さあ、王子争奪大戦争の幕開けだ
それぞれのクラスの出し物が決まり、
準備に取り掛かる生徒達。
そしてついに、文化祭の幕が上がる!
ばん、ばんと小さい花火があがる。
蛍雪高校文化祭―通称蛍雪祭が、いよいよ開幕した。
どこに行っても、どこを見てもたくさんの人でにぎわっている。
「写真展やってま~す。よかったら、みていってくださ~い」
「に、二年一組……写真展、でーす……」
「ちょっとあんちゃん、元気ないよ? そんなんじゃ聞こえないじゃない」
「だ、だって恥ずかしくて……柴乃がいるせいで、すっごいみられてるんだよ?」
「私だけのせいじゃないと思うんだけど……」
おどおどしながら、クラスお手製のチラシを配っていくあんちゃん。
彼女の存在は目立たないだけで、それなりにかわいい。
私が可愛くて目に留まるのは、当たり前。
でもみられているのは私だけではなく、彼女も入っている。
この子自分の価値が低いから、まったく気づく気配ないけどね。
しっかし、すごい人だなあ。
っていっても多分、みんなの狙いは隣のクラスみたいだけど……
「二組、喫茶店やってまぁす~ぜひ寄って行ってくださぁい。あれ、柴乃さん。それに渉さんも。こんにちは」
同じようにチラシを配っているのは、言うまでもなく寺濱君だ。
馨君が言っていただけあって、本当に呼び込み係をやっているようだ。
ただ一つ、いつもと違うことがあって……
「あ、あんた……それ執事服?」
「ああ、着せられたんです。呼び込みなら、服装で目立った方が客が来るとか言って」
「誰の提案よ、それ」
「すごいね、寺濱君。本当の執事みたいで、かっこいい」
「本当ですか? そういってもらえて嬉しいです」
照れくさそうに笑う彼が来ているのは、喫茶店の名前にもなっている執事服。
さすが姫野が発案しただけはある、と思ってしまった。
家の中でもどんなのがいいか、雑誌やら見て取り寄せていたみたいだし。
にしても、服一つでこんな印象変わるものなのね~
寺濱君がこうも変わるってなると、あの人が着たらどうなるんだろう……
って! なんでこんな時まで、あいつのことまで!!
「そういえば浅沼君は、一緒じゃないの?」
「馨は今、ご飯を買いに出てます。僕が当番終わるまでって言って」
「あんたのクラス、すごい人気なんじゃない? ほとんどそっちついでに、私達のとこ寄ってる人多いし」
「もちろんですよ! 女神さまの接客なんですから!」
め、女神さま?
そういわれて、あんちゃんと目を合わす。
良かったらどうぞといわれ、隣のクラスをのぞくと……
「いらっしゃいませ~❤︎ 何なりとご命令くださいませっ、ご主人様❤︎」
相変らずの笑顔を振りまきながら、かわいいフリルが目立つメイド服を身にまとい、くるくる回ってみせる。
狙っているかのようにウインクをしてみせるあいつの姿に、どの男子も鼻血を出すほど喜んでいる。
「きもっ」
思わず私は、そうつぶやいてしまった。
「柴乃、それはちょっと言い過ぎ」
「ひどいですよ、柴乃さん! あんなにかわいいのに!」
「どこがぁ? あんたたちの目、どうかしてんじゃないのぉ?」
あれが自分の妹だと思うと、寒気がする。
どうしてあの笑顔がいいのか、男の気持ちは分からない。
姫野は姫野で楽しそうに笑顔を振りまいている。
ここが人気なのって、まさかあれのせい……?
「ああ、もういらつく! 負けてられないよ、あんちゃん! 私達も客集めよう!」
「で、でも私達のとこ展示だし……」
「いいの!!!」
「なんだお前ら、全員呼び込み? 暇してんなー」
「余計なお世話……ゲッ!!」
勢いで声を荒げてから、その人物に思わず顔をしかめる。
そこにいたのは、ビニール袋を下げた馨君だった。
どこからかもらってきたのか、棒キャンディーを口に加えていた。
「馨、お帰り~どうだったの?」
「面白そうなのは結構見つけたぜ? ほい、これ飯」
「ありがと。もう当番終わるし、回りにでも……」
「いたわよっ! 浅沼君発見!」
「浅沼先輩! うちのクラスに、来てください!」
「私のクラス、お化け屋敷やってるんですよ! 一緒にどうですか!?」
すると、そんな時だった。
彼を心待ちにしていたかのように、女子が湧いて出てきたのは。
あっという間に人ごみに流され、また彼が見えなくなってしまう。
「ちょ、あんた達……! 人が話してる途中に……!」
「大丈夫? 柴乃」
「これのどこが大丈夫に見えるのよっ!!」
「ご、ごめん……これじゃ誘うどころか、一緒にいるのも無理そうだね……」
あんちゃんも疲れ切ったように、ため息をつく。
私達の位置からは、馨君はおろか寺濱君の姿さえ見えない。
せっかくの文化祭だっていうのに! なんでこんなことに!
