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そろそろモブたちに名前つけたほうがよくない!?

「それで、なんでお前らは帰らないんだよ」

 あの茶番劇の後、私と美月だけは旧文学部の教室に居残っていた。その内原くんの圧力に、びくびくおどおどしながらも、私は答える。


「あのね、実はちょっと、ちょっとでいいから、クイズ研の活動を見学したいの」


「はぁ、なんでおまえらが?」

 内原くんはあからさまに訝し気な表情だ。まあ、今までの経緯を考えれば当然か。


「そ、そうだよね、意味わかんないよね、だから私は帰りま……」


「美月、も~ちょっとだけ頑張ろっか」

 その場を去ろうとする美月の肩を、私は優しく捕まえた。


「怖いっ……今の梅乃の笑顔、ある意味知らない男の人よりこわいよぅ」

 なんて言っているが、それはさておいて。私は内原くんに向き直る。


「確かに変だって思うよね。でもよく考えてほしいの。もし勝負に負けたら私たちは部室を失って、もしかしたら活動も出来なくなるかもしれない。そうしたらみんなバラバラになって違う部活に入り直すかもしれないんだよ?」

 精いっぱい悲しそうに私は告げる。


「まあ、それは、確かにお前らにとっては残念かもしれないが……」

 いい感じに効いているみたいだ。少しだけ内原くんは気まずそうな顔を覗かせる。


「部活に入り直すなら、私と美月はまた一緒がいいなって思ってるの。それでね。だったら少しでも活動内容を知っているところってことになって。クイズ研も考えてみたいと思ってるんだよ」

 嘘である。美月は知らない男子生徒ばかりの中でまともに活動できるわけがないし、私は彼のくせっ毛を生理的に受けない。間違えた。私は部室がなくても創作活動は出来る。


「はぁ? そこの菊池はそんな状態じゃ部活なんてできないと思うけど」


「そ、それはなんとか慣れていくから~、ね? 美月?」


「うっ……、ムリかも」


「ねっ、、み・つ・き?」


「ひゃ、ひゃい。きっと慣れます。…………今日の梅乃ちゃんやっぱ怖い」


「なんか言った?」


「うっ、なんでも、なんでもないよ」

 さすがにこのくらいはすっと言ってもらわないと。


「ね? 大丈夫そうでしょ内原くん?」


「そ、そうはいってもお前らな。今日までこんな風に対立しておいて急に」

 やや引きつった表情で答える。くっ、こういうところだけは無駄にまともな感性なんだよね。仕方がないと私は最後のカードを切る。


「あの、雪歩と花凛は別だよ? あくまで私たちだけだからね?」

 ちらりとその表情を盗みると、内原くんは少し思案顔である。やっぱりあの二人の影響大きんだね……。


「お前らだけってことか……」


「うん。あの二人がいなければ、わいわいがやがやして、活動の邪魔もしないと思うし、いちいち内原くんにつっかかって喧嘩にもならないと思うんだけど」

 言っていて心苦しいが、まあ、事実なので仕方がない。すると、渋々と言った様子で内原くんが口を開いた。


「まあ、入部するしないは別として、見るだけならなんともないかなぁ」


「ほんとっ? ありがとう」


「ちょっと見せるだけだからな……」


「うん、大人しく隅っこで見学してるよ」

 こうして私たちはクイズ研究会の部活潜入に成功した。もちろんこれも雪歩の作戦の一環である。当然私たちは、内原くん以外のモブさんたちの情報も欲しい。気休め程度かもしれないけれど、内原くんと、どの程度学力に差があるのかはクイズの様子から察せられるのではないかと予想している。


 学年一位の内原くん。その他のメンバーの実力が彼と同じくらいなら、私たちはもっと頑張らないといけない。だってこっちには花凛がいるし。せめて内原くんとその他の間に大きく学力差がありそうならいいんだけど。


「んじゃ、そういうわけで、今日は見学がいるけど、気にすんなよ~みんな」


「う~す」

 やけに力ない返事を返す長身のモブ一と。


「ま、しゃ~ないな~」

 襟足を伸ばして、いかにもチャラそうなモブ二。


「小生、小生は、自分の実力を発揮するだけであります」

 瓶底眼鏡に角刈りのモブ三。よし覚えた。ってかモブ三だけキャラ強すぎじゃない?


「はい、おっけい。じゃあ今日のテーマは、これと、これな?」


「う~す」


「え、フツウにムズクね?」


「ムホ~ッ。小生の得意分野でありますな」

 いやだから三だけキャラ濃すぎだよ……。そんなことを考えていると中央に集まっていた四人が散会して、それぞれの立ち位置についた。どうやら、一対一で早押し対決が始まるみたい。初めはモブ一が出題、モブ二が得点整理、内原くんとモブ三が対戦ってところかな? 位置取りから私はそんな風に予想する。


 やがて、やっぱりモブ一が、やけに力の抜けた声で問題を読み始めた。


「では問題」

 デーデンと最早おなじみの効果音をスピーカーが発する。……録音あったんだ。


「標高、千三百四十五メーと……」

 瞬間、ピンコンと甲高い電子音。赤いランプが派手に点灯した。早押しボタンもあるんだ。てか早い、早いねやっぱり、内原くん。驚いて思わず一句読んでしまった私が回答者に目を向けると……。


「野辺山、野辺山駅であります」


「はい、正解~。石原ワンポイント」


「くそっ、押し負けた~」

 まさかのモブ三であった。クイズならそんなこともあるかと一時は納得したけれど。


―――ピンコン。

「こだまであります」


―――ピンコン。

「広島県でありますっ」


―――ピンコン。

「ドクターイエローであります」


 次々とモブ三が内原くんをぶっちぎり、得点を重ねていく。強すぎるよ……。クイズプレイヤーとしても、キャラとしても強すぎるよモブ三くん。むしろこれ、内原くんが実は弱いんじゃ。


「かぁ~、やっぱ石原にはかなわないかぁ~」


「まあ、内原がダメなら俺たちも敵うわけなくね?」


「だろーな」

 などと、クイズ研の面々の話をきいているとどうもそういうわけでもないらしい。


「う、梅乃、あの眼鏡の人。直視はできないけど、ものすごく勉強できそうだよ」


「う、うん。どう考えてもすごい実力だね……」

 その後、モブ一とモブ二の対決も見学させてもらったけれど。正直一発目のインパクトが強すぎてあまり印象に残らなかった。うん、これでこそ、モブのあるべき姿。モブ三くんには、汝のあるべき姿に戻れ! と叫びたい。あ、いや分からない人はスルーしてください。封印解除‼ レリィィイイイズ‼


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