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「何が最高だ。振られてんじゃんか。」シオンが言葉を零す。
「あ?__やんのか?」
凪が立ち上がった時、ドンッと机が揺れた。
朱那が威嚇の目線を送っている。不機嫌そうに睨み返した後、凪は部屋を出ていった。
「ごめんね。後でちゃんと躾けときますんで。」ニコニコの笑顔。だけど、目が笑ってない。
席から立ち上がった。
「あら?どこ行くの?レイ。」
「凪に、聞きたいことがある。」そう言って部屋を出る。
部屋の扉から少し身を乗り出しながら、朱那が教えてくれた。
「凪なら、突き当たりを右に曲がってすぐの部屋だから。」
「ありがとう。」
部屋の扉をノックする。中から慌てたような音。
その後、「はい。なんの用でしょうか。」
丁寧な言葉が帰ってきた。
「レイという。さっきまで同じ部屋にいた」
「何?なんか用?」そう言いながら、扉が開かれる。
「聞きたい事があって...」
眉をしかめながら、「3分で出てけよ。」そう言って背中を向ける。中に入れ、とでも言ってるようだった。
「本題から入れ。何の用だ。」
「なんで、ルルを知っているのか。それと....なんでフェニーを殺した。」
一つ、二つ。指文字で示しながら言う。
「断定的だな。確信があるのか?」
「状況証拠的に考えたら、だ。」
「シオンに教えてもらった。任務だった。はい、終わりだ。さっさと出てけ。」
背中を押される。
「待て、急かすなまだ三分も...」
「用事は終わったろ?」
シオンがルルの事を言った。そうだろうが、接点もないのにわざわざ言うだろうか。
「なんで、シオンはルルの事を言ってきたんだ?」
「それはー。ルルを助けてほしいってあいつが......あっやべ、すべった。」
「もう少し話してくれるな?」
ノートともイェスとも言わず、ため息が返事した。
「シオンがルルの事を気にかけてたんだよ。酷い扱いだったから。それで俺に頼んできた。
そんで俺がルルに助言する。その後は知っての通り、お前達のとこにルルが走っていったんだ。」
......そういうことか。
「じゃあ。フェニーを殺したのは。人体実験をしてたから?」
「シオンの首輪を解くために鍵の設計図を手に入れようとしたんだ。そんな時、見つかったから。仕方なく。応援呼ばれたら面倒だからな。...さっさと出てけ。」
背中を押されて、部屋の外に出される。
バタンっと扉がしまった。
部屋に戻ろうとする。
扉がまた開いた。
ガっと腕をつかまれる。部屋に引きずり込まれた。
倒れた俺の上に、凪が乗ってる構図。
頬に一つ汗が垂れていた。
「情報代だ。朱那が何か聞いてきても特に何もない、と答えろ。いいな?」
「あ、ああ。」
安堵した様子で、また俺を部屋の外へ追い出した。
部屋の外でも、談笑が聞こえてくる。
ガラガラっと扉が開いた。
扉から身を乗り出して、朱那がこちらを見る。
「あっ、レイ。戻ってきた?凪は何か無礼な事とか。してないです?」
そういうことか、朱那を恐れてるのかあいつ。
「特に何も。」
「そう......ほんとに?」
「ああ。」
じっと見られてる目。
.....怒らせたら怖いタイプだ。
「何かあったら、ちゃんと答えてくださいね?」
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朱那の顔に笑顔が戻る。
ホッと一安心した。
「あーーー!!レイ!なんで、クロがニーストラだと教えてくれなかったの!」
部屋の中には、シオンの頬をつねりながら前のめりになっているメイナ。
なんで、ここにいたのか。と問い詰めてたんだろう。
部屋の中に入りながら言う。「別に、わざわざ言うことじゃないし。」
「それにしても!だよ。教えてくれたっていいじゃんん!!」
パンパンと手をたたく音。朱那だ。
「なら、これを気に自己紹介というのはどう?私もレイの事はあまり知りませんし。」
「いい提案だな。」そう言いながら座る。
「では、私から。名は朱那。巫女の家系生まれのものです。ですので、舞が得意です。以後お見知りおきを。」そう言いながら、座ったまま深くお辞儀をした。
「はい!はい!じゃあ次私!名はメイナ。ADS生まれのものです。戦闘は苦手だけど雑務は得意です。以後お見知りおきを。」同じように、深くお辞儀をした。
「え?と......名はシオン?小さい頃、路地で凪といたところを隊長様に捕まりました。得意なものは、喧嘩をとめることです。以後お見知りおきを。」軽く会釈をした。朱那の顔がシオンの方に向く。シオンは深くお辞儀をし直した。
「ニーストラのクロコダイルメギメギスペシウム。」
___クロはそれだけ言って他は何も言わなかった。
シオンは俯いて、でも肩が震えてる。
「えっと、クロ。短くない?好きなものとか言おー?」
「レイ。」即答だった。
「は……はぁ!?」予感はしてた。けど、面と向かって言われると....なんだか。顔をそっぽに向けた。
「ちがっ、違う。ツッコムとこ、そこじゃ、ないだろ。」言葉がつっかえながら、シオンが言う。
「クロ、コダイル、メギメギ.....!?誰が名付け親、だよ」
「正確には、クロコダイルメギメギスペシウム2だ。」すかさず反論した。
「2ってことは1がいるんですか?」朱那は真剣な目だった。
「元々、昔飼ってたペットの名前だったんだけど、これ以外いいの思いつかなかったんだ」
「あ、ははは、ひひ、ふ、はは。おまっ、お前正気かよ」
「正気だ。メギっていう響きがポイントで.....」
畳を転がりながらシオンが笑い転げて、話にならなかった。
「レイ....ネーミングセンス....」メイナの言葉をそこでつっかえて止まった。
...変だな。最高にかっこいい名前のはずなのに。




