16 満月の夜、
未だに彼らの目的が分からない。なんのために歩き回ってるのだろう。
悪魔を殺しに行ったりしないのか。
「あれ?ルル。楽しくない?」
「...えっと」
メイナが笑いながらこっちを見つめる。
「今日の夜、祭りがあるらしいからさ。それは楽しいかもよ。」
私を楽しませようとしているのか....
確かに楽しかった。
楽しかったけれど、
皆の会話は薄い膜越しに聞いてるように遠くて、一人だけ浮いているような感じがした。
空が闇に包まれて、あちこちで灯が灯される。
人が集まってきて、街が賑やかになっていった。
トントンと肩を叩かれる。
振り向く。
「ばあっ」
猫耳のカチューシャをつけたメイナがそこに立っていた。
「じゃなくて、にゃあっ!どうどう?よくない?」
こういう時はどういう反応をすればいいのだろうか...
笑えばいいのか?それとも、何かを言うべきなのか....
「はいっ!ルルにもあげるー。」
そう言って私の頭にもカチューシャを乗せてきた。
さらにどんな反応すればいいのかが、分からなくなった。
「めちゃ似合ってるじゃん!」
そう言いながら私をレイ達の方に向かせてくる。
「見てみてー。ルルと私、めっちゃ似合ってるくない?」
レイが赤い飴みたいなものを食べながら私の事を見てくる。
鼓動が早くなる。........どこかに隠れてしまいたい。
「似合ってるんじゃないかな。」
レイから逃げるようにしてメイナに視線を逸らす。
こういう時は似合ってるっていえばいいのか。
「似合ってる」
メイナにそう言ったが、やっぱ視線がずれた。
「と思う....」
クロが割り込むように口を突っ込む。
「レイもつけたら?似合うんじゃない。」
「っ.....は?」
「ふふふ。そこまで考えてたんだなー。
はいっ。レイの分。クロ分も。」
ということで、皆揃って猫耳をつけられた。
一番楽しんでるのはメイナだった。
メイナが辺りを見回しながら歩く。
「ねえルル。恋バナしない?」
「.....?」
「あっもしかして知らない感じ?
簡単に言うとですねー。好きな人の事を語り合う会って感じ?」
「え?......え....?」
メイナがそこら辺の席に着きながら言う。
「ほらほら座りなー。今は周りにレイもクロもいないから。」
とりあいず席に着く。
「ルルはやっぱレイ、好きなの?」
顔が熱くなってく、耳が特に熱い。
視線が下にずれる。
「わ、分かんない.....」
「ふーん。ふーーーん。やっぱりね。やっぱり。
じゃあここは上級者の私から語ろうかな。
私はクロだよ。」
視線がメイナに戻る。塩対応されてたのに....?
「クロは、しおだけどね。たまに見せてくる甘さが沼なんだよー。」
メイナが私を見つめて、
いたずらっ子の顔で言う。
「ルルはレイの事、押し倒してたもんねー。」
「ち、違っ。あれは事故で....」
「ほんとかなー?」
「ほんとだって!!」
メイナが少し驚いたような顔をする。
「ルルもそんな大きな声出せたんだね。
なんか安心?というか、嬉しいというか。」
満面の笑みで、メイナがそう言った。なんだ気恥ずかしかった。
「クロー。一緒に屋台回ろー。
....あれ?レイは?」
クロが上を指さしながら言う。
「あそこ。」
「.....??
あー。屋根の上ってことか?」
肯定も否定もせずに、クロはどこかへ行く。
メイナはクロに話かけながら、クロに着いていく。
二人はどこかに行ってしまった。
祭りは何百回も経験したことがある。
毎回、楽しいなんて思わなかった。けど....今回は悪くないな。
そんな事を考えながら街を見下ろす。
賑やかな広場。活気に満ちた屋台通り。
前と変わらないはずなのに、輝いて見える。
ガタッ。
屋根の上に誰かが登ってきた音がした。横目で見る。
「ああ、ルルか。」
「こんばんは...(?)」
「えっと...こんばんは(?)」
ルルが俺の隣に座る。
そこからは二人とも何も言わなかった。
なぜか、気まずい。今まではメイナが話題を振ってくれてたから。
こういう時はなんて言えばいいのか....
夜空を見上げた。
「えっと....その....。月が綺麗ですね。」
ルルが突然そんな事を言った。
「......そうだね。」
一瞬、言葉の意味が頭をよぎったが、何も言わなかった。
「レイ.....って。クロを見る目。いつも寂しそう。
だよね...?」
「そう、かな...。」
「違った...?」
「.......あながち間違いじゃないかもな。
クロは....俺の親友の、リツと同じ姿をしてるんだ。リツは...もう、死んじゃったけど。」
なぜかするすると言葉が溢れ出てくる。
「リツは死んじゃったんだ。死んだんだ....俺が殺してしまったから.....
いつもそうだ。俺の周りの人達は皆死んでくんだ。母さんや父さんだって...」
リーリアの最後の笑顔がよぎる。
ああ。俺は誰かに言いたかったのか。
温かな抱擁に包まれる。
「こういう時はなんて言えばいいか分からない....
私はいなくならないから。
...200年、生き残ってきたから。
だから...その....。」
ルルに、もたれかかる。
視界が滲んで、目頭が熱くなっていく。
何百年ぶりだろう。こんなに安心したのは。




