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Bon voyage!  作者: 雛樹
第一章 レッドドラゴンの鱗一枚、持ち帰りでお願いします
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「そんなに緊張しなくても、とって食いはしないわよ。」


震える手でティーカップをソーサーに戻す私に、レッドドランは苦笑交じりに言うけど、ここで緊張しないとか無理だから!

殺気は感じないけど、目の前のドラゴンがその気になったら、私なんかプチ!だからね?


「はいはい。あんたに危害を加えたりなんかしないから。それ飲んで、少し落ち着きなさいよ。」

「うう・・・わかってるけど、こればかっかりは・・・。」

「はぁ~、仕方がないわね。」


かなり頭上からため息が降ってきたかと思ったら、すぐにクルルルゥ~という何かを転がすような不思議な音がし始めた。

なに?と顔を上げようとした、その瞬間。

カッと赤い光が部屋を満たし、驚いて目を思わず塞いで顔をそむけてしまう。


殺気や攻撃的な魔力は感じない。

ただ、熱を持った魔力が部屋を満たして、消えた。


「ほら、これならいいでしょ?」

レッドドラゴンの声に、恐る恐る目を開けて顔を戻す。


と、そこには・・・。


「えっ・・・?」


全長30センチほどの、ミニチュアドラゴンが、テーブルの上にちんまりと鎮座してました。

くりんとしたまん丸の目。ぽっこり出たほんのり薄紅色のお腹。

ぴたんぱたんと動く短い尻尾。

どお?と首を傾げている様がもうなんとも。



たまらんですたい!!



「可愛いぃぃぃぃぃ!!」

「ふふん!でしょう?もっと愛でてもいいのよ?」


声が野太いままなのが残念だけど、もうこの際許す!

可愛い!

目の前のドラゴンの両脇を持ち上げる。

見た目と反して、ひんやりとした鱗の感触が、両手に伝わってきた。


「さて、これでまともに会話ができるわね。・・・って、あんた、聞いてる?」


可愛い。可愛い。ヤバい。これ持って帰りたい。

鱗いらない。これ持って帰りたい。


「なんか寒気がするわね。ちょっと、あんた良からぬことを考えてるでしょ?」

「いえいえ、持って帰りたいなんて考えてません。」

「考えてるのね?」



何故ばれたし。








紆余曲折あったものの、なんとかまともに会話できる状態になり、改めて自己紹介。


「ふぅん。ラズリは冒険者なのね。でもよくここまでたどり着けたわね?」

「私もそう思う。」


エイミィと名乗ったレッドドラゴンが出してくれたクッキーをかじりつつ、しみじみと頷いた。

現在進行形で、私よく生きてるよね。

あまつさえ、ドラゴンにお茶を出してもらってるんだからね。

これ、冒険者仲間たちに言っても、信じてもらえないだろうな。



「クロ・・・って、私の相棒なんだけど、彼がいなかったらここまで来れなかったと思う。」


というか、クロがあんな無茶な依頼を受けてこなかったら、ここに来る必要もなかったんだけどね!


「その相棒っていうのはどうしちゃったのよ。」

「途中で屍鬼グールと魔獣に襲われて、私がヘマやってはぐれた。」

「あんたどんくさそうだものねぇ。」

「・・・うう、否定できない。」


って、そうだよ。クロだよ。はぐれてしばらくたつけど、今どこにいるんだろ・・・。

今回の依頼の目的が目の前にいる以上、私は動かない方がいいのか?


けど、私一人で鱗くださいなんて交渉できるわけない。

エイミィは確かに理知的で、むやみやたらに襲ってはこないけど、傷つけられるとわかったら、絶対怒るよ。

ダメならダメって言ってくれればいいけどさ。問答無用でぷちっ!とかなったら、瞬殺だよ瞬殺!

クロがここに来てくれるまで、大人しく待ってた方が無難だよね?

でも、今日中に合流できればいいけど、万一会えなかったらどうしよう。

一日ここで待たせてもらって、クロと合流できなかったら、探しに行ってみた方がいいかな?


ティーカップを持ったまま、これからどうしようかと考えていると、またクルルゥゥ~っと可愛らしい声が、エイミィの喉から発せられた。

もしかして、これってドラゴンの鳴き声?


ぽかんとしている間に、私とエイミィの前に、赤い優雅な姿をした蝶が現れる。

魔力で造られているらしく、淡い光を纏う蝶に、思わず見惚れてしまった。


「この子を飛ばして、ここまで道案内してあげるわよ。で、あんたの相棒の特徴は?」

「本当!?ありがとう!えっと、黒い髪で金色の目で、背は高い男だよ。」

「・・・え?黒髪に金色の目?」


クロを思い浮かべながら話すと、エイミィがびしっと音を立てて固まった。

蝶も羽ばたくのをやめて、私たちの間に墜落している。


「エイミィ?どうしたの?」

「・・・いや、いやいやいやいや、それはないだろ。うん。ねぇよ。ねぇわ。でも、金の目とかありえねえわよ。」


ぶつぶつと独り言を言い出したけど、完全に男の口調になってる。

いや、最後は混じってるわ。


暫く云々唸った後、恐る恐るといった動きで私を見るエイミィ。

ドラゴンにそんな態度取られるって、どういうことよこれ。


「念の為に聞くけど、そのクロって愛称?本当の名前?」

「愛称だよ。本当の名前は、クロムヴェルグだよ。って、大丈夫!?」


クロの名前を教えた途端、エイミィがテーブルから転げ落ちた。

そのまま転がって、転がって転がって・・・って、そっちは出口!?


「あ~、私暫く戻らない旅にでるから、迎えが来るまでここに好きなだけ居ていいわよ!というか、あの魔王をずっとここに足止めしておいてくれるかしら!?」

「え?ちょっと!どこに行くの!?っていうか魔王って誰のこと!?」


慌てて引き留めようと、手を伸ばした瞬間。


「ん~どこに行くのかなぁ?」


のんびりした声がして、エイミィの体が文字通り固まった。











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