すれ違った姉妹喧嘩を止めるのは、、、
昔つぶれた廃工場。
そこにいたのは、馨のバイト先のチーフである
瀬名という青年だった。
彼曰く、姫野は悪霊に取りつかれているらしく・・・?
非日常編、いよいよ終幕!
「へぇ~ここまで来たんだ? やればできるじゃない♪ お姉ちゃん❤︎」
いつもの笑顔、ご機嫌の時に出すような高い声。
全部が知っている姫野なはずなのに、なんだか別人を見ているようで私はごくりと唾をのんだ。
高く積み上げられたいくつもの積み荷の上に、足を組みながら座っている彼女。
くつくつと笑うその笑顔は、いつも以上に不気味で恐怖さえも感じた。
「姫野……降りてきなさい! まだ聞きたいこと、いっぱいあるのよ!?」
「え~? なんで姫野がお姉ちゃんの言うこと、聞かないといけないのぉ~? そんな権利、お姉ちゃんにないでしょ~?」
ダメだ、何を言っても彼女の方が上を行く。
私が姫野に口で勝てないのは、いつものことだ。
分かってる、それじゃダメだって。
私が何とかしなきゃ。ここにいる、みんなのためにも。
「姫野ちゃんっ! そんなところにいたら、危ないよ?」
「よくも今まで、好きなようにやってくれたね?」
「そいつを……直樹をどうするつもりだ」
「その言い方、まるで姫野が悪いみたいじゃない? 姫野のためなら何でもするって言ったの、直樹君だよ? 彼は自分からこうなることを望んだの❤︎」
「お前は……直樹の好意をなんだと思ってるんだ!!」
「別に? 勝手に好きになったのは、そっちじゃない。そういうのマジ迷惑っていうか、うざいんだよね。姫野」
そういう姫野の目は、赤く発光しているように見えて不気味さがより一層増す。
寺濱君も何も言い返せないのか、ずっと黙ってうつむいている。
「どうして……? どうしてなの、姫野! どうして、こんなこと!!!」
分からない、姫野が変わってしまった理由が。
双子の姉妹なのに、どうしてこうも違うのだろう。
だって、昔はあんなに仲良く……
「……どうして? そんなの、決まってるじゃない……全部、お姉ちゃんのせいなんだからっ!!!」
「私……の?」
「誰にも邪魔なんかさせない! この世界を、姫野のものにするんだから!」
彼女の叫びが聞こえた時には、もう遅かった。
「柴乃っ!」
天井から、いくつもの鉄骨が降ってくる。
間一髪でそれを察知した馨君が、私を引き寄せてくれる。
私のすぐそばで、鉄骨は誰にもあたらず地面に落ちていった。
気が付いた時には、彼の胸の中に……って!
「ちょっと! 何してんのよ!」
「何してんのはこっちのセリフだ! お前は死にに来たのか!?」
うぐっ……
「どうしよう。姫野ちゃん、私達の言うことには耳を傾けそうにないし……」
「こりゃ、身体ともに完全に悪霊の思い通りだね」
「全員ここを無事に出る方法はねぇのか……」
「手ならある」
不安そうな三人の声を遮るかのように、口を開く。
瀬名さんだ。
彼はまっすぐに姫野を見つめ、落ち着いた声色で言った。
「彼女から霊をとりのぞく。そのために、僕がいるのだからな」
「随分簡単に言うけど、どうやってするの?」
「僕にかかれば簡単だ。しかしそれにはまず、条件がある。彼女自身の心の揺らぎ……そこをつけば霊は消える」
姫野が、心を揺るがすこと……
なんとなく、言ってる意味が分かった気がする。
今の姫野は多分、何も信じられない状態。
どうしてこんなことをするのか、その答えさえ見つかれば姫野は……
「おしゃべりが多いねぇ、あなたたちは」
はっと気が付いた時、近くに彼女がいた。
しかも、宙に浮いた状態で。
不気味に笑うその笑顔は、まるで姫野とは別人のように見えた。
「安心して。あなたたちをす~ぐに楽にしてあげるから」
「待って、姫野!」
「私にとってあんたは邪魔なの。消えて」
セリフと同時に、積み荷が宙に浮きだす。
大きな大きな積み荷が、私達の方に迫ってきて……!
