17 また来年も。
クロの頬をつつく。
「ねえー。クロ。....ねえってばー。無視は悲しーよー?」
クロは無表情で前を向きながら歩く。
袋を抱えて。先程、いくつかの屋台で買って来た物だ。
クロの歩くスピードが少し早くなる。
メイナもそのスピードに合わせるようにして少し早くなる。
「クロってさ。
レイのこと...好き?っていうかなんて言うか
.....あっ!
なんか。懐いてるよね。どうしてなの?」
メイナの言葉で、クロの足が止まった。
ゆっくり、右側のメイナの方を向く。
メイナを見つめた。
人々が慌ただしく通りを行き来する。
その中で二人だけ浮いてるようだった。
クロがメイナから視線を下にする。
「レイは、僕を孤独から救ってくれたんだ。」
背後から流れてきた人波に押され、メイナの体がよろめく。
クロがメイナの手をとって自分の方に手繰り寄せる。
密着するほどの距離。
メイナがクロを見上げる。心臓は高鳴っていた。
「僕を救いたかったとでも思ってる?
それなら、二千年前にでも、助けに来てよ。
だいぶ遅かったみたいだね。」
しばらく、何も言わなかった。
それから、メイナを突き放すようにして、背を向けた。
そのまま、クロはどこかに行ってしまった。
メイナは人混みの中。体中の体温が顔に集まってくる。
クロの背中を見つめながら、その場に立ち尽くしていた。
二人並んで屋根の上で街を見下ろす。
いつもの祭りは眩しくて、逃げるように悪魔討伐に行っていた。
だけど、今回は、祭りの一部に溶け込めたような感じがする。
「もうそろそろ時間かな。」
人の動きが少なくなっていく。
皆、同じ方向を向いている。
「時間....?」
と思うのも束の間。
ヒュオーーー。
夜空に光と共に爆音が鳴り響く。
背中がビクッと震えた。
ドカン。
という音と共に空に満開の花が咲く。
暗闇、大きな音。
少し気が大きくなっていたのかもしれない。
レイの手を握っていた。
「綺麗だね。」
唐突なレイの言葉に、レイの方を向く。
レイと目があった。
レイの手を握ってるのを妙に意識して、頬が赤くなる。
手を離した。
「買ってきたよ。」
いきなりの背後からの声。
反射的に振り向く、と同時に手が腰の剣に移動した。
クロだ。
「そこ。座ってもいい?」
返事を言う前に、クロは私とレイの間に座った。
クロがレイの口の中に串焼きを入れ込んでいる。
棒を自分で持って口から取り出す。
「おかえり。メイナは?」
「そのうち来ると思うよ。」
「そっか。」
しばらく、花火に見入っていた。
壁を伝ってくる金属音が微かに聞こえた。
左側の屋根端を見つめる。
手が飛び出してきた。
続いて顔。メイナだった。
登るのがマジで大変。
ねずみ返しみたいなのがあるせいで手こずってしまった。
ルルが駆け寄ってきて、手を差し出してくる。
助けを借りて屋根を登りきった。
「ありがとう。」
どういたしまして、とでも言うようにルルは頷いた。
「いやー。ほんとに登るの大変だった。ねずみ返しがあるせいでさ。」
そう言いながらクロの所まで行く。
袋に入ってる串焼きを2本取った。
「これ、もらってくね。ルルも食べるよね?」
ルルの方を向きながら言う。
「えっと...私は。」
「じゃあ食べよう。」
そう言ってルルの口に串焼きを突っ込む。
「美味しいでしょ。」
ルルが1まとまりを食べる。
「おい...しい.....おいしい。」
ぎこちない笑顔なんかじゃなかった。ルルは自然で、明るい笑みを浮かべてた。
その後、屋台を練り歩いた。
もう、祭りが終わるから、人は少なくなっていた。
メイナに連れられて、射的に連れてかれた。
「ねえ、皆。勝負してみない?射的の腕。」
「乗った。」
始めにそういったのはレイだった。
「レイがやるなら」、と続いてクロも。
「ルルは?」
「.....やる。」
「オッケー。決まり!じゃっまずは私からね。」
メイナが当てたのは10分の8。
景品はお菓子の詰め合わせ。初動2発を外してた。
続いてレイ。
当てたのは、
10分の3...
メイナが慰めるようにして、肩を叩く。
「どんまい。そういうときもあるよ...」
風船をもらっていた。
続いてクロ。10分の10当てていた。
正確で、しかも早い。
カランカランと鐘がなる。
「おめでとう。一等だよ。」
そう言って、大きくて可愛い熊のぬいぐるみを渡される。
クロは複雑な顔をしていた。
次に私。
息を整える。
試し打ち程度に一回真ん中の的を狙った。
打った反動で狙いが少しズレてしまった。
やり方は分かった気がする。
そこからは迷いなくすべての的を撃ち抜いた。
10分の9。小さな熊のぬいぐるみを渡された。
一等を取ったわけではない。けど、楽しかった。
皆の方を振り向く。
「あの...来年も。
来た...い。」
メイナが感動の目で見つめてくる。
次の瞬間、抱きしめてきた。
「うんうんうんうん。来年も来よーね。」
「うん。」
少し抱きしめ返した。




