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輝石の還る場所  作者: すす
1章
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14/16

母の日記

11月✕日

より強い異能者を作るためにまた卵子を摘出された。

遺伝での能力強化は頭打ちなのではないかと上司に聞いたが、気味悪く笑って返された。


11月2□日

研究所に呼び出された。すっかり忘れていたが、私の卵子が試験管に入って胚になっていた。クローンだそうだ。うまくいけば私と同じ顔が生まれると思うと気味が悪い。だがもう慣れた事だ。


11月30日

クローンが育たないらしい。母体として私が選ばれた。子宮に入れる前の胎児を見せてもらったが、何か妙だ。

クローンのはずなのに私と魔力の波長が違った。上司はまた笑ったままだ。気味悪いことに気づいていないのか?


12月▲日

無事着床したらしい。不思議なものだ。正常ならもっと早く着床するらしいが……何故その段階で母体に移さなかったのだろう。そう言えば最近気持ち悪い。つわりというものか?


12月□日

気味が悪い……上司がだいじな身体だからと気を使ってくる。気持ち悪い。暫く妊娠に集中しろと仕事を取られた。

何をしたらいいか分からない。


3月◯日

安定期に入ったらしい。

つわりは治った。かなり痩せた。

日記は毎日書けと担当の助産師に怒られた


3月1◯日

やっぱり書くことが無いので日記をサボっていたら呆れられた。このペースでいいからと言われた。コレは他の女性にも同じ事させてるな。同時期に何人作るつもりなんだ。だから同じ失敗が多いんだ。


3月2×日

エコー上ではちゃんと人間の形をしてるらしい。心音も聞かせて貰えた。私があまりにも他人事の様な顔をしてるから聞かせたらしい。

だって出産をするという仕事じゃないか。出産で事故が起こりやすいと言うが私が死んでも代わりはいる。


4月▲日

腹が…出てきた……?

くるっと動いた気がしたと思ったらこの子はよく動く。いや他を知らないけども。


5月1◯日

他の胎児達は全部流産したらしい。流石に心苦しい。

生まれればこの実験で産まれた子は3人目になるらしい。この後の胎児はいない。そしてやっぱりクローンじゃなくて何か小細工をしていたらしい。……らしいばっかりだ。私は何も知らされていないんだな。


5月2▲日

階段から落ちた。とっさに魔法で衝撃を殺したけども出血した。病院でベッドから起きて真っ先に確認したのが自分のお腹の確認だった。良かった、生きていた。上司からの面会は謝絶してもらった。ちょっと考えたい。


6月✕日

悩んだけども、もし子供が十分な異能者で無ければ今月末には用済みとして秋草研究所を辞めることにした。少々魔法は使ったが上司は快く納得してくれた。後はお母さんに任せてね。


6月10日

出産前潜在異能検査を受けた。

娘が異能者なのは間違いない。混ぜ物で底上げされているけども幸いなことにまだ全部は覚醒していない。そこをつく。負担はかかるけども封印して検査を受けた。

5大属性までは隠蔽出来なかったがレベルは強くて中の下レベルと診断された。上司は肩を落としていたがまだ洗脳は解けていない。認められた。

しかし上司も今年妻が子供を産むのにこんな思想でどう教育するんだ?

それと検査の値段の高さに驚いた。経費にしておいたが。


7月◯日

無事新居に引っ越した。荷解きは出産までにゆっくりやろう……。研究所からは連絡はつくようにと言われていたがうっかり連絡先の端末を壊した。仕方ないね。結界は早急に張っておこう。とにかく行方知れずにならなきゃ……。


8月15日

元気な胎動が静かになったかと思ったら破水した。産院の病室で日記の存在を思い出して書いてこんなに痛いなんて聞いてない!骨盤が割れそう!痛い痛い痛い痛い!(字が酷く乱れて判読不能)


8月16日

安産だったと言われた、アレだけ痛かったのに意味わからない。

女の子だった。クローンなんだから当たり前か。異能封印はちゃんと効いてるけども元気な産声を上げてくれた。おっぱいもよく吸うし可愛い。

多分混ぜ物に男の子が混じっているんだろう。苦労が多そうな予感がする。男勝りな子になりそうだ。名前はどっちでも困らない様にマコトにしよう。

それにしても疲れた。


(暫く日記の記載は無い)


マコトは思った通りに男の子っぽく育って、かなり自由だ。もう中学生。気が向かない授業や行事があると学校に行かない。でもテストはソコソコの点を取ってくる。そう言えば言葉を喋るようになった頃はやけに古めかしい言葉を使っていた。今にして思えば古語を教わった時に聞いた単語もあったような気がする。まさかそれぐらい昔の人が混ざってるのか?どうやって?

今本人に聞いても何のことか分からないらしい。まあいい、マコトは、マコトだ。


来年度からマコトは高校生だ。いい学校にも入れると言うのに、自由を求めて偏差値低めの高校を選んできた。封印はまだ生きてるけども小さな体調不良が増えた。頭が痛いだとかおなかが痛いだとか……それに生理の兆しもまだ無い。身長も伸びが遅くなった。何かあるのか?

それに最近視線を感じる。視線の主だけは片付けておかないと……。


視線の主はマコトと同じ実験体の一人目だった。恐ろしいことを知った。彼はもう長くないそうだ。混ぜ物が生活で消費され、人の魂を集めて食事をしないといけない身体だそうだ。その点を改善していなければマコトも同様の食事が必要な可能性があるらしい。生きるのに殺人が必要ならば、私は……マコトは……いや、でも分からないどうしたら良いの?


ごめんなさいマコト、私は先に逝くね。

マコトの体調不良と成長の遅れは封印が原因だとわかった。でも封印を解けば研究所に見つかる上に、私のような罪を背負わされるか、生きながらえるために食事が必要になるか……。封印されたままなら混ぜ物によって魂がすり減っていく。ただマコトは食べさせない。だから場所は教えなかった。食べられるのは私だけでいい。マコトを生かすと言う経験を得て、私が殺した魔物や人の人生をよく考えるようになった。だからごめんなさいマコト。

貴女のことも頼んである。もし食事が必要になるならばきっと出会うから解き放って欲しいと。ただし食べさせない、そこは食べられた私がどうにかするから。



(以上、榎本家の墓に隠されていた日記より)




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