「そんなことしたら、同じことの繰り返しになるじゃないですか! 姫野さん!」
そんな時、だった。
彼のー寺濱君の声が響いたのは。
今にも襲い掛かろうとしていた積み荷が、寸前のところで動きを止める。
忌々しいものでも見ているかのような目線を、彼女はむける。
「姫野さんは、さびしかっただけなんですよね?! 一緒にいてほしかっただけなんですよね!? 今ここでみんなを消しちゃったら、また一人になっちゃうじゃないですか!」
「……姫野のことをなにも知らないくせに、あなたに何が……」
「分かります! 僕はずっと、あなたを見てきたんですから!!」
わずかに、彼女の目が変わった気がする。
それに気づいているのかいないのか、寺濱君は動けなくてもなお叫び続けた。
「下僕って言って、男子を集めていたのも一人が嫌だっただけですよね? あなたはいつも、誰かにそばにいてほしかったはずです! 特にお姉さんである、柴乃さんには!」
「……黙って」
「柴乃さんにかまってほしいから……だから僕達から遠ざけようとして……」
「黙ってって言ってるでしょ!」
姫野の叫びが、中でこだまする。
力をなくしたかのように、積み荷はすでに地面についていた。
寺濱君の訴えを聞いた彼女はまるで、自分に言い聞かせているようにも見えて……
「なんで……ちょっと一緒にいただけのあんたが……なんでわかるのよ……」
そうだ。私、分かった。
姫野が変わってしまったんじゃない。
原因は私だ。私が、こうしてしまったんだ。
やっとわかった。
あの子が、馨君を奪うような真似をした理由が。
「あんた……ほんとわがままね」
「お姉ちゃんは黙って……!」
考えがまとまった時には、彼女に抱き付いていた。
いつの間にか大きくなったその背は、私と同じくらいで。それでもまだ、子供っぽくて。
「ごめんね」
姫野にだけ聞こえるように、私は小さくそうささやいた。
私達は、ずっと二人だった。
小さい頃から、親二人とも忙しかったから。
それでも男の子から告白され続けるにあたって、私は彼女との距離を置くようになった。
一緒にいると、迷惑をかけてしまうから。
それが逆に、姫野を傷つけていたなんてー
「帰ろう。みんな、姫野のこと待ってるから」
「……姫野……ここにいていいの?」
「当たり前じゃない。だって、私のたった一人の妹なんだから」
「お姉……ちゃん」
その後、姫野は気を失ってしまった。
涙を、浮かべたまま。
その隙に瀬名さんが色々やってくれて、隼人君と馨君の二人で寺濱君を解放して。
一連の事件が終わった時には、もうすでに日が暮れていた。
「彼女の身柄は、僕の方で少し管理させてもらう。何かあったときでは遅いからな。帰り道には、十分用心するように」
そういって瀬名さんは、いち早く車に乗って自分の家に帰ってしまった。
私達は来た道を戻るように、みんなの家に向かうバス停までおもむろに歩いた。
すでにあんちゃんはバスが来てしまい、現在はだんまりしている隼人君と、疲れて寝ている寺濱君、携帯をいじっている馨君がいる。
私はというと今でも起こったことを処理しきれていない部分があって、彼女を抱きしめた感覚だけがまだ残っている。
いつ以来だろうか、彼女を抱きしめなくなったのは。
姫野の体、あんなに大きくなっていたんだな。
きっとあの子も、必死だったんだ。
馨君が現れたことにより、それは焦りになって、今までのことにつながって……
「私も、寂しかったのかな……?」
「何一人でぶつくさ言ってんだ、お前」
聞こえていたのか、後ろから馨君が口を挟む。
彼は相変わらず携帯でゲームをしているのか、器用に指先だけが動いているようだった。
「うっさいわね。ゲームしてるあんたに言われたくない」
「まんまと姉妹げんかに付き合わされて、こっちはいい迷惑だっつうの」
「悪かったって思ってるわよ! ここにいるみんなには!」
「ほんと、めんどくさいよな。渕脇も、お前も」
「ちょっ! それどういう意味!」
私のつっこみと同時に、白いバスが到着する。
ぱっと見ると、荷物を手にした隼人君がすでに立ち上がってた。
かすかに浮かべるその笑みは、昔と変わっていない……あの頃の彼そのもののように見えた。
「んじゃオレこのバスだから。またね~」
「隼人君! 姫野のこと……」
「あんな目にあったけど、君にまた会えたのは嬉しかった。これからは友達として、仲良くしてよね? 柴乃ちゃん」
そういいながら、彼は乗った後も私に手を振ってくれた。
そんな彼の笑みを見て、ほっと肩をなでおろす。
「まあ……お前もお前で、よく頑張ったと思うぞ。見直した」
ふいに聞こえたその言葉が、現実に引き戻す。
夕日に照らされた彼が、優し気に笑う。
美しい彼の笑顔が、私の心にずっとこびりついたように忘れることが出来なかった―
(つづく・・・)
本当はもう一話くらい伸ばそうかなー
とも思ってましたが
こういうのは一気に読めた方が感動増すって
いいますよね。
というわけで、非日常編・・・
姫野ちゃん編はこれで終幕です。
この展開を思いついたきっかけについて、一つ言うと
タイトル通り、この作品の主役は双子・・・
つまり姫野ちゃんもなんです。
なので彼女をメインにした話をと思い、
彼女に寄り添った結果がこんな形になりました。
悪霊といういるのかいないのかわからないものを
学園物にぶっこむ、なんて
思い切り過ぎて凄い反応が怖かったです……
皆さんの目にどう映ったのかはわかりませんが、
少しでもいい風に見てもらえるように
祈っております。
あ、本編もあとがきも長くなってすみません!
来週からは通常営業にします!
次回! いつも通りの日常へ!