「うふふ❤︎ 大変そうだね、お姉ちゃん❤︎」
いつからのぞいていたのだろう、教室のドアから笑顔を浮かべた姫野がいた。
何かたくらんでいるようにも見えたその笑みは、嫌な予感がして少し寒気がする。
「ずいぶん繁盛しているようね、姫野」
「そうなのぉ~こぉんなにお客さん来るってた~いへん。姫野疲れちゃった」
「嫌味にしか聞こえないんだけど」
「みんなね、姫野のためにいっぱい食べてくれるんだよぉ? おかげでほとんど売り切れちゃった❤︎」
「わざわざそれを言うためだけに来たわけ? 最低」
「またまたぁ。お姉ちゃんにもいっぱい来てるじゃない、ほら❤︎」
そういいながら、姫野は違う方向を指さす。
見ると、私に告白してきた男子がほとんどそこにいた。
うっかり目があったかと思うと、その人達がこちらに……
「ってこうしちゃいられない!!! まかなきゃ!」
「えっ、ちょっと、柴乃!?」
「ごめんあんちゃん! 後で連絡するから、それまでもろもろよろしく!!」
男子から遠ざかるように、私はその場を後にした。
『いよいよ! 文化祭も残りわずかになっちゃいました! ラストを飾るのは生徒会たちによる、特別企画です!!』
わぁぁぁぁと、歓声がわく。
舞台を見る気力もない私は深い深いためいきをついた。
もう、ひどい目にあったの一言に尽きる。
舞台部門が始まるまでひたすら走る、走る、走る。
始まったから収まるかと思いきや、隣いいですかだとかでまた逃げ惑う。
ようやく一人になれた場所は、体育館二階。
見つからないようひそかに見ようと思ったのに、気が付いたらもう終わりだ。
二年目となる文化祭。
あんちゃんともあれ以来会えてないし、馨君とも回れなかったし……
「……こんなことなら、メールで誘えばよかったなぁ……」
「何をメールで誘うんだ?」
男の声がして、見つかってしまったと顔を上げるのさえ怖くなる。
しかしそこにいたのは、誰であろう馨君だった。
いるはずもない彼の姿につい、本音を漏らしてしまう。
「か、馨君!? なんで!?」
「静かに。見つかってもいいのか?」
私の声が大きかったのか、彼は唇に人差し指をたてて見せる。
幸い舞台の音で私の声はかき消され、誰にも届いていないように見えた。
「クレープ、最後の一つだ。食う?」
「ありがと……って、なんであんたがここにいるのよ」
「実行委員は自由に出入りしていいって決まりだろ?」
「あ、そっか……あんたも実行委員だったわね……」
「渉から聞いた。今日は大変だったな、お互い」
「あんたもね。今年は全然まわれなかったなぁ~」
ため息交じりにつぶやきながら、舞台の方を眺めみる。
生徒たちが楽しそうに笑いながら、舞台を見ている。
暗くてよく見えないけど、あそこにあんちゃん達もいるのだろうか。
そういえば隼人君とは、一回もあっていないような……
「って、あんたここにいていいの? 他の女の子は……」
「誰といようと、俺の勝手だろ?」
ふっと笑いながら、私の口についていたクリームを取ってくれる。
動作一つ一つが絵になるようで、自然に赤くなる頬を私はどうすることもできなかった……
€€€€€
「あーもしもし、オレだけどさぁ。ごめん、柴乃ちゃん見失ったわ~ごめんって~ちゃんと探すから~。はいはーい……とはいってもねぇ~」
残された店や展示を、人がいない間に見ていく親たちに紛れて彼は一人歩いていた。
一緒に回ろうと思っていた彼女は消え、今では探すの一言に尽きる。
同じように柴乃や馨を探している人はやむことなく、姿かたちさえ確認できていなかった。
「隠れ上手なのは、昔とちっとも変ってないなあ。ま、変わってないとこの方が多いけど」
そういいながら、彼は小さい子供達を眺めみる。
何度も頭によみがえってくるのは、柴乃に言われたあの一言。
『今の隼人君は、昔と何かが違う気がして……』
彼自身、その原因ははっきりわかってきている。
何故昔と違って見えるのか……
それに気づいてくれただけでも、うれしい。
言ってしまいたい。彼女が知らないところで何が起こっているかをー
「あれ、隼人君?」
「なに~? 片付けの手伝いなら、お断りし……」
「やっぱりそうだ。柴乃達と同じ学校だったんだね。柴乃は、一緒じゃないの?」
かっこいい雰囲気に合わせた、スタイリッシュな格好。
わずかに香る、香水の匂い……
「紬……ちゃん……」
何かが、動き出した瞬間だった。
(つづく・・・)
というわけで、文化祭編も無事終わりました。
ほんとはあと一話まで
伸ばすつもりだったんですが、
区切るところがなかったのでやめました笑
まあ、みなさんいいたいことはあれですよね。
なんで馨君じゃなくて、直樹が執事姿なの!?
ってことでしょう?
・・・まったくもって同意見です。
まああくまでも、目玉は姫ちゃんらしいので
黙っておきますけど・・・
解せないのは私だけじゃないはず
追記 不備があったので内容を少し変えてます
ご了承ください
次回、思わぬ急展開が君を待つ・・・




