


「エイミィがクロに育てられたって事は、エイミィってまだ若いドラゴンなの?」

「もちろん!100歳だもの。まだピチピチよ!」



ひゃく?

え?




え?





「え?クロに育てられた?100歳?」

「ええそうよ。」


こっくりと頷くエイミィが嘘を言っているようには見えない。

ってことは、よ?



ぎぎぎぎ、とクロを見上げる。


どう見ても、若作りだけど実は40歳、なギルドマスターより若そうに見えますけど?

正確な年齢聞いたことはないけど、20代後半くらいと思ってましたよ?



「クロは、何歳?」

「俺?えーと、確か200ちょいくらいだったかなぁ?」


はい?

に、にひゃく・・・?



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




「はぁぁぁぁっ!?200歳!?クロが!?」



クロは私に嘘を吐いたことはない。大事なことを言わなかったことは山ほどあるけど!!

ってことは、本当に!?




「え?まさか、あんた、言ってないの!?」

私の反応に驚いたエイミィが、信じられない!とクロに詰め寄る。

クロは言ってなかったっけ?とのほほーんと笑ってるけど、確信犯だ。

わざと教えてなかったに違いない。



「200歳って、クロは人間じゃないの?」

「うん。ドラゴンだよ。」


てへっと頬を染めんな。イラッとするわ。


それにしても、よりによってドラゴンて・・・。

地上最強種族じゃないのよ。

そりゃ、Sランク当たり前だ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。