彼氏になった彼のイケメン度についていけないんですが。
舞台は年末年始。
紬の旅館で年越しを隼人たちと過ごしている中、
初詣に行こうと馨からお誘いが・・・!?
すれ違う人々の視線が、あちこちから私に向いている気がする。
何秒も凝視する人、思わず目を向けてしまう人。
こっちをみるなって大声で叫びたいところだけど、今は我慢よ渕脇柴乃。
皆に見られているってことは、私がそれだけかわいいってこと。
当然でしょ、この私がわざわざおしゃれをしてきてあげたんですもの。
あいつにはそれ相応の感謝をしてもらわないと困るわね、まったく!
「おまた……お前、顔隠すとか何かしらして来いよ……めちゃくちゃ目立ってんじゃん……」
声が聞こえて、心臓が跳ね上がる音がする。
顔を上げるとそこにはいつもの変装用のメガネをかけた、馨君がいた。
目立っているという割に彼は眼鏡をしていても、それなりに女子がざわめいている。
そりゃそうよね、うちの高校が誇るイケメンナンバーワンですもの。
彼ははあっとため息をつくと、私に
「あけましておめでと」
とさらっと一言つぶやいた。
「……どういう風の吹きまわし? 前は寺濱君と行くって言ってなかった?」
「まぁそうなんだけどさ。あいつ、柴乃の手を借りた割にまったくの進展なしだろ? だから強引に、お前の妹と行かせたってわけ」
なるほど、どうりで姫野が楽しそうに見えたわけだ。
本当にあの二人は、うまくいきそうな見込みが全く見られない。
せっかくの私のチャンスを、ことごとく彼が無駄にしているんですもの。
家でほとんど一緒なんだから、告白なりなんなりすればいいのに……
「お前こそ、年越しはあの旅館で過ごしたんだろ? てっきりおかみさんとか、渉あたりを連れていくのかと」
「そう、だったんだけど……むぎちゃんもあんちゃんも、馨君と行って来いってうるさくて……」
「ことごとくいい友人に恵まれてるよな、お前は。その私服も、自分で?」
急に彼が言うものだから、思わずバッグで前を隠す。
赤くなってしまう頬を隠しながら、あさ~く「うん」とうなずく。
すると彼は……
「へぇ……なかなかかわいいじゃん。似合ってる」
っていったのよ! 信じられる!?
一瞬で頭の中が真っ白になったような、初めての感覚。
かわいいなんて、言われ慣れてるはずなのに。なんでこんなにうれしい気持ちになるんだろう……
「あ、当たり前でしょ! 私を誰だと思ってるのよ!」
「美男美女コンテストでもう一人の渕脇さんより低い渕脇さん」
「もう一人のからは余計よ!!!」
「直樹からよく聞くんだ、洋服で困ってるとコーディネートしてくれるって。案外、そういう才能あるんじゃねぇの?」
言われてみれば、あんちゃんからもよく言われる気がする。
かわいいって言われるように、なってからだろうか。
どう自分を見せれば、他人によく見えるようになるのか……雑誌とかも結構読むようになったし。
まあ、理由を言えばたいていの人には嫌味だって言われるけど……
「そういう馨君は何かあるの? 進路希望表とか、最近書かされるの多いでしょ?」
「ん~……人多いし、並びながら話さね?」
そう言って私は、彼についていくがまま鐘のあるのところの列に並ぶ。
小さな子供が願い事を言い合ったり、仲のよさそうなカップルがいちゃ凝らしてたりと人それぞれだ。
中には私達を見て、噂しているようにも見えたけど。
周りが気になってしょうがない私に比べて、馨君はさも気にしていないように携帯を触り続けていた。
「で、さっきの答えは?」
「ん~? ……なんだっけ」
「進路よ、し・ん・ろ!! はぶらかそうとしないで!!」
「新年早々親みたいなこと言うなよ、テンション下がるだろ?」
「そっちが先に振ってきた話題でしょ!」
「先生とかには大学だの色々薦められてるけど、個人的にはゲーム系志望なんだわ。言ったことねぇから、どう反応されるか分かんねぇけど」
やっぱり、と思った。
馨君がゲーム好きなのは、今まで一緒にいてよくわかった。
私より付き合いが長い寺濱君からも、たまに聞かされてたし。
そのことを知っているのは私と寺濱君と、一緒にゲーセンについてきてもらったあんちゃんだけ。
そういえば、その理由……まだ聞いてなかったような……
「前に寺濱君が言ってたわよ? 女子に興味がないのは、そのことが関係してるからじゃないかって」
「あー……そういやあいつにも話してなかったっけか」
「ゲームが好きなら、どうしてそれを表に出さないの? 悪いことじゃないと思うんだけど」
「……まあ、俺の場合ゲームは逃げ道だからな」
がらんと、鐘を鳴らす音が聞こえる。
気が付くと、私達の番がきてしまっていた。
何も準備していなかったもので、慌てて財布を取り出そうとする。
そんな私に「柴乃」と、馨君が五円だけを渡してくれた。
なんで五円なんだろうってそれだけが疑問だったけど。
賽銭箱に思いっきり五円を入れ、ぱんぱんと手を二回たたく。
私がお願いしたのは、もちろん彼のことだ。
彼ともっと親密になりたい、ちゃんとした恋人になりたい。
そしていつか、手とかつないだり抱き合ったり……
って、神相手に何詳しく語ってるのよ! 私は!
そもそも神様なんているわけないでしょ! ばっかみたい!
いやでも、本当に悪霊とかいたわけだし神様くらいいてもおかしく……
「柴~乃~? 後つっかえるぞ」
「あっ! ご、ごめんなさい……」
「そんな念入りに何お願いしたんだ?」
「ど、どうだっていいでしょ! あんたはどうなの!?」
「内緒」
わざとらしくウインクしながら、いくぞと強引に腕を引っ張られる。
新年早々出会えた彼の行動の数々に、私は戸惑いを覚えるしかできなかったー……
(続く!)
というわけで、紫乃・馨のターンです
仮とはいえ付き合っている、という関係の
2人ですが馨君のイケメンっぷりが
半端じゃないですね
でも皆さん、キュンキュンしてるところ
言うのもあれですが
馨君、まだ好きじゃないですからね?笑
この関係をどう言っていいのか
よくわからない作者であります
次回、初詣はまだまだ続く!




